労働保険料の還付・充当

事業主は、賃金総額の見込額を基に概算保険料を納付します。

その後、実際に支払った賃金総額を基に確定保険料を計算します。このため、概算保険料を多く納めていた場合には、次のような超過額が生じます。

納付済みの概算保険料-確定保険料=超過額

この超過額は、

  • 事業主が請求して返してもらう「還付」
  • 次年度の概算保険料や未納の徴収金に振り替える「充当」

のいずれかによって処理されます。


全体の流れ

例えば、事業主が概算保険料として100万円を納付していたものの、年度終了後に計算した確定保険料が80万円だったとします。

100万円-80万円=20万円

この20万円が超過額です。

事業主が還付を請求すれば、原則として20万円が返還されます。

一方、還付を請求しない場合には、次年度の概算保険料などに充当されます。

 

 

還付と充当の違い

項目 還付 充当
処理方法 超過額を返金する 他の納付額に振り替える
事業主の請求 原則として必要 不要
使用書類 労働保険料・一般拠出金還付請求書 通常は行政側で処理
結果の通知 還付金が支払われる 充当した旨が通知される
主な場面 事業廃止、還付希望、充当後にも残額がある場合 次年度も事業を継続する場合

全体を簡単にまとめると

概算保険料を多く納めていた場合には、確定保険料との差額が超過額となります。

超過額について事業主が還付請求をすれば、原則として返還されます。

一方、還付請求がない場合には、次年度の概算保険料や未納の労働保険料、一般拠出金などに充当されます。

したがって、覚え方は次のとおりです。

請求して返してもらうのが「還付」
請求せず次の納付に回すのが「充当」

なお、還付請求権は2年で時効になる点にも注意が必要です。

 

目 次

  1. 還付
    1. 確定保険料の還付
  2. 充当
確定保険料、口座振替納付 
  1. 有期事業の申告期限
  2. 労働保険料の還付・充当 本ページ

還付

還付とは、事業主が納付した労働保険料の額が確定保険料の額を超えた場合に、その超過額を事業主に返還することです。

還付を受けるには、原則として事業主による請求が必要です。

超過額が生じただけでは、自動的に事業主の口座へ振り込まれるわけではありません。

事業主は、「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を提出して還付を請求します。厚生労働省の年度更新資料でも、概算保険料等への充当後に還付額が残る場合や、事業廃止によって還付額が生じる場合には、還付請求書を提出するものとされています。


還付請求をする時期

還付請求は、通常、次のいずれかの時期に行います。

 

事業主が確定保険料を申告する場合

確定保険料申告書を提出する際に、還付請求書を提出します。

 

確定保険料が認定決定された場合

事業主が期限内に申告をしなかった場合や、申告額が正しくない場合には、政府が確定保険料の額を決定することがあります。

この認定決定を受けた場合は、

認定決定の通知を受けた日の翌日から起算して10日以内

に還付請求書を提出する取扱いです。

ここでいう10日は、認定決定を受けた場合の提出手続上の期限です。


還付を受ける権利の時効

労働保険料の還付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効により消滅します。

したがって、超過額が生じていても、長期間請求せず2年を経過すると、還付を受けられなくなることがあります。厚生労働省の還付請求書の記載案内でも、還付請求権は行使できる時から2年で時効となるため、早めに提出するよう案内されています。

 

10日と2年の違い

期間 意味
10日以内 認定決定を受けた場合の還付請求書の提出時期
2年 還付を受ける権利そのものの消滅時効

この2つは意味が異なるため、分けて押さえる必要があります。


還付請求書の提出先

還付に関する事務は、徴収に関する事務とは担当する会計機関が異なります。

事務の種類 担当機関
労働保険料等の徴収 都道府県労働局歳入徴収官
徴収金の収納 都道府県労働局収入官吏・労働基準監督署収入官吏
還付金の支出 官署支出官・都道府県労働局資金前渡官吏

もっとも、事業主が実際に手続をする際は、通常、所轄の都道府県労働局または労働基準監督署を窓口として提出します。

厚生労働省の現行様式では、「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を労働局または最寄りの労働基準監督署で入手でき、電子申請を利用することも案内されています。


経由する行政機関

一般保険料や特別加入保険料の種類によって、還付請求書を経由する行政機関が異なります。

主に労災保険に関する次の保険料については、原則として、所轄労働局または労働基準監督署を通じて還付請求を行う

  1. 労働保険事務組合に事務処理を委託していない一元適用事業の一般保険料
  2. 労災保険関係が成立している二元適用事業の一般保険料
  3. 二元適用事業に係る第1種特別加入保険料
  4. 第2種特別加入保険料
  5. 第3種特別加入保険料

還付事務を官署支出官が行うことなどは、徴収法施行規則に定められています。


確定保険料の還付

確定保険料の還付が問題となる代表的な場面は、次のとおりです。

 

年度更新によって超過額が生じた場合

概算保険料として納付した額が、実際の確定保険料を上回った場合です。

 

事業を廃止した場合

事業を廃止すると、次年度の概算保険料へ充当する必要がなくなることがあります。

そのため、廃止時の確定精算によって超過額が生じた場合には、還付請求を行うことになります。

 

認定決定額が納付済額を下回った場合

政府が確定保険料を認定決定した結果、すでに納付していた額の方が多かった場合にも、超過額が生じます。

 

参照 ⇨ 概算保険料の申告先

充当

 

充当とは、超過額を事業主へ現金で返還する代わりに、別の労働保険料等の納付に振り替えることです。

事業主から還付請求が行われない場合には、所轄都道府県労働局歳入徴収官が、超過額を次の徴収金などに充当します。

  • 次の保険年度の概算保険料
  • 未納の労働保険料
  • 未納の一般拠出金
  • その他の労働保険関係の徴収金

充当に事業主の請求は必要か

充当については、事業主からの請求や承認を必要としません。 つまり、

還付には原則として事業主の請求が必要ですが、充当は行政側の処理によって行うことができます。

ただし、充当を行った場合には、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、その旨を事業主に通知しなければなりません。


充当の具体例

前年度の超過額が20万円あり、次年度の概算保険料が70万円だったとします。

20万円を次年度の概算保険料に充当すると、

70万円-20万円=50万円

となり、事業主が実際に納付する額は50万円です。


未納額がある場合

例えば、

  • 超過額:20万円
  • 未納の労働保険料:8万円
  • 次年度の概算保険料:70万円

である場合、まず未納額8万円に充当し、残額12万円を次年度の概算保険料に充当することがあります。

その場合、次年度の納付額は、

70万円-12万円=58万円

となります。


一般拠出金への充当

 

一般拠出金とは

一般拠出金とは、石綿による健康被害を受けた人に対する救済給付の費用に充てるため、労災保険の保険関係が成立している事業の事業主から毎年度徴収されるものです。

一般拠出金は、厳密には労働保険料そのものではありません

しかし、労働保険料と併せて申告・納付する仕組みとなっており、労働保険料の超過額を未納の一般拠出金に充当することができます。

年度更新の申告書に一般拠出金の記載欄が設けられているのも、このためです。

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