労災保険法 
適用事業・暫定任意適用事業

労災保険法では、原則として労働者を1人でも使用する事業は、労災保険の適用事業となります(労災保険法3条1項)。

これまで例外として、個人経営の農業・林業・水産業の一部については「暫定任意適用事業」とされ、労災保険への加入が任意とされてきました。

しかし、2026年の法改正により、この暫定任意適用制度は廃止されることが決定しました。

 

 

<最新>2031年度から労災保険を義務化

2026年7月10日、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律が成立し、同年7月17日に公布されました。

改正により、現在「暫定任意適用事業」とされている農林水産業の小規模な個人経営についても、今後は労災保険が強制適用されます。

さらに、2026年9月には、

2031年度から労災保険を義務化する方針が政府として正式に決定した

と報じられています。

したがって、これまで労災保険への加入が任意とされてきた小規模な個人経営の農業・林業・水産業についても、2031年度からは原則として労災保険への加入が必要になります。

※改正法上は「2026年7月17日の公布の日から起算して5年以内の政令で定める日」から施行するとされているため、具体的な施行日は今後政令で定められます。


まとめ

  • 労災保険は、原則として労働者を1人でも使用する事業に強制適用
  • 労災保険上の「労働者」は、原則として労働基準法9条の労働者と同じ
  • 正社員だけでなく、パート・アルバイト・試用期間中の労働者等も対象
  • 外国人労働者、技能実習生についても原則として適用
  • 現在は、個人経営の農業・林業・水産業の一部が「暫定任意適用事業」
  • 2026年の法改正により「暫定任意適用事業」の廃止が決定
  • 2031年度から、小規模な個人経営の農林水産業にも労災保険を強制適用
  • したがって、今後は「農業だから」「従業員が5人未満だから」という理由だけで労災保険に加入しなくてもよいという取扱いはなくなる

 

目 次

  1. 適用労働者
  2. 外国人労働者
  3. 暫定任意適用事業
  4. 官公署に対する適用
  5. 労働法令の国及び公共団体についての適用

適用労働者

 

労災保険法の適用を受ける労働者を「適用労働者」といいます。

労災保険法には「労働者」の定義はありませんが、労働基準法9条の労働者と同じと解されています。

したがって、

  • 正社員
  • パート
  • アルバイト
  • 試用期間中
  • 臨時雇用
  • 日雇労働者
  • 季節労働者

など、事業主に使用され、賃金を支払われる者であれば、名称を問わず適用されます。

試用期間中でも、雇入れの日から労災保険が適用されます。

外国人労働者

 

労災保険は国籍を問いません。

したがって、

  • 外国人労働者
  • 技能実習生
  • 育成就労外国人
  • 特定技能外国人
  • 不法就労外国人

であっても、労基法上の労働者に該当すれば労災保険が適用されます。

技能実習生も入国1年目から労災保険の対象です。(平成29年10月27日基発1027第52号)

入管法による在留資格又は就労資格を有しない外国人労働者(不法就労外国人)であっても、労働基準法9条に規定する労働者に該当すれば、労災保険法が適用される。(昭和43年10月9日基収4194号、平成11年3月31日基発168号)

実習実施者が暫定任意適用事業に該当する場合を除き、技能実習生に対しても、労災保険法が強制適用されます。
なお、暫定任意適用事業であっても、労災保険に係る保険関係の成立又はこれに類する措置(労災保険の代替措置として民間の任意保険への加入)を講ずることが求められています。(技能実習制度運用要領第4章)

 参照 ⇨ 国民健康保険と技能実習における外国人第1号被保険者

暫定任意適用事業

現在の制度

労災保険は原則として強制適用ですが、次の個人経営の一部事業は、当分の間暫定任意適用事業とされています。

事業 要件
農業・畜産・養蚕 個人経営で常時5人未満
林業 個人経営で常時労働者を使用せず、かつ年間延べ300人未満
水産業 個人経営で常時5人未満かつ5トン未満の漁船等

ただし、

  • 法人経営
  • 地方公共団体
  • 船員を使用する船舶所有者
  • 一定の危険・有害業務

は暫定任意適用事業にはなりません。

 


2031年度から何が変わる?

 

これまでの制度では、例えば、

個人で農業を営み、従業員を3人雇用している農家

の場合、一定の条件を満たせば「暫定任意適用事業」となり、労災保険への加入は原則として任意でした。

しかし、2031年度からは、この例外制度が廃止されます。

そのため、

労働者を1人でも雇用していれば、原則として労災保険への加入が必要

という、他の多くの業種と同じルールになります。

 

現在

 

個人経営の農業 + 常時5人未満

→ 一定の場合、労災保険は任意

 

 

2031年度から

 

個人経営の農業 + 労働者を1人以上雇用

→ 労災保険が原則として強制適用

農業だけではなく、これまで暫定任意適用とされてきた林業・水産業についても対象となります。


なぜ義務化されるのか?

 

農林水産業では、農業機械の使用、高所作業、林業作業、船上作業など、重大な労働災害につながるリスクがあります。

一方、これまで小規模な個人経営については、労働実態の把握や保険料徴収などの事情から、例外的に任意適用とされてきました。

しかし、

「同じ労働者であるにもかかわらず、勤務する事業の規模や業種によって労災保険による保護に差が生じる」

という問題があります。

そのため、労働者保護の観点から暫定任意適用制度を廃止し、農林水産業についても労災保険を原則として全面適用することになりました。


農業関係の特別加入をしている場合

 

現在の制度でも、個人経営の農業が暫定任意適用事業に該当する場合であっても、事業主が一定の農業関係の労災保険特別加入を行うことなどにより、労働者について労災保険の保険関係が成立する場合があります。

ただし、2031年度から暫定任意適用制度が廃止されれば、

「労働者を雇用している事業そのもの」が原則として労災保険の強制適用事業

となります。

なお、「労働者に対する労災保険」と「事業主本人等の特別加入」は別の制度です。

労働者を雇用しているからといって、個人事業主本人が自動的に労災保険の給付対象になるわけではありません。

事業主本人や家族従事者等について労災保険による補償を受けたい場合には、引き続き「特別加入」の検討が必要となります。


今後の注意点

 

2031年度の義務化に向けて、小規模な農林水産業の事業者についても、

  • 労働者に該当する者の整理
  • 雇用契約書・労働条件通知書の整備
  • 賃金台帳の作成
  • 労働時間の把握
  • 労働保険の成立手続
  • 労働保険料の申告・納付

などの労務管理体制を整えていく必要があります。

特に農業では、家族従事者、季節労働者、短期アルバイト、知人による作業の手伝いなど、「労働者なのか、それとも単なる手伝いなのか」が問題になるケースがあります。

労災保険の義務化に伴い、この「労働者性」の整理もこれまで以上に重要になります。

官公署に対する適用

 

■ 結論(まずこれだけ)

公務員は原則「労災保険」ではなく、別の制度で守られる


 

■ ① なぜ労災保険が適用されないのか?

理由はシンプルです

すでに専用の制度があるから

  • 国家公務員 → 国家公務員災害補償法
  • 地方公務員 → 地方公務員災害補償法

つまり、 二重に保険をかけないため


 

■ ② 適用されない対象(原則)

 

✔ 公務員(基本)

  • 国家公務員
  • 地方公務員(正規職員)

労災保険は使わない


 

■ ③ 例外

一部だけ労災が使われる

 

✔ 地方公務員の「現業の非常勤職員」

これだけ特別扱い

労災保険が適用される


 

■ 現業って何?

民間と同じような仕事

例:

  • 水道事業
  • 清掃業務
  • バス運転など

 


✔ つまり

現業 × 非常勤 → 労災保険適用

 


 

■ ④ 国の直営事業(今は存在しない)

昔は

  • 国鉄
  • 電電公社
  • 郵便(昔の形態)

今は民営化されている

 


 

■ ⑤ 独立行政法人の扱い

ここも分かれます

種類 労災
行政執行法人(印刷局など) ❌ 労災なし
それ以外の独法 ✅ 労災あり

 

■ ⑥ 超シンプルまとめ

  • 公務員 → 労災じゃない(専用制度)
  • 例外 → 現業の非常勤だけ労災
  • 独法 → 一部だけ例外あり
 
 
  身分 労働基準法 労災保険法 雇用保険法 健康保険法 厚生年金保険法
現業 非現業
一般職の国家公務員   適用除外

適用除外

  • 国の直営事業

適用除外

  • 官公署の事業

(現業を除く)

退職給付の内容が求職者給付・就職促進給付の内容を超える者は適用除外

  • 国等 
    → 承認不要
  • 都道府県等 
    → 大臣の承認
  • 市町村等 
    → 局長の承認

適用

  • ただし、給付・保険料徴収は行われない
適用
一般職の地方公務員   一部適用 非常勤職員のみ適用

適用除外

  • 官公署の事業

(現業を除く)

独立行政法人 行政執行法人の職員 国家公務員型 適用 適用除外
中期目標管理法人の職員 非公務員型 適用 適用 適用 適用 適用
国立研究開発法人の職員 非公務員型

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