危険物・有害物規制

労働安全衛生法では、化学物質による健康障害を防止するため、特に有害性の高い物質について、製造・輸入・使用などを禁止したり、製造に許可を必要としたりする規制を設けています。また、新規化学物質を製造・輸入する場合には、原則として、事前の有害性調査と届出が必要です。

「製造等の禁止」「製造の許可」「有害性の調査・届出」は、それぞれ対象や手続きが異なる制度です。 どの物質について、どの行為が規制されているのかを区別して理解することが重要です。〔労働安全衛生法第55条・第56条・第57条の4〕

※以下、労働安全衛生法を「法」、同法施行令を「令」、労働安全衛生規則を「則」と表記します。内容は2026年9月時点のものです。

 

目 次

  1. 製造等禁止物質
  2. 製造許可物質
  3. 新規化学物質の有害性調査・届出
  4. 厚生労働大臣の指示による有害性調査
  5. 各制度の違い

製造等禁止物質

 

製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則として禁止されます

労働者に重度の健康障害を生じさせる物質のうち、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、または使用してはなりません。〔法第55条〕

規制の対象は「製造」だけではありません。販売などによる譲渡や無償での提供、事業場での使用も含まれます。

 

対象となる物質

製造等が禁止される物質は、令第16条第1項に定められています。

番号 対象物質
1 黄りんマッチ
2 ベンジジンおよびその塩
3 4-アミノジフェニルおよびその塩
4 石綿。ただし、法令で定める石綿分析用試料等を除きます。
5 4-ニトロジフェニルおよびその塩
6 ビス(クロロメチル)エーテル
7 ベータ-ナフチルアミンおよびその塩
8 ベンゼンを含有するゴムのりで、ベンゼンの容量が、そのゴムのりの溶剤〔希釈剤を含む〕の5%を超えるもの

さらに、上表の2・3・5~7の物質を重量の1%を超えて含有する製剤その他の物、または4の石綿を重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物も、製造等禁止の対象となります。〔令第16条第1項第9号〕

 

 

試験研究のための例外

製造等禁止物質であっても、試験研究のために製造・輸入・使用する場合には、次の両方の要件を満たすことで、例外的に認められます。

  1. 製造・輸入・使用について、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けること。
  2. 厚生労働大臣が定める基準に従って製造し、または使用すること。

試験研究を目的としていれば、許可なく取り扱ってよいわけではありません。〔法第55条ただし書、令第16条第2項〕

また、この特例は、原則として、試験研究を行う者が自ら使用するために製造・輸入することを想定しています。一般向けの販売や提供を認める許可ではありません。 申請・相談の窓口は、所轄の労働基準監督署です。

製造許可物質

 

 

製造には、あらかじめ厚生労働大臣の許可が必要です

 

労働者に重度の健康障害を生じさせるおそれのある物質のうち、政令で定めるものを製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。〔法第56条第1項〕

この規定による許可の対象となる行為は、「製造」です。法第55条の製造等禁止物質に関する規制とは、対象物質も、規制される行為も異なります。

対象は「第一類物質」と「石綿分析用試料等」です

 

製造許可の対象となるのは、令別表第3第1号に掲げる第一類物質および石綿分析用試料等です。〔令第17条〕

 

第一類物質

 

番号 対象物質
1 ジクロルベンジジンおよびその塩
2 アルファ-ナフチルアミンおよびその塩
3 塩素化ビフェニル〔別名PCB〕
4 オルト-トリジンおよびその塩
5 ジアニシジンおよびその塩
6 ベリリウムおよびその化合物
7 ベンゾトリクロリド

これらを含有する製剤その他の物についても、1~6の物質を重量の1%を超えて含有するもの、または7のベンゾトリクロリドを重量の0.5%を超えて含有するものが対象です。ただし、合金については、ベリリウムを重量の3%を超えて含有するものに限られます。〔令別表第3第1号〕

特に、「ベンジジン」は製造等禁止物質、「ジクロルベンジジン」は製造許可物質です。また、「ベータ-ナフチルアミン」は製造等禁止物質、「アルファ-ナフチルアミン」は製造許可物質であり、名称の取り違えに注意が必要です。

なお、上記は労働安全衛生法上の区分です。例えばPCBには、他の法令による製造・輸入等の規制もあります。この表に製造許可物質として掲載されていることだけをもって、許可を取れば製造できると判断することはできません。

 

石綿分析用試料等

 

石綿は原則として製造等が禁止されていますが、分析や調査に必要な知識・技能の習得に用いるものなど、法令で定める石綿分析用試料等は、製造等禁止の対象から除かれています。

具体的には、石綿の分析に用いる試料、石綿の使用状況の調査に関する教育に用いるもの、それらの原料・材料として使用するもののうち、法令上の要件を満たすものが該当します。これらを製造する場合には、厚生労働大臣の許可が必要です。

また、石綿分析用試料等の輸入・使用にも所定の届出等が必要です。「製造等禁止の対象外」であることは、「規制なく取り扱える」ことを意味しません。

 

許可取得後も、設備・作業方法の基準を守る必要があります

 

厚生労働大臣は、製造設備や作業方法などが所定の基準に適合していると認める場合でなければ、製造を許可できません。

また、許可を受けた者には、製造設備を基準に適合する状態に維持し、基準に適合する作業方法で製造する義務があります。許可を取得して終わりではなく、製造を続ける間も基準を守る必要があります。〔法第56条第2項~第4項〕

新規化学物質の有害性調査・届出

 

 

「新規化学物質」とは

 

ここでいう新規化学物質とは、労働安全衛生法上の既存化学物質や、届出後に名称が公表された化学物質などに該当しない化学物質をいいます。

「自社で初めて使用する物質」や「新発売の製品」という意味ではありません。 法令上、既存化学物質として扱われるかどうかによって判断します。〔法第57条の4第1項〕

 

 

製造・輸入する前に、有害性を調べて届け出ます

 

新規化学物質を製造し、または輸入しようとする事業者は、原則として、あらかじめ厚生労働大臣が定める基準に従って有害性を調査し、物質の名称、調査結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません。〔法第57条の4第1項〕

有害性調査では、変異原性試験、これと同等以上のがん原性に関する知見を得られる試験、またはがん原性試験のいずれかを、所定の基準を満たす試験施設等で実施します。〔則第34条の3〕

なお、通常の新規化学物質の届出については、国が届出を受理する前に製造・輸入を開始することはできません。 「先に製造・輸入し、届出後に出荷する」という取扱いも認められません。

 

 

調査結果に応じた健康障害防止措置も必要です

 

有害性調査を行った事業者は、その結果に基づいて、労働者の健康障害を防止するために必要な措置を速やかに講じなければなりません。調査結果を届け出るだけでは、義務を果たしたことにはなりません。〔法第57条の4第2項〕

厚生労働大臣も、調査結果について学識経験者の意見を聴き、必要に応じて、施設・設備の整備や保護具の備付けなどを事業者に勧告することができます。〔同条第4項〕

この制度の背景には、六価クロムや塩化ビニルなどによる重篤な職業性疾病が社会問題となったことがあります。新しい化学物質が職場に導入される前に有害性を把握し、健康障害を未然に防止するために設けられた制度です。

 

 

有害性調査・届出の例外

法令で定める要件を満たす場合には、有害性調査・届出が免除されることがあります。主な例は次のとおりです。

区分 主な要件
労働者がさらされるおそれがない場合 製造・取扱いの方法などから、労働者がその物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けること。
所定の有害性がない場合 既に得られている知見等に基づき、法令で定める有害性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けること。
試験研究のための製造・輸入 法令・通達上の「試験研究」に該当すること。
一般消費者向け製品としての輸入 主として一般消費者の生活の用に供される製品として輸入され、厚生労働省令で定める場合に該当すること。
少量新規化学物質 一つの事業場における1年間の製造量・輸入量が100kg以下である旨の厚生労働大臣の確認を受け、確認された範囲で製造・輸入すること。製造と輸入の両方を行う場合は合計量で判断します。

根拠は、法第57条の4第1項ただし書および令第18条の4です。「少量だから手続きは不要」「自社で安全と判断したから調査は不要」という制度ではありません。

また、試験研究についても、単に「研究用」と称するだけで免除されるわけではなく、実験室的な規模、従事者の範囲、取扱場所などに関する基準を確認する必要があります。

 

 

2026年7月1日から、電子申請が原則義務化されています

 

2026年7月1日から、新規化学物質の名称・有害性調査結果の届出や、少量新規化学物質の確認申請などは、電子申請が原則義務化されています。

対象には、労働者が新規化学物質にさらされるおそれがない旨の確認申請、その変更届、有害性がない旨の確認申請も含まれます。なお、電子申請によることが著しく困難な場合には、書面による手続きが認められる規定があります。〔則第34条の4等〕

厚生労働大臣の指示による有害性調査

 

 

新規化学物質以外も対象となります

 

厚生労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を生じさせるおそれのある化学物質について、健康障害の防止のために必要と認めるときは、その物質を製造・輸入・使用している事業者等に対し、有害性調査を行い、その結果を報告するよう指示することができます。〔法第57条の5第1項〕

この制度は、新規化学物質に限られません。既に製造・使用されている化学物質についても、必要に応じて詳しい調査を求める制度です。

 

 

指示に先立ち、学識経験者の意見を聴きます

 

厚生労働大臣は、調査・報告を指示しようとするときは、あらかじめ学識経験者の意見を聴かなければなりません。 また、指示に当たっては、調査に関する技術水準、調査機関の整備状況、事業者の調査能力などを総合的に考慮します。〔法第57条の5第2項・第3項〕

指示に基づいて調査を行った事業者は、その結果に応じて、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を速やかに講じなければなりません。〔同条第4項〕

製造許可物質

 

 

製造には、あらかじめ厚生労働大臣の許可が必要です

 

労働者に重度の健康障害を生じさせるおそれのある物質のうち、政令で定めるものを製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。〔法第56条第1項〕

この規定による許可の対象となる行為は、「製造」です。法第55条の製造等禁止物質に関する規制とは、対象物質も、規制される行為も異なります。

対象は「第一類物質」と「石綿分析用試料等」です

 

製造許可の対象となるのは、令別表第3第1号に掲げる第一類物質および石綿分析用試料等です。〔令第17条〕

 

第一類物質

 

番号 対象物質
1 ジクロルベンジジンおよびその塩
2 アルファ-ナフチルアミンおよびその塩
3 塩素化ビフェニル〔別名PCB〕
4 オルト-トリジンおよびその塩
5 ジアニシジンおよびその塩
6 ベリリウムおよびその化合物
7 ベンゾトリクロリド

これらを含有する製剤その他の物についても、1~6の物質を重量の1%を超えて含有するもの、または7のベンゾトリクロリドを重量の0.5%を超えて含有するものが対象です。ただし、合金については、ベリリウムを重量の3%を超えて含有するものに限られます。〔令別表第3第1号〕

特に、「ベンジジン」は製造等禁止物質、「ジクロルベンジジン」は製造許可物質です。また、「ベータ-ナフチルアミン」は製造等禁止物質、「アルファ-ナフチルアミン」は製造許可物質であり、名称の取り違えに注意が必要です。

なお、上記は労働安全衛生法上の区分です。例えばPCBには、他の法令による製造・輸入等の規制もあります。この表に製造許可物質として掲載されていることだけをもって、許可を取れば製造できると判断することはできません。

 

 

石綿分析用試料等

 

石綿は原則として製造等が禁止されていますが、分析や調査に必要な知識・技能の習得に用いるものなど、法令で定める石綿分析用試料等は、製造等禁止の対象から除かれています。

具体的には、石綿の分析に用いる試料、石綿の使用状況の調査に関する教育に用いるもの、それらの原料・材料として使用するもののうち、法令上の要件を満たすものが該当します。これらを製造する場合には、厚生労働大臣の許可が必要です。

また、石綿分析用試料等の輸入・使用にも所定の届出等が必要です。「製造等禁止の対象外」であることは、「規制なく取り扱える」ことを意味しません。

 

 

許可取得後も、設備・作業方法の基準を守る必要があります

 

厚生労働大臣は、製造設備や作業方法などが所定の基準に適合していると認める場合でなければ、製造を許可できません。

また、許可を受けた者には、製造設備を基準に適合する状態に維持し、基準に適合する作業方法で製造する義務があります。許可を取得して終わりではなく、製造を続ける間も基準を守る必要があります。〔法第56条第2項~第4項〕

各制度の違い

 

 

 

制度 主な対象 規制・手続きの内容
製造等の禁止〔法第55条〕 ベンジジン、石綿などの製造等禁止物質 製造・輸入・譲渡・提供・使用を原則禁止。試験研究の特例には、都道府県労働局長の事前許可等が必要です。
製造の許可〔法第56条〕 第一類物質、石綿分析用試料等 製造する場合に、厚生労働大臣の事前許可が必要です。
新規化学物質の有害性調査〔法第57条の4〕 法令上の新規化学物質 製造・輸入する事業者が、原則として事前に有害性を調査し、厚生労働大臣に届け出ます。
大臣の指示による有害性調査〔法第57条の5〕 がん等の重度の健康障害を生じさせるおそれのある化学物質 厚生労働大臣の指示に基づいて、事業者が調査・報告を行います。新規化学物質に限りません。

製造等禁止物質の試験研究に関する「許可」と、新規化学物質の試験研究に関する「調査・届出の免除」は、別の制度です。対象物質や目的が似ていても、同じ手続きとして扱うことはできません。

なお、製造等禁止物質や製造許可物質に該当しない化学物質でも、ラベル表示、SDS〔安全データシート〕による情報提供、リスクアセスメントなどの規制が適用される場合があります。 製造・輸入・使用の可否だけでなく、その後の取扱いに必要な措置も確認することが重要です。〔法第57条~第57条の3〕

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