社会保険労務士法

社会保険労務士法は、社会保険労務士の制度を定め、労働および社会保険に関する法令に関わる実務を担う専門職としての位置づけを明確にする法律です。近年の改正により、法1条は従来の「目的」規定から改められ、社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて、適切な労務管理の確立および個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与し、その結果として、事業の健全な発達、労働者等の福祉の向上、さらに社会保障の向上及び増進に資し、もって豊かな国民生活および活力ある経済社会の実現に資することを「使命」とする旨が明文化されました。
 
目 次
  1. 第1号業務(紛争解決手続代理業務)
  2. 補佐人制度
  3. 欠格事由
  4. 登録
  5. 秘密を守る義務
  6. 帳簿の備付け及び保存
  7. 依頼に応ずる義務
  8. 懲戒の種類
  9. 懲戒処分

第1号業務(紛争解決手続代理業務)

 

紛争解決手続代理業務(法2条1項1号の4、1号の5、1号の6)
 個別労働関係紛争解決促進法の紛争調整委員会におけるあっせんの手続並びに障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法及びパートタイム・有期雇用労働法の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。
 都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争解決促進法に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法に規定する労働争議に当たる紛争等並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。以下単に「個別労働関係紛争」という)に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。

 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が120万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているもの限る)に関する裁判外紛争解決法に規定する民間紛争解決手続であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。

  • 「個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するもの」には、各都道府県社労士会が設置する「社労士会労働紛争解決センター」などが該当します。

 

① 行政ADR

実施主体 手続 内容
紛争調整委員会 あっせん 個別労働関係紛争解決促進法に基づくあっせん手続の代理
紛争調整委員会 調停 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などに基づく調停手続の代理
都道府県労働委員会(知事の委任) あっせん 個別労働関係紛争(※労働争議、募集・採用紛争を除く)のあっせん手続の代理

② 民間ADR

実施主体 手続 内容 備考
厚生労働大臣指定団体 あっせん等 個別労働関係紛争(※労働争議、募集・採用紛争を除く)における当事者の代理 紛争の目的の価額が120万円超の場合は弁護士との共同受任

重要ポイント

  • 対象は「個別労働関係紛争」

  • 労働争議や募集・採用紛争は除外

  • 民間ADRで120万円超は弁護士との共同受任

 


※この業務は「特定社会保険労務士のみ」が行える業務です。

平成17年改正により一定の裁判外紛争解決手続訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため公平な第三者が関与してその解決を図る手続ADRにおいて紛争解決手続代理業務を行なうことができるようになりました

紛争解決手続代理業務」は、紛争解決手続代理業務試験合格し、かつ、法14条の11の3第1項の規定による付記を受けた社会保険労務士(特定社会保険労務士)に限り、行うことができる。(法2条2項)

 

紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事務が含まれる。(法2条3項)

 

紛争解決手続代理業務に含まれる業務
  1.  紛争解決手続について相談に応ずること。
  2.  紛争解決手続開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと。
  3.  紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること。

相談具体的な個別労働関係紛争について依頼者があっせんなどによって解決する方針を固めた以降紛争解決手続代理業務受任前の相談」(受任後の相談は紛争解決手続代理業務に含まれるであり労働者等があっせんなどによって紛争を解決する方針を固める以前にあっせん制度等を説明することは第3号業務の相談指導として行うことができます。(平成19年3月26日基発0326009号、庁文発第0326011号)

相談とは具体的な個別労働関係紛争について依頼者があっせん等によって解決する方針を固めた以降」、紛争解決手続代理業務受任前の相談をいいます。(平成19年3月26日基発0326009号、庁文発0326011号)

補佐人制度

 

社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。(法2条の2第1項)

  • 従来の訴訟代理人代理人とし範囲が整理されました。これは、労働審判が法律上の「訴訟」には該当しないため、一部の裁判所において社会保険労務士の出廷陳述権が認められないという運用上の弊害が生じていたためです。改正により、裁判所における補佐人としての活動範囲が、労働審判を含め明確に確保されることとなりました。

陳述は、当事者または代理人が自らしたものとみなされる。ただし、当事者または代理人が陳述を直ちに取り消し、または更正したときは、この限りでない。(法2条の2第2項)

 

紛争当事者の「代理人」と弁護士の「補佐人」の違い

項目 紛争当事者の「代理人」 弁護士の「補佐人」
社労士資格 特定社会保険労務士のみ すべての社会保険労務士
場所 ADR(裁判外) 主に裁判所
役割 当事者に代わって意思表示を行う 弁護士の陳述を補足する
単独行動 単独行動できる 単独行動できない(弁護士とともに)
受任上限 120万円まで(単独受任) 上限なし

超シンプル整理

 

  • 代理人=本人の代わりに発言・手続できる(特定社労士のみ)

  • 補佐人=弁護士をサポートする立場(単独不可)

 

社会保険労務士及び社会保険労務士法人が、法2条の2及び法25条の9の2に規定する出頭及び陳述に関する事務を受任しようとする場合の役務の提供については、特定商取引に関する法律が定める規制は適用除外となる。(平成27年3月30基発0330第3号)

特定商取引法は、消費者保護の観点から「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」の3類型を規制していますが、他の法律に消費者の利益を保護できる規定がある場合は、適用除外としています(特定商取引法第26条第1項第8号ニ)。

  • 社会保険労務士が行う「裁判所における補佐人(出頭・陳述)」の役務についても、社会保険労務士法に懲戒規定や綱紀保持義務が厳格に定められていることから、特定商取引法の適用除外となります。
    なお、これ以外の社会保険労務士業務(1号・2号・3号業務)についても、既に従前から適用除外とされています。

欠格事由

 

次のいずれかに該当する者は、社会保険労務士となる資格を有しない。(法5条)

 

欠格事由
  1.  未成年者
  2.  破産手続開始の決定を受けて復権を得ないもの
  3.  懲戒処分により社会保険労務士の失格処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
  4.  社会保険労務士法または労働社会保険諸法令の規定により罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
  5.  4.に掲げる法令以外の法令の規定により拘禁刑以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
  6.  法14条の9第1項の規定により登録の取消しの処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
  7.  公務員懲戒免職の処分を受け、その処分を受けた日から3年を経過しない者
  8.  懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、税理士の業務を禁止されまたは行政書士の業務を禁止された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの
  9.  税理士法48条1項(懲戒処分を受けるべきであったことについての決定)の規定により税理士業務の禁止処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から3年を経過しないもの
  • 欠格事由に該当した場合社会保険労務士名簿への登録も当然に抹消となります
  • 8.及び9.によりダブルライセンスの人は一方の資格で重い処分を受けると社会保険労務士資格も欠格してしまうことになります

登録

 

社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士となるには、社会保険労務士名簿に、氏名、生年月日、住所その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。(法14条の2第1項)

社会保険労務士は、登録を受けたに、当然、都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会の会員となります。(法25条の29第1項)

 

開業社会保険労務士  他人の求めに応じ報酬を得て、社会保険労務士の事務を業として行おうとする社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員となろうとする者を含む)  事務所を定めて、あらかじめ、社会保険労務士名簿に、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。(法14条の2第2項)
勤務社会保険労務士  事業所に勤務し、社会保険労務士の事務に従事する社会保険労務士  社会保険労務士名簿に、事業所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。(法14条の2第3項)

社会保険労務士は、社会保険労務士名簿に登録を受けた事項変更を生じたときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。
(法14条の4)

秘密を守る義務

 

秘密を守る義務については、次のように定められている。

 

 

秘密を守る義務 罰則
 開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならない。開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員でなくなった後においても、また同様とする。(法21条)

 開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならない開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の使用人その他の従業者でなくなった後においても、また同様とする。(法27条の2)
 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法32条の2第1項2号)

帳簿の備付け及び保存

 

 

帳簿の備付け及び保存については、次のように定められている。(法19条、則15条)

 

 

帳簿の備付け及び保存 罰則
 開業社会保険労務士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、依頼を受けた年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所及び氏名または名称その他厚生労働大臣が定める事項(事件の概要)を記載しなければならない。

 開業社会保険労務士は、上記の帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない。開業社会保険労務士でなくなったときも、同様とする。
 100万円以下の罰金(法33条1号)
 

法19条の規定は、社会保険労務士法人についても準用され、罰則も適用されます。(法25条の20、法33条1号かっこ書)

  • この規定は開業社会保険労務士または社会保険労務士法人)」に対するものであり、「社会保険労務士全般に対するものではありません

依頼に応ずる義務

 

 

依頼に応ずる義務については、次のように定められている。(法20条)

 

 

依頼に応ずる義務 罰則
 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼紛争解決手続代理業務に関するものを除く)を拒んではならない  100万円以下の罰金(法33条2号)

法20条の規定は、社会保険労務士法人についても準用され、罰則も適用されます。(法25条の20、法33条2号かっこ書)

  • 依頼に応ずる義務は、「開業社会保険労務士または社会保険労務士法人)」に対して規定されています

社会保険労務士または社会保険労務士法人は、社会保険労務士の業務に係る事務や補佐人としての出頭及び陳述に関する事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない。(則12条の10)

  • 依頼をしようとする者が請求しなかったときであっても、あらかじめ報酬の基準を明示する義務があります。

懲戒の種類

 

社会保険労務士に対する懲戒処分は、次の通りである。(法25条)

 

 

懲戒処分の種類 聴聞の実施
① 戒告  聴聞(法25条の4第1項)
 聴聞の期日における審理は公開(法25条の4第3項)
 1年以内の開業社会保険労務士若しくは開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士の② 業務の停止  聴聞(法25条の4第1項)
 聴聞の期日における審理は公開(法25条の4第3項)
 ③ 失格処分  聴聞行政手続法13条1項
 聴聞の期日における審理は公開(法25条の4第3項)

 

 

 

懲戒手続の比較

(行政手続法 × 社会保険労務士法)

処分内容 行政手続法   社会保険労務士法
① 戒告 弁明の機会の付与 聴聞 + 公開
(社労士法25条の4第1項・第3項)
② 業務の停止(1年以内) 弁明の機会の付与 聴聞 + 公開
(社労士法25条の4第1項・第3項)
③ 失格処分 聴聞(行政手続法13条1項)   公開
(社労士法25条の4第3項)

※ 業務停止および失格処分では「証票返還」が必要。


ポイント整理

行政手続法の原則

  • 不利益処分は
    → 原則「弁明の機会の付与」
    → 重い処分は「聴聞」

 

 

社労士法の特徴

  • 戒告・業務停止でも 聴聞+公開

  • 失格処分は 公開

  • 戒告業務停止は行政手続法上は、「弁明の機会の付与によって足りる程度の処分です
  • しかし社会保険労務士法25条の4第1項が手続の区分にかかわらず聴聞を行わなければならないと定めているため特則によって聴聞が義務づけられることになります
  • 失格処分行政手続法の規定により当然に聴聞の対象となります
  • 戒告とは公務員等の職務上の義務違反に対する懲戒処分の一つで本人の将来を戒める旨の申渡しをする処分をいいます
  • 登録後に欠格事由に該当した場合には登録が抹消されます
    欠格事由には失格処分を受けた者で3年を経過しないものが含まれますから失格処分を受けた日から3年を経過しない間は社会保険労務士となる資格を有しないことになります
    失格処分を受けた場合であっても社会保険労務士試験の合格が取り消されるわけではない
  • 失格処分を受けた場合法5条欠格事由に該当することになるため処分を受けた日から3年を経過しないときは資格を有することはできません

懲戒処分の効力は、当該処分が行われたときより発効し、当該処分を受けた社会保険労務士が、当該処分を不服として法令等により権利救済を求めていることのみによっては当該処分の効力は妨げられない。(法25条、行政不服審査法25条1項)

懲戒処分

  • 厚生労働大臣は、次の通り懲戒処分をすることができる。

 

行為の内容 戒告 業務停止 失格処分
1. 社会保険労務士が、故意に、真正の事実に反して申請書等の作成事務代理若しくは紛争解決手続代理業務を行ったとき、または不正行為の指示相談に応じるなどの行為をしたとき(法25条の2第1項)  

2. 社会保険労務士が、相当の注意を怠り1.に規定する行為をしたとき(法25条の2第2項)

  • 失格処分にはなることはありません
 
3. 社会保険労務士が、添付する書面等に虚偽の記載をしたとき、社会保険労務士法等及び労働社会保険諸法令の規定に違反したとき、または社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったとき(法25条の3)

厚生労働大臣は、懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、その理由を付記した書面により当該社会保険労務士に通知するとともに、官報をもって公告しなければならない。(法25条の5)

登録支援/有料職業紹介のご相談はこちら

 

お問い合わせはこちらから

芸術家×起業家

 

お     一般社団法人芸商橋
 

               BusinessArtBridge

 

サイト内検索

サイドメニュー