厚生年金保険法 特別支給の老齢厚生年金
支給開始年齢、年金額

  •  昭和16年4月2日以後生まれ(第1号厚生年金被保険者である女子については昭和21年4月2日以後生まれ)の者については、支給開始年齢が引き上げられています。
  •  特別支給の老齢厚生年金は、「報酬比例部分」、「定額部分」及び「加給年金額」により構成されています。 

 

目 次

  1. 昭和28年4月2日から昭和36年4月1日生まれの男子等
  2. 長期加入者の特例
    1. 障害者の特例・長期加入者の特例・坑内員/船員の特例【比較表】
  3. 第3種被保険者(坑内員・船員)の特例
  4. 中高齢の短縮特例
  5. 被保険者期間の月数

昭和28年4月2日から昭和36年4月1日生まれの男子等

 

次の者については、下表により特別支給の老齢厚生年金支給される。(附則8条、附則8条の2)

 

「報酬比例部分(61歳~)」が支給される者
  1.  昭和28年4月2日から昭和36年4月1日生まれの男子
  2.  昭和28年4月2日から昭和36年4月1日生まれの女子(第2号厚生年金被保険者、第3号厚生年金被保険者または第4号厚生年金被保険者若しくはこれらの被保険者期間を有する者)
  3.  昭和33年4月2日から昭和41年4月1日生まれの女子第1号厚生年金被保険者または第1号厚生年金被保険者期間を有する者男子+5歳
  4.  昭和34年4月2日から昭和42年4月1日生まれの特定警察職員等

 

具体的な生年月日による支給開始年齢は次の通りである。

 

生年月日 定額 報酬比例
  •  昭和28年4月2日から昭和30年4月1日生まれの男子
  •  昭和28年4月2日から昭和30年4月1日生まれの女子(第2号~第4号)
  •  昭和33年4月2日から昭和35年4月1日生まれの女子第1号
  •  昭和34年4月2日から昭和36年4月1日生まれの特定警察職員等
対象なし 61歳
  •  昭和30年4月2日から昭和32年4月1日生まれの男子
  •  昭和30年4月2日から昭和32年4月1日生まれの女子(第2号~第4号)
  •  昭和35年4月2日から昭和37年4月1日生まれの女子第1号
  •  昭和36年4月2日から昭和38年4月1日生まれの特定警察職員等
対象なし 62歳
  •  昭和32年4月2日から昭和34年4月1日生まれの男子
  •  昭和32年4月2日から昭和34年4月1日生まれの女子(第2号~第4号)
  •  昭和37年4月2日から昭和39年4月1日生まれの女子第1号
  •  昭和38年4月2日から昭和40年4月1日生まれの特定警察職員等
対象なし 63歳
  •  昭和34年4月2日から昭和36年4月1日生まれの男子
  •  昭和34年4月2日から昭和36年4月1日生まれの女子(第2号~第4号)
  •  昭和39年4月2日から昭和41年4月1日生まれの女子第1号
  •  昭和40年4月2日から昭和42年4月1日生まれの特定警察職員等
対象なし 64歳

 

男子生年月日 報酬比例 定額
S16.4.2~S18.4.1 60 61
S18.4.2~S20.4.1 60 62
S20.4.2~S22.4.1 60 63
S22.4.2~S24.4.1 60 64
S24.4.2~S28.4.1 60
S28.4.2~S30.4.1 61
S30.4.2~S32.4.1 62
S32.4.2~S34.4.1 63
S34.4.2~S36.4.1 64
S36.4.2以後 65(本来の老齢厚生年金)

参照 日本年金機構の図

長期加入者の特例

 

本来、昭和28年4月2日~昭和36年4月1日生まれの男性は、特別支給の老齢厚生年金について「報酬比例部分のみ」が61~64歳から支給されます。

しかし、

  • 厚生年金被保険者期間が44年以上
  • 厚生年金被保険者でない

という要件を満たすと、

本来まだ支給されない定額部分も前倒しで加算される

という特例です。

つまり、

報酬比例部分のみ

報酬比例部分+定額部分

になります。


要件(重要)

 

要件① 被保険者期間44年以上

44年以上=528か月以上

注意点として、

  • 44年以上あればよい
  • 45年ではない

現在は44年以上に緩和されています。


要件② 被保険者でないこと

これが最重要です。

厚生年金保険の被保険者である間は特例は適用されません。

例えば

  • 61歳
  • 厚生年金加入期間45年
  • 会社勤務継続中

であれば、

❌ 長期加入者特例は適用されない

退職して被保険者資格を喪失した翌月から適用されます。


自動適用

障害者特例と違い、

 

長期加入者特例は請求不要

です。

44年以上かつ被保険者でなくなれば自動的に適用されます。

 

特例 請求
障害者特例 必要
長期加入者特例 不要
坑内員・船員特例 必要

被保険者のまま44年に達した場合

例えば

  • 60歳時点で527か月
  • 61歳で528か月到達
  • まだ在職中

の場合

特例はまだ適用されません。

その後退職すると、

 

退職月の翌月から年金額改定

が行われます。


「一の実施機関」で44年以上

例えば

  • 厚生年金30年
  • 共済年金15年

合計45年

でも、

❌ 合算できない

長期加入者特例は

一つの実施機関の被保険者期間だけで44年以上

必要です。


対象となる生年月日

男性の場合

 

昭和16年4月2日~昭和36年4月1日生まれ

が対象になり得ます。

ただし、

昭和24年4月1日以前生まれは本来定額部分の支給開始年齢が到来しているため、

実際に問題となるのは

定額部分の支給開始年齢前の者

です。


7. 典型例

  • 昭和34年5月生まれ男性
  • 厚生年金加入45年
  • 64歳で退職

本来

64歳からは報酬比例部分のみ。

しかし

  • 44年以上
  • 被保険者でない

を満たすので、

64歳から

報酬比例部分+定額部分

の特別支給の老齢厚生年金を受給できます。


8. 障害者特例との違い

両者とも結果は同じです。

共通点

  • 報酬比例部分のみの受給者が対象
  • 定額部分が加算される
  • 被保険者でないことが必要

相違点

 

項目 障害者特例 長期加入者特例
要件 障害等級3級以上 44年以上加入
請求 必要 不要
認定 必要 不要

 

 

障害者の特例・長期加入者の特例・坑内員/船員の特例【比較表】

 

項目 障害者の特例 長期加入者の特例 坑内員・船員の特例
位置づけ 定額部分が加算される 定額部分が加算される 支給開始年齢が最短55歳
対象者 報酬比例部分相当のみの老齢厚生年金受給権者 報酬比例部分相当のみの老齢厚生年金受給権者 特別支給の老齢厚生年金受給権者
被保険者要件 被保険者でないこと(在職中不可) 被保険者でないこと(在職中不可)
特有の要件 障害等級3級以上に該当する障害状態
※未治癒の場合は初診日から1年6か月経過
被保険者期間が44年以上 坑内員・船員であった期間を合算して15年以上
請求要件 必要(○) 不要(×) 必要(○)
支給内容の特徴 定額部分が加算 定額部分が加算 定額部分が4/3倍または6/5倍

 

超重要ポイント

① 請求が必要かどうか

 

特例 請求
障害者の特例 必要
長期加入者の特例 不要(自動適用)
坑内員・船員の特例 必要

**「44年以上=請求不要」**は超重要


 

② 年齢との関係

 

  • 障害者の特例・長期加入者の特例
     → 65歳前に老齢厚生年金(報酬比例部分)+定額部分が付く

  • 坑内員・船員の特例
     → 支給開始年齢そのものが前倒し(最短55歳)


 

③ 倍率が出てきたら「坑内員・船員」

  • 4/3倍・6/5倍 → 即「坑内員・船員の特例」

  • 障害者・長期加入者には倍率は出ない(単純加算)


ひとことで覚えるなら

  • 障害者:障害+請求

  • 長期加入:44年以上+請求不要

  • 坑内・船員:15年以上+倍率+55歳

第3種被保険者(坑内員・船員)の特例

 

特別支給の老齢厚生年金の受給権者がその権利を取得した当時、その者に係る坑内員たる被保険者であった期間と船員たる被保険者であった期間とを合算した期間が15年以上であるときは、生年月日に応じて、次の表に掲げる支給年齢から、特別支給の老齢厚生年金支給される。(附則8条の2第3項、附則9条の4第1項、平成6年附則15条)

 

 

生年月日 支給開始年齢
 昭和21年4月1日以前 55歳
 昭和21年4月2日~昭和23年4月1日 56歳
 昭和23年4月2日~昭和25年4月1日 57歳
 昭和25年4月2日~昭和27年4月1日 58歳
 昭和27年4月2日~昭和29年4月1日 59歳
 昭和29年4月2日~昭和33年4月1日 60歳
 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 61歳
 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 62歳
 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 63歳
 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 64歳

 

期間計算の特例は厚生年金保険法においては老齢厚生年金の額の計算に適用されます

 (×障害厚生年金等の保険料納付要件

 (×遺族厚生年金の保険料納付要件

 (×第3種被保険者の特例における「15年要件

 (×経過的加算における「老齢基礎年金額相当額」における月数

 

3分の4倍5分の6倍をしない実期間が15年以上あることが必要です

中高齢の短縮特例

加給年金額などについては、原則として、厚生年金保険の被保険者期間が240か月(20年)以上あることが要件となります。

ただし、一定の生年月日の者については、中高齢期以後の厚生年金保険の被保険者期間が所定の年数以上あれば、実際の被保険者期間が240か月未満であっても、240か月以上あるものとして扱われる特例があります。

これを、一般に「中高齢の短縮特例」といいます。

日本年金機構も、加給年金額の20年以上の要件について、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の被保険者期間が、男性は40歳以後、女性および坑内員・船員は35歳以後に15年から19年ある場合を含むと説明しています。

 

対象となる期間

生年月日 中高齢期以後に必要な被保険者期間
昭和22年4月1日以前 15年以上(180か月以上)
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 16年以上(192か月以上)
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 17年以上(204か月以上)
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 18年以上(216か月以上)
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 19年以上(228か月以上)

ここでいう「中高齢期以後」とは、原則として次の期間です。

対象者 対象となる被保険者期間
男子 40歳に達した月以後の厚生年金保険の被保険者期間
女子 35歳に達した月以後の厚生年金保険の被保険者期間
坑内員・船員 35歳に達した月以後の厚生年金保険の被保険者期間

具体例

昭和24年5月生まれの女性について、35歳以後の厚生年金保険の被保険者期間が18年ある場合を考えます。

この者の実際の被保険者期間が216か月であっても、生年月日に応じた短縮期間である18年以上を満たすため、中高齢の短縮特例に該当します。

その結果、加給年金額などの判定では、

216か月

240か月以上あるものとして扱う

ことになります。


どの制度で「240か月」とみなされるのか

中高齢の短縮特例に該当すると、主に次の場面で、240か月以上の被保険者期間を有する者として扱われます。

  • 加給年金額の加算要件
  • 配偶者加給年金額の支給停止要件
  • 特別支給の老齢厚生年金の定額部分など、経過措置上の一定の計算

このページの「被保険者期間の月数」については、中高齢の短縮特例に該当する者は、実際の被保険者期間が240か月未満であっても、240か月として計算する点が重要です。


受給資格期間の10年短縮との違い

現在、老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給資格期間は原則として10年以上です。

しかし、中高齢の短縮特例は、単に「老齢年金を受け取れるか」を判定するためだけの制度ではありません。

制度 内容
受給資格期間の10年要件 老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権が発生するかを判定する
中高齢の短縮特例 加給年金額などの「20年以上」という要件について、一定の短い期間で満たしたものとして扱う

したがって、受給資格期間が25年から10年に短縮された後も、加給年金額などの判定では中高齢の短縮特例が問題となります。


注意点

 

① 厚生年金の全加入期間を見るわけではない

重要なのは、原則として、

  • 男子は40歳以後
  • 女子および坑内員・船員は35歳以後

の厚生年金保険の被保険者期間です。

若い時期の被保険者期間を含めた総期間が15年から19年あればよい、という制度ではありません。

 

② 共済組合等の加入期間は原則として含めない

中高齢の短縮特例では、原則として、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の被保険者期間によって判定します。日本年金機構も、加給年金額の説明において、この特例を「共済組合等の加入期間を除いた」期間として示しています。

 

③ 年金額が20年分に増えるわけではない

240か月として扱われるのは、一定の要件判定や法令上の計算に限られます。

実際の報酬比例部分まで、自動的に20年加入した場合の金額になるわけではありません。


ひっかけ整理

記述 正誤
被保険者期間が240か月未満なら、必ず加給年金額は加算されない ×
男子は原則として40歳以後の被保険者期間を見る
女子は原則として35歳以後の被保険者期間を見る
短縮特例に該当すれば、報酬比例部分も20年分として計算する ×
受給資格期間が10年になったため、短縮特例は一切意味がなくなった ×

ひとことで覚えるなら

中高齢期以後に15年~19年加入
=「20年以上」の要件を満たしたものとして扱う経過措置

被保険者期間の月数

 

中高齢の短縮特例に該当する者については、実際の厚生年金保険の被保険者期間が240か月未満であっても、加給年金額などの「20年以上」という要件の判定や、法令で定められた一定の計算上、被保険者期間を240か月として扱います。ただし、報酬比例部分の年金額まで20年加入したものとして増額されるわけではありません。(昭和60年附則61条2項)

被保険者期間の月数には、生年月日に応じて次のような「上限」が設けられている。(平成6年附則17条、平成16年附則36条1項)

 

生年月日 被保険者期間の上限
 昭和4年4月1日以前 420か月35年
 昭和4年4月2日~昭和9年4月1日 432か月36年
 昭和9年4月2日~昭和19年4月1日 444か月37年
 昭和19年4月2日~昭和20年4月1日 456か月38年
 昭和20年4月2日~昭和21年4月1日 468か月39年
 昭和21年4月2日以後 480か月40年

被保険者期間の月数の上限は段階的に引き上げられていますが昭和4年4月1日以前に生まれた者は420月です

 

 

報酬比例部分については被保険者期間の月数には制限はありませんが定額部分には上限が設けられている点が大きな違いです

 

 

被保険者期間の上限(老齢厚生年金)

区分 被保険者期間の上限 ポイント
報酬比例部分 上限なし 被保険者期間が何か月でも、そのまま年金額に反映される
定額部分 上限あり(420~480月) 定額部分は「基礎年金相当額」なので、満額=40年が上限

 

超重要な理解

 

① 報酬比例部分

  • 働いた月数が多いほど そのまま増える

  • 60年・70年加入してもカウントされる

  • 上限という概念がない

 

 

② 定額部分

  • 老齢厚生年金の定額部分 = 老齢基礎年金相当

  • 満額は40年

  • 制度改正の経過措置により
    420月(35年)~480月(40年) の幅がある


ひっかけ整理

  • 被保険者期間が50年ある
     → ❌ 定額部分は50年分つかない
     → ⭕ 報酬比例部分だけ50年分つく

  • 定額部分にも上限なし
     → ❌ 誤り(必ず上限あり)


ひとことで覚えるなら

  • 報酬比例=青天井

  • 定額部分=40年天井

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