労働契約法

労働契約法は、労働者及び使用者自主的な交渉の下で、労働契約合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件決定又は変更円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。(労働契約法1条)

 

目 次

  1. 労働契約の内容の理解の促進
  2. 労働契約の成立
  3. 就業規則による労働契約の内容の変更(例外)
  4. 無期労働契約への転換(無期転換申込権の行使による転換)

労働契約の内容の理解の促進

 

使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。(法4条1項)

  • 契約内容に関する使用者の説明の責務を明らかにしています単なる明示ではなく、「理解の促進が義務づけられています

法4条1項は、使用者が提示した労働条件について説明などをする場面や、労働契約が締結または変更されて継続している間の各場面が広く含まれるものである。これは、労働基準法15条1項により労働条件の明示が義務づけられている労働契約の締結時より広い」ものである。
(平成24年8月10日基発0810第2号)

  1. ハローワークにおける労働条件の明示を規定しているのは、「職業安定法です
  2. 社員として労働契約の締結の際の労働条件の明示を規定しているのは、「労働基準法です
    労働基準法15条により書面による労働条件の明示が義務づけられているのは労働契約を締結するときだけですが
  3. 労働契約法4条は労働契約を締結するとき以外にも適用されます労働契約締結時に限られず労働条件の変更時も含め労働契約存続中の労働過程全般をカバーしています)。すなわち労働基準法よりも広い範囲を想定しています
  • 法4条1項の規定には労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明などをする場面含まれます」。

 

参照 → 労基法15条(明示)と労契法4条(理解促進)の違い

 

労働者及び使用者は、労働契約の内容期間の定めのある労働契約に関する事項を含む)について、できる限り書面により確認するものとする。(法4条2項)

本規定の制定後の労働基準法施行規則の改正により、「期間の定めのある労働契約の更新の有無及び更新の判断基準労働基準則5条1項1号の2)」労働契約の締結の際に使用者が書面により明示しなければならない労働条件です
(労働基準則5条3項)。(平成24年8月10日基発0810第2号、令和5年10月12日基発1012第2号)

書面による労働契約の内容の確認事項には、職務や勤務地の限定含まれる
(「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書(平成26年7月)

  • 書面による労働契約の内容の確認については期間の定めのある労働契約に関する事項含みます
  • できる限りという表現を使っているのは、「書面なしを理由に契約無効となっては取引に安定性を欠くためです

 

労働契約の成立

 

労働契約

  1. 労働者使用者使用されて労働し、
  2. 使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、
  3. 労働者及び使用者合意することによって成立する。(法6条)

 

当事者の合意により契約が成立することは、契約の一般原則であり、労働契約についても当てはまるものであって、法6条は、この労働契約の成立についての基本原則である「合意の原則を確認したものである。(平成24年8月10日基発0810第2号)

法4条における労働契約の内容をできる限り書面により確認すると混同しないようにしてください労働契約の内容の理解促進にはできる限り書面で行うことが原則ですが書面でなければ労働契約が成立しないわけではありません契約内容について書面を交付することまでは法6条では求められていません。(平成24年8月10日基発0810第2号)

 

労働契約の成立を認める要件として

  1. 当該企業に使用されて労務を提供し
  2. その対価として当該企業から報酬賃金の支払を受けていること及び
  3. これらの点について両当事者の明示ないし黙示の意思表示の合致があることを立証することが求められます
    (法6条、平成24年8月10日基発0810第2号、民法623条)

 

いわゆる採用内定の制度の実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきであり、採用内定の法的性質を判断するに当たっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。
(昭和54年7月20日最高裁判所第二小法廷大日本印刷事件)

 

判例(昭和54年7月20日最高裁判所第二小法廷大日本印刷事件)
 企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがって、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。

 

労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易などに照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。(平成10年4月9日最高裁判所第一小法廷片山組事件)

  • 就労できない労働者が、会社側から命じられる業務の内容によって、債務の本旨に従った履行の提供となるかどうかが決定されることは、不合理だからです。

 

判例(平成10年4月9日最高裁判所第一小法廷片山組事件)
 労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力経験地位当該企業の規模業種当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。
 そのように解さないと、同一の企業における同様の労働契約を締結した労働者の提供し得る労務の範囲に同様の身体的原因による制約が生じた場合に、その能力、経験、地位等にかかわりなく、現に就業を命じられている業務によって、労務の提供が債務の本旨に従ったものになるか否か、また、その結果、賃金請求権を取得するか否かが左右されることになり、不合理である。

 

就業規則による労働契約の内容の変更(例外)

 

使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないが、使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度労働条件変更の必要性変更後の就業規則内容の相当性労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして「合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、一定の場合を除き、当該変更後の就業規則に定めるところによる。(法10条)

法10条は就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となる場合に適用されます。(平成24年8月10日基発0810第2号)

就業規則に定められている事項であっても、「労働条件でないものについては適用されません。(平成24年8月10日基発0810第2号)

法10条の「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれる。
(平成24年8月10日基発0810第2号)

法10条の「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体など労働者の意思を代表するものが広く含まれる。(平成24年8月10日基発0810第2号)

就業規則の変更が法第10条本文の「合理的なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側負う
(平成24年8月10日基発0810第2号)

就業規則の不利益変更における合理性の有無は、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度使用者側の変更の必要性の内容程度変更後の就業規則の内容自体の相当性代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況労働組合等との交渉の経緯他の労働組合または他の従業員の対応同種事項に関する我が国社会における一般的状況などを総合考慮して判断すべきである。

(平成9年2月28日最高裁判所第二小法廷第四銀行事件)

 

判例(平成9年2月28日最高裁判所第二小法廷第四銀行事件)
 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない
 そして、右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。
 右の合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況労働組合等との交渉の経緯他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。

 

無期労働契約への転換(無期転換申込権の行使による転換)

 

同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間通算した期間通算契約期間)が5年を超える有期契約労働者が、使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に無期労働契約の締結申込みをしたときは、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされ、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約成立する。
(法18条1項、平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 5年を超えた場合労働者に無期転換申込権が発生しその行使により使用者の承諾擬制による無期労働契約が成立します

 

無期転換ルールの適用を免れる意図をもって無期転換申込権が発生する前の雇止めや契約期間中の解雇などを行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図るという法18条の趣旨に照らして望ましいものではありません
(平成24年8月10日基発0810第2号、令和5年10月12日基発1012第2号)

使用者は労働者が無期転換の申込みをしたことその他無期転換の申込みに関する行為を行ったことを理由として無期転換申込権の行使を抑制し、無期転換申込権を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる解雇その他不利益な取扱いをすることは許されずそうした解雇や不利益取扱いはその内容に応じて労働契約法や民法の一般条項判例法理などによる司法的救済の対象となります
(平成24年8月10日基発0810第2号、令和5年10月12日基発1012第2号)

無期労働契約への転換に当たり、「別段の定めをすることにより待遇の引上げと併せて相応な職務の範囲や責任の程度などの変更を行うことは一般的に司法的救済の対象となるものとは解されません。(平成24年8月10日基発0810第2号、令和5年10月12日基発1012第2号)

労働協約、就業規則または個々の労働契約による「別段の定め」の成立が認められない場合には、無期転換後の労働条件は、契約期間を除き従前の有期労働契約の労働条件と同一の労働条件となります。(平成24年8月10日基発0810第2号、令和5年10月12日基発1012第2号)

有期契約労働者については雇止めの不があることによって年次有給休暇の取得など労働者としての正当な権利行使が抑制されるなどの問題があることから有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には有期契約労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約無期労働契に転換させる仕組無期転換ルールを設けられました。(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 有期労働契約は正社員より処遇が低く雇用調整しやすい非正規労働者を恒常的な労働需要のために雇用する手段として利用されてきました
    これは労働者側からみると合理的な理由がないのに不利な労働条件や不安定な雇用を強いられていることになります
    そこで生まれたのがこの転換申込権の行使による転換です
  • 有期労働契約の通算契約期間が5年を超えて更新された場合において、「労働者無期労働契約の締結の申込みをしたときは、「使用者申込みを承諾したものとみなされ無期労働契約に転換することになります
  • なぜ自動的に転換させないかというと労働者の中には正社員になりたくない人や有期労働契約とすることにより正社員よりも有利な給与いわゆる有期プレミアム」)を享受している人も存在するためです

 

 

無期転換ルールと期間制限ルール

 

区分 内容
無期転換ルール(労働契約法) ・同一の使用者との間で、有期労働契約が通算 5年を超えて更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換される。
・労働者が無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立する(使用者は拒否できない)。
期間制限ルール(労働者派遣法) ・同一の派遣先の事業所において、派遣可能期間(原則、受入れ開始から3年)を超えて派遣就業することはできない。

ポイント整理

  • 無期転換ルール
    → 「5年超」+「労働者の申込み」
    → 使用者は拒否不可

  • 派遣の期間制限
    → 派遣先ごとに「3年」が上限(原則)

同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 労働に従事する事業場が異なっていても契約の相手方たる事業主に変更がなければ、「同一の事業主である一方各有期労働契約の相手方が親子会社関係にある場合や同一企業グループに属する場合であっても法人格が異なれば、「同一の事業主とは認められません

 

無期転換申込権は、「2以上の有期労働契約」の通算契約期間が5年を超える場合、すなわち更新が1回以上行われかつ通算契約期間が5年を超えている場合に生じるものである。したがって、労働基準法14条1項の規定により一定の事業の完了に必要な期間を定めるものとして締結が認められている契約期間が5年を超える有期労働契約が締結されている場合、一度も更新がないときは、法18条1項の要件を満たすことにはならない。(平成24年8月10日基発0810第2号)

無期転換申込権は、当該契約期間中に通算契約期間が「5年を超えることとなる有期労働契約の契約期間の初日から当該有期労働契約の契約期間が満了する日までの間行使することができる。(平成24年8月10日基発0810第2号)

無期転換申込権が生じている有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に無期転換申込権を行使しなかった場合であっても、再度有期労働契約が更新された場合は、新たに無期転換申込権が発生、有期契約労働者は、更新後の有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期転換申込権を行使することが可能である。(平成24年8月10日基発0810第2号)

  • 5年を超えて更新した労働者がその契約期間中に申込みをしなかったときであってもその後の更新以降で申込みをすることができます
  • 契約期間が3年の場合1回の更新で5年を超えることになりますがこの場合の申込みは契約期間の初日から末日までの間にすることになります

 

無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とするなど有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し無効と解される。(平成24年8月10日基発0810第2号)

有期契約労働者無期転換申込権を行使することにより、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約がその行使の時点で成立していることから、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日をもって当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする使用者は、無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約を解約解雇する必要があり、当該解雇が法16条に規定する客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利濫用に該当するものとして無効となる。(平成24年8月10日基発0810第2号)

この場合、解雇であるため、解雇予告などの規定が適用されます。(平成24年8月10日基発0810第2号)

 

法18条(無期転換ルール)の内容

項目 内容
同一の使用者 法人は「法人単位」、個人事業主は「当該個人事業主単位」で判断
2以上の有期労働契約 契約が一度も更新されていない場合は、無期転換申込権は取得しない
通算契約期間が5年超(発生時期) 通算契約期間が5年を超える有期契約を締結し、その契約の開始時点で申込権が発生(通算5年経過時点ではない)
無期転換申込権の放棄 申込権発生前にあらかじめ放棄させることは公序良俗違反で無効

補足

  • 「公序良俗」とは
    → 公の秩序、善良の風俗、社会の一般的道徳観念

  • 「公序に反する」とは
    → 法律・政令・条例など公の決定に反すること


重要ポイント

  • 「5年経過時」ではなく
    5年を超える契約の開始時に発生

  • 事前放棄特約は無効

 

 

現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日前に使用者が当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする場合は、これに加えて、当該有期労働契約の契約期間中の解雇であり法17条1項(有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ解雇することができない)の適用がある。(平成24年8月10日基発0810第2号)

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