労災保険法
保険給付に対する不服申立て

労災保険に係る不服申立てには

  1. 労審法による場合と
  2. 行政不服審査法による場合があります。
  • 保険給付に関する決定については、労災保険審査官及び労働保険審査会に対して審査請求を行うことができます。

 

目 次

  1. 審査請求及び再審査請求
    1. 棄却したものとみなすことができる(審査請求の未決定)
  2. 訴訟との関係
  3. 審査請求
不服申立て、雑則、罰則

審査請求及び再審査請求

保険給付に関する決定

労災保険には専門の不服審査制度があります。

流れは次のとおりです。

労働基準監督署長

↓ (保険給付の決定)

労働者災害補償保険審査官 (審査請求)

労働保険審査会 (再審査請求)


つまり、
  • 第1段階:労働者災害補償保険審査官
  • 第2段階:労働保険審査会

となります。


なぜ特別な制度なのか?

保険給付は

  • 件数が非常に多い
  • 医学的判断など専門知識が必要
  • 被災労働者を迅速に救済する必要がある

ため、

一般の行政不服審査法ではなく、

「労働保険審査官及び労働保険審査会法」

による特別な制度が設けられています。


誰が審査請求できる?

できるのは

「保険給付に関する決定に不服のある者」

です。

つまり、

その処分によって

直接

自分の権利や利益が侵害された人です。

例えば

  • 本人
  • 遺族
  • 相続人

などです。

一方、

全く関係のない第三者は審査請求できません。


審査請求の対象になるもの・ならないもの

ここはよく問われます。

 

対象になるもの

受給権に直接影響する処分です。

例えば、

  • 不支給決定
  • 支給決定
  • 支給停止決定

などです。


対象にならないもの

単なる事実認定は対象外です。

例えば、

  • 業務上・業務外の認定
  • 給付基礎日額の認定
  • 治ゆ日の認定
  • 失権による遺族補償年金の打切決定

などは、

最終的な保険給付の決定の前提となる判断にすぎません。

したがって、

単独では審査請求できません。


3か月たっても決定がない場合

審査請求をしても、

3か月経過して決定がない場合は、

「棄却されたものとみなす」

ことができます。

これを

みなし棄却

といいます。


労災保険

3か月


雇用保険

3か月


健康保険・厚生年金・国民年金

2か月

この違いは重要です。


時効との関係

審査請求や再審査請求をすると、

時効については

裁判上の請求

と同じ効果があります。

つまり、

時効の完成猶予・更新の効力があります。

 

棄却したものとみなすことができる(審査請求の未決定)

区分 法令(条文) 期間 内容
労働 労災保険法
(法38条2項)
3か月 審査請求をした日から3か月を経過しても審査請求についての決定がないときは、労働者災害補償保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
労働 雇用保険法
(法69条2項)
3か月 審査請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても審査請求についての決定がないときは、雇用保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
社会 健康保険法
(法189条2項)
2月 審査請求をした日から2月以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
社会 国民年金法
(法101条2項)
2月 審査請求をした日から2月以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
社会 厚生年金保険法(法90条3項) 2月 審査請求をした日から2月以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

訴訟との関係(審査請求前置主義)

ここも非常に重要です。

 

保険給付の場合

いきなり裁判はできません。

これを

審査請求前置主義

といいます。


なぜ?

専門家による判断を先に受けることで、

迅速・適正に紛争を解決するためです。

 

訴訟との関係

区分 根拠条文 内容
保険給付 法40条 労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。
保険給付以外 行政事件訴訟法8条1項 直ちに処分の取り消しの訴えを提起することができる。

 

審査請求保険給付以外の処分

例えば、

保険料に関する処分など、

保険給付以外の処分は、

この特別な制度ではありません。

行政不服審査法により、

厚生労働大臣

へ審査請求します。

また、

保険給付以外の処分については、

行政事件訴訟法により、

直ちに取消訴訟を提起することも可能です

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