労災保険法
社会復帰促進等事業

  • 労災保険法では、業務災害や通勤災害に対して保険給付を行うことに加えて、労働者または遺族の福祉の増進を図るために社会復帰促進等事業を行っています。
  • 社会復帰促進等事業には、社会復帰促進事業、被災労働者等援護事業、安全衛生確保等事業の3つがあります。

 

目 次

  1. 社会復帰促進等事業の種類
  2. 事業の実施
  3. アフターケア
  4. 労災就学援護費
  5. 安全衛生確保等事業

社会復帰促進等事業の種類

 

  • 社会復帰促進等事業は、次の通りである。(法29条1項)
社会復帰促進等事業
  1.  社会復帰促進事業
  2.  被災労働者等援護事業
  3.  安全衛生確保等事業

 

  • 社会復帰促進等事業についても、複数業務要因災害に係る規定が追加されています。
  • 社会復帰促進等事業は業務災害のみならず、「通勤災害を被った労働者も対象としています
  • 社会復帰促進等事業は特別加入者一般の労働者同様に対象としています

 

社会復帰促進等事業の主な内容は、次の通りである。

 

社会復帰促進等事業 内容
社会復帰促進事業
(法29条1項1号、則24条、労働者健康安全機構法12条1項)
  • 療養に関する施設労災病院など及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営(法29条1項1号)
  •  義肢など補装具費の支給(則25条)
  •  外科後処置(則26条)
  •  労災はり・きゅう施術特別援護措置(則27条)
  •  アフターケア(則28条)
  •  アフターケア通院費の支給(則29条)
  •  振動障害者社会復帰援護金の支給(則30条)
  •  頭頸部外傷症候群などに対する職能回復援護
    (則31条)
被災労働者等援護事業
(法29条1項2号、法50条、則32条、特別支給金則1条)
  •  特別支給金の支給(特別支給金則1項)
  •  労災就学援護費の支給(則33条)
  •  労災就労保育援護費の支給(則34条)
  •  休業補償特別援護金の支給(則35条)
  •  長期家族介護者援護金の支給(則36条)

安全衛生確保等事業

(法29条1項3号、則38条)

  •  労働災害防止対策の実施(法29条1項3号)
  •  健康診断に関する施設の設置及び運営
    (法29条1項3号)
  •  未払賃金の立替払事業(法29条1項3号)
  •  働き方改革推進支援助成金の支給(則39条)
  •  受動喫煙防止対策助成金の支給(則40条)

独立行政法人労働者健康安全機構は、特別支給金に係る業務については行いません政府により実施されます)。

 

事業の実施

  • 社会復帰促進等事業を行うのは政府であるが、社会復帰促進等事業の一部は、独立行政法人労働者健康安全機構が行う。(法29条3項)

 

実施機構 内容
独立行政法人労働者健康安全機構           
  •  療養施設労災病院及び医療リハビリテーションセンターなどの設置及び運営
  •  労働者の健康に関する業務を行う者に対する研修、情報の提供、相談その他の援助を行うための施設の設置及び運営
  •  事業場における災害の予防に係る事項並びに労働者の健康の保持増進に係る事項及び職業性疾病の病因、診断、予防その他の職業性疾病に係る事項に関する総合的な調査及び研究
  •  化学物質の有害性の調査
  •  未払賃金の立替払事業
    • (賃金支払確保法)

独立行政法人労働者健康安全機構特別支給金に係る業務については行いません政府により実施されます)。

 

主な独立行政法人と実施業務

関連法令 主な独立行政法人 実施業務
労働安全衛生法 労働者健康安全機構 ・労働災害の原因の調査
労災保険法 労働者健康安全機構 ・社会復帰促進等事業の一部
雇用保険法 高齢・障害・求職者雇用支援機構 ・雇用安定事業の一部
・能力開発事業の一部
障害者雇用促進法 高齢・障害・求職者雇用支援機構 ・障害者雇用調整金の支給
・障害者雇用納付金の徴収
職業能力開発促進法 高齢・障害・求職者雇用支援機構 ・職業能力開発施設等の設置及び運営
中小企業退職金共済法 勤労者退職金共済機構 ・中小企業退職金共済制度の運用

アフターケア

 

アフターケアの目的は、業務災害、複数業務要因災害または通勤災害により、せき髄損傷などの傷病にり患した者にあっては、症状固定後においても後遺症状に動揺をきたす場合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることにかんがみ、必要に応じてアフターケアとして予防その他の保健上の措置を講じ、当該労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営ませるものとする。(令和6年3月25日基発0325第3号、アフターケア実施要領)

  • 一定の傷病についてはその治ゆ後においても精神または身体の後遺症状に動揺を残す場合があります
    しかし治ゆ後の措置療養補償等給付の対象とはならないためこれを社会復帰促進等事業アフターケアとして行うこととなっています

 

アフターケアの対象となる傷病は、アフターケア実施要領によって定められており、対象傷病は、せき髄損傷など20の傷病とされている。
(令和6年3月25日基発0325第3号、アフターケア実施要領)

  • 例えば、サリン中毒に係るアフターケアは、特に異常な状況下において、強力な殺傷作用を有するサリンに中毒した人は、症状固定後においても、縮瞳、視覚障害、末梢神経障害、筋障害、中枢神経障害、心的外傷後ストレス障害などの後遺症状について増悪の予防その他の医学的措置を必要とすることから、アフターケアが行われます。

アフターケアの対象となる傷病は、①せき髄損傷、②頭頸部外傷症候群など(頭頸部外傷症候群、頸肩腕症候群、腰痛)、③尿路系障害、④慢性肝炎、⑤白内障などの眼疾患、⑥振動障害、⑦大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折、⑧人工関節・人工骨頭置換、⑨慢性化膿性骨髄炎、⑩虚血性心疾患など、⑪尿路系腫瘍、⑫脳の器質性障害、⑬外傷による末梢神経損傷、⑭熱傷、⑮サリン中毒、⑯精神障害、⑰循環器障害、⑱呼吸機能障害、⑲消化器障害、⑳炭鉱災害による一酸化炭素中毒である。
(令和6年3月25日基発0325第3号、アフターケア実施要領)

 

アフターケア手帳の新規交付を受けようとする者は、交付申請書を、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(所轄署長)の所在地を管轄する都道府県労働局長所轄局長に提出しなければならない。(令和6年3月25日基発0325第3号・アフターケア実施要領)

アフターケアを受けようとする者は、その都度実施医療機関などにアフターケア手帳を提出するものとし、アフターケアの実施に関する記録の記入を受けるものとする。(令和6年3月25日基発0325第3号・アフターケア実施要領)

アフターケア手帳紛失若しくは汚損しまたは手帳のアフターケア記録欄に余白がなくなったときは、アフターケア手帳更新再交付申請書により、所轄局長あてに手帳の再交付を申請し、所轄局長は、当該申請に基づき、アフターケア手帳を再交付する。(令和6年3月25日基発0325第3号・アフターケア実施要領)

実施医療機関などは、アフターケアに要した費用(アフターケア委託費)を請求するときは、算定した毎月分の費用の額を「アフターケア委託費請求書」または「アフターケア委託費請求書(薬局用)」に記載の上、当該実施医療機関などの所在地を管轄する都道府県労働局長に提出する。
(令和6年3月25日基発0325第3号・アフターケア実施要領)

これまで健康管理手帳という名称でしたが労働安全衛生法上の健康管理手帳と紛らわしいとの現場の声からアフターケア手帳に名称が変更になりました。(令和5年3月31日基発0331第47号)

  • アフターケアの対象となる傷病は、「アフターケア実施要領によって定められており、「厚生労働省令で定められているわけではありません

労災就学援護費

 

  • 業務災害による死亡労働者の遺族や重度障害者の子弟のなかには、進学をあきらめ学業を中途で放棄せざるを得ないものが少なくないことから、被災労働者の遺族の就学の援護するための労災就学援護費の支給制度が設けられている。

労災就学援護費は、他の育英制度による奨学金と異なり、その支給要件をみたす者で申請のあったものに支給されるものであり、返還を要しない
(令和5年3月31日基発0331第47号)

なお在学者が日本育英会の貸与金を受けるとか他の奨学金制度の奨学金を受けるとかの場合であっても労災就学援護費は減額されません
(令和5年3月31日基発0331第47号)

労災就学援護費の規定は、複数業務要因災害についても準用されます。(令和5年3月31日基発0331第47号)

 

  • 労災就学援護費の支給対象者は、次の通りである。(則33条1項、令和5年3月31日基発0331第47号)
労災就学援護費の支給対象者
  • (ア)遺族補償等年金を受ける権利を有する者のうち、在学者等であって学資等の支弁が困難であると認められるもの
  • (イ)遺族補償等年金を受ける権利を有する者のうち、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた当該労働者の子で現に在学者等であるものと生計を同じくしている者であって当該在学者等に係る学資等の支弁が困難であると認められるもの 
  • (ウ)障害補償等年金を受ける権利を有する者1~3級)のうち、在学者等であって学資等の支弁が困難であると認められるもの
  • (エ)障害補償等年金を受ける権利を有する者のうち、在学者等である子と生計を同じくしている者であって、当該在学者等に係る学資等の支弁が困難であると認められるもの
  • (オ)傷病補償等年金を受ける権利を有する者特に重篤と認められる者に限る)のうち、在学者等である子と生計を同じくしている者であって当該在学者等に係る学資等の支弁が困難であると認められるもの

 

労災就学援護費の支給対象者次の者になります単に学校に在学している者だけでは足りません)。

  1.  在学している年金の受給権者高校に通う障害補償年金の受給権者など(=子本人が受給権者))
  2.  在学している子と生計同一にある年金の受給権者学生である子を扶養している遺族補償年金の受給権者である親など(=親が受給権者))

ここでいう在学している者とは学校教育法に定める学校幼稚園を除く)、専修学校に在学する者または公共職業能力開発施設において普通職業訓練若しくは高度職業訓練を受ける者を指します。(則33条1項)

  • 学校に在学している者であってもその者が障害補償等年金遺族補償等年金または傷病補償等年金の受給権者でなければ労災就学援護費は支給されません

 

労災就学援護費の支給を受けることができる者は、その者の受ける障害(補償)等年金、遺族(補償)等年金または傷病(補償)等年金に係る給付基礎日額が16,000円以下の者である。(令和5年3月31日基発0331第47号)

  • 年金給付基礎日額が16,000円を超える者についてはその年金たる保険給付の額と厚生年金保険などの給付の額の合計額がおおむね一般労働者の平均的な給与額をこえることとなるためです

 

  • 労災就学援護費に係る在学者等が、次のいずれかに該当するに至ったときは、その該当する月の翌月以降、当該在学者等に係る労災就学援護費の支給を行われない。(令和5年3月31日基発0331第47号)
欠格事由
  1.  婚姻をしたとき
  2.  直系血族または直系姻族以外の者の養子となったとき
  3.  離縁によって死亡した労働者との親族関係が終了したとき

 

  •  労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う「公権力の行使」であり、被災労働者またはその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるとするのが最高裁判所の判例である。(平成15年9月4日最高裁判所第一小法廷中央労基署長(労災就学援護費)事件)
判例(平成15年9月4日最高裁判所第一小法廷中央労基署長(労災就学援護費)事件)
 労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う「公権力の行使」であり、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる「行政処分にあたるものと解するのが相当である。

 

  • 労災就学援護費(令和7年4月~)の支給額は主に次の通りである。(則33条2項)
 小学校に在学する者  月額16,000円
 中学校に在学する者(かっこ内は通信制課程  月額21,000円(18,000円)
 高等学校に在学する者(かっこ内は通信制課程  月額20,000円(17,000円)
 大学に在学する者(かっこ内は通信制課程  月額39,000円(30,000円)

労災就学援護費及び労災就労保育援護費の額については、子供の学習費調査(文科省)及び消費者物価指数を基に毎年度見直しが行われています。
(令和5年3月31日基発0331第47号)

  • 通信制課程も支給対象です通信制課程の方が低額です
  • 申請の提出先は労働基準監督署長です。「独立行政法人労働者健康安全機構ではありません

安全衛生確保等事業

 

  • 安全衛生確保等事業として、次のような事業が行われている。(法29条1項3号、則38条、コンメンタール29条)
安全衛生確保等事業
  1.  労働災害防止対策の実施
  2.  健康診断センターの設置及び運営
  3.  未払賃金の立替払事業 
  4.  働き方改革推進支援助成金の支給
  5.  受動喫煙防止対策助成金の支給

 

  • 労働災害防止対策の実施とは講習会や講演会の開催ポスターやパンフレットの作成配布など事業主に対する労働災害防止に関する普及啓発などをいいます

この他に安全衛生確保等事業として、「働き方改革推進支援助成金及び受動喫煙防止対策助成金の支給などが定められています。(則38条)

  • 倒産などにより事業主に賃金支払能力がない場合、「賃金支払確保法により当該労働者に対して未払賃金の一定範囲のものを国が事業主に代わって立替払する未払賃金の立替払制度労災保険法の社会復帰促進等事業の一環として行われています

未払賃金の立替払事業は労災保険法の適用事業に該当する事業の労働者を対象として行われます
したがって、暫定任意適用事業であって、加入手続をとっていないものの労働者には、社会復帰促進等事業の一環として行われる未払賃金の立替払は受けることができません

 

 

 

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