健康保険法
随時改定

定時決定」の原則に対する例外として、定時決定の時期以外において標準報酬月額を改定することを「随時改定」という。

  • 昇給などの固定的賃金の変動に伴い報酬が大幅に変わったような場合には標準報酬を随時に改定しますこれを随時改定といいます

随時改定の要件を満たしたときには、「著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額が改定される。(法43条1項)

  • 表現に注意する必要があります条文上は著しく高低が生じた月の翌月から改定されると表現されています。「著しく高低を生じた月とは昇給または降給があった月の翌々月3か月目をいうため、「昇給または降給があった月から起算して4月目と表現することもできます。(昭和36年1月26日保険発7号)
    • たとえば「固定的変動があったのは10月の場合10月に随時改定が行われるのではなく翌年1月から随時改定は行われる点に注意してください

 

目 次

  1. 随時改定の要件
    1. 固定的賃金の変動
      1. 随時改定の対象とならない場合
    2. 著しく高低を生じた
    3. 有効期間
  2. 育児休業等終了時改定
    1. 育児休業等終了時改定と随時改定との相違点
    2. 有効期間
随時改定、休業終了時改定、任意継続被保険者の標準報酬月額、 標準賞与額

要件

 

随時改定の要件は、次の通りである。(平成30年3月1日保発0301第8号、年管発0301第1号)

1 固定的賃金の変動があったこと
2 変動月以降現に使用される事業所において継続した3か月間いずれの月報酬支払基礎日数が17日4分の3基準を満たさない短時間労働者にあっては、11日以上であること
3 3か月間の報酬の平均月額による標準報酬月額と、従前標準報酬月額との間に2等級以上またはそれに相当する差が生じること

標準報酬月額の決定・改定の算定の対象となる期間に短時間労働者である月と短時間労働者でない月混在している場合には、「各月の被保険者の区分短時間労働者であるかないか)」に応じた支払基礎日により各月が算定の対象月となるかならないかが判断されます
(令和5年6月27日事務連絡)

 

  1. 例えば、「10月に固定的賃金の変動があったとします要件1.)。
  2. その後3か月間様子をみます10月11月12月とデータがたまりその3か月のいずれも報酬支払基礎日数が17日以上である必要があります要件2.)。
  3. ここで10月11月12月のデータの平均による標準報酬月額を算定これと従前の標準報酬月額9月との間に2等級以上の差が生じた場合要件3.、「随時改定が行われます

 

4分の3以上短時間労働者においても一般の被保険者と同様にいずれの3月においても報酬支払基礎日数が17日以上でなければ随時改定は行われません。(平成18年5月12日庁保険発0512001号)

随時改定は、「固定的賃金の変動などを契機として行われますが2等級以上の差が生じているかどうかは固定的賃金のみならず、「非固定的賃金」(残業手当など)をも含めた報酬月額全体で判断されます2等級以上の差を判断するに当たっては固定的賃金のみならず非固定的賃金を含めた報酬月額全体で比較を行うということです)。(令和5年6月27日事務連絡)

固定的賃金の変動

 

固定的賃金の変動」とは、昇給または降給ベースアップまたはベースダウン及び賃金体系の変更による場合並びにこれらの遡及適用によって差額支給を受ける場合を含む。(平成30年3月1日保発0301第8号、年管発0301第1号)

超過勤務手当(残業手当)などの「非固定的手当」であっても、その廃止賃金体系の変更に当たるため随時改定の対象となる
(令和5年6月27日事務連絡)

  • なお新たな非固定的手当の新設も同様に賃金体系の変更に当たります。(令和5年6月27日事務連絡)

 

現物給与の標準価額が告示により改正された場合、告示改正による単価の変更は、「固定的賃金の変動に該当することから、随時改定の対象となる。なお、現物給与の価額に関して規約で別段の定めをしている健康保険組合が管掌する被保険者については、当該規約の定めによる価額の変更がなければ、随時改定の対象にはならない。(令和5年6月27日事務連絡)

  • 固定的賃金の変動とは固定的賃金の増額または減額をいいその典型が、「昇給または降給ですこの昇給または降給にはベースアップまたはベースダウンや賃金体系の変更も含まれます

 

固定的賃金の変動の例算定基礎届の記入・提出ガイドブック

  •  昇給降給
  •  ベースアップベースダウン
  •  給与体系の変更日給から月給への変更など
  •  日給や時間給の基礎単価日当単価の変更
  •  請負給歩合給などの単価歩合率の変更
  •  住宅手当などの固定的な手当の追加支給額の変更

 

随時改定における「固定的賃金の変動」には、休職による休職給を受けた場合は含まれない
(平成30年3月1日保発0301第8号、年管発0301第1号)

減給の制裁は、固定的賃金の変動には当たらないため随時改定の対象とはならない。(令和5年6月27日事務連絡)

産前産後休業または育児休業等により通勤手当が不支給となっている事例において、通勤の実績がないことにより不支給となっている場合には、手当自体が廃止された訳ではないことから、「賃金体系の変更にはあたらず随時改定の対象とはならない。(令和5年6月27日事務連絡)

  • 産前産後休業などをとると会社に通勤しないため通勤手当は不支給となるのが普通です
    ではこれが原因で2等級以上の差が生じた場合に随時改定の対象となるかというと対象にはならないということです

 

賃金が時間給で支給されている被保険者について、時間給の単価に変動はなが、労働契約上の勤務体系契約時間が変更となった場合、標準報酬月額の随時改定の要件の1つである「固定的賃金の変動」に該当し、随時改定の対象となる。(令和5年6月27日事務連絡)

超過勤務手当残業手当)」の場合は支給単価支給割合が変更になった場合には随時改定の対象となりますが単に残業時間に増減があっても随時改定の対象にはなりません。(令和5年6月27日事務連絡)

自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直し月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、「固定的賃金の変動」として、随時改定の対象となる。(令和5年6月27日事務連絡)

固定的賃金変動が毎月発生するような場合には、「それぞれの月の賃金変動を契機としてその都度2等級以上の差が生じているかを確認し随時改定の可否について判断します。(令和5年6月27日事務連絡)

役員昇格による昇給」と役員昇格による残業手当の廃止昇給月の翌月反映)」のように、複数の固定的賃金の変動が生じ、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与へ反映する月が異なる場合は、変動後の各々の固定的賃金が給与に実績として反映された月をそれぞれ起算月とする(昇給に係る随時改定は昇給月が起算月となり、手当廃止による随時改定は昇給月の翌月を起算月として別の随時改定としてとらえる)。
(令和5年6月27日事務連絡)

産前産後休業または育児休業等の無給期間中に固定的賃金に変動があった」場合には、実際に変動後の報酬を受けた月起算月として改定することとなる。(令和5年6月27日事務連絡)

  • 産前産後休業などを取得中で給与の支払いが一切ない期間において、「昇給があったとします
    この場合、「実際に変動後の報酬を受けた月を起算月とします

 

新たに非固定的賃金の新設がなされたことによる賃金体系の変更随時改定の契機とする際は、その非固定的賃金の支払の有無に係わらず、「非固定的賃金が新設された月」を起算月とし、以後の継続した3か間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績が生じていれば随時改定対象となる。なお、非固定的賃金の新設以後の継続した3か月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ報酬の変動要因としてみなすことができないため、随時改定の対象とはならない。また、その場合には当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることにもならない。(令和5年6月27日事務連絡)

休職に伴う低額な休職給を受けている間に固定的賃金の増減があった場合、休職給はその固定的賃金の変動を適切に反映しているとはいえないため、休職が終了して通常の給与支払いに戻った月以後3か月の平均報酬月額によって随時改定の可否を判断する。(令和5年6月27日事務連絡)

随時改定は固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を計算の基礎とすることから、随時改定の算定対象月内に低額な休職給を受けた場合であっても、随時改定の対象とする。
(令和5年6月27日事務連絡)

給与計算期間の途中で昇給降給した場合、昇給(降給)した給与が実績として1か月分確保された月固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3か月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。(令和5年6月27日事務連絡)

  • 給与計算期間の途中で昇給した場合どの時点を起算月として随時改定の判断を行うかというと、「実績として1か月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱います

 

固定的賃金の増額減額実際の平均報酬月額の増額減額が「一致しない場合随時改定の対象とはならない。(令和5年6月27日事務連絡)

 

随時改定の対象とならない場合

  •  固定的賃金は「上がった」が、残業手当などの非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より「下がり」、2等級以上の差が生じた場合
  •  固定的賃金は「下がった」が、残業手当などの非固定的賃金が増えたため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より「上がり」、2等級以上の差が生じた場合

 

同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定いずれの対象となるかを判断する。(令和5年6月27日事務連絡)

同一月に手当の廃止と創設が同時に発生したケースのように固定的賃金の増額と減額が同時に発生した場合には固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかで判断します。(令和5年6月27日事務連絡)

定額の手当Aが廃止されその手当Aと同額の手当Bが新たに創設された場合など固定的賃金に変更が生じないケースについては随時改定の対象にはなりません。(令和5年6月27日事務連絡)

変動的な手当の廃止と創設が同時に発生した場合などについては、手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できないため、3か月の平均報酬月額増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。(令和5年6月27日事務連絡)

著しく高低を生じた

著しく高低を生じた」とは、次の場合をいう。(令和2年8月17日保発0817第1号、年管発0817第1号)

 

1 昇給(降給)によって算定月額による等級と現在の等級との間に2等級以上の差を生じた場合
2 健康保険第49級1,295,000円以上1,355,000円未満)の標準報酬月額にある者の報酬月額が昇給したことにより、その算定月額が健康保険1,415,000円以上となった場合
3 健康保険第1級の標準報酬月額にある者の報酬月額(53,000円未満である場合に限る)が昇給したことにより、その算定月額が第2級以上63,000円以上)の標準報酬月額に該当することとなった場合
4 健康保険第50級の標準報酬月額にある者の報酬月額(1,415,000円以上である場合に限る)が降給したことにより、その算定月額が健康保険第49級以下1,355,000円未満)の標準報酬月額に該当することとなった場合
5 健康保険第2級63,000円以上73,000円未満)の標準報酬月額にある者の報酬月額が降給したことにより、その算定月額が健康保険にあっては53,000円未満となった場合

第2級の場合それより標準報酬の金額が小さいものには第1級しか存在しないため2等級以上の差が生じる余地がありません

 この場合には、報酬月額が53,000円未満となった場合には、2等級以上の差が生じたものとみなされます1等級差の随時改定)。

有効期間

随時改定における標準報酬月額の有効期間は次の通りである。(法43条2項)

 

1 1月から6月までのいずれかの月から改定された場合 その年の8月まで
2 7月から12月までのいずれかの月から改定された場合 翌年の8月まで

随時改定が行われた場合であっても、その後更に賃金の変動があった場合には、8月前であっても、再度随時改定が行われることもあります。

育児休業等終了時改定

 
 
 

被保険者が、育児休業等を終了した際標準報酬月額を改定することを「育児休業等終了時改定」という。

 

  • 育児休業等終了時改定の要件は、次の通りである。(法43条の2第1項)
育児休業等終了時改定の要件
  1.  育児休業等終了日において当該育児休業等に係る3歳未満の子を養育していること
  2.  被保険者が、その使用される事業所の事業主を経由して保険者等に申出をしたこと
 

 

育児休業等終了時改定と随時改定との相違点

 

1 固定的賃金の変動 固定的賃金の変動または賃金体系の変更を伴わない場合であっても、改定が行われる
2 等級差 標準報酬月額に2等級以上の差が生じていない場合であっても、改定が行われる
3 報酬支払基礎日数 報酬支払基礎日数が17日4分の3未満短時間労働者の場合は11日未満の月がある場合であっても、改定が行われる
 

 

有効期間

 

育児休業等終了時改定により改定された標準報酬月額は、「育児休業等終了日の翌日(=職場復帰の日から起算して2か月を経過した日の属する月」の翌月から適用される。(法43条の2第2項)

 

育児休業等終了時改定における標準報酬月額の有効期間は次の通りである。(法43条の2第2項)

1 1月から6月までのいずれかの月から改定された場合 その年の8月まで
2 7月から12月までのいずれかの月から改定された場合 翌年の8月まで

職場復帰の日(3月5日)から起算して2か月を経過した日(5月5日)の属する月の翌月(6月)

  1. 1~6月までならば、「その年の8月まで
  2. 7月~12月までならば、「翌年の8月までとなります

任意継続被保険者等の標準報酬月額

 
 
 

任意継続被保険者の標準報酬月額については、次のうちいずれか少ない額とする。(法47条)

1 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
2 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

令和7年度の健康保険の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は、第23級32万円)となります。

任意継続被保険者については標準報酬の定時決定は行われません

 

例えば、A年の9月30日時点における標準報酬月額の平均額が28万円だったとすると、

  1. B年の4月からC年の3月までの間は、28万円で法47条は適用され、
  2. B年の9月30日時点における標準報酬月額の平均額が30万円だったとするとC年の4月から30万円で法47条が適用されます。

 

  1. 任意継続被保険者は、資格喪失時は28万円をもって法47条を適用し
  2. C年の4月からは30万円をもって法47条が適用されることになります。

 

このように任意継続被保険者の標準報酬月額確定したものではなく変更する可能性があります

 

保険者健康保険組合の場合、次のうちいずれか少ない額とすることができる。(法47条1項2号かっこ書)

 

保険者が健康保険組合の場合①(平均額の範囲内で規約で定めた額がある場合)
1 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
2 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者標準報酬月額を平均した額の範囲内においてその規約で定めた額があるときは、規約で定めた額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

 

保険者健康保険組合である場合においては、下記1.に掲げる額2.に掲げる額超える任意継続被保険者について、規約で定めるところにより、1.に掲げる額(当該健康保険組合が2.に掲げる額を超え1.に掲げる額未満の範囲内においてその規約で定めた額があるときは、当該規約で定めた額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額)をその者の標準報酬月額とすることができる。(法47条2項)

保険者が健康保険組合の場合②(規約により、1. > 2. のときは、1.とすることができる)
1 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
2 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

2022改正改正前には上記の例外ルール②はありませんでしたそのため、協会健保と同様に原則として1.と2.を比較していずれか少ない額とされていましたが健康保険組合によっては管掌企業の雇用形態や組合の財政状況を踏まえ退職前に高額の給与が支払われていた者について退職前と同等の応能負担を課すことが適当な場合もあると考えられることから健康保険組合の実状に応じて柔軟な制度設計が可能となりました

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