労災保険法 
業務上の疾病

最重要ポイント

特に頻出なのは次の事項です。

  • 例示列挙主義
  • 長期間(6か月)・短期間(1週間)・異常な出来事の3類型
  • 100時間・80時間基準
  • 労働時間以外の負荷要因も総合評価すること
  • 精神障害は発病前おおむね6か月の強い心理的負荷で判断すること
  • パワハラ・カスハラが認定基準に含まれること

労災保険法における「業務上の疾病」とは、労働者が業務に従事する過程で、業務に起因して発症した病気や障害を指します
(労働基準法施行規則第35条、別表1の2)

  1. 仕事中・通勤時の突発的なケガ(業務災害)とは異なり、
  2. 職場の環境因子や業務の負担によって徐々に発症する「職業病」の側面が強いものです。

 

目 次

  1. 業務上の疾病の基本
  2. 脳・心臓疾患の認定基準
  3. 長期間の過重業務
    1. 労働時間以外も評価される
    2. 極度の長時間労働
  4. 短期間の過重業務
  5. 異常な出来事
  6. 複数の勤務先がある場合
  7. 精神障害の認定基準
    1. セクシュアルハラスメントの心理的負荷
  8. 最近の改正ポイント

業務上の疾病の基本

 

労働基準法75条に基づき、業務上の疾病の範囲は労働基準法施行規則35条・別表第1の2で定められています。

ただし、一覧に書かれた病気だけが対象ではありません。

例示列挙主義を採っているため、

  • 別表にある疾病
  • 別表になくても業務との相当因果関係が認められる疾病

の両方が労災補償の対象となります。

脳・心臓疾患の認定基準

 

脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などは、

「業務による明らかな過重負荷」が原因で発症したと認められると労災になります。

認定要件は次の3つです。

このいずれかによる過重負荷が認められることです。

長期間の過重業務

 

評価期間は

発症前おおむね6か月

です。

時間外労働の目安は次のとおりです。

  • 月45時間以内 → 関連性は弱い
  • 45時間超 → 長くなるほど関連性が強まる
  • 月100時間超、または2~6か月平均80時間超 → 業務との関連性が強い

これは有名な「100時間・80時間基準」です。

労働時間以外も評価される

 

認定は労働時間だけではありません。

次の事情も総合評価されます。

  • 拘束時間
  • 休日のない連続勤務
  • 勤務間インターバル
  • 深夜勤務
  • 出張
  • 心理的負荷
  • 身体的負荷
  • 作業環境

2021年改正では、勤務間インターバル身体的負荷なども明確に評価対象となりました。

短期間の過重業務

 

評価期間は

発症前おおむね1週間

です。

発症直前から前日まで、または発症前1週間の過重な勤務状況を重点的に判断します。

異常な出来事

 

例えば

  • 重大事故
  • 命の危険を感じる出来事
  • 著しい暑熱・寒冷環境
  • 極度の精神的ショック

などが該当します。

評価期間は

発症直前から前日まで

です。

複数の勤務先がある場合

 

副業・兼業では、

  • 労働時間は通算
  • 労働時間以外の負荷も総合評価

して業務起因性を判断します。

これを複数業務要因災害といいます。

精神障害の認定基準

 

精神障害が労災となるためには、次の3要件を満たす必要があります。

  1. 対象疾病を発病していること
  2. 発病前おおむね6か月以内に業務による強い心理的負荷があること
  3. 私生活など業務外の原因ではないこと

評価は、本人の感じ方ではなく、同種の労働者ならどう感じるかという客観的基準で行われます。

最近の改正ポイント

近年追加・明確化されたものとして、

  • パワーハラスメント
  • カスタマーハラスメント
  • 感染症等の危険性が高い業務
  • SOGIハラスメント
  • 精神障害の悪化に関する認定基準

などがあります。

極度の長時間労働

精神障害の認定基準では、極度の長時間労働は、それ自体で強い心理的負荷と評価されます。

例えば、数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間も確保できないような長時間労働に従事し、発病直前1か月におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合などには、その長時間労働のみで心理的負荷の総合評価は「強」とされます。(令和5年9月1日基発0901第2号)

セクシュアルハラスメントの心理的負荷

 

身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントについては、状況によって心理的負荷の評価が異なります。

  • 複数回行われた場合でも、会社が適切かつ迅速に対応し、発病前に解消した場合は、原則として心理的負荷は「中」と評価されます。
  • 一方、性的発言が継続し、会社がハラスメントを把握していながら適切な対応を行わず改善されなかった場合は、心理的負荷は「強」と評価されます。(令和5年9月1日基発0901第2号)

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