厚生年金保険法
加給年金額

便宜上

受給権者 = 夫 

配偶者 = 妻 として記述

 

■ ① 加給年金の位置づけ(まず本質)

老齢厚生年金に付く“家族手当”

扶養している配偶者(妻)や子がいる場合に上乗せ

  •  老齢厚生年金は、現役時代の「報酬」に代わる所得保障として支給されます。しかし、現役時代の報酬には、通常、配偶者(妻)や子を扶養するための「家族手当」が含まれていることが少なくありません。
  •  そこで、老齢厚生年金においても、これに見合う給付として、いわば「年金版の家族手当」に相当する加算が設けられました。これが「加給年金額」です。
  •  本来、「報酬比例」を原則とする厚生年金において、家族構成という生活保障上の必要性に着目して設けられた、例外的な「定額給付」である点に大きな特徴があります。

 

ポイント

  • 加給年金=年金版の家族手当
  • 20年以上の厚生年金加入が原則〔240月〕
  • 受給権取得当時に扶養家族が必要
  • 後から結婚しても加算されない
  • 配偶者(妻)は65歳未満
  • 子は18歳年度末まで(障害の子は20歳未満)
  • 第3子以降は約3分の1
  • 特別加算は配偶者(妻)のみ
  • 改定率は新規裁定者
  • 配偶者(妻)が65歳になると原則終了し振替加算へ移行
  • 配偶者(妻)自身が一定の老齢厚生年金・障害年金を受けられる場合は支給停止となる

 

目 次

  1. 支給要件
  2. 支給額
  3. 特別加算額
  4. 加給年金額の加算対象となる配偶者・子はいつの時点で判定される?
  5. 減額改定
  6. 配偶者加給年金額の支給停止

支給要件

 

加給年金額は、老齢厚生年金の受給権者(夫)が次のすべてを満たす場合に加算されます。

要件 内容
厚生年金被保険者期間が240か月(20年以上)あること(中高齢の短縮特例を含む
老齢厚生年金の受給権取得当時、生計維持している家族がいること

 

生計維持している家族

  • 65歳未満の配偶者(妻)
  • 18歳到達後最初の3月31日までの子
  • 20歳未満で障害等級1・2級の子

ポイント

「取得した当時」が重要

老齢厚生年金を取得した時点で扶養家族がいなければ、その後結婚や出生があっても加給年金は付きません


繰上げ受給

老齢厚生年金を繰上げても、

加給年金は65歳になるまで付きません。


特別支給の老齢厚生年金

65歳前でも

定額部分の支給が開始する際加給年金が付きます。

老齢厚生年金 加給年金
報酬比例部分のみ ×
定額部分開始
65歳以降

繰下げ受給

繰下げ中は加給年金は支給されません。

受給開始後に加算されますが、

加給年金自体は繰下げ増額の対象外です。

  • 繰下げのメリットがでるのはおよそ12年後です。加給年金額が加算される老齢厚生年金を繰下げると、単純に受け取れる加給年金額が減ることとなるため、メリットがでる時期はさらに遅くなります。

支給額

覚えるポイント

  • 第3子以降は約3分の1
  • 特別加算は配偶者(妻)だけ → (趣旨)高齢配偶者(妻)の生活保障強化
  • 改定率は新規裁定者 → 受給者が高齢でも常に新規裁定者の改定率を使う
  • 100円単位で四捨五入

 

■ 金額の基本構造(法44条2項)

区分 対象 加給年金額の算定方法
配偶者(妻)対象の加給年金額 配偶者(妻) 224,700円 × 改定率 + 特別加算
子対象の加給年金額 第1子 224,700円 × 改定率
第2子 224,700円 × 改定率
第3子以降 74,900円 × 改定率

■ 計算の流れ

  1. 基準額(224,700 or 74,900)
  2. × 改定率
  3. 端数処理(100円単位)
  4. 配偶者(妻)なら特別加算を足す

 

加給年金額の端数処理

加給年金額は、

基準額 × 改定率

によって計算します。

この計算によって端数が生じた場合には、次のように処理します。(法44条2項)

計算後の端数 端数処理
50円未満 切り捨て
50円以上100円未満 100円に切り上げ

つまり、

加給年金額の端数処理は「100円単位の四捨五入」

と考えることができます。


具体例

例えば、改定率を乗じた後の金額が次のようになった場合です。

224,742円

→ 端数は42円
→ 50円未満なので切り捨て
224,700円

一方、

224,768円

→ 端数は68円
→ 50円以上なので100円に切り上げ
224,800円

となります。つまり、見るべきなのは100円未満の部分です。

0円~49円 → 切り捨て
50円~99円 → 100円に切り上げ

と覚えておくと分かりやすいでしょう。


根拠条文

 

厚生年金保険法44条2項

配偶者に係る加給年金額は、224,700円に改定率を乗じて得た額とし、子についても所定の基準額に改定率を乗じて計算します。

その際、

50円未満の端数が生じたときは切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは100円に切り上げる


ポイント

加給年金額の端数処理

50円未満 → 切捨て
50円以上100円未満 → 100円に切上げ

したがって、

100円単位の四捨五入

です。

10円単位ではありません。


■ 覚え方(シンプル)

  • 224,700 → 基本
  • 74,900 → 3人目
  • 配偶者 (妻)→ プラスαあり

(妻)補足ポイント

特別加算額

趣旨

配偶者一般的に)が65歳になるまで老齢基礎年金が支給されないため、

その間の年金水準を補う制度です。


特徴

 

老齢厚生年金の「受給権者(夫)」の生年月日 「配偶者加給年金額」に加算される特別加算の額
 昭和9年4月2日~昭和15年4月1日  (33,200円)×(改定率)
 昭和15年4月2日~昭和16年4月1日  (66,300円)×(改定率)
 昭和16年4月2日~昭和17年4月1日  (99,500円)×(改定率)
 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日  (132,600円)×(改定率)
 昭和18年4月2日以後  (165,800円)×(改定率)

ポイント

配偶者加給年金

224,700円 + 特別加算 165,800円

=390,500円

これは、 老齢基礎年金の満額のベースとなる金額780,900円の約半額となるよう設計されています。

  • ようするに、妻が65歳未満の場合において、妻が65歳以後支給を受ける老齢基礎年金の半額を保障しようとするものです。

 

 

振替加算・特別加算の支給額整理表

区分 根拠法 対象者 生年月日の範囲 支給額の特徴
振替加算 国民年金法 老齢基礎年金の受給権者(妻) 大正15年4月2日 ~ 昭和41年4月1日 妻の生年月日が早いほど額が大きい
特別加算 厚生年金保険法 老齢厚生年金の受給権者(夫) 昭和9年4月2日 ~ 昭和18年4月1日 夫の生年月日が遅いほど額が大きい(最大)

押さえておくポイント

  • 振替加算は「妻」の生年月日が基準

  • 特別加算は「夫」の生年月日が基準

  • 両者は

    • 対象者

    • 金額が大きくなる方向

なので、混同注意です。

加給年金額の加算対象となる配偶者・子はいつの時点で判定される?

 

加給年金額について注意したいのが、配偶者や子との生計維持関係を「いつ」の時点で判定するのかという点です。

老齢厚生年金の加給年金額は、原則として、老齢厚生年金の受給権を取得した当時に、受給権者によって生計を維持していた配偶者または子がいる場合に加算されます。

したがって、老齢厚生年金の受給権を取得した後に結婚した場合や、受給権取得後に養子縁組をして子との生計維持関係が生じた場合には、原則として、その配偶者や子を対象とする加給年金額は加算されません。

たとえば、老齢厚生年金の受給権を取得した時点では子がいなかった方が、その後、10歳の子と養子縁組をして、その子の生計を維持するようになったとしても、そのことだけを理由として、養子縁組をした月の翌月から加給年金額が加算されるわけではありません。

これは、厚生年金保険法第44条第1項が、加給年金額の対象となる配偶者または子について、「受給権者がその権利を取得した当時」その者によって生計を維持していた者と定めているためです。

対象となる家族は、次のいずれかに該当する必要があります。

  • 65歳未満の配偶者
  • 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子
  • 20歳未満で、障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある子

なお、老齢厚生年金の受給権を取得した時点では、その年金額の計算の基礎となる厚生年金の被保険者期間が240月未満であったものの、その後240月以上となった場合には、その「240月以上となるに至った当時」に加給年金額の要件を判定することになります。

そのため、「受給権を取得した後は、どのような場合でも新たに加給年金額が加算されることはない」というわけではありません。

 

障害基礎年金の「子の加算」との違い

この点は、障害基礎年金における子の加算とは取扱いが異なるため、特に注意が必要です。

障害基礎年金では、受給権が発生した時点ですでに生計を維持していた子だけでなく、障害基礎年金の受給権を取得した後に出生した子など、受給権取得後に新たに生計維持関係が生じた子についても、一定の要件を満たせば子の加算の対象となります。

これに対して、老齢厚生年金の加給年金額は、原則として**「受給権を取得した当時」**の家族関係・生計維持関係を基準として判定します。

つまり、両制度には次のような違いがあります。

制度 受給権取得後に新たに生計維持する子ができた場合
老齢厚生年金の加給年金額 原則として加算されない
障害基礎年金の子の加算 要件を満たせば加算の対象となる

老齢厚生年金の加給年金額を検討する際には、単に「現在、65歳未満の配偶者や一定年齢以下の子を扶養しているか」だけではなく、その配偶者や子が、法律上の基準となる時点ですでに受給権者によって生計を維持されていたかを確認することが重要です。

【根拠条文:厚生年金保険法第44条第1項】

 

胎児であった子が出生した場合

老齢厚生年金の受給権を取得した当時、受給権者(夫)の子がまだ胎児であった場合には、その子は、受給権取得当時から受給権者(夫)によって生計を維持されていた子とみなされます。

そのため、その子が出生したときは、出生した月の翌月から加給年金額が加算されることとなり、老齢厚生年金の年金額が改定されます。(厚生年金保険法44条3項)

 

ポイント

  • 受給権取得時には胎児であっても対象となる
  • 出生後に初めて加給年金額の対象となる
  • 年金額の改定は出生月の翌月から行われる

 

具体例

老齢厚生年金の受給権を取得した時点で、配偶者(妻)が妊娠中であったとします。

その後、子が11月に出生した場合には、その子は受給権取得当時から生計維持関係にあったものとみなされ、12月分から加給年金額が加算されます。

 

減額改定

 

■ ① 結論(まず一言)

加給年金は「扶養関係がなくなったら翌月から外れる」


■ ② 減額改定の基本ルール(法44条4項2号

対象者が要件を満たさなくなったとき
その月の翌月から加給を外す


■ ③ ポイント(重要)

 

■ 生計維持関係が切れた場合

配偶者(妻)が 受給権者(夫)による生計維持の状態がやんだとき


■ 効果

その月の翌月から加給年金額は加算されない


■ 条文

法44条4項2号


■ ④ なぜ重要か(本質)

加給年金は

「扶養している家族」に対する上乗せ


■ だから

扶養がなくなれば

即アウト


■ ⑤ 他の減額事由(全体整理)

 

■ 配偶者(妻)

  • 死亡
  • 離婚
  • 生計維持関係消滅
  • 65歳到達

■ 子

  • 死亡
  • 婚姻
  • 養子縁組(配偶者(妻)以外
  • 離縁
  • 18歳年度末到達(原則)
  • 障害消滅
  • 20歳到達

■ ⑥ 特に重要な論点

 

■ 配偶者(妻)65歳に達した場合

加給年金額の対象となっている配偶者(妻)65歳に達したときは、加給年金額は減額改定されます。

これは、配偶者(妻)が老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているかどうかを問いません。

したがって、配偶者(妻)が老齢基礎年金を受給できない場合であっても、65歳に到達した時点で加給年金額は終了します。(厚生年金保険法44条4項4号)

 

ポイント

  • 配偶者(妻)65歳到達すると加給年金額は終了する
  • 老齢基礎年金を実際に受給しているかどうかは関係ない
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合でも、加給年金額は減額改定される

加給終了

→ 代わりに

振替加算 へ移行

■ ⑦ 例外(超重要)

 

■ 大正15年4月1日以前生まれ

65歳でも終了しない


■ ⑧ よくある誤り

 

❌ 生計維持は関係ない

めちゃ重要


❌ 当月から減額

翌月から


❌ 65歳=必ず終了

例外あり  大正15年4月1日以前生まれ


■ ⑨ まとめ

 

✔ 原則

要件喪失 → 翌月改定

配偶者加給年金額の支給停止

 

配偶者(妻)自身が一定の年金を受けられる場合は、

配偶者(妻)分の加給年金額は支給停止となります。


加給年金額が支給停止となる年金

年金 条件
老齢厚生年金 被保険者期間20年以上(中高齢短縮特例含む)
障害厚生年金 1~3級
障害基礎年金 支給停止されていないもの

障害手当金は対象外です。


趣旨

加給年金は家族手当としての性格を持つため、

配偶者自身が十分な老齢厚生年金や障害年金を受けられる場合には、

二重の生活保障とならないよう支給停止されます。

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