事業者の講ずべき措置等

事業者の安全衛生上の措置は、大きく分けると次の2つです。

区分 主な内容
危険防止措置 機械、設備、回転部分、研削といし、丸のこ等による事故を防止する
作業環境整備措置 通路、照明、休養設備、清掃、便所等の職場環境を安全・衛生的に保つ

覚えておきたい主な数字は、

「機械間通路80cm以上」
「事務作業300ルクス以上」
「照明点検6箇月以内ごとに1回」
「大掃除6箇月以内ごとに1回」
「休養室は50人以上・女性30人以上」
「独立個室型便所の特例は常時10人以内」

 

目 次

  1. 危険防止措置
  2. 健康、風紀及び生命の保持のための措置(作業環境整備措置)

危険防止措置

 

事業者には、労働者が機械や設備等によって負傷することを防ぐため、必要な安全措置を講ずる義務があります。

事業者は、次の危険を防止するため、必要な措置を講じなければなりません。(法20条)

  1. 機械、器具その他の設備による危険
  2. 爆発性・発火性・引火性の物等による危険
  3. 電気、熱その他のエネルギーによる危険

「事業者の講ずべき措置」は、労働安全衛生法20条から25条の2までに基本的なルールが定められ、その具体的な安全基準が労働安全衛生規則等に規定されています。

機械に対する安全対策の基本は、労働者を危険源に接触させないことです。


機械の危険な部分には覆い・囲いを設ける

事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等のうち、労働者に危険を及ぼすおそれのある部分について、覆い、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければなりません。(則101条1項)

たとえば、モーター、歯車、ベルトなどの回転部分に労働者が触れることがないよう、カバーや囲いを設置します。

ポイント

機械安全の基本は、危険な部分との間に「適切な距離」を確保し、危険源に触れさせないことです。


機械の運転開始時には合図を行う

事業者は、機械の運転を開始する際、労働者に危険を及ぼすおそれがある場合には、一定の合図を定め、合図をする者を指名し、関係労働者に合図を行わせなければなりません。(則104条1項)

合図の方法には、たとえば次のものがあります。

  • 声がけ
  • ジェスチャー
  • ブザー
  • 放送・ページング
  • パトライト(回転灯)

切削屑の飛来を防止する

事業者は、切削屑が飛来することなどにより労働者に危険を及ぼすおそれがある場合、切削屑を生ずる機械に覆い又は囲いを設けなければなりません。(則106条1項)

ただし、作業の性質上、覆いや囲いを設けることが困難な場合には、労働者に適切な保護具を使用させることで対応することができます。


掃除・給油・修理等は原則として機械を停止する

事業者は、機械の刃部を除く部分について、次の作業を行う場合に労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、原則として機械の運転を停止しなければなりません。(則107条1項)

  • 掃除
  • 給油
  • 検査
  • 修理
  • 調整

ただし、機械を運転したまま作業を行わなければならない場合に、危険な箇所へ覆いを設けるなど、安全を確保するための措置を講じたときは例外となります。

たとえば、原材料の目詰まりを取り除く際には、可動部分に手や身体が巻き込まれる危険があります。

そのため、機械を停止するほか、必要に応じて、

  • 速やかに停止できるブレーキを設ける
  • 可動部分に覆いを設ける

などの措置が必要です。


頭髪や衣服の巻き込まれを防止する

事業者は、動力により駆動される機械について、作業中の労働者の頭髪又は被服が巻き込まれるおそれがある場合には、その労働者に適切な作業帽又は作業服を着用させなければなりません。(則110条1項)


回転する刃物を扱う作業では手袋を使用させない

事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物について、作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれがある場合には、労働者に手袋を使用させてはなりません。(則111条1項)

一見すると、手を保護するためには手袋をした方が安全に思えます。

しかし、回転部分に手袋が引っ掛かると、手ごと機械に巻き込まれるおそれがあります。

そのため、回転体への巻き込まれのおそれがある作業では、手袋の着用は禁止されています。


研削といしの安全措置

 

覆いの設置

事業者は、回転中の研削といしが労働者に危険を及ぼすおそれがある場合には、覆いを設けなければなりません。(則117条)

ただし、直径50ミリメートル未満の研削といしについては、この限りではありません。


作業開始前の試運転

事業者は、研削といしについて、次の時間以上の試運転を行わなければなりません。(則118条)

場面 試運転時間
その日の作業を開始する前 1分間以上
研削といしを取り替えたとき 3分間以上

最高使用周速度を超えて使用しない

事業者は、研削といしを、その最高使用周速度を超えて使用してはなりません。(則119条)


原則として側面を使用しない

事業者は、側面を使用することを目的として作られた研削といしを除き、研削といしの側面を使用してはなりません。(則120条)

研削といしの側面は、円周面と比較して衝撃に弱いためです。

研削といしの安全ポイント

「覆いを付ける」「試運転する」「最高使用周速度を守る」「原則として側面を使わない」


木材加工用丸のこ盤の安全措置

事業者は、木材加工用丸のこ盤について、反ぱつによって労働者に危険を及ぼすおそれがある場合には、割刃その他の反ぱつ予防装置を設けなければなりません。

また、製材用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤を除き、木材加工用丸のこ盤には、歯の接触予防装置を設けなければなりません。(則123条)

つまり、丸のこ盤については、

① 材料の反ぱつを防ぐ
② 労働者が刃に触れることを防ぐ

という2方向からの安全対策が必要となります。


 

健康、風紀及び生命の保持のための措置(作業環境整備措置)

 

事業者には、機械そのものの危険だけでなく、職場・作業場の環境を安全かつ衛生的な状態に保つ義務があります。

事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、

  • 通路
  • 床面
  • 階段
  • 換気
  • 採光
  • 照明
  • 保温
  • 防湿
  • 休養
  • 避難
  • 清潔

その他、労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければなりません。(法23条)

たとえば、

  • 山積みされた荷物の上での作業
  • 油で滑りやすくなった床での作業
  • 暗い場所での作業
  • 避難通路が物でふさがれている状態

などを放置しないことが求められます。


労働基準法にも類似する規定がある

労働基準法96条1項では、事業の附属寄宿舎について、使用者に次の措置を講ずることを求めています。

使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければなりません。


通路の安全

 

屋内通路

事業者は、屋内に設ける通路について、次の基準を守らなければなりません。(則542条)

屋内通路の基準
用途に応じた幅を確保する
つまずき・すべり・踏抜き等の危険がない状態に保つ
通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かない

機械間の通路

事業者は、機械と機械の間、又は機械とその他の設備との間に設ける通路について、幅80センチメートル以上としなければなりません。(則543条)

通路のポイント

「機械間の通路は80cm以上」


作業場所の照度

 

一般の作業場

事業者は、労働者を常時就業させる場所について、その作業面の照度を作業内容に応じて一定以上にしなければなりません。(則604条)

作業の区分 必要な照度
精密な作業 300ルクス以上
普通の作業 150ルクス以上
粗な作業 70ルクス以上

ただし、感光材料を取り扱う作業場、坑内の作業場その他特殊な作業場については例外があります。


事務所の照度

事務所では、労働者を常時就業させる室の作業面について、次の照度を確保する必要があります。(事務所則10条1項)

事務作業の区分 必要な照度
一般的な事務作業 300ルクス以上
付随的な事務作業 150ルクス以上

事務所則における「事務所」とは、建築物又はその一部で、事務作業に従事する労働者が主として使用するものをいいます。

照度の不足は、

  • 眼精疲労
  • 文字を読むための不自然な姿勢
  • 上肢への負担

などの健康障害につながるため、事務所の照度について最低基準が設けられています。

「一般的な事務作業」は従来の「精密な作業」「普通の作業」に相当し、「付随的な事務作業」は従来の「粗な作業」に相当します。(令和3年12月1日基発1201第1号)


照明設備の定期点検

事業者は、室の照明設備について、6箇月以内ごとに1回、定期に点検しなければなりません。(事務所則10条3項)

照明のポイント

一般的な事務作業は 300ルクス以上
照明設備は 6箇月以内ごとに1回点検


休憩・睡眠・休養のための設備

 

休憩設備

事業者は、労働者が有効に利用できる休憩設備を設けるよう努めなければなりません。(則613条)

これは義務ではなく、努力義務です。


睡眠・仮眠場所

事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要がある場合、又は就業途中に仮眠する機会がある場合には、適切な睡眠又は仮眠場所を設けなければなりません。(則616条1項)

この睡眠・仮眠場所は、男性用と女性用に区別して設置します。


休養室・休養所

事業者は、

常時50人以上の労働者を使用する場合 又は

常時30人以上の女性労働者を使用する場合

には、労働者が横になって休める休養室又は休養所を設けなければなりません。(則618条)

また、男性用と女性用に区別する必要があります。

休養室の基準

常時50人以上 または
常時女性30人以上

→ 男女別の休養室・休養所が必要


清掃等の実施

事業者は、作業場等について、次の清掃・衛生管理を行わなければなりません。(則619条)

措置 内容
大掃除 日常清掃とは別に、6箇月以内ごとに1回、定期かつ統一的に実施
ねずみ・昆虫等の調査 発生場所、生息場所、侵入経路、被害状況等を6箇月以内ごとに1回調査し、必要な防止措置を実施
殺そ剤・殺虫剤 法令に基づき承認された医薬品又は医薬部外品を使用

大掃除は6箇月以内ごとに1回


便所の設置基準

事業者は、作業場について、原則として男性用と女性用に区別して便所を設けなければなりません(則628条)

便器の必要数は、同時に就業する労働者数によって決まります。


男性用大便所

同時に就業する男性労働者数 必要な便房数
60人以内 1
60人超 60人を超える60人又はその端数ごとに1を加算

たとえば男性65人の場合は、2便房必要です。


男性用小便所

同時に就業する男性労働者数 必要な箇所数
30人以内 1
30人超 30人を超える30人又はその端数ごとに1を加算

たとえば男性65人の場合は、3箇所必要です。


女性用便所

同時に就業する女性労働者数 必要な便房数
20人以内 1
20人超 20人を超える20人又はその端数ごとに1を加算

たとえば女性65人の場合は、4便房必要です。


計算例

同時に就業する労働者が、

男性65人・女性65人

の場合には、

区分 必要数
男性用大便所 2便房
男性用小便所 3箇所
女性用便所 4便房

となります。


常時10人以内の場合の例外

作業場の便所は、原則として男性用と女性用に区別して設置しなければなりません。

しかし、住居用として建築された集合住宅の一室を事務所として使用している場合など、建物の構造上、

  • 男性用大便所
  • 男性用小便所
  • 女性用便所

をそれぞれ設けることが困難な場合があります。

そこで、同時に就業する労働者が常時10人以内の場合には、例外として、男女別に区別しない**「独立個室型の便所」**を設けることで足りることとされています。(則628条の2第1項)

便所の原則

原則:男女別

例外:同時就業10人以内

独立個室型便所で対応可能

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