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厚生年金保険の被保険者または被保険者であった者が死亡した場合に、国民年金の遺族基礎年金に上乗せする形で、遺族厚生年金がその者の遺族に支給されます。遺族が子のない配偶者には遺族基礎年金は支給されないため、この場合、遺族厚生年金のみが支給されます。
目 次
厚生年金保険の被保険者が月の「末日」に死亡したときは、被保険者の資格喪失日は翌月の1日になりますが、遺族厚生年金の受給権は「死亡した日」に発生します。(昭和40年9月3日庁保文発6738号)
短期要件と長期要件の両方に該当するときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、短期要件にのみ該当し、長期要件には該当しないものとみなされる。(法58条2項)
障害等級「3級」に該当する障害厚生年金の受給権者である被保険者が死亡した(被保険者等要件の①に該当し、③には該当しない)場合は、保険料納付要件を満たしているときに、一定の遺族に遺族厚生年金が支給されます。
| 補足 |
|---|
| 失踪の宣告を受けた者は、普通失踪の場合、行方不明となってから7年を経過した日に死亡したものとみなされる。(民法30条、31条) |
遺族厚生年金では、亡くなった人が一定の条件を満たしている必要があります。
その中でも特に重要なのが、
の2つです。
ただし、すべての場合に「保険料納付要件」が必要になるわけではありません。
遺族厚生年金は、実務上、
の2つに分けて整理すると非常にわかりやすくなります。
次のいずれかに該当する人が死亡した場合です。
これは長期間年金制度に加入していた人なので、改めて保険料納付状況を細かく確認しなくても遺族保障を認める、という考え方です。
障害厚生年金1級・2級を受給している人が死亡した場合も、保険料納付要件は不要です。
つまり、
については、
保険料納付要件を確認しない
という点が重要です。
一方、比較的短期間の加入者については、保険料納付要件が問題になります。
次のような場合です。
会社員など、厚生年金加入中に死亡したケースです。
たとえば、
というケースです。
この場合も遺族厚生年金の対象になります。
短期要件では、
国民年金保険料を一定程度きちんと納めていること
が必要です。
保険料納付要件は、次のどちらかを満たせばOKです。
死亡日の前日時点で、
死亡月の前々月までの被保険者期間について、
を合計した期間が、
全体の3分の2以上
あることが必要です。
たとえば、
国民年金加入期間が30か月なら、
そのうち20か月以上が
であれば条件を満たします。
現在は特例があります。
死亡日が
令和18年3月31日まで
にある場合で、
死亡日において65歳未満なら、
直近1年間に保険料未納期間がなければOKです。
昔に未納があっても、
「最近1年間ちゃんと納めていた」
なら救済される制度です。
65歳以上で死亡した場合は、
「直近1年間未納なし」の特例は使えません。
そのため、原則どおり「3分の2要件」で判断されます。
ここは実務でも重要です。
単なる「納付済」だけでなく、
も保険料納付要件に含まれます。
坑内員・船員の
の特例計算は適用されません。
次のどちらかを満たす。
納付済+免除等が3分の2以上
直近1年間に未納なし(令和18年3月31日まで・65歳未満)
被保険者等要件のうち、
保険料納付要件とは、次のいずれかに該当することをいう。(法58条1項ただし書、昭和60年附則64条2項)
| 保険料納付要件 |
|---|
| (原則) 死亡日の前日において、当該死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間(学生納付特例期間または納付猶予期間を含む)とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であること。 |
| (特例) 令和18年3月31日前にある死亡については、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの直近1年間が保険料納付済期間と保険料免除期間(学生納付特例期間または納付猶予期間を含む)のみ(直近1年間に保険料未納期間がないこと)であること。 ただし、死亡日において65歳以上である場合にはこの特例は適用されない。 |
| 判定ステップ | 要件内容 | 該当した場合 | 保険料納付要件 |
|---|---|---|---|
| ① | 25年要件を満たす | はい | 納付要件 不要(長期要件) |
| ② | 障害厚生年金(1級・2級)の受給権者である | はい | 納付要件 不要(短期要件) |
| ③ | 厚生年金保険の被保険者である | はい | 次へ進む |
| ④ | 初診日等から5年以内の死亡である | はい | 納付要件 必要(短期要件) |
| ④ | 初診日等から5年以内の死亡でない | いいえ | 不支給 |
| ③ | 厚生年金保険の被保険者でない | いいえ | 不支給(※原則) |
長期要件(25年要件 or 障害厚生年金1・2級受給権者)
→ 保険料納付要件は 不要
短期要件(被保険者+初診日から5年以内死亡)
→ 保険料納付要件は 必要
どちらにも該当しない場合
→ 不支給
遺族厚生年金を受けることができる「遺族」は、被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、死亡者によって生計を維持されていた「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」または「祖父母」であって、妻以外の者にあっては、次の要件を満たしている場合である。(法59条1項)
| 遺族の範囲 | 要件 |
|---|---|
| 妻 | 要件なし |
| 夫・父母・祖父母 | 「55歳以上」 ※ただし、(遺族基礎年金の受給権を有する夫を除き)60歳に達するまでの間は支給停止 |
| 子・孫(「現に婚姻していないこと」) | ① 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者 ② 20歳未満であって「障害等級に該当する」障害の状態にある者 |
妻は年齢要件なし(ただし生計維持関係が前提)。
夫・父母・祖父母は
55歳以上で受給権発生
(遺族基礎年金の受給権を有する夫を除き)実際の支給開始は60歳から
子・孫は
原則「18歳年度末まで」
障害がある場合は20歳未満まで
失踪の宣告を受けた被保険者であった者に係る遺族厚生年金を受けることができる遺族の生計維持関係は、行方不明となった当時で判断する。
(法59条1項ただし書)
夫、父母、祖父母の場合、55歳以上が要件ですが、遺族基礎年金の受給権を有する夫を除き、60歳に達するまでは支給停止となります。
(法65条の2)
参照 → 遺族の範囲(制度別)
このように、遺族厚生年金の支給は短期間であることも考えられます。
遺族の順位は、次の通りである。(法59条2項)
| 遺族の順位 |
|---|
|
第1順位は「配偶者」と「子」となりますが、配偶者と子が同時に受給権を取得したときは、「配偶者」に優先支給されます。(法66条1項)
| 順位 | 労災保険 遺族(補償)等年金 | 国民年金 遺族基礎年金 | 厚生年金保険 遺族厚生年金 |
|---|---|---|---|
| 第1順位 | 配偶者 | 配偶者・子 | 配偶者・子 |
| 第2順位 | 子 | ― | 父母 |
| 第3順位 | 父母 | ― | 孫 |
| 第4順位 | 孫 | ― | 祖父母 |
| 第5順位 | 祖父母 | ― | ― |
| 第6順位 | 兄弟姉妹 | ― | ― |
労災保険
→ 第1順位の配偶者から順に、後順位へ「転給」される仕組みあり。
遺族基礎年金(国民年金)
→ 受給権者は「配偶者と子」に限定(順位の概念は実質なし)。
遺族厚生年金
→ 第1順位は「配偶者・子」
→ 子がいない場合などに、父母 → 孫 → 祖父母へ。
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