厚生年金保険法
支給要件、失権、年金額・改定

厚生年金保険の被保険者(会社員・公務員など)が65歳から受給できる「本来の老齢基礎年金」の支給要件は、65歳に達した時点で、保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間の合計期間が10年以上(120ヶ月以上)ある場合に支給されます。 

ここでは「いつ老齢厚生年金をもらえるか」「いくらもらえるか」「働き続けた場合にいつ年金額が増えるか」という3つがテーマです。

 

 

押さえるべきポイント

  1. 本来の老齢厚生年金は65歳から受給し、厚生年金加入期間は1か月以上で足ります。
  2. 老齢基礎年金の受給資格(10年以上)は、本来・特別支給のどちらにも共通の要件です。
  3. 報酬比例部分は、「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間の月数」で計算されます。
  4. 退職時改定は、退職後に厚生年金保険料の納付実績を年金額へ反映する制度です。
  5. 70歳時改定は「資格喪失日」起算、退職時改定は「退職日」起算という違いは、最も問われやすいポイントです。

 

目 次

  1. 本来の老齢厚生年金の受給資格要件
    1. 特別支給の老齢厚生年金と本来の老齢厚生年金の比較
  2. 老齢厚生年金(報酬比例部分)の額
  3. 被保険者期間の月数(第3種被保険者(坑内員・船員)であった期間の特例)
  4. 退職時改定
  5. 70歳時改定とは

本来の老齢厚生年金の受給資格要件

 

65歳から受給する通常の老齢厚生年金です。

受給するためには、次の3つすべてを満たす必要があります。

要件 内容
① 年齢 65歳以上
② 厚生年金加入期間 1か月以上
③ 保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間 10年以上( = 老齢基礎年金を受けられる資格があること)

ポイント① 厚生年金は「1か月」でよい

意外ですが、

会社員として厚生年金に加入した期間は1か月でも構いません。

例えば

  • 厚生年金加入5年 → ○
  • 厚生年金加入1か月 → ○

どちらでも、

国民年金などを合わせて受給資格期間が10年以上あれば受給できます。


ポイント② 「10年要件」とは

「保険料納付済期間」
「保険料免除期間」
「合算対象期間」

これらを合計して10年以上必要です。 つまり、

老齢基礎年金を受けられる資格があること

が条件になります。

 

 

 

特別支給の老齢厚生年金と本来の老齢厚生年金の比較

項目 特別支給の老齢厚生年金 本来の老齢厚生年金
年齢 60歳以上~65歳未満
※生年月日により経過措置あり
65歳以上
厚生年金保険の加入期間 1年以上 「1か月以上」
老齢基礎年金の受給資格期間 10年以上 10年以上
失権 ・死亡したとき
・65歳に達したとき
・死亡したとき

補足ポイント

  • 特別支給の老齢厚生年金は、65歳前の経過措置として設けられた制度で、65歳到達で失権します。

 

60歳~64歳
↓
特別支給

65歳
↓
本来の老齢厚生年金へ切替

老齢厚生年金(報酬比例部分)の額

 

厚生年金は

給料が高い人ほど年金も高くなる

という仕組みです。

そこで用いるのが

報酬比例部分 です。

 

 

計算式

平均標準報酬額  × 5.481/1000  × 加入月数

 

老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、

  1. 「平均標準報酬額」
  2. 「給付乗率(5.481/1,000)及び
  3. 「被保険者期間の月数」の3つのかけ算から算出されます。

 

 

① 平均標準報酬額

簡単に言えば

現役時代の平均給与 です。

平成15年4月以降は

  • 標準報酬月額(毎月の給料)
  • 標準賞与額(ボーナス)

の両方が計算対象になります。


② 給付乗率

現在は

5.481/1000

です。


③ 被保険者期間

厚生年金加入月数です。

加入期間が長いほど年金も増えます。

ここで重要なのが定額部分の額と異なり

報酬比例部分には加入期間の上限がない

という点です。

例えば40年勤務でも45年勤務でも、

働いた期間すべてが反映されます。

被保険者期間の月数(第3種被保険者(坑内員・船員)であった期間の特例)

 

昔の

  • 坑内員
  • 船員

は勤務が非常に過酷でした。 そこで

加入期間を

  • 3/4倍
  • 5/6倍

する特例があります。 つまり、

実際より長く働いたものとして計算してもらえる

という制度です。

退職時改定

 

退職時改定とは

これは非常に重要です。

 

なぜ改定するの?

65歳を過ぎても会社で働くと、

厚生年金保険料を払い続けます。 その分、

将来の老齢厚生年金は増えるはずです。

その増えた分を年金額へ反映するのが

退職時改定 です。


改定される時期

原則

退職  →   1か月経過  → 年金額改定


となります。

例①

7月11日退職

退職 7/11  →  1か月経過 8/11 → 8月分から改定

 

例②

7月31日退職

 

退職 7/31 → 1か月経過  8/31 →  8月分から改定

ここはポイントです。

月末退職でも翌月(8月)から改定になります。


なぜ「退職日」から数えるの?

ここが最重要ポイントです。 通常、

厚生年金資格喪失日は

退職日の翌日 です。

例えば

7/31退職  →  8/1資格喪失

 
になります。 もし

「資格喪失日から1か月」

で計算すると

8/1  →  9/1  →  9月改定


になってしまいます。

しかし法律は

退職日から1か月

で計算するとしているため、

7/31→8/31 → 8月改定


となり、改定が1か月早く行われます。

これが条文のかっこ書き(法43条3項)の趣旨です。

70歳時改定とは

 

老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働いている人は、70歳に達すると厚生年金の被保険者資格を喪失します。

このとき、それまで厚生年金に加入していた期間を年金額に反映するのが

70歳時改定 です。

ここで重要なのが、

いつから年金額が改定されるのか

という点です。


70歳になる日は「誕生日の前日」

厚生年金では、70歳に達した日=70歳の誕生日の前日として考えます。

例えば、

昭和25年(1950年)7月1日生まれ

の人の場合、

  • 70歳の誕生日 → 2020年7月1日
  • 70歳に達した日 → 2020年6月30日
  • 厚生年金の被保険者資格を喪失 → 2020年6月30日

となります。

つまり、

7月1日生まれだから7月1日に資格を喪失するわけではありません。

誕生日の前日の6月30日に70歳に達し、この日に厚生年金の被保険者資格を喪失します。


では、年金額はいつから変わる?

70歳時改定について、厚生年金保険法43条3項では、

資格を喪失した日から起算して1か月を経過した日の属する月

から年金額を改定すると定めています。

今回の例では、

6月30日 70歳到達・資格喪失
↓
7月30日 1か月経過
↓
7月分から年金額を改定 となります。

したがって、昭和25年7月1日生まれの人の場合、70歳になるまでに厚生年金へ加入していた期間が年金額の計算に反映され、

2020年7月分から老齢厚生年金の額が改定されます。


「8月分から」ではないことに注意

ここは特に間違えやすいポイントです。

「7月1日が70歳の誕生日だから、そこから1か月後の8月から改定」

と考えてしまいそうですが、これは誤りです。

起算日は誕生日ではなく、70歳に達した日=誕生日の前日です。

したがって、

7月1日(誕生日)→ 8月1日 → 8月改定 ではなく、

6月30日(70歳到達・資格喪失)→ 7月30日 → 7月改定

となります。


退職時改定との違い

70歳時改定と通常の退職時改定は、どちらも「1か月を経過した日の属する月から改定」という点では同じです。

しかし、何の日から1か月を数えるのかが違います。

ケース 1か月の起算日
70歳到達による資格喪失 70歳に達した日(誕生日の前日)
退職による資格喪失 退職日

この「起算日の違い」を押さえることが重要です。


根拠条文

 

厚生年金保険法43条3項

被保険者である老齢厚生年金の受給権者が被保険者資格を喪失し、その後被保険者とならないまま1か月を経過した場合には、資格を喪失した月前までの被保険者期間を年金額の計算に反映し、所定の起算日から1か月を経過した日の属する月から年金額を改定することとされています。

 

厚生年金保険法14条

厚生年金保険の被保険者は、原則として資格喪失事由に該当した日の翌日に資格を喪失します。

ただし、

70歳に達したとき

は例外として、その日に被保険者資格を喪失します。

そのため、7月1日生まれの場合には、誕生日の前日である6月30日に70歳に達し、同日に被保険者資格を喪失することになります。


ポイント

7月1日生まれの場合

6月30日
70歳到達
= 被保険者資格喪失
↓
7月30日
資格喪失日から1か月経過
↓
7月分から年金額改定

「誕生日」ではなく、「誕生日の前日=70歳到達日」から考えるのがポイントです。

在職時改定・70歳時改定・退職時改定の違い

項目 在職時改定 退職時改定(70歳時改定) 退職時改定
対象 在職中 70歳到達により被保険者資格を喪失した場合 70歳未満で退職し被保険者資格を喪失した場合
資格喪失原因 ― 70歳到達 退職
起算日 毎年9月1日(基準日) 資格喪失日 退職日
改定の要件 基準日前3か月間の報酬を基に算定 起算日から1か月を経過 起算日から1か月を経過
改定時期 基準日の属する年の翌月(10月) 1か月経過した日の属する月 1か月経過した日の属する月
共通点 年1回の定時改定 起算日から1か月経過後に改定 起算日から1か月経過後に改定
最大の違い 基準日(9月1日)で判定 起算日が「70歳到達による資格喪失日」 起算日が「退職日」

 

ポイント

  • 在職時改定は、毎年9月1日を基準に行われる定時改定です。
  • 70歳時改定と退職時改定は、いずれも起算日から1か月経過後に改定される点は共通しています。
  • 両者の違いは、何を起算日とするかです。
    • 70歳時改定:70歳到達による資格喪失日
    • 退職時改定:退職日(資格喪失日)

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