国民年金法
老齢基礎年金の額(振替加算

  • 厚生年金保険の被保険者(夫)の配偶者(専業主婦)は、旧法の国民年金制度では任意加入とされていた。当然任意加入をしなければ年金額は低額(または無年金)となるが、その代わり夫の厚生年金保険に「加給年金額」という家族手当の性格を持つ加算額を加算することで、世帯全体での年金額が適正なものとなるように制度設計されてきた。
  • ただし、この場合、離婚をしたときに問題が生じる。離婚をしたときは、加給年金額こそなくなるが、夫には厚生年金保険の老齢年金があるため、十分な年金権が保障される一方で、妻には低額な年金額若しくは年金権そのものが発生しないという事態が生じる。
  • そこで、新法になった際に、「専業主婦の年金権の確立」を目的に専業主婦を「第3号被保険者として強制加入させることとなり、妻は老齢基礎年金を受給することが可能となった(そのため、低額の妻の年金を補完する加給年金額を加算させる必要がなくなるため、妻が65歳になったタイミングで加給年金額は打ち切ることとなる)。
  • しかし、年金制度が変更になる際には、改正の狭間に該当する者が出てくる。すなわち、今回の場合、被保険者期間の中途までは任意加入の取扱いを受け中途から第3号被保険者の取扱いを受ける者が出現した。任意加入していなかった期間が長い妻は、その後国民年金に「第3号被保険者」として加入したとしても、国民年金への加入期間は短く、老齢基礎年金の額は低額にならざるをえなかった。そこで、このような制度の改正の狭間で不利益を生じる者に対する経過措置として妻の年金額を増額する振替加算」が行われることになった。

目次

  1. 振替加算の支給要件
  2. 老齢基礎年金の受給権者(妻)が年上の場合
  3. 振替加算と繰上げとの関係
  4. 振替加算と繰下げとの関係
  5. 振替加算相当額の老齢基礎年金
  6. 振替加算が支給停止される場合

振替加算の支給要件

 

  • 振替加算の支給要件は次の通りである。(昭和60年附則14条第1項)

 

振替加算の支給要件
  1.  老齢基礎年金の受給権者)が、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた者であること。
  2.  65歳に達した日において、次のア.またはイ.のいずれかに該当するその者の配偶者)によって生計を維持し、かつ、65歳に達した日の前日において、その配偶者()が受給権を有する年金たる給付の加給年金額の計算の基礎となっていること。

ア. 厚生年金保険の被保険者期間または平成24年一元化法改正前の共済組合の組合員等期間が、240か月(20年)(中高齢の短縮特例に該当する場合には、その月数)以上である老齢厚生年金または平成24年一元化法改正前からの退職共済年金受給権者

イ. 同一の支給事由に基づく障害基礎年金の受給権を有する障害厚生年金または平成24年一元化法改正前からの障害共済年金受給権者

 

  • 1.における大正15年4月2日以後生まれた者とは新法対象者という意味です。「昭和41年4月1日までに生まれた者とは新法が施行する昭和61年4月1日においてすでに20歳以上の者であるという意味です
    したがって、「大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれたとは新法対象者であるが、20歳から60歳までの40年間をすべて第3号被保険者になることができない者ということを意味します
    この生年月日は必ず暗記する必要がありますリズムよく以後世に良い良い振替加算と覚えます
  • 2.のア.の配偶者の要件である被保険者期間が240か月以上には2以上の種別の厚生年金被保険者期間を有する場合、「合算した期間が240か月以上あるときも含まれます。(経過措置政令69条)
  • 2.の.で「同一の支給事由に基づく障害基礎年金の受給権を有する」とされているのは、障害厚生年金または障害共済年金に配偶者加給年金額が加算されるのは、障害等級1級または2級に限られているためです。

振替加算の対象となる者に係る生計維持関係の認定、「振替加算の加算開始事由に該当した日における生計維持関係により行います
(平成23年3月23日年発0323第1号)

 

振替加算の支給要件

 

妻の要件

要件 内容
大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること。
65歳に達した日において、要件に該当するその配偶者(夫)によって生計を維持されていたこと。
65歳に達した日の前日において、その配偶者(夫)がその受給権を有する3年たる給付の加給年金額の計算の基礎となっていること。

 

夫の要件(いずれか)

要件 内容
老齢厚生年金 又は 退職共済年金(※被保険者期間が240か月以上であるものに限る)の受給権者
障害厚生年金 又は 障害共済年金 の受給権者(※同一の支給事由による 障害基礎年金 の受給権を有する者に限る)

 

振替加算は配偶者の加給年金額を振り替えるものですしたがって振替加算は配偶者に加給年金額が加算されていることが前提となります

上記要件2.は配偶者の年金に加給年金額が加算されるケースを規定しています

加給年金額が加算されるケースには

) 配偶者が原則20年240か月以上の被保険者期間がある老齢厚生年金等の受給権者の場合

) 配偶者が障害厚生年金等の受給権者の場合

 の2つのケースがあります

 

  • 家族手当の性格を持つ加給年金額老齢厚生年金だけでなく、「障害厚生年金にも存在します
    いずれの場合も振替加算を受け取る側一般的に妻の生年月日が大正15年4月2日から昭和41年4月1日生まれ(以後世に良い良い)の場合でなければなりません
  • なお、加給年金額については、 加算対象となっている配偶者(妻)が老齢基礎年金、障害基礎年金など一定の年金を受けることができるようになった場合には、 支給停止されることになっています。

老齢基礎年金の受給権者(妻)が年上の場合

 

老齢基礎年金の受給権者が65歳に達した日以後に、その配偶者が老齢厚生年金の受給権を有することになったときは、受給権を有することとなった月の翌月から振替加算が加算される。(昭和60年附則14条2項)

  • 通常加給年金額や振替加算の説明においては夫が年上で妻が年下のモデルケースで説明が行われます
    しかし当然ながら妻が年上のケースも存在しますこの場合には夫が老齢厚生年金の受給権を取得したときにすでに妻は65歳に達しているため夫には加給年金額は支給されずいきなり妻に振替加算が加算されることになります

 

 

振替加算と繰上げとの関係

 

振替加算は老齢基礎年金に加算されるものであるが、その老齢基礎年金の「繰上げ支給」を受けている妻であっても振替加算は、原則として、65歳から加算される。(昭和60年附則14条1項)

  • 老齢基礎年金を繰上げ受給したことにより受給権を取得した場合であっても振替加算は行われず65歳から加算が行われることとなります老齢基礎年金の繰上げと同時に、「振替加算も繰上げられるわけではありません

 

 

振替加算と繰下げとの関係

 

老齢基礎年金の「繰下げ支給」を受けている妻の場合は、繰下げ支給と同時に振替加算の加算が行われる。(昭和60年附則14条1項)

この場合、振替加算額に繰下げによる額の加算は行われない。(昭和60年附則14条1項)

  • 振替加算額には繰下げによる額の加算は行われません。→ 繰り上げ期間中、丸々振替加算されず、額の加算もない
  • 配偶者が老齢厚生年金の繰下げ支給を受けている場合であっても、妻が「65歳から支給される老齢基礎年金振替加算が加算される。(昭和60年附則14条1項)
  • 老齢基礎年金の受給権者65歳から受給する老齢基礎年金に振替加算は行われます。「夫が老齢厚生年金の支給を受けたときから加算されるわけではありません

 

 

振替加算相当額の老齢基礎年金

 

保険料納付済期間と保険料免除期間(学生納付特例または納付猶予期間を除く)を有していない者には、老齢基礎年金の受給権は発生しないが、このような場合であっても、合算対象期間と学生納付特例期間を合計した期間のみが10年以上あり、かつ、振替加算の要件を満たす者に対しては、老齢基礎年金の受給権が発生したものとみなして、振替加算額に相当する額の老齢基礎年金が支給されることになっている
(昭和60年附則15条、平成16年附則19条4項、平成26年附則14条3項)

  • 「合算対象期間と学生納付特例期間を合計した期間のみ」とあり、納付猶予期間は含まれていません。これは、この特例が設けられた当時には納付猶予制度そのものが存在しておらず、その後制度創設後も、要件に追加される改正が行われていないためです。したがって、納付猶予期間を有する人は、そもそもこの「振替加算相当額の老齢基礎年金」の対象外となります(全くこだわるところではありません)。
  • 合算対象期間と学生納付特例期間を合計した期間のみで10年以上あるときです保険料納付済期間が1か月でもある場合にはこの振替加算相当額の老齢基礎年金とはなりません

 

 

振替加算が支給停止される場合

 

振替加算が加算された老齢基礎年金は、老齢基礎年金の受給権者)が、障害基礎年金障害厚生年金または平成24年一元化法改正前からの障害共済年金等を受けることができるときは、その間、振替加算は支給停止される。ただし、障害基礎年金等がその全額につき支給停止されている場合には、振替加算は支給停止されない。(昭和60年附則16条1項、昭和61年措置令28条)

  • 障害等級3級であっても適用されます
  • 障害基礎年金の支給を受けることができるということは少なくとも老齢基礎年金の満額の支給を受けることができることを意味し振替加算による救済は不要であるため支給が停止されます
  • 厚生年金保険法で学習しますが、「障害厚生年金の額は報酬比例制のため必ずしも高額とはいえませんが1級及び2級ならば障害基礎年金との2階建年金となるしたとえ1級及び2級で障害基礎年金の受給権がない場合や3級の場合であっても最低保障厚生年金保険法50条3項の規定が設けられているため支給が停止されます

 

障害基礎年金(2級)を受給中である妻が、65歳になり、老齢基礎年金の受給権も取得しました。「老齢基礎年金」と「障害基礎年金」の両方の支給を受けることはできず、一人一年金の原則により1つを選択することになります。

  1.  その際、障害基礎年金を選択した場合
  2. 振替加算は支給停止されることになります。
  3. その後、障害の状態が軽減し障害基礎年金が支給停止となった場合
  4. 老齢基礎年金の支給を受けることになりますが、このとき、振替加算も支給されることになります。

 

参考として振替加算と遺族基礎年金・遺族厚生年とのケースについても考えてみます

  1.  「老齢基礎年金+振替加算」の受給権者(妻)が、夫の死亡により「遺族基礎年金+遺族厚生年金」の受給権を取得したときには、
  2. 遺族基礎年金+遺族厚生年金」の組合せ(選択①)と
  3. 老齢基礎年金+振替加算+遺族厚生年金」の組合せ(選択②)のいずれかを選択して支給を受けることになります。
  4. この場合、選択②の組合せを選択したときであっても、振替加算は引き続き加算されることになります

 

  • 振替加算が加算された老齢基礎年金は老齢基礎年金の受給権者が遺族厚生年金を受けることができるときであっても支給停止されることはありません
  • 障害基礎年金等がその全額につき支給停止されている場合には振替加算は行われます

 

具体例
 障害基礎年金を受給中である66歳の女性(昭和28年4月2日生まれで、第2号被保険者の期間は有していないものとする)は、67歳の配偶者(昭和27年4月2日生まれ)により生計を維持されており、女性が65歳に達するまで当該配偶者の老齢厚生年金には配偶者加給年金額が加算されていた。
 この女性について、障害等級が3級程度に軽減したため、受給する年金を障害基礎年金から老齢基礎年金に変更した場合、老齢基礎年金と振替加算が支給される

 

 

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