厚生年金保険法
加給年金額

  •  老齢厚生年金は、現役時代の「報酬」に代わる所得保障として支給されます。しかし、現役時代の報酬には、通常、配偶者や子を扶養するための「家族手当」が含まれていることが少なくありません。
  •  そこで、老齢厚生年金においても、これに見合う給付として、いわば「年金版の家族手当」に相当する加算が設けられました。これが「加給年金額」です。
  •  本来、「報酬比例」を原則とする厚生年金において、家族構成という生活保障上の必要性に着目して設けられた、例外的な「定額給付」である点に大きな特徴があります。

 

目 次

  1. 支給要件
  2. 支給額
  3. 特別加算額
  4. 減額改定
  5. 配偶者加給年金額の支給停止

支給要件

 

加給年金額は、老齢厚生年金の受給権者が、次のすべての要件を満たしているときに加算される。(法44条1項)

 

支給要件(すべて)
  1.  年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数240以上中高齢の短縮特例に該当するときは、その月数)であること。(昭和60年附則61条1項)
  2.  受給権者がその権利を取得した当時、その者によって生計を維持されていた次のいずれかの者がいること。
    ア. 65歳未満配偶者
    イ. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある
    ウ. 20歳未満で障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある子
  • 原則として、「240か月以上の厚生年金保険の被保険者期間を有している被保険者一般的に65歳以上の夫65歳未満の配偶者一般的に妻または子がいるとき加給年金額が加算されます
  • 老齢厚生年金の受給権を取得したとき被保険者期間が240か月以上であればその取得した当時」、配偶者または子がいることを要件に加給年金額が加算されます
  • 老齢厚生年金の受給権を取得した当時は単身者でその後婚姻をしたとしても加給年金額は加算されません
  • 中高齢の短縮特例があるため、「被保険者期間の月数が240か月未満の場合には、加給年金額は加算されないとはいえません
  • 受給権者がその権利を取得した後に婚姻をして65歳未満の配偶者を有したとしても加給年金額は加算されません
  1. 老齢厚生年金を繰上げても受給権者が65歳に達するまで加給年金額は加算されません
  2. なお、特別支給の老齢厚生年金については、定額部分の支給が開始する際、一定の要件を満たしていれば、65歳未満であっても加給年金額が加算されます。
  • 老齢厚生年金を繰下げると加給年金額は繰下げ受給開始時期から加算されることになりますまた加給年金額に繰下げによる増額はありません
    繰下げのメリットがでるのはおよそ12年後です。加給年金額が加算される老齢厚生年金を繰下げると、単純に受け取れる加給年金額が減ることとなるため、メリットがでる時期はさらに遅くなります。特に、繰下げ待機期間中に配偶者が65歳に達した場合、その間の加給年金額は受け取れないまま権利が消滅するため、繰下げは慎重に判断する必要があります。

 

参照 ⇨ 振替加算(老齢基礎年金の額)国民年金法

支給額

 

加給年金額の支給額は次の通りである。(法44条2項)

 

 

加給年金額の算定表

区分 対象 加給年金額の算定方法
配偶者対象の加給年金額 配偶者 224,700円 × 改定率 + 特別加算
子対象の加給年金額 第1子 224,700円 × 改定率
第2子 224,700円 × 改定率
第3子以降 74,900円 × 改定率

補足ポイント

  • 改定率:物価・賃金改定等により毎年度見直される率
  • 特別加算:配偶者加給年金にのみ加算(生年月日等により金額が異なる)

  • 子の加給年金は、第1子・第2子と第3子以降で金額が異なる点が重要です。改定率を無視すれば、第1子・第2子と比べると、第3子以降の子は、「3分の1」の支給額となります。

  • 加給年金額に係る改定率老齢厚生年金の受給権者の年齢にかかわらず毎年度原則として、「新規裁定者の改定率により改定します

加給年金額の支給額50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げる。(法44条2項かっこ書)

  • 加給年金額などのベースとなるものの額に係る端数処理は100円単位での四捨五入です

特別加算額

 

老齢厚生年金の受給権者一般的に)が昭和9年4月2日以後生まれの者であるときは、配偶者加給年金額に、次の額(特別加算額)が加算される。(昭和60年附則60条2項)

 

老齢厚生年金の「受給権者(夫)」の生年月日 「配偶者加給年金額」に加算される特別加算の額
 昭和9年4月2日~昭和15年4月1日  (33,200円)×(改定率)
 昭和15年4月2日~昭和16年4月1日  (66,300円)×(改定率)
 昭和16年4月2日~昭和17年4月1日  (99,500円)×(改定率)
 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日  (132,600円)×(改定率)
 昭和18年4月2日以後  (165,800円)×(改定率)
  1. 「妻が65歳に達するまで」の世帯の年金水準と、
  2. 第3号被保険者等であった妻が満額の老齢基礎年金を受給できる「65歳以後」の水準との

著しい格差が生じることのないように経過措置として、配偶者加給年金本体部分に特別加算を行うこととされ、特別加算を合算した配偶者加給年金額が老齢基礎年金の満額の2分の1の額となるように設定されています。(2024年12月3日第22回社会保障審議会年金部会資料)

 

  • 昭和61年4月以後、被扶養配偶者の国民年金が強制加入となり、若い世代ほど加入期間が長く、65歳からの老齢基礎年金の額が多くなりますので、65歳前と65歳後の年金額の差(世代間ギャップ)を補てんするため、若い世代ほど特別加算額が高くなっています(若い世代ほど老齢基礎年金の額が高く、65歳前後での金額の格差が大きいため、特別加算の額も高くなるということです)。
  • 年金受給権者(夫)の配偶者(妻)が65歳未満である場合は、妻にはまだ老齢基礎年金が支給されないため、夫と妻の両方が65歳以上である場合と比べて世帯の年金水準は低くなります。この差を縮小するために特別加算が加算されます。
  • 加給年金額のベースとなる金額は224,700円、特別加算のベースとなる金額は165,800円ですから、合計390,500円となり、これは老齢基礎年金の満額のベースとなる金額780,900円の半額に相当します。
    ようするに、妻が65歳未満の場合において、妻が65歳以後支給を受ける老齢基礎年金の半額を保障しようとするものです。
  •  

 

振替加算・特別加算の支給額整理表

区分 根拠法 対象者 生年月日の範囲 支給額の特徴
振替加算 国民年金法 老齢基礎年金の受給権者(妻) 大正15年4月2日 ~ 昭和41年4月1日 生年月日が早いほど額が大きい
特別加算 厚生年金保険法 老齢厚生年金の受給権者(夫) 昭和9年4月2日 ~ 昭和18年4月1日 生年月日が遅いほど額が大きい(最大)

押さえておくポイント

  • 振替加算は「妻」の生年月日が基準

  • 特別加算は「夫」の生年月日が基準

  • 両者は

    • 対象者

    • 生年月日の見方

    • 金額が大きくなる方向
      なので、混同注意です。

減額改定

 

加給年金額の加算の対象となっている配偶者または子が、次のいずれかに該当するに至ったときは、その者に係る加給年金額を加算しないものとし、その該当するに至った月の翌月から、年金額が改定される。(法44条4項)

 

加給年金額の減額改定
  1.  死亡したとき。
  2.  受給権者による生計維持の状態がやんだとき
  3.  配偶者が、離婚または婚姻の取消しをしたとき。
  4.  配偶者が、65歳に達したとき。
  5.  が、養子縁組によって受給権者の「配偶者以外の者の養子」となったとき。
  6.  養子縁組による子が、離縁をしたとき。
  7.  が、婚姻をしたとき。
  8.  (障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある子を除く)について、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。
  9.  障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある子18歳に達した日以後の最初の3月31日までの間にある子を除く)について、その事情がやんだとき。
  10.  が、20歳達したとき。
  • 一定の配偶者が65歳に達したときは、加給年金額が加算されなくなったあと、当該配偶者に支給される老齢基礎年金に「振替加算」が加算されます。
  • 配偶者が65歳に達したときはたとえ配偶者が老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていなくても減額改定は行われます
  • 障害の状態にない子が、「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間に障害等級1級または2級の障害の状態に該当するに至ったときは当該子が20歳に達するまで加給年金額は加算されます例えば19歳になってはじめて障害状態になっても加給年金額は加算されません

大正15年4月1日以前生まれ(=昭和61年4月1日において60歳以上)の配偶者(一般的に妻)については、配偶者が65歳に達しても、引き続き加給年金額加算される。(昭和60年附則60条1項)

  • 配偶者に係る加給年金額は、「配偶者が65歳に達したときに加算されなくなりますが、「大正15年4月1日以前生まれの配偶者の場合には年齢制限が設けられていないため65歳以上であっても加給年金額の加算の対象となります

 

参照 ⇨ 障害基礎年金の「子のみの失権事由」

配偶者加給年金額の支給停止

 

加給年金額の対象となっている配偶が、次に掲げる老齢若しくは退職または障害を支給事由とする給付であって政令で定めるもの(2.及び3.についてはその全額につき支給を停止されているものを除く)の支給を受けることができるときは、その間、加給年金額のうち当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給が停止される。(法46条6項、令3条の7)

 

配偶者加給年金額の支給停止
  1.  老齢厚生年金
    1. その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上(20年以上)(中高齢の短縮特例に該当するときは、その月数)であるものに限る
  2.  障害厚生年金1級~3級
    1. 配偶者が障害厚生年金1級~3級の支給を受けることができる
  3.  国民年金法による障害基礎年金 = まとまった金額になる
    1. 配偶者が国民年金法による障害基礎年金等(その全額につき支給を停止されているものを除く)の支給を受けることができる など
  • 障害厚生年金は1級から3級までです。2級も3級も基本的な額は変わりません(違いは、配偶者加給年金額の有無です)。
  • 障害手当金の支給を受けることができるときは支給停止されません

2以上の種別の厚生年金被保険者期間を有する場合では合算した被保険者期間が240か月20年以上あるときに配偶者加給年金額の停止の要件に該当します。(法78条の29)

  • なお被用者年金一元化がされる前はそれぞれの加入期間が240か月20年未満の場合には加給年金額は停止されることはありませんでした
  • 家族手当の性格を有する加給年金額は配偶者が長期間働いていて老齢厚生年金等の受給権を有しているような場合には、「支給停止されます

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