厚生年金保険法
在職老齢年金

在職老齢年金のポイント

在職老齢年金は、一見すると複雑ですが、基本的には次の順番で考えると理解しやすくなります。

  1. 基本月額(厚生年金側)を確認する
  2. 総報酬月額相当額(給与側)を確認する
  3. 2つを合計する
  4. 支給停止調整額を超えているか確認する
  5. 超えた部分の2分の1を支給停止する

つまり、

「給与+老齢厚生年金が一定額を超えた場合、その超過部分に応じて老齢厚生年金を調整する制度」

と理解しておけば、制度全体を整理しやすくなります。

なお、実際の支給停止額を計算する場合には、標準報酬月額、標準賞与額、老齢厚生年金の内訳などを正確に確認する必要があります。

 

目 次

  1. 在職老齢年金とは
  2. 65歳以後の在職老齢年金(高在老)
  3. 基本月額
    1. 総報酬月額相当額

在職老齢年金とは

 

在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取りながら働いている人について、給与と年金の額に応じて老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する制度です。

本来の老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳です。65歳以降も会社などで働き厚生年金に加入している場合でも、老齢厚生年金を受け取ることはできます。

ただし、給与と老齢厚生年金の合計額が一定の基準を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。

制度を理解するうえでは、まず次の4点を押さえておくと分かりやすくなります。

ポイント 内容
対象者 厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給している人など
調整対象 老齢厚生年金
支給停止調整額 65万円 (参照 年金ネット)
支給停止額 基準額を超えた部分の2分の1

つまり、 「給与」と「老齢厚生年金」を合計し、一定額を超えているか

を確認する制度と考えると分かりやすいでしょう。

 

現在はルールが一本化

以前は

  • 60~64歳(低在老)
  • 65歳以上(高在老)

で別制度でした。

現在は、

65歳以降の「高在老」の仕組みに統一

されています。

現在は65万円基準で調整する (参照 年金ネット)

と覚えれば十分です。

 

 

対象になる人

次のいずれかに該当する月です。

  • 厚生年金保険の被保険者
  • 国会議員・地方議員
  • 70歳以上で厚生年金適用事業所に勤務する人

重要なのは、

「年金を受け取っているか」だけではなく、「働いて報酬を得ているか」

という点です。

 

調整対象になる年金

 

ここは頻出ポイントです。

調整されるのは

老齢厚生年金だけ


調整されないもの

 

老齢基礎年金

減額されません。

いくら給与が高くても

全額支給

されます。

 

経過的加算

これも 全額支給 されます

整理すると、次のようになります。

年金等の種類 在職老齢年金による支給調整
老齢厚生年金 対象
老齢基礎年金 対象外
経過的加算 対象外

在職老齢年金の計算で使う2つの金額

 

在職老齢年金を理解するときに重要なのが、

  1. 「基本月額」 
  2. 「総報酬月額相当額」 です。

名前は難しく見えますが、簡単にいえば、

基本月額 = 厚生年金側の金額

総報酬月額相当額 = 給与側の金額

と考えると整理しやすくなります。


基本月額とは

基本月額とは、在職老齢年金の支給停止額を計算するときに使用する、老齢厚生年金のうち対象となる部分を1か月分に換算した金額です。

基本的には、

老齢厚生年金の年額から、加給年金額など一定の金額を除いた額 ÷ 12

によって考えます。

たとえば、計算対象となる老齢厚生年金の年額が120万円の場合、

120万円 ÷ 12か月 = 10万円

となるため、基本月額は10万円です。

なお、実際の年金額には加給年金額、経過的加算額などが含まれている場合があります。

そのため、年金として実際に受け取っている総額をそのまま12で割ればよいとは限らない点に注意が必要です。

 

基本月額
= 老齢厚生年金の額から加給年金額・繰下げ加算額・経過的加算額を除いた額 ÷ 12


総報酬月額相当額とは

総報酬月額相当額とは、在職老齢年金の計算上、給与や賞与を月額ベースに換算した金額です。

基本的には、

標準報酬月額 + 直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12

によって計算します。

たとえば、

標準報酬月額 55万円

直近1年間の標準賞与額を月額換算した金額 5万円 であれば、

55万円 + 5万円 = 60万円

となり、総報酬月額相当額は60万円となります。

ここで重要なのは、毎月の給与だけではなく、賞与も計算に含まれるという点です。

年金が減額されるかどうかの判定

在職老齢年金では、

総報酬月額相当額 + 基本月額

を計算します。

この合計額が支給停止調整額以下であれば、老齢厚生年金は支給停止されません。

一方、支給停止調整額を超える場合には、その超過額に応じて老齢厚生年金の一部が支給停止されます。

現在の支給停止調整額、65万円

総報酬月額相当額 + 基本月額 ≦ 65万円

であれば、支給停止はありません。


支給停止額の計算方法

給与と年金の合計額が65万円を超えた場合には、超過した部分の2分の1に相当する額が老齢厚生年金から支給停止されます。

月額ベースでは、

支給停止額 =(総報酬月額相当額 + 基本月額 − 65万円)× 1/2

と考えることができます。

つまり、

65万円を超えたら年金がすべて支給されなくなるわけではなく、超えた部分の2分の1が調整される

という仕組みです。


具体例

次のケースで考えてみましょう。

総報酬月額相当額:62万円

基本月額:10万円

まず、給与側と年金側の金額を合計します。

62万円 + 10万円 = 72万円

次に、支給停止調整額65万円を超えている部分を計算します。

72万円 − 65万円 = 7万円

この7万円の2分の1が支給停止されます。

7万円 × 1/2 = 3万5,000円

したがって、基本月額10万円のうち、

10万円 − 3万5,000円 = 6万5,000円

となり、この例では老齢厚生年金の支給額は月額6万5,000円となります。


老齢厚生年金が全部支給停止になる場合

計算された支給停止額が、支給停止の対象となる老齢厚生年金の額以上になる場合には、老齢厚生年金は全部支給停止となります。

ただし、ここでも重要なのは、

老齢基礎年金まで支給停止になるわけではない

という点です。

在職老齢年金は、あくまで老齢厚生年金について行われる支給調整です。

次のケースで、実際に在職老齢年金を計算してみましょう。

67歳の人が厚生年金に加入しながら働いており、給与や年金の状況が次のとおりだったとします。

  • 標準報酬月額:50万円
  • 直近1年間の標準賞与額:180万円
  • 老齢厚生年金:年額172万円
    • うち加給年金額:39万円
    • うち経過的加算額:1万円
  • 老齢基礎年金:年額70万円

支給停止調整額は65万円として計算します。

 

① まず「総報酬月額相当額」を計算する

総報酬月額相当額は、毎月の標準報酬月額に、直近1年間の賞与を12で割った金額を加えて計算します。

50万円 + 180万円 ÷ 12 = 65万円

したがって、

総報酬月額相当額は65万円

となります。

 

② 次に「基本月額」を計算する

在職老齢年金の計算では、老齢厚生年金172万円をそのまま12で割るわけではありません。

加給年金額39万円と経過的加算額1万円は、支給停止の計算対象から除きます。

したがって、

172万円 − 39万円 − 1万円 = 132万円

これを12か月で割ると、

132万円 ÷ 12 = 11万円

となります。

したがって、

基本月額は11万円

です。

 

③ 65万円を超える部分を計算する

総報酬月額相当額65万円と基本月額11万円を合計します。

65万円 + 11万円 = 76万円

支給停止調整額は65万円なので、

76万円 − 65万円 = 11万円

が基準を超えている部分です。

在職老齢年金では、この超過額の2分の1が支給停止となります。

11万円 × 1/2 = 5万5,000円

したがって、

毎月5万5,000円が支給停止

となります。

 

④ 実際に受け取れる老齢厚生年金を計算する

支給停止の対象となる年金は年額132万円なので、ここから年間の支給停止額を差し引きます。

年間の支給停止額は、

5万5,000円 × 12か月 = 66万円

です。

したがって、

132万円 − 66万円 = 66万円

となります。

さらに、支給停止の対象とならない経過的加算額1万円を加えます。

66万円 + 1万円 = 67万円

よって、在職老齢年金として支給される老齢厚生年金は、

年額67万円

となります。

なお、加給年金額については、老齢厚生年金の一部が支給されるため、このケースでは支給されます。

そのため、実際の老齢厚生年金の支給額は、

67万円 + 加給年金額39万円 = 年額106万円

となります。

また、老齢基礎年金70万円は在職老齢年金による支給停止の対象ではないため、全額支給されます。

経過的加算

 

「経過的加算」は、年金制度の変更によって受給額が急に減らないように設けられた調整額です。

特に日本の公的年金では、65歳以降の老齢厚生年金に上乗せされる加算を指すことが一般的です。

簡単に言うと、

また、20歳前や60歳以降に厚生年金へ加入していた期間がある人などは、その期間が老齢基礎年金に十分反映されないため、その分を補う意味でも経過的加算が支給されることがあります。

 

どんな人が対象?

例えば、

  • 20歳前から厚生年金に加入していた
  • 60歳以降も厚生年金に加入して働いていた
  • 制度改正の影響を受ける世代

などの人が対象になる場合があります。対象かどうかや金額は、加入期間や生年月日によって異なります。

基本月額

 

「基本月額」とは、在職老齢年金などで年金の支給停止額を計算するときに使う、老齢厚生年金のうち「報酬比例部分」だけを月額に直したものです。

ここで重要なのは、老齢厚生年金の総額を単純に1/2で割るわけではない、という点です。

老齢厚生年金には、報酬比例部分のほかに、

加給年金額、繰下げ加算額、経過的加算額

などが含まれることがあります。

しかし、在職老齢年金の調整で問題にするのは、主として「働いていた期間の報酬に応じて発生した老齢厚生年金部分」です。

そのため、老齢厚生年金の額から、加給年金額、繰下げ加算額、経過的加算額を除き、純粋な報酬比例部分だけを取り出します

その報酬比例部分の年額を12で割ったものが「基本月額」です。 つまり、

基本月額
= 報酬比例部分の年額 ÷ 12
= 老齢厚生年金の額から加給年金額・繰下げ加算額・経過的加算額を除いた額 ÷ 12

ということです。

たとえば、老齢厚生年金の年額が120万円でも、その中に加給年金額20万円、経過的加算額4万円が含まれている場合、基本月額の計算対象になるのは120万円ではありません。

計算対象は、

120万円 − 20万円 − 4万円 = 96万円

したがって、

96万円 ÷ 12 = 8万円

となり、この8万円が基本月額になります。

ここで除外される加給年金額などは、本人の過去の報酬に比例して発生する部分ではなく、扶養家族の有無や制度移行上の調整などによって加算される性質のものです。

そのため、在職老齢年金の支給停止調整では、これらを含めず、本人の報酬比例部分だけを基礎にして計算します。

要するに、基本月額とは、

「老齢厚生年金のうち、本人の報酬比例部分だけを1か月分に換算した金額」

と理解すればよいです。

 

基本月額とは、老齢厚生年金の支給額を計算する際の「土台になる月額」のことです。

実務や制度説明でよく使われますが、法律上の正式名称というよりは計算上の概念だと考えると分かりやすいです。


 

基本月額はどうやって決まる?

 

基本月額は、主に次の要素から計算されます。

  • 平均標準報酬額
    (標準報酬月額+標準賞与額を平均したもの)

  • 生年月日によって決まる給付乗率
    (例:平成15年4月以降は 5.481/1000

イメージとしては、

平均標準報酬額 × 給付乗率 = 基本月額

という関係です。


 

なぜ「月額」で考えるのか

 

年金は本来「年額」で支給されますが、

  • 加給年金

  • 在職老齢年金

  • 支給停止調整

などの場面では、月単位での計算が必要になります。
そのため実務では、「年額 ÷ 12」ではなく、最初から基本月額という形で整理しておくと扱いやすい、という背景があります。


 

実務的な理解のしかた

実務や説明の場面では、

  • 「老齢厚生年金の基本月額」
    報酬比例部分の1か月あたりの金額

と理解しておけば、ほぼ困りません。

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