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ソリューション行政書士法人
〒108-0075 東京都港区港南2-16-2 太陽生命品川ビル28F
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時季指定権 | 労働者が取得日を指定する権利 |
| 時季変更権 | 事業の正常な運営を妨げる場合に限り変更できる |
| 計画的付与 | 労使協定が必要・届出不要・5日を超える部分のみ |
| 計画的付与中 | 時季指定権・時季変更権ともに行使不可 |
| 年休管理簿 | 保存5年(当分の間3年) |
| 年休中の賃金 | ①平均賃金・②通常賃金・③標準報酬月額30分の1(③は労使協定も必要) |
| 買上げ | 法定年休の事前買上げは禁止、法定外年休は可 |
| 時効 | 2年 |
| 不利益取扱い | 年休取得を理由として、権利行使を抑制するほどの経済的不利益を与える制度は無効となり得る |
目次
年次有給休暇について非常に重要なのが、**白石営林署事件(最高裁昭和48年3月2日判決)**です。
この判決は、年次有給休暇について、
「労働者が会社に休暇を申請し、会社が承認することによって初めて取得できる」
という仕組みではないことを明確にしました。
営林署に勤務していた労働者が、具体的な日を指定して2日間の年次有給休暇を申し出て、その日は出勤しませんでした。
しかし、使用者側は年次有給休暇を「不承認」とし、その2日間を欠勤として扱い、賃金をカットしました。
そこで労働者が、年次有給休暇の取得に使用者の承認は必要ないとして、カットされた賃金の支払いを求めました。
最高裁は、労働基準法39条の「請求」という言葉について、次のように判示しました。
年次有給休暇の権利は、労働基準法39条1項・2項の要件が充足されることによって、法律上当然に労働者に生ずる権利です。
したがって、
労働者が会社に請求したことによって初めて年休の権利が発生するものではありません。
また、当時の労働基準法39条3項(現行5項)にいう「請求」とは、年次有給休暇そのものを請求するという意味ではなく、
「いつ年次有給休暇を取得するのか」という休暇の時季の「指定」
を意味するとしました。
つまり、
年休の権利そのものは法律上当然に発生する
↓
労働者が行うのは、
「年休をください」という権利発生の請求ではなく、「この日に年休を取ります」という時季の指定
ということになります。
最高裁は、労働基準法39条が、使用者は年次有給休暇を「与えなければならない」と規定している点についても説明しています。
年次有給休暇は、実際には、労働者自身がその日に働かないことによって実現するものです。
そのため、使用者が積極的に何かを「与える」というよりも、使用者に求められるのは、
労働者が権利として有する年次有給休暇を享受することを妨げてはならない
という、不作為を基本的内容とする義務であるとしました。
さらに最高裁は、労働者が、自分の有する年次有給休暇の日数の範囲内で、
「○月○日から○月○日まで休みます」
というように、具体的な休暇の始期と終期を指定した場合について判断しています。
労働者が具体的な時季を指定すると、原則として、
その指定によって年次有給休暇が成立し、その労働日における就労義務が消滅する
としました。
ただし、使用者には、労働者が指定した時季に年休を取得させると**「事業の正常な運営を妨げる」場合に、他の時季へ変更する時季変更権**があります。
したがって、
労働者の時季指定
↓
原則として年次有給休暇が成立
↓
その日の就労義務が消滅
という効果が生じますが、
使用者が適法に時季変更権を行使した場合には、その指定した時季に年休を取得することはできない、という関係になります。
最高裁は、この関係について、
「休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生する」
と表現しています。
そして、
年次有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、それに対する使用者の「承認」という考え方を入れる余地はない
と明確に判示しました。
つまり、年次有給休暇は、
労働者「有給を取らせてください」
↓
会社「承認します」
↓
年休成立
という許可制ではありません。
原則的な仕組みは、
労働者「○月○日に有給を取得します」
↓
時季指定の効果が発生
↓
会社が適法に時季変更権を行使しなければ、その日に年休取得
というものです。
「有給休暇は会社が許可して初めて取れる」という理解は誤りです。
会社に認められているのは、年休を「承認するか、不承認にするか」を自由に決める権限ではありません。
認められているのは、法律上の要件を満たす場合に、**労働者が指定した時季を別の時季に変更する「時季変更権」**です。
年10日以上の有給がもらえる人については、
会社は最低5日は「必ず取らせる義務」がある
というルールです。
会社が勝手に決めていいわけではなく、
事前に「この日に有給を取ってもらうよ」と伝える
本人の意見を聞く
できるだけその意見を尊重する
話し合いベースで決める必要あり
最大5日まで
理由:
残りは本人が自由に使うため
例:
すでに3日使っている
→ 会社が指定する必要はあと 2日だけ
半日有給 → OK(0.5日としてカウント)
時間単位有給 → ❌ 会社指定はできない
「その年に新しく付与される有給が10日以上の人」
※注意
繰越分を足して10日以上でも対象にはならない
年10日以上の人には
会社が5日取らせる義務あり
ただし
本人の意見を聞く必要あり
指定できるのは
最大5日まで
半日はOK、時間単位はNG
賃金を減額する
皆勤手当を不支給にする
賞与を減額する
昇給・賃上げの対象から外す
などの不利益な取扱いをすることには注意が必要です。
労働基準法136条は、
使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他の不利益な取扱いをしないようにしなければならない
としています。
ここで重要な最高裁判例が、**日本シェーリング事件(最判平成元年12月14日)**です。
会社では、従業員の前年の**「稼働率」**を計算し、
稼働率が80%以下の従業員は、翌年度の賃上げの対象から除外する
という「80%条項」を設けていました。
問題となったのは、この稼働率を計算するときに、通常の欠勤・遅刻・早退だけでなく、
年次有給休暇
生理休暇
産前産後休業
育児時間
労災による休業・通院
団体交渉や争議行為などの組合活動
によって働かなかった時間まで、「不就労」として稼働率を下げる方向に計算していたことです。
その結果、これらの権利を行使した労働者の稼働率が80%以下となり、賃上げを受けられない場合が生じていました。
最高裁は、まず、
出勤率の低下を防ぐため、稼働率の低い労働者について一定の経済的利益を得られない制度を設けること自体には、一応の経済的合理性がある
としました。
つまり、 「働かなかった日が多い人について、一定の給与上の取扱いを変える制度は、すべて違法」
というわけではありません。
例えば、
無断欠勤
遅刻
早退
など、労働基準法や労働組合法によって保障された権利の行使とは関係のない不就労を基礎として稼働率を計算するのであれば、その制度が直ちに違法となるわけではありません。
一方、 年次有給休暇など、法律によって労働者に保障された権利を行使した日まで「不就労」として扱う場合
には、別の問題が生じます。
最高裁は、
法律上の権利を行使したことによって経済的利益を得られなくなる制度が、その権利の行使を抑制し、法律がその権利を保障した趣旨を実質的に失わせる場合には、その制度は公序に反して無効になる
としました。
つまり、
「有給を取るのは自由です。ただし、有給を取って稼働率が80%以下になった人は賃上げしません」
という制度では、
労働者は、
「賃上げされなくなるなら、有給を取るのをやめよう」
と考えることになります。
これでは、形式上は年休を取得できても、経済的不利益によって年休取得を事実上抑制することになるため問題となります。
本件では、稼働率が80%以下になると、翌年度のベースアップを含む賃金引上げそのものから除外される仕組みでした。
しかも、その80%を計算する際に、
年次有給休暇など法律上保障された権利を行使した日まで不就労として算入
していました。
そのため最高裁は、
労基法・労組法上の権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分については、公序に反して無効
と判断しました。
ここは重要です。
最高裁は、
年次有給休暇を取得した結果、何らかの経済的不利益が生じれば、どのような場合でも直ちに無効になる
と判断したわけではありません。
問題になるのは、
その経済的不利益によって、労働者が年休などの法律上の権利を使うことをためらうほどの抑制効果があるか
という点です。
したがって、
制度の目的
だけではなく、
稼働率の基準が何%なのか
どのような不就労を算入しているのか
失われる経済的利益がどの程度なのか
実際に権利行使を抑制するほどの不利益なのか
などを総合的に判断することになります。
| 不就労の理由 | 稼働率低下の原因として扱うこと |
|---|---|
| 無断欠勤 | 原則として可能 |
| 遅刻・早退 | 原則として可能 |
| 年次有給休暇 | 権利行使を抑制する制度は問題 |
| 産前産後休業 | 権利行使を抑制する制度は問題 |
| 労災による休業 | 権利行使を抑制する制度は問題 |
| 正当な組合活動 | 権利行使を抑制する制度は問題 |
要するに、
「働かなかった」という結果だけを見て、すべて同じように扱うことはできません。
例えば、
無断欠勤が多い労働者には皆勤手当を支給しない
→ 年休などの権利行使とは関係がないため、直ちに違法とはいえません。
年休を1日取得するたびに出勤率を下げる
↓
出勤率が一定基準を下回る
↓
昇給・賃上げの対象から除外
という制度であれば、年休取得をためらわせる強い効果があります。
→ 年休権の行使を実質的に抑制するものとして無効となる可能性があります。
稼働率・出勤率を人事評価や賃金制度に利用すること自体が禁止されているわけではありません。
無断欠勤・遅刻・早退などを稼働率算定の対象とする制度には、一応の経済的合理性があります。
しかし、年次有給休暇など法律上保障された権利の行使まで不利益に評価する場合は注意が必要です。
経済的不利益が大きく、労働者に**「権利を使わない方が得だ」と思わせる制度**は、権利行使を抑制します。
その結果、法律が権利を保障した趣旨を実質的に失わせる場合には、その制度・労働協約条項は公序に反して無効となります。
「有給休暇を取った=会社への貢献度が低い」と単純に評価することはできません。
年次有給休暇は、労働基準法によって認められた労働者の権利です。
したがって、
年休を取得したことを理由に、賃上げ・昇給・賞与などについて大きな経済的不利益を与え、その結果として年休取得を事実上抑制する制度
は認められません。
欠勤等による低稼働率を評価する制度
→ それ自体は直ちに違法ではない
しかし、
年休など法律上の権利行使まで「不就労」として評価
↓
賃上げなどの経済的利益を失わせる
↓
権利行使を抑制する
↓
法律が権利を保障した趣旨を実質的に失わせる
↓
というのが、この判例の重要な考え方です。
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