厚生年金保険法
標準報酬

  • 標準報酬については、原則的には健康保険法における標準報酬と同様の取扱いとなります。
  • 厚生年金保険には、いわゆる「養育特例」の制度が設けられています。3歳未満の子を養育している場合、その間の標準報酬月額が養育前の標準報酬月額を下回る月については、報酬比例部分の計算において養育前の標準報酬月額であるとみなす取扱いとなっています。

 

目 次

  1. 報酬
  2. 賞与
  3. 現物給与
  4. 標準報酬月額の決定・改定
  5. 船員の標準報酬月額の特例
  6. 養育特例の要件

報酬

 

厚生年金保険法において「報酬」とは、賃金給料俸給手当賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいうが、「臨時に受けるもの」及び「3か月を超える期間ごとに受けるもの」は、除かれる。(法3条1項3号)

 

 ⇨ 賃金・報酬の定義

 ⇨ 各法律における比較

賞与

 

厚生年金保険法において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、「3か月を超える期間ごとに受けるもの」をいう。(法3条1項4号)

現物給与

 

報酬または賞与の全部または一部が、「通貨以外のもので支払われる」場合においては、その価額は、その地方の時価によって厚生労働大臣が定める。(法25条)

 

 ⇨ 各法律における「現物給与」「祝金等」

 ⇨ 現物給与の範囲・価額(各法令)

標準報酬月額の決定・改定

 

報酬月額の決定には、

  1. 定時決定(法21条)
  2. 資格取得時決定(法22条)
  3. 随時改定(法23条)
  4. 育児休業等終了時改定(法23条の2)
  5. 産前産後休業終了時改定(法23条の3)の5つの場合がある。

 

  1. 健康保険法においては、標準報酬月額の決定及び改定は「保険者等(厚生労働大臣または健康保険組合)が行いますが、
  2. 厚生年金保険法においては「実施機関」が行います。また、対象に「70歳以上被用者」が含まれます。

  ⇨ 健康保険法における等級区分の改定

船員の標準報酬月額の特例

 

船員たる被保険者の標準報酬月額の決定及び改定については、船員保険法標準報酬月額の規定の例による。(法24条の2)

  • 船員たる被保険者には定時決定は行われず、報酬月額の変更があった場合に改定が行われます。

養育特例の要件
(3歳未満の子を養育する場合の厚生年金の特例)

 

1 養育特例とは何か

 

3歳未満の子どもを養育する人は、育児の影響で給与が下がることがあります。

通常は 給与が下がる → 標準報酬月額が下がる → 将来の年金額も下がる という仕組みです。

しかし養育特例では給与が下がっても、年金の計算では「下がる前の給料」を使ってくれるという制度です。

 

つまり

  • 実際の給与 → 下がる

  • 年金計算 → 下がる前の給与で計算

 

という仕組みです。

 


 

2 適用される条件

次の条件を満たす人が対象です。

① 3歳未満の子を養育していること

② 標準報酬月額が養育前より下がっていること

③ 実施機関へ申出をすること

申出方法

被保険者の種類 申出方法
民間企業・私学 会社経由で申出
国家公務員・地方公務員 本人が直接申出

 

3 特例が適用される期間

開始と終了は次のとおりです。

 

開始

子どもを養育することになった月

 

終了

次のいずれかが起きたとき

  • 子どもが3歳になる

  • 被保険者資格を失う

  • 別の子で養育特例を受ける

  • 子どもが死亡した

  • 子どもを養育しなくなった

  • 育児休業による保険料免除が始まった

  • 産前産後休業による保険料免除が始まった


 

4 養育特例の重要ポイント

 

①理由は関係ない(平成17年3月29日保発0329003号・庁保発0329003号)

 

給与が下がった理由が

  • 時短勤務

  • 配置転換

  • その他など育児以外の理由でも適用されます。

 


 

②被保険者でなくなった後も適用される

 

「被保険者であった者」も対象になる場合があります。

 


 

5 保険料と年金額の違い(ここが重要)

養育特例では

項目 計算基準
年金額の計算 従前の標準報酬月額
保険料の計算 実際の標準報酬月額

つまり

保険料は安くなるが、年金は下がらない

という仕組みです。


 

6 具体例

産前の給与 30万円  復帰後の給与 20万円

時期 給与 健康保険:標準報酬月額 健康保険:保険料 厚生年金:保険料計算の標準報酬 厚生年金:年金額計算の標準報酬
①休業前 30万円 30万円 約17,000円 30万円 30万円
②産前産後休業中 0円 30万円 保険料は免除 30万円 30万円

③復帰直後(改定前)

参照 ⇨ 健康保険法における育児休業等終了時改定

  • 育児休業等終了時改定により改定された標準報酬月額は、「育児休業等終了日の翌日(=職場復帰の日から起算して2か月を経過した日の属する月」の翌月から適用される。(健康保険法43条の2第2項)
20万円 30万円 約17,000円 30万円 30万円
④産前産後休業終了時改定後 20万円 20万円 約11,000円 20万円 30万円(養育特例)

7 結論(制度のメリット)

養育特例を使うと

  • 保険料 → 給与が下がった分だけ安くなる

  • 年金 → 下がらない

 

つまり子育てで給与が下がっても将来の年金が減らない制度です。

 


 

8 よくあるケース

典型例

  • 女性が出産して育児

  • 時短勤務で給与減

 

しかし実は父親でも対象になります

例えば

  • 妻が出産

  • 父親が子どもと同居して養育

 

この場合も適用されます。

 

 

 

 

 

3歳に満たない子養育する被保険者等が、実施機関申出をしたときは、当該「子を養育することとなった日の属する月」から「次のいずれかに該当するに至った日の翌日の属する月の前月」までの各月のうち、その標準報酬月額基準月の標準報酬月額を下回る月については、「従前標準報酬月額」が当該期間に係る年金額を計算する際の標準報酬月額とみなされる。(法26条1項)

 

養育特例の対象となる期間の終期
  1.  当該3歳に達したとき。
  2.  「被保険者」の資格喪失事由のいずれかに該当するに至ったとき。
  3.  当該子以外の子について養育特例の適用を受ける場合における当該子以外の子を養育することとなったとき。
  4.  当該子が死亡したときその他当該被保険者が当該子を養育しないこととなったとき。
  5.  当該被保険者に係る育児休業期間中の保険料免除の規定の適用を受ける育児休業等を開始したとき。
  6.  当該被保険者に係る産前産後の保険料免除の規定の適用を受ける産前産後休業を開始したとき。

 

実施機関への申出(法26条1項かっこ書・4項)

  • 第1号厚生年金被保険者及び第4号厚生年金被保険者…その使用される事業所の事業主を経由して実施機関申出をする
    • 民間企業 + 私学
  • 第2号厚生年金被保険者及び第3号厚生年金被保険者…(事業主を経由せず)実施機関申出をする
    • 国家公務員 + 地方公務員

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