厚生年金保険法 
障害厚生年金の額

  •  障害厚生年金の額は、「報酬比例部分」の年金額をもとに算定されます。この場合、被保険者期間の月数が300か月に満たないときは300か月で計算します
  •  1級及び2級に該当する者に支給される障害厚生年金の額には、受給権者によって生計を維持している65歳未満の配偶者があるときには、「配偶者加給年金額」が加算されます。
  •  障害厚生年金の受給権者の障害の程度が軽くなったり、重くなったりした場合には、年金額が改定されます。

 

覚えるべきポイントは次の5つです。

  1. 障害厚生年金は報酬比例で計算する(定額ではない)
  2. 1級=2級の1.25倍
  3. 被保険者期間が300か月未満なら300か月みなし
  4. 障害認定日の属する月までは計算に含み、その後は含まない
  5. 配偶者加給年金額は1級・2級のみで、3級にはない

このあたりは、遺族厚生年金の「300か月みなし」や老齢厚生年金の「報酬比例部分」と横断的に比較しながら覚えると理解しやすくなります。

 

目 次

  1. 障害厚生年金の額
  2. 300か月みなし
  3. 障害厚生年金の額の計算に係る被保険者期間の月数
  4. 最低保障額
  5. 配偶者加給年金額
  6. 障害の程度の増進による改定請求

障害厚生年金の額

 

年金額の基本構造

障害厚生年金の計算式は、 基本的に

老齢厚生年金の報酬比例部分

と同じです。


2級・3級


1級

2級の額の

です。

等級 年金額
1級 2級の1.25倍
2級 基本額
3級 基本額

障害基礎年金との違い

障害基礎年金

1級・2級のみ で、

定額です。 例えば

  • 収入が高い人
  • 収入が低い人

でも同じ金額になります。

令和8年度(2026年度)は、障害基礎年金(2級)の年額が847,300円に改定されました。

 

 

※1級の年金額は、2級の1.25倍です。


一方、

障害厚生年金は

報酬比例です。

したがって

  • 高収入だった人 → 高額
  • 低収入だった人 → 低額

になります。

300か月みなし

 

障害厚生年金の計算対象となる被保険者期間

障害厚生年金の額を計算するときは、厚生年金に加入していたすべての期間を使うわけではありません。

計算の基礎となるのは、

障害認定日の属する月までの被保険者であった期間 です。

つまり、障害認定日より後も厚生年金に加入していたとしても、障害認定日の属する月より後の被保険者期間は、障害厚生年金の額の計算には含めません。

そして、このようにして計算対象となる被保険者期間の月数が300か月(25年)に満たない場合には、実際の加入期間にかかわらず300か月として計算します。

これが、いわゆる

「300か月みなし」 です。

厚生年金保険法上、障害厚生年金の額については、当該障害厚生年金の支給事由となった障害に係る障害認定日の属する月までの被保険者であった期間を計算の基礎とします。

そのうえで、障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300として計算します。


障害認定日が

2025年6月15日

であれば、

2025年6月までの被保険者期間

を計算の基礎とします。

2025年7月以降も厚生年金に加入していたとしても、その期間はこの障害厚生年金の額の計算には含めません。

さらに、障害認定日の属する月までの加入期間が

10年=120か月

だった場合でも、障害厚生年金の額を計算するときは

300か月

として扱います。


イメージ

実際の被保険者期間が

120か月

であっても

計算上は300か月

として扱います。

同様に、

200か月 → 300か月

として計算します。

一方、

350か月

ある場合は300か月を上回っているため、

350か月のまま

計算します。


この仕組みによって、若くして障害の状態になり、厚生年金の加入期間が短い人についても、一定の年金額が確保されるようになっています。

 

覚えるポイント

① どこまで計算するか
障害認定日の属する月まで

② 何か月として計算するか
300か月未満なら300か月

つまり、

「障害認定月までを数えて、300か月未満なら300か月にする」

と整理すると理解しやすいです。

最低保障額

 

 

障害等級3級には障害基礎年金はありません。

また、要件を満たさず、障害基礎年金の受給権がない人もいます。

 

このような場合は、障害厚生年金のみを受給することになります。

給与水準が低いと、障害厚生年金の計算額が20万円や30万円程度になることもあります。

そこで、厚生年金保険法では、障害基礎年金を受けられない一定の人について、障害厚生年金が一定額を下回る場合には、その額まで引き上げる最低保障制度を設けています。

 

令和8年度(2026年度)は、障害基礎年金(2級)の年額が847,300円に改定されました。

したがって、厚生年金保険法50条3項の最低保障額は、

ですが、法令上の最低保障額は100円単位で定められており、

635,500円

となります。

対象となる人については、障害厚生年金の額が635,500円を下回る場合、635,500円まで引き上げられます。

なぜ「障害基礎年金を受けられない人」だけなのか

障害等級1級・2級なら

通常 障害基礎年金も受給します。


つまり

1階部分 障害基礎年金

2階部分 障害厚生年金


の 2階建て年金

になります。


一方 3級は 障害基礎年金がありません。


したがって

3級は 障害厚生年金だけ

になります。


そのため 最低保障制度が必要なのです。
これは、要件を満たさず、障害基礎年金の受給権がない人でも同じです。

 

配偶者加給年金額

 

ポイント

① 加給が付くのは1級・2級だけ

② 配偶者は65歳未満

③ 生計維持関係が必要

④ 受給権発生後に配偶者を持った場合でも加算可能

⑤ 3級になると加算されない

⑥ 3級から再び1級・2級になれば再度加算される

特に、

「受給権発生後の配偶者でもOK」

「3級になっても、再び1・2級になれば再加算」

の2点を押さえておくと整理しやすいです

障害厚生年金には

家族手当のような制度があります。 それが

配偶者加給年金額 です。


対象

  • 障害等級1級
  • 障害等級2級

のみ


さらに、受給者に

生計維持されている

65歳未満の配偶者

が必要です。

障害厚生年金1級・2級

   ↓

65歳未満の配偶者あり

   ↓

生計維持関係あり

   ↓

配偶者加給年金額を加算

 

 

受給権を取得した後に配偶者を持った場合

ここも重要です。

現在は、障害厚生年金の受給権を取得した時点で配偶者がいることは要件ではありません

平成23年4月の法改正により、

障害厚生年金の受給権発生後に配偶者を持った場合

でも、その配偶者が

  • 65歳未満
  • 受給権者によって生計を維持されている

という要件を満たせば、配偶者加給年金額が加算されます。

受給権発生

   ↓

その後、65歳未満の配偶者を有するに至る

   ↓

生計維持関係あり

   ↓

配偶者を有するに至った月の翌月から加算

つまり、 受給権取得後に要件を満たした場合にも、後から加給年金額が加算されます。


3級になった場合

配偶者加給年金額が加算されるのは、

障害厚生年金1級・2級

に限られます。

したがって、

1級・2級

   ↓

3級に軽快

となった場合には、配偶者加給年金額は加算されなくなります。

しかし、その後、障害の程度が増進して、

3級

 ↓

再び1級・2級

となった場合には、

配偶者加給年金額が再度加算されます。

つまり、 3級になったことで、配偶者加給年金額の権利が永久になくなるわけではありません。

再び1級又は2級に該当し、配偶者についての要件も満たしていれば、再度加算の対象となります。


障害基礎年金との対比

年金 家族加算
障害基礎年金 子の加算
障害厚生年金 配偶者加給年金額

つまり

基礎年金は子を保護

厚生年金は配偶者を保護

と整理すると覚えやすいです。

 

根拠条文 厚生年金保険法50条の2

第1項

障害の程度が障害等級の1級又は2級に該当する者に支給する障害厚生年金について、受給権者によって生計を維持している65歳未満の配偶者があるときは、加給年金額が加算されます。

第3項

受給権者が障害厚生年金の受給権を取得した日の翌日以後に、

生計を維持している65歳未満の配偶者を有するに至った場合

にも、加給年金額を加算することができます。

この場合、

配偶者を有するに至った日の属する月の翌月

から、障害厚生年金の額が改定されます。

 

 

障害の程度の増進による改定請求

 

1  改定請求の基本ルール

厚生年金保険法52条2項

障害厚生年金の受給権者は、
障害の程度が増進したときは、
実施機関に対して年金額の改定を請求することができる。

つまり症状が重くなれば年金額を増額できる。

変更前 変更後
3級 2級
2級 1級

2  改定請求は原則「1年経過後」

厚生年金保険法52条3項

改定請求は、受給権取得日又は前回診査日から
1年を経過した日後でなければ行うことができない。

 

ポイント

  • 年齢に関係なく1年

  • 受給権取得日または診査日から起算


例外(1年以内でも請求可能)

法52条3項ただし書

障害の程度が増進したことが明らかな場合

  • 手足の切断

  • 失明

  • 人工透析開始 など


3 65歳以上の特別制限

厚生年金保険法52条7項

附則16条の3第2項

次の者は増進による改定請求ができない


対象者

次のすべてを満たす者

  1. 65歳以上 または
    老齢基礎年金を繰上げ受給

  2. 障害厚生年金の受給権者

  3. 同一の支給事由による障害基礎年金の受給権がない

つまり3級の障害厚生年金


4  さらに重要:職権改定も行われない

厚生年金保険法52条7項

附則16条の3第2項

障害厚生年金と同一の支給事由による
障害基礎年金の受給権を有しない
65歳以上(又は繰上げ老齢基礎年金受給者)については
実施機関による職権改定も行われない。

つまり

内容 可否
改定請求 不可
職権改定 不可

5  なぜこの制限があるのか

理由は障害基礎年金の事後重症請求の期限

 

国民年金法30条の2

事後重症請求は
65歳に達する日の前日まで

つまり65歳以降に3級 → 2級になると障害基礎年金が新たに発生してしまう

これを防ぐため65歳以降の改定を禁止


6 具体例

例①

受給権取得からずっと3級

63歳 3級
66歳 2級に悪化

改定請求不可

職権改定もなし


例②

老齢基礎年金を繰上げ

60歳 繰上げ
62歳 3級
64歳 悪化

繰上げすると

65歳到達扱い

改定請求不可

職権改定不可


例③

障害基礎年金がある場合

60歳 2級
63歳 軽快して3級
67歳 再び2級

支給再開可能

理由

障害基礎年金の受給権がある

 

国民年金法35条2号・3号では、障害基礎年金が失権する基準を、単に「障害基礎年金の2級に該当しなくなったか」ではなく、厚生年金保険法47条2項の障害等級に該当する程度の障害状態でなくなったかで判定しています。
そして厚生年金保険法47条2項の障害等級は、1級・2級・3級です。

したがって、こうなります。

年齢 障害状態 障害厚生年金 障害基礎年金
60歳 2級 2級支給 2級支給
63歳 3級 3級支給 支給停止。ただし受給権は残る
66歳 3級のまま 3級支給 受給権は残ったまま
67歳 2級へ増進 2級へ改定可能 支給再開可能

障害基礎年金自体には3級がありませんから、63歳で2級から3級になると、国民年金法36条2項によって障害基礎年金は支給停止になります。
しかし、「支給停止」と「失権」は別です。

ここがポイントです。

「2級に該当しなくなって3年」ではない
「厚生年金の3級にも該当しなくなって3年」で初めて失権問題が出てくる。

厚労省の解説資料でも、平成6年改正後の失権について「厚生年金保険法の障害等級の3級以上に該当しなくなってから」という整理が明示されています。

さらに面白いのが、67歳での障害厚生年金3級→2級の額改定請求です。厚生年金保険法52条7項は、65歳以上で「同一の支給事由による障害基礎年金の受給権を有しない者」については増進改定の規定を適用しない、としています。逆にいうと、今回のように障害基礎年金の受給権が支給停止のまま残っている人には、この65歳制限がかからないという構造です。

一方で、ケースを少し変えて、

60歳 2級 → 63歳「3級にも該当しない」→ 67歳 2級

だったら結論は違います。63歳から厚年3級にも該当しない状態が継続すると、3年後の66歳にはすでに65歳以上ですから、原則としてそこで失権します。国民年金法35条3号がまさにその規定です。 障害厚生年金にもほぼ同じ失権規定があります。

なので、この問題はかなりきれいに、

「3級になった」→ 失権しない
「3級にも該当しなくなった」→ 3年+65歳で失権し得る

と覚えると整理できます。


7  まとめ

改定請求

内容 ルール
原則 1年後
例外 明らかな増悪

65歳ルール

次の者は改定請求不可

  • 65歳以上

  • または繰上げ受給

  • 障害基礎年金なし(=3級)

さらに職権改定も不可

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