労働施策総合推進法

労働時間の短縮などの労働環境の整備、非正規雇用労働者(有期雇用労働者や派遣労働者)の待遇の改善、女性・高年齢者などの労働参加、育児や介護などと仕事の両立、中小企業における人材確保など労働制度及び働き方における課題に現在日本は直面しています。このような課題の解決を図るべく「労働施策総合推進法」は施行されています。

 

目 次

  1. 外国人を雇用する際の実務上の重要ポイント
  2. 外国人の適正な雇用管理
  3. 雇用労務責任者
  4. 外国人雇用状況の届出
  5. 再就職援助計画
    1. 特定技能における解雇した場合の次の就職へのサポート
  6. 大量離職届
  7. パワーハラスメント防止に関する国の責務

参照 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針 

外国人を雇用する際の

実務上の重要ポイント

 

外国人雇用で必ず確認すべき事項

  • 在留カード
  • 在留資格
  • 就労制限の有無
  • 在留期限
  • 資格外活動許可

 

これを怠ると、

  • 不法就労助長罪
  • 行政指導
  • 企業名公表
  • 在留資格申請への悪影響

につながる可能性があります。


 

外国人を雇用する会社には、以下の義務があります

 

 

法的義務

 

努力義務

 

特に「外国人雇用状況届出」は、外国人を雇う全事業主に課される重要な法的義務です。

外国人の適正な雇用管理とは?

 

外国人労働者は、日本の雇用ルールや労働制度に詳しくない場合があります。

そのため会社には、

  • 働きやすい環境を整える
  • 法律違反が起きないようにする
  • 不当な扱いをしない
  • 退職後の再就職支援も行う

といった「適正な雇用管理」を行う努力義務があります。

根拠は「労働施策総合推進法」です。


具体的に会社が求められること

 

① 外国人が能力を発揮できるよう配慮する

例えば、

  • 日本語や業務ルールを説明する
  • 労働条件を理解できるようにする
  • 社会保険に加入させる
  • 安全教育を行う
  • 差別的な扱いをしない

などです。

背景には、外国人を「安い労働力」として扱い、

  • 低賃金
  • 社会保険未加入
  • 長時間労働
  • 不法就労

などの問題が発生していた事情があります。

そのため国は、企業に対して適正な管理を求めています。


 

② 会社都合で辞めさせる場合は再就職支援に努める

 

会社の都合で解雇や雇止めをする場合、外国人が再就職を希望するなら、

  • 求人情報を紹介する
  • ハローワークを案内する
  • 再就職支援を行う

などの対応をする努力義務があります。

これは、日本人労働者と同様に、外国人労働者の生活保護や失業防止を目的としています。


 

雇用労務責任者とは?

 

外国人を常時10人以上雇用する会社は、

「外国人労働者の雇用管理責任者」

を選任する必要があります。

これを一般的に「雇用労務責任者」と呼びます。


 

誰を選任するの?

 

通常は、

  • 人事部長
  • 総務課長
  • 労務担当者

などが担当します。


 

何を管理するの?

 

例えば、

  • 在留資格の確認
  • 在留期限の管理
  • 労働条件の管理
  • 社会保険加入
  • ハラスメント防止
  • 不法就労防止

などです。

外国人雇用に関する社内責任者というイメージです。


 

 

外国人雇用状況の届出とは?

 

これは非常に重要です。

外国人を雇ったり、退職したりした場合、会社はハローワークへ届出をしなければなりません。

これは「義務」です。

努力義務ではありません。


 

いつ届出をするの?

 

 

① 雇ったとき

外国人を採用した場合。

 

② 辞めたとき

外国人が退職した場合。

どちらも届出が必要です。


 

どこに出すの?

 

会社所在地を管轄するハローワークです。


 

 

届出方法(重要)

 

ここは実務で非常に大切です。

 

雇用保険に入る外国人の場合

通常の正社員はこちらが多いです。

この場合は、

  • 雇用保険資格取得届
  • 雇用保険資格喪失届

を提出する際に、

  • 在留資格
  • 在留期間
  • 国籍など

を記載すれば、「外国人雇用状況届出」を兼ねます。

つまり別紙提出ではなく、雇用保険手続の中で行うイメージです。

 


 

雇用保険に入らない外国人の場合

例えば、

  • 週20時間未満
  • 短時間アルバイト

など。

この場合は、

「外国人雇用状況届出書」

を別途提出する必要があります。


提出期限

 

雇用保険加入者

 

雇入れ

翌月10日まで

 

離職

離職日の翌日から10日以内


 

雇用保険未加入者

雇入れ・離職ともに、

翌月末日まで


 

2025年改正のポイント

今回追加された重要点が、

「報酬活動許可者」

です。


報酬活動許可者とは?

通常、日本で働くには在留資格が必要です。

しかし特殊事情で、

  • 難民申請中
  • 仮放免中
  • 退去強制手続中

などの外国人に対して、一時的に就労許可が出ることがあります。

これが「報酬活動許可」です。


なぜ改正されたの?

これまでは管理が不十分で、

  • 不法就労
  • 搾取
  • ブラック労働

の温床になる問題がありました。

そのため2025年改正で、

「報酬活動許可者」も届出対象

になりました。

つまり会社は、

「特殊な立場の外国人を雇っている」

という情報も行政へ届け出る必要があります。


 

再就職援助計画

 

事業規模の縮小、事業の廃止、事業活動の縮小、事業転換・再編などにより、多数の労働者が離職を余儀なくされる場合、事業主には、対象となる労働者の再就職を援助するよう努める義務があります。(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」といいます。)第6条第2項)

また、一定の場合には、事業主は、労働者に対して行う再就職援助措置をまとめた「再就職援助計画」を作成し、ハローワークへ提出して認定を受けなければなりません。(労働施策総合推進法第24条)

 

再就職援助計画の作成が必要な場合

経済的事情により、一つの事業所において、常時雇用する労働者のうち、1か月以内に常時雇用する労働者30人以上の離職が見込まれる場合には、再就職援助計画の作成が必要です。

事業主は、最初の離職者が発生する日の1か月前までに、再就職援助計画を作成し、管轄のハローワークへ提出して認定を受けなければなりません。

一方、1か月以内の離職者が30人未満の場合であっても、事業主は任意で再就職援助計画を作成し、ハローワークの認定を受けることができます。

 

常時雇用する労働者

再就職援助計画の対象人数を判断する際の「常時雇用する労働者」とは、原則として、臨時に期間を定めて雇用される者、日々雇い入れられる者、季節的業務に雇用される者、試用期間中の者などを除く常用の労働者をいいます。

ただし、臨時雇用等であっても、

  • 継続して6か月以上雇用されている者
  • 継続して6か月以上雇用されることが予定されている者

については、常時雇用する労働者として取り扱われます。

なお、1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は、原則として常時雇用する労働者には含まれません。

 

「経済的事情」に該当する場合

再就職援助計画の作成が必要となる経済的事情には、主に次のようなものがあります。

 

事業の全部の廃止

会社または事業所の事業をすべて廃止する場合です。

 

事業規模の縮小

事業に使用している施設または設備の全部または一部を廃棄・譲渡するなど、事業の規模を縮小する場合です。

 

事業活動の縮小

事業の全部または一部を休止する場合です。

 

事業転換・事業再編

現在の事業の全部を廃止し、または相当部分を縮小したうえで、従来とは異なる商品、サービス、原材料、生産加工技術、販路、機能などを用いる事業を開始・拡充する場合です。

例えば、

  • 製品Aの生産を終了し、製品Bの生産を拡大する場合
  • 既存の事業所を廃止し、別の地域に新しい事業所を設置する場合
  • 拠点の統廃合や組織再編に伴って労働者が離職する場合

などが該当します。

会社全体の事業規模が縮小していない場合であっても、事業転換や事業再編によって労働者が離職を余儀なくされるときは、再就職援助計画の作成が必要となることがあります。

 

再就職援助計画の提出書類

ハローワークへ提出する再就職援助計画は、基本的に次の3つの書類で構成されます。

書類 内容
再就職援助計画(様式第1号) 再就職援助措置の内容などを記載する本文
別紙1 事業規模の縮小等に関する資料
別紙2 計画対象労働者に関する一覧

対象労働者の氏名については、希望により旧姓を括弧書きで併記することもできます。

 

再就職援助計画と大量離職届の関係

再就職援助計画と大量離職届は、どちらも労働施策総合推進法に基づく制度ですが、目的が異なります。

制度 根拠条文 目的
再就職援助計画 労働施策総合推進法第24条 事業主による再就職援助を具体化するため
大量離職届 労働施策総合推進法第27条 ハローワークが大量離職へ迅速に対応できるようにするため

つまり、

という役割分担になっています。

再就職援助計画の認定申請を行った事業主は、その日に大量離職届を提出したものとみなされます。

したがって、再就職援助計画を提出した場合には、原則として別途大量離職届を提出する必要はありません。

同じ事業縮小や事業所廃止に伴い、両方の手続が必要となる場合があります。

そのため、多数の労働者の離職が予定されている場合には、離職者数、離職予定日、離職理由、対象労働者の雇用形態などを早めに確認し、管轄のハローワークへ相談することが重要です

大量離職届

 

法的根拠

 

労働施策総合推進法第27条(大量雇用変動の届出)

事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、相当数の労働者が離職する場合には、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならない。(要旨)

この規定に基づき、厚生労働省令(労働施策総合推進法施行規則)では、

などの具体的な届出基準が定められています。


大量離職届の目的

大量離職届は、離職者本人を支援する制度ではありません。

大量の離職者が発生すると、

  • 地域の雇用情勢
  • 求人・求職のバランス
  • 失業給付
  • 職業紹介

などに大きな影響を及ぼします。

そのため、事業主に事前の届出を義務付けることで、ハローワークが

などの準備を行えるようにしています。

パワーハラスメント防止に関する国の責務

 

職場におけるパワーハラスメントを防止するため、国には広報活動や啓発活動を行う責務(努力規定)があります。

労働施策総合推進法第30条の3第1項では、国は優越的な言動(パワーハラスメント)に関する事業主や国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。この規定は努力義務(努力規定)です。


パワーハラスメントとは

職場におけるパワーハラスメントとは、次の3つの要件をすべて満たす言動をいいます(令和2年厚生労働省告示第5号)。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
  3. 労働者の就業環境が害されること

この3要件をすべて満たした場合に、パワーハラスメントに該当します。

根拠法令

  • 労働施策総合推進法第30条の2
  • 令和2年厚生労働省告示第5号(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)

パワーハラスメントの6類型

厚生労働省の指針では、パワーハラスメントの代表例として、次の6つの類型が示されています(令和2年厚生労働省告示第5号)。

類型 具体例
身体的な攻撃 暴行、傷害など
精神的な攻撃 脅迫、名誉毀損、侮辱、暴言など
人間関係からの切り離し 隔離、仲間外し、無視など
過大な要求 明らかに遂行不可能な業務や不要な業務の強制など
過小な要求 能力とかけ離れた簡単な仕事しか与えないことなど
個の侵害 私生活への過度な干渉など

※これらは代表例であり、個別の事案については、職場の状況や当事者間の関係などを総合的に考慮して判断されます。

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