介護保険法

  •  介護保険制度とは、介護が必要な状態にある高齢者とその家族を、社会全体で支えることを目的に施行された社会保険制度です。
  •  介護保険が施行される以前は、高齢者に対するサービスは医療保険の一環である「老人保健制度」と「老人福祉制度」に分かれていました。これらの制度には運用方法に違いがあり、また、「老人福祉制度」は利用したいサービスを選択することができず、施されるままに受けるしかないという制約もありました。そこでこれらの制度を一本化し、「介護」「医療」「福祉」のサービスを利用者本位の制度にするため、「介護保険制度」が生まれました。

 

第1号被保険者

  • 65歳以上
  • 医療保険加入不要
  • 原因問わず給付

第2号被保険者

  • 40歳以上65歳未満
  • 医療保険加入者
  • 特定疾病のみ給付

要介護認定

  • 市町村へ申請
  • 効力は申請日に遡る

居宅介護サービス費

  • 市町村が支給
  • 原則90%給付

指定居宅サービス事業者

  • 指定権者=都道府県知事

不服申立て

  • 介護保険審査会(都道府県)
  • 3か月以内
  • 審査請求前置主義

特に

「介護認定審査会=市町村」と
「介護保険審査会=都道府県」

の違いは確実に区別して覚えてください。

 
目 次
  1. 被保険者の種類
  2. 被保険者の申請
  3. 指定居宅サービス事業者
  4. 不服申立て

被保険者の種類

 

介護保険の被保険者には

  • 第1号被保険者
  • 第2号被保険者

の2種類があります。(法9条)

 

第1号被保険者

 

要件

65歳以上

これだけです。

医療保険加入者である必要はありません。


保険給付

原因を問いません。

つまり、

  • 老化
  • 病気
  • ケガ

など原因に関係なく、

要介護・要支援状態になれば給付対象です。


保険料

原則

特別徴収

↓

年金から天引き


第2号被保険者

 

要件

40歳以上65歳未満 かつ

医療保険加入者


つまり

  • 健康保険
  • 国民健康保険
  • 共済組合

などの加入者です。


保険給付

第1号と違い制限があります。

16種類の特定疾病

が原因で要介護状態になった場合のみ給付されます。


保険料

介護保険料単独では徴収されません。

健康保険料等に上乗せして徴収されます。


頻出比較

区分 第1号 第2号
年齢 65歳以上 40歳以上65歳未満
医療保険加入要件 不要 必要
給付対象

原因問わない

① 要介護者
② 要支援者

特定疾病により要介護・要支援状態になった者
保険料 特別徴収(年金天引き)
※普通徴収もあり
医療保険者が医療保険料に上乗せして徴収

生活保護との関係

ここはよく出ます。


第1号被保険者

65歳以上なら、

生活保護を受けても

介護保険の資格は失いません。


なぜか

第1号には

医療保険加入者

という要件がないからです。


第2号被保険者

医療保険加入者が要件

↓

生活保護で医療保険資格を失う

↓

第2号被保険者資格も失う


ポイント整理

  • 第1号=65歳以上

  • 第2号=40~65歳+医療保険加入者

  • 第2号被保険者がサービスを利用できるのは、厚生労働省が定める16種類の特定疾病によって要介護状態・要支援状態の原因である身体上または精神上の障害が生じた場合に限られます。​

  • 第1号被保険者には、「医療保険加入者」という要件はないため、生活保護法による保護を受ける世帯(その保護を停止されている世帯を除く)に属する者となって、国民健康保険法の被保険者資格を喪失した(医療保険加入者でなくなった)場合であっても、第1号被保険者の資格は喪失しません。
    • 生活保護法による保護を受けている世帯に属する者であっても、第1号被保険者になることはできます。

ここでいう「医療保険加入者」とは

 

「医療保険」とは、

健康保険・国民健康保険・共済組合・船員保険などの公的医療保険全体

を指すと覚えておけば大丈夫です。

 

具体的には次のような人です。

 

① 健康保険法の被保険者・被扶養者

  • 協会けんぽの被保険者
  • 健康保険組合の被保険者
  • その被扶養者

 

② 国民健康保険の被保険者

  • 自営業者
  • フリーランス
  • 農業従事者など

 

③ 共済組合の組合員・被扶養者

  • 国家公務員共済
  • 地方公務員共済
  • 私学共済

 

④ 船員保険の被保険者・被扶養者


第2号被保険者との関係

介護保険の第2号被保険者は

40歳以上65歳未満 + 医療保険加入者

つまり、

  • 45歳の会社員(健康保険加入)
    → 第2号被保険者
  • 50歳の公務員(共済組合加入)
    → 第2号被保険者
  • 60歳の自営業者(国民健康保険加入)
    → 第2号被保険者

になります。


逆に医療保険加入者でない人は?

例えば、

  • 生活保護受給者で国民健康保険を喪失した人
  • 医療保険の適用を受けていない人

は、第2号被保険者にはなりません。


第1号被保険者との違い

第1号被保険者(65歳以上)は

医療保険加入者であること

が要件ではありません。

そのため、

65歳以上で生活保護を受給し、医療保険資格を失っていても、

介護保険の第1号被保険者の資格はそのまま維持されます。

被保険者の申請

 

要介護認定の申請

介護サービスを受けるには

まず 要介護認定

が必要です。


誰に申請するか

市町村


提出書類

  • 申請書
  • 被保険者証

代行申請

本人が申請できない場合があります。

そのため 次の者が代行可能です。

  • 指定居宅介護支援事業者
  • 地域包括支援センター
  • 介護保険施設

など


社労士法との関係

通常、 報酬を得て社会保険関係の申請代理をするのは社労士の独占業務です。

しかし、 介護保険法27条で特別に認められているため、

これらの事業者は代行できます。


要介護認定の効力

重要です。


要介護認定は

申請日に遡って効力を生じる(法27条8項)


例えば

4月1日申請

↓

4月20日認定

↓

効力は4月1日

 


 

指定居宅サービス事業者

 

 

居宅介護サービス費は、居宅要介護被保険者が、指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けた場合に支給されます。

 

代表的な居宅サービスには、

  • 訪問介護

  • 訪問看護

  • 訪問リハビリテーション

  • 通所介護(デイサービス)

  • 通所リハビリテーション(デイケア)

  • 短期入所生活介護

などがあります。

居宅介護サービス費は市町村が支給します。

原則として費用の**90%**が介護保険から支給され、本人負担は10%です。

※一定以上の所得がある場合は、2割または3割負担となります。


誰が事業者を「指定」するのか

ここは、

保険給付をする者 と

事業者を指定する者

を分けて覚えることが重要です。

居宅介護サービス費を支給するのは市町村ですが、

指定居宅サービス事業者を指定するのは、原則として「都道府県知事」です。

「市町村が保険給付をするから、事業者の指定も市町村長」と考えないように注意してください。


① 指定居宅サービス事業者

指定居宅サービス事業者の指定は、居宅サービス事業を行う者の申請により、

  • 居宅サービスの種類ごと

  • 事業所ごと

に行われます。

そして、指定を行うのは、

都道府県知事

 

 

ポイント

指定居宅サービス

→ 都道府県知事

 

❌ 市町村長
⭕ 都道府県知事(介護保険法41条1項・70条1項)


② 指定介護予防サービス事業者

要支援者に対して介護予防サービスを提供する指定介護予防サービス事業者についても、基本的な仕組みは同じです。

指定は、介護予防サービス事業を行う者の申請により、

  • 介護予防サービスの種類ごと

  • 事業所ごと

に行われます。

指定を行うのは、

都道府県知事

 

ポイント

指定介護予防サービス

→ 都道府県知事(介護保険法53条1項・115条の2第1項)


ここからが重要

「介護予防サービス」と「介護予防支援」は別物

名前が非常に似ていますが、

指定介護予防サービス事業者 と

指定介護予防支援事業者

では、指定する行政庁が異なります。


③ 指定介護予防支援事業者

介護予防支援とは、要支援者について、

介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)を作成するなどの支援

を行うものです。

これは「介護予防サービスそのもの」とは異なります。

指定介護予防支援事業者の指定を行うのは、

市町村長(特別区の区長を含む)

 

誰が申請できる?

現行法では、

  • 地域包括支援センターの設置者

  • 指定居宅介護支援事業者

が申請できます。

そして、

介護予防支援事業を行う事業所ごと

に指定されます。(介護保険法58条1項・115条の22第1項)


令和6年4月から制度が変更

以前は、指定介護予防支援は主として地域包括支援センターが担っていました。

しかし、令和6年4月1日からは、

指定居宅介護支援事業者も、市町村長の指定を受けて、直接、指定介護予防支援を行うことができる

ようになりました。

そのため、

「指定介護予防支援事業者になれるのは地域包括支援センターの設置者だけ」

と覚えるのは現在では誤りです。


④ 指定居宅介護支援事業者

さらに混同しやすいのが、指定居宅介護支援事業者です。

「居宅サービス」ではなく、

居宅介護支援=要介護者のケアプラン作成等

を行う事業者です。

指定は、

市町村長

が行います。

指定は、居宅介護支援事業を行う者の申請により、

事業所ごと

に行われます。(介護保険法46条1項・79条1項)


4つを比較

区分 主な内容 指定権者
指定居宅サービス事業者 訪問介護・訪問看護・デイサービス等 都道府県知事
指定介護予防サービス事業者 要支援者向けの介護予防サービス 都道府県知事
指定居宅介護支援事業者 要介護者のケアプラン作成等 市町村長
指定介護予防支援事業者 要支援者の介護予防ケアプラン作成等 市町村長

覚え方

 

サービスそのもの

居宅サービス
→ 都道府県知事

介護予防サービス
→ 都道府県知事

ケアプランなどの「支援」

居宅介護支援
→ 市町村長

介護予防支援
→ 市町村長

つまり、

「サービス」=都道府県知事
「支援」=市町村長

と整理すると覚えやすくなります。


指定介護予防支援と住所地特例

指定介護予防支援事業者の指定は、市町村長が行います。

その指定の効力は、原則として、その市町村が行う介護保険の被保険者に対する介護予防サービス計画費等の支給について生じます。

ただし、住所地特例については調整があり、

  • 当該市町村が行う介護保険の住所地特例適用居宅要支援被保険者は除く

  • 一方、その市町村内の住所地特例対象施設に入所等している他市町村の住所地特例適用居宅要支援被保険者は含む

という取扱いになります。

ここは条文上かなり細かいため、

指定介護予防支援は「市町村単位」で指定の効力が及ぶ

という基本をまず押さえておくと理解しやすいです。


超重要ポイント

  • 指定居宅サービス事業者 → 都道府県知事

  • 指定介護予防サービス事業者 → 都道府県知事

  • 指定居宅介護支援事業者 → 市町村長

  • 指定介護予防支援事業者 → 市町村長

  • 指定は原則として事業所ごと

  • 居宅サービス・介護予防サービスはさらにサービスの種類ごと

  • 令和6年4月以降、指定居宅介護支援事業者も指定介護予防支援事業者の指定を受けることができる

 

一言で覚える

「サービス」は都道府県、
「支援(ケアプラン)」は市町村。

不服申立て

 

不服申立て

超頻出です。


介護認定に不服

↓

介護保険審査会

へ審査請求


介護保険審査会

設置主体

↓

都道府県


間違えやすいもの

介護認定審査会

↓

市町村設置


比較

名称 設置主体
介護認定審査会 市町村
介護保険審査会 都道府県

審査請求期間

処分を知った日の翌日から

3か月以内


文書でも 口頭でも

可能です。


訴訟との関係

介護保険法は

審査請求前置主義


つまり いきなり裁判はできません。


まず

介護保険審査会へ審査請求

↓

裁決

↓

その後に訴訟


 

参照 ⇨ 審査機関と設置主体

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