労働契約法

労働契約法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。(労働契約法1条)

 

目 次

  1. 労働契約の内容の理解の促進 (4条)
  2. 労働契約の成立 (6条)
  3. 就業規則による労働契約の内容の変更(例外) 就業規則による不利益変更(10条)
  4. 無期労働契約への転換(無期転換申込権の行使による転換) 無期転換ルール(18条)

労働契約の内容の理解の促進(法4条)

 

まず労働契約法4条は、

労働条件を単に伝えるだけでなく、労働者に理解してもらうこと

を求めています。


労基法15条との違い

ここが最重要です。

 

労働基準法15条

→ 労働条件の明示義務

つまり

「伝える義務」

です。


例えば

  • 賃金
  • 労働時間
  • 休日

を書面で示す。


労働契約法4条

→ 理解促進義務

つまり

「理解させる努力義務」

です。


例えば

  • なぜこの給与体系なのか
  • 人事制度はどうなっているのか
  • 転勤の可能性はあるのか

などを説明することが想定されています。


労契法4条の方が広い

労基法15条

↓

契約締結時のみ


労契法4条

↓

契約締結前

↓

契約締結時

↓

契約変更時

↓

契約継続中

まで含む


つまり

労契法4条の方が適用範囲が広い

ということです。


書面による確認(法4条2項)

労働者と使用者は

労働契約の内容をできる限り書面で確認する

とされています。


ポイントは

「できる限り」

です。


つまり努力義務です。


書面がなければ

契約無効

にはなりません。


例えば

口頭で

月給30万円で働いてください

↓

承諾

↓

契約成立

です。

 

参照 → 労基法15条(明示)と労契法4条(理解促進)の違い

労働契約の成立(法6条)

 

労働契約は

労働する

↓

賃金を支払う

↓

双方が合意する

ことで成立します。


これを

合意の原則

といいます。


成立要件

 

労働者

労務提供


使用者

賃金支払


双方

合意


この3つです。


書面は必要か

不要です。

❌ 書面がなければ成立しない


正しくは

⭕ 合意だけで成立

です。


採用内定(大日本印刷事件)

判例は

採用内定の法的性質は一律に決められない

としています。


なぜか

企業ごとに

  • 内定通知
  • 誓約書
  • 卒業条件

などが異なるからです。


したがって

個別事情ごとに判断します。


配置転換と労務提供(片山組事件)

重要判例です。


例えば

事務職

↓

腰痛で事務作業不可

↓

しかし他部署で勤務可能

の場合


会社が命じた仕事だけできないからといって

直ちに

「働けない」

とはいえません。


判例は

他の現実的に配置可能な仕事ができるなら労務提供はある

としました。

就業規則による労働契約の内容の変更(例外)(法10条)

 

原則は

労働条件は合意で変更する

です。


したがって

会社が勝手に

  • 給料カット
  • 退職金減額

はできません。


しかし例外があります。


就業規則変更による変更

一定条件を満たせば

労働者の同意がなくても

変更可能です。


条件は2つ

 

① 周知

変更後の就業規則を労働者に知らせる


② 合理性

変更内容が合理的


この両方が必要です。


合理性の判断

第四銀行事件

で有名です。


総合考慮します。

 

① 不利益の程度


② 変更の必要性


③ 内容の相当性


④ 代償措置


⑤ 労組との交渉経緯


など


立証責任

合理性を立証するのは

使用者

です。

無期労働契約への転換(無期転換申込権の行使による転換)(法18条)

 

非常に重要です。


発生要件

同一使用者との間で

有期契約を更新

↓

通算契約期間

5年超

↓

無期転換申込権発生


発生と転換は別

ここが試験で狙われます。


5年超

↓

❌自動転換


5年超

↓

申込権発生

↓

労働者が申し込む

↓

⭕転換


です。


使用者の承諾は不要

労働者が申し込むと

法律上

使用者が承諾したものとみなす

となります。


これを

承諾擬制

といいます。


いつ無期になるか

申込みした瞬間ではありません。


現在の有期契約終了

↓

翌日

↓

無期契約開始

です。


労働条件

原則

契約期間以外はそのまま

です。


例えば

有期契約

  • 月給25万円
  • フレックス

なら

無期転換後も

  • 月給25万円
  • フレックス

です。


ただし

就業規則などで

「別段の定め」

があれば変更可能です。


雇止め回避目的の対応

会社が

5年直前で

契約更新しない

など

無期転換逃れを行うことは

制度趣旨に反し望ましくない

とされています。

 

 

無期転換ルールと期間制限ルール

 

区分 内容
無期転換ルール(労働契約法) ・同一の使用者との間で、有期労働契約が通算 5年を超えて更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換される。
・労働者が無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立する(使用者は拒否できない)。
期間制限ルール(労働者派遣法) ・同一の派遣先の事業所において、派遣可能期間(原則、受入れ開始から3年)を超えて派遣就業することはできない。

ポイント整理

  • 無期転換ルール
    → 「5年超」+「労働者の申込み」
    → 使用者は拒否不可

  • 派遣の期間制限
    → 派遣先ごとに「3年」が上限(原則)

「同一の使用者」とは

無期転換ルールは

同一の使用者との間で締結された有期契約

を通算します。


法人単位で判断

例えば

株式会社A

  • 東京支店
  • 大阪支店
  • 福岡支店

で働いた場合

支店が変わっても

使用者は同じ

↓

通算されます。


例

東京支店3年

↓

大阪支店3年

↓

合計6年

↓

無期転換申込権発生


親会社・子会社は別


親会社

株式会社A

↓

子会社

株式会社B


同じグループでも

法人格が別

↓

別の使用者

↓

通算しない


例

A社で4年

↓

B社で4年

↓

❌


無期転換申込権は発生しません。


「2以上の有期契約」が必要

ここも重要です。

条文は

2以上の有期労働契約

としています。


つまり

更新が必要です。


例

5年半の有期契約

↓

更新なし

↓

契約1本のみ

↓

無期転換申込権なし

 


なぜか

法律は

反復更新される有期契約

を問題視しているからです。


いつ申込権が発生するか

ポイントは

通算契約期間が5年を超えることになる契約

です。


例

1年契約を更新

1年目

↓

2年目

↓

3年目

↓

4年目

↓

5年目

↓

6年目


6年目契約の初日に

無期転換申込権発生

です。


いつ行使できるか

発生したらいつでもよいわけではありません。


行使期間

当該契約の初日から満了日まで

です。


例えば

6年目契約

2025/4/1 ~ 2026/3/31

なら


申込可能期間

2025/4/1 ~ 2026/3/31

です。


行使しなかったらどうなるか


申込みしないまま

契約満了

↓

さらに更新

↓

申込権消滅?

↓


再び発生します。


つまり

7年目契約

↓

8年目契約

でも

申込み可能です。


契約期間3年の場合

これもよく問われます。


契約期間

3年

↓

更新

↓

6年


この場合

更新後の契約初日から

申込み可能

です。


つまり

契約期間中ずっと行使できます。


放棄はできるか

会社が

無期転換申込権を使わないこと

を契約条件にするケースがあります。


例えば

「更新する代わりに無期転換申込権は放棄してください」


これは

❌ 無効

です。


理由

労働者が雇止めを恐れて

強制される可能性があるからです。


判例・通達は

公序良俗違反

としています。


申込みすると何が起こるか

ここが最重要です。


労働者

↓

申込み

↓

使用者承諾

❌不要

↓

法律上承諾したものとみなす

(承諾擬制)


です。


いつ無期契約になるか

申込日ではありません。


有期契約終了

↓

翌日

↓

無期契約開始


です。


例

有期契約満了

2026年3月31日

↓

無期契約開始

2026年4月1日


会社が契約終了させたい場合

申込み後は

既に無期契約が成立しています。


そのため会社は

「更新しない」

では済みません。


必要なのは

解雇

です。


解雇の有効性

通常の無期社員と同じです。


労働契約法16条

客観的合理的理由

+

社会通念上相当

が必要です。


これがないと

解雇無効

になります。


解雇予告も必要

有期契約満了ではなく

解雇になるため

労基法の

  • 30日前予告
  • 解雇予告手当

も問題になります。


 

法18条(無期転換ルール)の内容

特に覚えるべきポイントは次の7つです。

 

論点 内容
同一使用者 法人は「法人単位」、個人事業主は「当該個人事業主単位」で判断
親子会社 通算しない
発生要件 契約が一度も更新されていない場合は、無期転換申込権は取得しない
通算契約期間が5年超(発生時期) 通算契約期間が5年を超える有期契約を締結し、その契約の開始時点で申込権が発生(通算5年経過時点ではない)
行使期間 当該契約の初日~満了日
放棄 公序良俗違反で無効
効果 承諾擬制
転換後 契約終了させるには解雇が必要
 

補足

  • 「公序良俗」とは
    → 公の秩序、善良の風俗、社会の一般的道徳観念

  • 「公序に反する」とは
    → 法律・政令・条例など公の決定に反すること


重要ポイント

  • 「5年経過時」ではなく
    → 5年を超える契約の開始時に発生

  • 事前放棄特約は無効

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