徴収法
請負事業の一括・分離

  • 労働保険の保険関係は原則として個々の事業を単位としますが、事務手続の合理化を目的として、「保険関係の一括」が認められています。
  • 保険関係の一括には、
  1. 有期事業の一括
  2. 請負事業の一括
  3. 継続事業の一括があります。

 

誤解しやすいポイント

元請が事業主になるといっても、

労働契約上の使用者になるわけではない

ということです。

例えば

  • 元請会社A
  • 下請会社B
  • 孫請会社C

B社の従業員は、

  • 給料を払うのはB社
  • 指揮命令するのもB社 です。

A社はあくまで

労働保険徴収法上の事業主

になるだけです。


雇用保険は一括されない

非常に重要です。

請負事業の一括は

労災保険だけ です。

雇用保険は

  • A社
  • B社
  • C社

がそれぞれ独立して適用されます。

つまり、

項目 一括されるか
労災保険
雇用保険 ×

 

 

覚え方

まず原則

建設業の労災保険は元請に一括

例外

大規模な下請工事は分離可能

分離要件

  • 建設事業
  • 概算保険料160万円以上 または 請負金額1億8,000万円以上
  • 元請・下請の共同申請
  • 労働局長の認可

という流れで覚えると整理しやすいです。

特に

「労災保険は一括されるが、雇用保険は一括されない」

という点がポイントです。

 

目 次

  1. なぜ「請負事業の一括」があるのか
  2. 一括の要件
  3. 請負事業の一括の効果
  4. 下請負事業の分離の要件
  5. 分離の認可申請手続
  6. 下請負事業の分離の効果

なぜ「請負事業の一括」があるのか

建設工事では、

  • 元請会社A
  • 下請会社B
  • 孫請会社C

というように何層もの請負関係が存在します。

もし各会社ごとに労災保険料を計算・納付すると、

  • どの労働者がどの事業に属するのか
  • 労災発生時の責任関係
  • 保険料の計算

が非常に複雑になります。

そこで法律は、

建設業の請負工事については、原則として元請が全部まとめて労災保険の事業主になる

という制度を設けています。

これが請負事業の一括(法8条1項)です。

 

一括の要件

 

次の2つを満たせば、自動的に一括されます。

 

要件① 建設事業であること

対象は

  • 建設工事

のみです。

例えば

  • ビル建築
  • 道路工事
  • 内装工事

などです。

一方、

  • 雇用保険
  • 立木伐採事業

には適用されません。


要件② 数次の請負であること

つまり、

  • 元請→下請

または

  • 元請→下請→孫請

のような形態です。

単独で工事を行う場合には問題になりません。

 

 

請負事業の一括の効果

 

一括されるとどうなるのか

例えば、

  • 元請A社
  • 下請B社
  • 孫請C社

がいる場合

通常なら

  • A社の労働者
  • B社の労働者
  • C社の労働者

それぞれ別々に保険料計算をしそうです。

しかし請負事業の一括では、

A社だけが労災保険上の事業主になる

と扱われます。

つまり

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料
  • 確定保険料

などの手続はA社が行います。

下請負事業の分離の要件

 

ポイント

  • 建設事業に限られる。
  • 概算保険料160万円以上または請負金額1億8,000万円以上(消費税除く)が必要。
  • 元請負人と下請負人の共同申請が必要。
  • 保険関係成立日の翌日から10日以内に申請する。
  • 提出先は労働基準監督署長経由で都道府県労働局長
  • 認可後は下請負人が独立した事業主として労災保険の手続を行う。

 

下請負事業の分離とは

原則は元請が全部まとめます。

しかし、

あまりにも大規模な下請工事

まで元請が管理するのは大変です。

そこで

一定規模以上なら下請を独立させる

制度があります。

これが

下請負事業の分離(法8条2項)

です。


分離できる要件

次のすべてが必要です。

 

① 建設事業であること

請負事業の一括の対象事業であること


 

② 大規模工事であること

次のどちらかを満たす必要があります。

 

概算保険料

160万円以上

 または

 

請負金額

1億8,000万円以上(消費税除く)

つまり

大きい工事だから独立管理を認める

という考えです。


③ 元請と下請が共同申請すること

勝手に下請だけで申請はできません。

必ず

  • 元請
  • 下請

が共同で申請します。

そして

都道府県労働局長の認可

を受ける必要があります。

 

認可申請の手続

下請負事業の分離の認可を受けようとするときは、元請負人及び下請負人は、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、

「下請負人を事業主とする認可申請書」

共同で作成し、

 

所轄労働基準監督署長を経由して、所轄都道府県労働局長に提出しなければなりません(徴収法8条2項、則8条、則78条1項1号)。

 


分離されるとどうなるか

工事総額10億円

  • 元請A社
  • 下請B社(4億円分担当)

の場合

本来は全部A社が管理します。

しかしB社部分が大規模なので分離認可を受けると、

  • A社→6億円部分
  • B社→4億円部分

を別々の事業として扱います。 その結果、

B社が

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料
  • 確定保険料

を自ら処理します。

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