厚生年金保険法 
障害厚生年金 支給要件・併合認定

  • 障害厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が疾病や負傷により一定の障害の状態になったときに、障害基礎年金に上乗せして支給されるものです。
  • 障害等級の1級または2級の障害の状態よりも軽い障害者には障害基礎年金は支給されませんが、
  • 厚生年金保険の場合、3級または障害手当金が支給されます。
  • 障害厚生年金の受給権者(権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級または2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く)に対して、その後別の傷病で障害が残った場合には、前後の障害を併合した新たな障害厚生年金が支給されます。

 

目 次

  1. 障害厚生年金の支給要件
  2. 初診日要件
  3. 障害認定日要件
  4. 保険料納付要件
  5. 事後重症による障害厚生年金
  6. 併合認定

障害厚生年金の支給要件

 

障害厚生年金は、次のすべての要件を満たしたときに支給される。(法47条1項)

 

障害厚生年金の支給要件(すべて)
  1.  初診日要件
  2.  障害認定日要件
  3.  保険料納付要件

初診日要件

 

初診日において、厚生年金保険の被保険者でなければならない。(法47条1項)

  • 国籍は問われません
  • 初診日において厚生年金保険の被保険者であれば20歳未満であっても受給権は発生します
    20歳に達したときに受給権が発生するのではありません)。

初診日とは本来治療を目的として初めて医師の診療を受けた日を指します。 したがって単に健康状態を確認するための健康診断人間ドックなどを受けた日健診日原則として初診日として取り扱いません

 ただし初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証医療機関による初診日の証明が得られない場合であって医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果であるときは請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば健診日を初診日とし健診日を証明する資料人間ドックの結果などに基づき初診日を認めることができることされています。(平成27年9月28日年管管発0928第6号)

 

 

一般的な障害基礎年金 と 一般的な障害厚生年金

項目 一般的な障害基礎年金 一般的な障害厚生年金
原則 国民年金の被保険者であること 厚生年金被保険者であること
資格喪失後 国民年金の被保険者であった者 +
① 日本国内に住所を有する
② 60歳以上65歳未満

※退職後に初診日がある場合、たとえ60歳~65歳の間であっても障害厚生年金は支給されない

ポイント整理

障害基礎年金

  • 60歳~65歳未満の国内在住者であれば、被保険者でなくても対象になり得る

  • 「資格喪失後の特例」がある

 

 

障害厚生年金

  • 初診日に厚生年金被保険者であることが原則

  • 退職後に初診日がある場合は、60~65歳でも対象外


ひとことで

  • 障害基礎年金 → 60~65歳の国内在住者に特例あり 

  • 障害厚生年金 → 初診日に被保険者でなければ原則不可

 

  • 障害基礎年金と異なり初診日において厚生年金保険の被保険者でなければ障害厚生年金は支給されることはありません
  • 通常は厚生年金保険の被保険者であれば国民年金の第2号被保険者ですから障害厚生年金と障害基礎年金は2階建てで支給されることになります
    ただし初診日において65歳以上の場合は国民年金の第2号被保険者でないケースもあるため
    障害厚生年金のみが支給される場合もあります
  • 初診日における年齢は不問ですたとえ20歳未満であっても70歳以上の高齢任意加入被保険者であっても厚生年金保険の被保険者であれば初診日要件を満たすことになります
  • 初診日において要件に合致していればたとえ障害認定日が65歳以後であっても構いません
  • 厚生年金保険の被保険者期間の長さは不問です

障害認定日要件

 

障害認定日要件」とは、障害認定日において、その傷病により障害等級1級2級または3級)に該当する程度の障害の状態にあることをいう。(法47条1項)

 

  1. 障害等級の1級及び2級については、それぞれ国民年金法施行令に定める1級及び2級の障害の状態とされており、
  2. 3級については厚生年金保険法施行令別表第1に定められている障害の状態とされています。(令3条の8)

 

  1. 労災保険では「1級から14級
  2. 国民年金では「1級から2級
  3. 厚生年金保険では「1級から3級

 

障害等級1級2級及び3級に該当する程度の障害の状態とは、次の障害の程度をいう。(法47条1項、令3条の8、令別表第1、国年令別表)

障害等級

等級のイメージ

障害の状態 眼の障害 聴覚の障害 知的障害
障害等級1級 ほぼ常時全面的な介助が必要な重度 原則として、身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(精神の障害を含む 両眼の視力がそれぞれ 0.03以下(屈折異常があるものは矯正視力による) 両眼の視力がそれぞれ 0.07以下(矯正視力) 食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要。かつ、会話による意思疎通が困難で、日常生活に常時援助が必要
障害等級2級 日常生活に明確な支障があり援助が必要 原則として、身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの(精神の障害を含む 両眼の視力がそれぞれ 0.07以下(矯正視力) 両耳の聴力レベルが 90デシベル以上(カラオケ音・犬の鳴き声レベル) 食事や身のまわりの基本的行為に援助が必要。会話は簡単な意思疎通に限られ、日常生活で援助が必要
障害等級3級 労働能力に著しい制限がある程度 原則として、身体の機能または精神若しくは神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの(精神の障害を含む 両眼の視力がそれぞれ 0.1以下(矯正視力) 両耳の聴力が 40デシベル以上で、通常の会話を理解できない程度に減じたもの 労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金 通常の労働には一定の制限が必要だが、日常生活はおおむね自立 原則として、身体の機能に 労働が制限される、または 労働に制限を加えることを必要とする程度 の障害を残すもの(精神の障害を含む)      
  • 障害厚生年金はその傷病が治っていなくても」、支給対象となりえます

障害厚生年金に係る障害状態の再認定については、国民年金法と同様です。(令和2年10月26日年管管発1026第2号)

 

 

具体例
  •  両上肢の機能に著しい障害を有するものは、厚生年金保険の障害等級1級に該当する。
  •  両上肢のすべての指を欠くものは、厚生年金保険の障害等級1級に該当する。
  •  両下肢を足関節以上で欠くものは、厚生年金保険の障害等級1級に該当する。
  •  体幹の機能に座っていることができない程度または立ち上がることができない程度の障害を有するものは、厚生年金保険の障害等級1級に該当する。
  •  「精神または神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」は、厚生年金保険の障害等級3級の状態に該当する。
  •  傷病が治らないで、身体の機能または精神若しくは神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を有する状態であって、厚生労働大臣が定めるものは、障害等級3級の障害の状態に該当する。
  • そしゃくまたは言語の機能に相当程度の障害を残すものは、厚生年金保険の障害等級3級に該当する。
  •  両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたものは、障害等級3級の障害の状態に該当する。
  •  両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたものは、障害等級3級の障害の状態に該当する。
  • 一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したものは、障害等級3級の障害の状態に該当する。
  •  おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したものは、障害等級3級の障害の状態に該当する。(4指の用を廃したものは不該当)

 

障害認定日」とは、次の日のうちいずれか早い日をいう。(法47条1項かっこ書)

 

障害認定日
  1.  初診日から起算して1年6か月を経過した日
  2.  上記1.の期間内にその疾病が治った場合においては、その治った日
    (その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日含む

保険料納付要件

 

保険料納付要件」とは、次のいずれかに該当することをいう。(法47条1項ただし書、昭和60年附則64条1項)

 

保険料納付要件
原則) 
 当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間(学生納付特例期間または納付猶予期間を含む)とを合算した期間が当該被保険者期間3分の2以上であること
特例
 令和8年4月1日前にある傷病については、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの直近1年間保険料納付済期間保険料免除期間(学生納付特例期間または納付猶予期間を含む)のみ(直近1年間に保険料未納期間がないこと)であること。
 ただし、初診日において65歳以上である場合にはこの特例は適用されない。(昭和60年附則64条1項)

 

  • 保険料納付要件、「初診日の前日において判断されます
    初診日その日において判断すると初診を受けた後に駆け込みで保険料を納めることが考えられるためです逆選択の防止)。
    したがって、「初診日以後さかのぼって保険料を納付したりさかのぼって申請免除の承認を受けたりしたとしても保険料納付要件を満たしたことにはなりません
  • 障害厚生年金障害手当金及び遺族厚生年金における保険料納付要件を判断する際に、「厚生年金保険の第3種被保険者坑内員船員であった期間の特例3分の4倍5分の6倍)」は適用されません

事後重症による障害厚生年金

 

障害認定日障害等級に該当する程度の障害の状態になかったものが、65歳に達する日の前日までの間に、その傷病により障害等級(1級2級及び3級)に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その期間内に「事後重症による障害厚生年金」の支給を請求することができる。(法47条の2第1項)

事後重症による障害厚生年金は、請求した日の属する月の翌月から支給される。(法47条の2第3項、法36条1項)

  • 事後重症による障害厚生年金は本人の請求により受給権が発生する請求年金です
  • 事後重症による障害厚生年金は、「65歳に達する日の前日までに請求をする必要があります
  • 事後重症による障害厚生年金は、「受給権が発生した日の属する月の翌月からその支給が始まります

併合認定

 

障害厚生年金(注の受給権者に対して更に障害厚生年金(注を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金が支給される。(法48条1項)

  • (注権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級または2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く
  • 障害基礎年金と同様に複数の障害を一本化します

この場合、従前の障害厚生年金の受給権は消滅する。(法48条2項)

併合認定の規定による障害厚生年金の額は、その額が併合認定の規定により消滅した障害厚生年金の額より低額であるときは、従前の障害厚生年金の額に相当する額とする。(法50条4項)

  1. 前後の障害がともに1級または2級でなければ原則として併合認定は行われません
  2. 受給権を取得した当時1級または2級に該当していれば障害の程度がその後軽減し現に障害等級3級に該当するものについても併合認定は行われます
  • 併合認定は前後の障害がともに1級または2級に該当するものでなければ行われません
  • 従前の障害厚生年金の受給権は消滅します。「支給停止されるわけではありません
  • 前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金の額が消滅した従前の障害厚生年金の額より低額であるときは、「従前の障害厚生年金の額に相当する額となります必ず併合した障害の程度による障害厚生年金の額となるわけではありません

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