国民年金法
第1号被保険者の独自給付 死亡一時金

制度の趣旨(まずここ)

死亡一時金とは

保険料が掛け捨てになるのを防ぐための給付


つまり

  • 年金を受ける前に死亡
  • でも保険料は払っている

その分を遺族に返すイメージ

第1号被保険者として36か月以上の保険料を納付した人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく死亡した場合に、その遺族に死亡一時金が支給されます。

参照 → 遺族の範囲

 

 

死亡一時金の全体像

死亡一時金は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

① 第1号被保険者として保険料を納めていたか

② 納付割合で換算して36か月以上あるか

③ 老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがないか

④ 遺族基礎年金を受けられる遺族がいないか

⑤ 寡婦年金も成立するなら、どちらを選択するか

この順番で確認すると、複雑に見える死亡一時金の制度を整理しやすくなります。


まとめ

死亡一時金の核心は、

「第1号被保険者として一定の保険料を納めた人が、年金を受け取らないまま死亡した場合に、その保険料納付に対応して遺族に支給される一時金」

という点です。

特に重要なのは、次の3点です。

① 36か月は単純な加入月数ではなく、納付割合で換算する

② 遺族基礎年金が成立する場合は、原則として死亡一時金は支給されない

③ 寡婦年金とは選択、遺族厚生年金とは併給可能

最後は、

「納付相当36か月+年金未受給」

を死亡一時金の基本形として押さえておくと、制度全体を理解しやすくなります。

 

目次

  1. 支給要件(死亡者)
  2. 死亡一時金が支給されない場合
  3. 死亡一時金の額
  4. 支給の調整
第1号被保険者の独自給付

支給要件(死亡者)

 

支給要件(死亡者側)

 

✔ 要件①(最重要)

納付相当月数が36か月以上(3年以上)


✔ 要件②

老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがない


理由 すでに給付を受けているなら二重給付になるため


 

36か月要件の考え方(核心)

ここが最大のポイント

単純に月数を足すのではない


✔ 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者期間について、次の月数を合算します。

保険料の状況 36か月要件への算入
保険料納付済 1か月 → 1か月
4分の1免除(4分の3納付) 1か月 → 4分の3か月
半額免除(半額納付) 1か月 → 2分の1か月
4分の3免除(4分の1納付) 1か月 → 4分の1か月

つまり、

実際に保険料を納付した割合に応じて月数を換算し、その合計が36か月以上あるか

 参照 老齢基礎年金 基本年金額(免除期間及び未納期間を有する場合)

 


カウントしないもの(超重要)

次の期間は、原則として36か月要件の計算には入りません。

  • 全額免除期間
  • 法定免除期間
  • 学生納付特例期間
  • 納付猶予期間
  • 合算対象期間

理これらは、死亡一時金の計算上、保険料を納付した月として扱われないためです。

また、死亡一時金は第1号被保険者として納付した保険料を基礎とする独自給付です。

したがって、第3号被保険者期間を36か月要件に算入することはできません。

 

36か月要件の覚え方

「第1号として実際に納めた割合で換算して36か月」

と覚えておくと整理しやすくなります。

 

重要な範囲

見る期間 死亡日の属する月の前月まで

ここは 寡婦年金と同じルール

 

まとめ

「納付相当36か月以上+年金未受給なら死亡一時金」


 

要件② 老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがないこと

死亡した人が、

  • 老齢基礎年金
  • 障害基礎年金

の支給を受けたことがある場合、死亡一時金は支給されません。

すでに本人が年金給付を受けている以上、死亡一時金によってさらに保険料納付に対する給付を行う必要がないためです。

旧国民年金法による老齢年金や障害年金(障害福祉年金を除く)などについても、一定の場合には同様に扱われます。


 

死亡一時金が支給されない場合

 

遺族基礎年金を受けられる遺族がいる場合

死亡した人の死亡によって遺族基礎年金を受けることができる遺族がいる場合には、原則として死亡一時金は支給されません。

つまり、

死亡一時金より遺族基礎年金が優先

という関係です。

ただし、死亡日の属する月に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合には、例外として死亡一時金が支給されることがあります。

たとえば、死亡によって子に関する遺族基礎年金の受給権が発生したものの、その死亡月中に年齢要件を外れて受給権が消滅するようなケースが考えられます。

死亡一時金の額

 

死亡一時金の額は、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての保険料納付済期間等に応じて、次表の金額が支給される。
(法52条の4第1項)→ 金額が安い

 

合算した月数 死亡一時金の額
36か月以上180か月未満 120,000円
180か月以上240か月未満 145,000円
240か月以上300か月未満 170,000円
300か月以上360か月未満 220,000円
360か月以上420か月未満 270,000円
420か月以上 320,000円

 

  • 死亡一時金の額は、「120,000円から320,000円です

死亡一時金は「年金たる給付」ではなく一時金であるため、年金額のような改定率による自動改定の対象とはなりません。

 

付加保険料を納めていた場合

死亡した人が、付加保険料を36か月以上納付していた場合には、

8,500円

が死亡一時金に加算されます。

これは寡婦年金との重要な違いの一つです。

支給の調整

 

■ ① 結論(まず一発)

寡婦年金と死亡一時金は“選択制(どちらか一方だけ)”で、しかも後から変更できない


■ ② 通常の併給調整との違い(超重要)

 

 

通常の年金の併給調整では、複数の年金の受給権が発生したうえで、一方の支給が停止されるという仕組みがとられることがあります。

これに対して、死亡一時金と寡婦年金については、国民年金法52条の6による特別な選択関係となっています。

そのため、通常の併給調整と同じ感覚で考えないことが重要です。


■ 役割の違い

制度 性格
寡婦年金 年金(分割支給)
死亡一時金 一時金

同じ原資 → どちらか1つだけ


 

■ 実務的な選び方(重要)

▼ 若い妻(60歳まで遠い)

寡婦年金の総額が大きい可能性


▼ 高齢(60歳直前)

死亡一時金の方が有利な場合あり


▼ 厚生年金あり

特別支給の老齢厚生年金が優先されることも

その場合

寡婦年金がもらえない → 死亡一時金を選ぶ


■ 他の制度との関係(ここが混乱ポイント)


 

死亡一時金については、相手となる給付によって結論が変わります。

ここは実務でも混乱しやすいところです。

特に、

「遺族年金が出るなら死亡一時金は全部出ない」

と覚えてしまうと間違えます。

支給されないのは原則として遺族基礎年金との関係です。

遺族厚生年金と死亡一時金は併給可能です。

組み合わせ 結果
寡婦年金 × 死亡一時金 選択(変更不可)
死亡一時金 × 遺族基礎 遺族基礎優先
死亡一時金 × 遺族厚生 両方OK

■ 一番大事な覚え方

「寡婦年金は60~65歳の年金」

これを軸に考えると迷わない

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