厚生年金保険法 
障害手当金

障害手当金は、厚生年金保険の制度の一つで、

「病気やけがは治ったが、一定程度の障害が残った人」

に対して支給される一時金です。

ここで重要なのは、

  • 障害厚生年金 → まだ治っていなくても対象になり得る
  • 障害手当金 → 「治った(症状固定)」ことが前提

という違いです。


まず全体像

障害に関する年金制度は、イメージとして次のように整理できます。

状態 制度
重い障害が残り、継続的保障が必要 障害厚生年金
障害は比較的軽いが、後遺症が残った 障害手当金

つまり障害手当金は、

「年金を支給するほど重くはないが、後遺障害は残っている」

 

場合の救済制度です。

 

障害手当金は年金ではないため、一時金として支給され、障害の程度は3級程度より軽いものとされています。

 

目 次

  1. 障害手当金の支給要件
  2. 障害手当金が支給されない場合

障害手当金は、次のすべてを満たす必要があります。

① 初診日に厚生年金の被保険者であること

まず、

初めて医師の診療を受けた日(初診日)

に厚生年金保険の被保険者である必要があります。

つまり、会社員や厚生年金加入者であることが必要です。


○ 該当する

  • 会社員時代に病気になる

 

× 該当しない

  • 国民年金だけ加入中に初診日がある

障害手当金は「厚生年金」の制度なので、厚生年金加入中の初診日が必要になります。


② 初診日の前日に保険料納付要件を満たすこと

これは障害年金と同じ考え方です。

簡単に言うと、

年金保険料を一定程度きちんと納めていること

が必要です。


保険料納付要件の内容

次のどちらかを満たします。


原則

被保険者期間のうち、

  • 保険料納付済期間
  • 免除期間
  • 学生納付特例
  • 納付猶予

を合わせた期間が、

全体の3分の2以上

あること。


特例

現在は特例があり、

65歳未満であれば、

初診日前の直近1年間に未納がない

場合もOKです。


③ 初診日から5年以内に「治っている」こと

ここが障害手当金最大の特徴です。


「治った」とは?

ここでいう「治った」は、

完全回復

ではありません。

法律上は、

症状固定

を意味します。


症状固定とは

これ以上治療しても、

  • 症状改善が期待できない
  • 状態が固定した

という状態です。

つまり、

  • 後遺症は残っている
  • でも医学的には治療終了

というイメージです。


なぜ「5年以内」なのか

障害手当金は、

比較的早期に症状固定した人

を対象にした制度です。

また、

カルテ保存期間

との関係も考慮されています。

病院のカルテ保存期間は原則5年なので、

医学的資料を確認しやすい期間として5年が設定されています。


④ 治った日に一定程度の障害状態にあること

治った時点で、

一定程度の障害が残っている

必要があります。


どの程度の障害か

障害厚生年金3級より軽いものです。

つまり、

制度 障害の重さ
障害厚生年金1級・2級 重い
障害厚生年金3級 中程度
障害手当金 比較的軽い

という位置づけです。


具体的なイメージ

例えば、

  • 指が動きにくい
  • 視力が一定程度低下
  • 耳の聴力低下
  • 神経症状が残存

など、

労働に一定の制限がある

程度の障害が対象になります。


障害厚生年金との違い


障害厚生年金

特徴

  • 治っていなくてもよい
  • 初診日から1年6か月経過時点で判定

イメージ

まだ治療中でも、

1年6か月経過時点で重い障害状態なら支給されます。


障害手当金

特徴

  • 治っていることが必要
  • 5年以内に症状固定している必要

イメージ

病気は落ち着いたが、

後遺症だけ残った場合の制度です。


労災保険との比較

ここも理解すると整理しやすいです。


労災保険

労災では、

「治ゆ(症状固定)」後

に障害補償給付を行うのが原則です。

つまり、

  • まず療養
  • 治った後に障害認定

という流れです。


年金制度

一方、年金制度は、

「初診日から1年6か月」

を基準にします。

そのため、

まだ治療中でも障害年金が認められることがあります。


比較すると

制度 基準
労災 治ゆ(症状固定)
障害年金 初診日から1年6か月
障害手当金 5年以内の治ゆ

となります。


全体整理(重要)

 

障害厚生年金

  • 治っていなくても可
  • 1年6か月で判定
  • 重い障害対象

障害手当金

  • 治っていることが必要
  • 5年以内の症状固定
  • 比較的軽い後遺障害対象
  • 一時金

覚え方

試験対策や実務では、

「障害手当金=治っていることが必要」

これをまず押さえると整理しやすいです。

さらに、

「5年以内に症状固定」

までセットで覚えると理解しやすくなります。

 

 

障害手当金は、次のすべての要件に該当する者に支給される。(法55条1項・2項)

 

障害手当金の支給要件
  1.  初診日において被保険者であったこと
  2.  初診日の前日において保険料納付要件を満たしていること
  3.  初診日から起算して5年を経過する日までの間において、傷病が治っていること
    1. 傷病の治ったことが要件です
  4.  傷病が治った日において、政令で定める程度の障害の状態にあること
    1. 障害等級3級より軽い一定の障害の状態にあることが必要です

原則として、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの(精神の障害を含む)が、障害手当金における障害の状態になります。(令3条の9、令別表第2)

  1. 障害厚生年金傷病が治ゆしていない場合にも支給されますが
  2. 障害手当金傷病が治ゆしている場合に支給されます

 

 

障害に係る給付と「治ゆ(症状固定)」との関係

 

制度 給付の種類 判定時期・要件 補足
労災保険法 障害(補償)等給付 原則として 「治ゆ(症状固定)」後に判定 療養中は原則「休業(補償)等給付」
治っていない場合でも、1年6か月経過で傷病(補償)等年金 ※1年6か月経過=必ず障害(補償)年金になるわけではない
国民年金法
厚生年金保険法
障害基礎年金
障害厚生年金
治ゆを待たず、初診日から 1年6か月経過(症状固定)した日=障害認定日で判定 原則この日を基準に等級判定
障害手当金 5年以内の治ゆ(症状固定)後に判定 5年を超えて治った場合は対象外

ポイント整理

  • 労災は「治ゆ」が基本基準

  • 年金は「初診日から1年6か月」が基準(治ゆ不要)

  • 障害手当金は「5年以内の治ゆ」が要件

 

⇨ 休業(補償)給付、療養(補償)給付、障害(補償)給付との関係

  • 「5年」は、カルテの保存期間を考慮して規定されています。

 

⇨ 障害等級1級2級及び3級と障害手当金

障害手当金が支給されない場合

 

障害の程度を定めるべき日において次のいずれかに該当する者には、障害手当金は支給されない。(法56条)

  区分 不支給となる場合 支給される場合  
1 厚生年金保険の年金給付の受給権者 同一支給事由でなくても厚生年金の年金給付の受給権がある場合 障害厚生年金の受給権者であって、最後に障害等級に該当しなくなった日から起算して 3年を経過していない者(現に障害状態に該当しない者に限る) 障害厚生年金の受給権は少なくとも、65歳に達するまでは消滅しないため、3級不該当になって3年を経過した場合には、障害手当金の支給を可能にするために、支給される場合の規定が設けられています。
2 国民年金法の年金給付の受給権者 同一支給事由でなくても国民年金の年金給付の受給権がある場合 障害基礎年金の受給権者であって、最後に障害状態に該当しなくなった日から起算して3年を経過していない者(現に障害状態に該当しない者に限る)
3 他の公的補償等を受ける権利を有する者 同一支給事由について、国家公務員共済法・地方公務員共済法・労災保険法・労働基準法による障害補償等の受給権がある場合   労災保険法に規定されている障害補償給付を受ける権利を有する者にあっては障害手当金は支給されません

一時金である障害手当金と年金との併給調整の規定ですが併給調整と異なり法56条に該当する場合には障害手当金は受給権そのものが発生しません支給停止されるのではありません)。

  1. 上記1.(厚生年金保険に係るもの)及び
  2. 2.(国民年金に係るもの)は障害を支給事由とするものでなくても不支給となりますが、
  3. 3.(労働基準法または労災保険法等に係るもの)は「障害を支給事由とするものに限って」不支給となります。
  • 障害手当金は「一時金」なので、すでに他の年金給付を受け取る状態になっている場合には、重複補償を避けるため支給されません。
  • 過去に障害手当金を受給した場合であっても新たな障害により障害手当金の受給要件を満たした場合には再度障害手当金支給を受けることができます

最低保障額

障害手当金の額が、障害基礎年金2級)の額の「4分の3」相当額(すなわち、障害等級3級の障害厚生年金の最低保障額2倍に満たないときは、障害基礎年金2級)の額の4分の3相当額の2倍の額とされる。(法57条ただし書)

  • 最低保障額は、「障害厚生年金の最低保障額障害基礎年金2級の4分の3相当額の2倍です

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