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ソリューション行政書士法人
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労働安全衛生法では、一定の危険・有害な業務について、免許や技能講習の修了などの資格を有する者でなければ従事できない「就業制限」を設けています。また、事業者には、労働者の雇入れ時や作業内容を変更したときなどに、必要な安全衛生教育を実施する義務があります。
「その業務に就くための資格」と「事業者が実施しなければならない教育」は、別の制度です。 資格を持っていることだけで、職場で必要な安全衛生教育をすべて省略できるわけではありません。〔労働安全衛生法第59条~第61条〕
※以下、労働安全衛生法を「法」、同法施行令を「令」、労働安全衛生規則を「則」と表記します。本文は2026年9月時点の規定を基本とし、今後施行される改正は末尾に記載しています。
目 次
就業制限業務に就くことができる者
事業者は、クレーンの運転など、政令で定める業務について、その業務に対応する資格を有する者でなければ、従事させてはなりません。〔法第61条第1項〕
資格として認められるのは、次のいずれかです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 免許 | 都道府県労働局長から、その業務に係る免許を受けていること |
| 技能講習の修了 | 登録教習機関が行う、その業務に係る技能講習を修了していること |
| その他の資格 | 厚生労働省令で定める、その業務に係る資格を有していること |
技能講習は、単に受講を申し込んだり、講義の一部を受けたりするだけでは足りません。所定の講習を修了し、業務に必要な資格を得ていることが必要です。
就業制限は、事業者が無資格者に作業をさせることを禁止するだけではありません。資格を有しない者自身にも、その業務に従事することが禁止されています。〔法第61条第2項〕
この規定は労働者だけでなく、自ら作業する個人事業主や一人親方などにも適用されます。「従業員ではない」「自分の事業として作業する」という理由で、資格が不要になるわけではありません。
なお、法令に基づく職業訓練については、別途、限定的な特例が設けられています。〔法第61条第4項〕
就業制限業務に従事するときは、その業務に係る免許証や技能講習修了証など、資格を証明する書面を携帯しなければなりません。資格を取得していることと、作業時に資格証明書を携帯することは、それぞれ必要な事項です。〔法第61条第3項〕
主な就業制限業務と必要な資格
就業制限の対象となる主な業務は、次のとおりです。下表は代表的な資格を整理したもので、資格の限定条件や、法令で認められる他の資格については、個別に確認する必要があります。〔令第20条、則第41条・別表第3〕
| 主な対象業務 | 主な資格 |
|---|---|
| 発破におけるせん孔、装てん、結線、点火等 | 発破技士免許等 |
| 制限荷重5トン以上の揚貨装置の運転 | 揚貨装置運転士免許 |
| 所定のボイラーの取扱い〔小型ボイラーを除く〕 | 規模等に応じたボイラー技士免許等。一定の小規模ボイラーは、ボイラー取扱技能講習修了等でも取扱いが可能 |
| つり上げ荷重5トン以上のクレーンの運転〔跨線テルハを除く〕 | 運転するクレーンに対応したクレーン・デリック運転士免許。ただし、床上操作式には下記の取扱いあり |
| つり上げ荷重5トン以上の床上操作式クレーンの運転 | 床上操作式クレーン運転技能講習修了、または運転範囲に対応したクレーン・デリック運転士免許 |
| つり上げ荷重5トン以上のデリックの運転 | デリックを運転できるクレーン・デリック運転士免許 |
| つり上げ荷重1トン以上5トン未満の移動式クレーンの運転 | 小型移動式クレーン運転技能講習修了、または移動式クレーン運転士免許 |
| つり上げ荷重5トン以上の移動式クレーンの運転 | 移動式クレーン運転士免許 |
| 最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転 | フォークリフト運転技能講習修了等 |
| 機体重量3トン以上の所定の車両系建設機械の運転 | 機械の種類に対応した車両系建設機械運転技能講習修了等 |
| 最大荷重1トン以上のショベルローダー・フォークローダーの運転 | ショベルローダー等運転技能講習修了等 |
| 最大積載量1トン以上の不整地運搬車の運転 | 不整地運搬車運転技能講習修了等 |
| 作業床の高さ10メートル以上の高所作業車の運転 | 高所作業車運転技能講習修了等 |
| 制限荷重1トン以上の揚貨装置、またはつり上げ荷重1トン以上のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛け | 玉掛け技能講習修了等 |
移動式クレーン、フォークリフト、車両系建設機械などについて、上表の運転業務には、道路上を走行させる運転は含まれません。 道路を走行する場合の運転資格は、別に確認する必要があります。
機械の名称が似ていても、資格は共通とは限りません。 例えば、クレーン・デリック運転士免許を持っているだけでは、移動式クレーンを運転することはできません。また、免許に運転範囲の限定がある場合は、その範囲を超えて作業することもできません。
資格の区分は、実際に扱う荷物の重さではなく、法令で定める機械の最大荷重、つり上げ荷重、最大積載量などにより判断します。例えば、最大荷重2トンのフォークリフトで軽い荷物だけを運ぶ場合でも、「最大荷重1トン以上」の区分です。〔令第20条〕
安全衛生教育の種類と実施時期
事業者が実施する主な安全衛生教育は、次の3種類です。誰に、どの時点で、どの教育を行うのかを区別して管理することが重要です。〔法第59条・第60条〕
| 教育の種類 | 対象となる者・実施時期 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 雇入れ時・作業内容変更時の教育 | 労働者を雇い入れたとき、または作業内容を変更したとき | 従事する業務の危険性、作業手順、事故時の対応などを理解させる |
| 特別教育 | 法令で定める危険・有害な業務に労働者を就かせるとき | その業務に必要な安全・衛生上の知識や技能を身に付けさせる |
| 職長教育 | 対象業種で、新たに職長等の職務に就く者 | 作業方法の決定、労働者への指導・監督、リスクアセスメントなどを学ばせる |
参照 → 労働時間(賃金支払)と費用負担
雇入れ時・作業内容変更時の教育
事業者は、労働者を雇い入れたとき、または作業内容を変更したときは、遅滞なく、その業務に関する安全衛生教育を行わなければなりません。
対象は正社員だけではありません。パート、アルバイト、臨時に雇用する者なども含まれます。また、新しく採用した場合だけでなく、配置転換などによって作業内容が変わった場合にも、必要な教育を実施します。〔法第59条第1項・第2項、則第35条〕
則第35条第1項では、次の事項のうち、労働者が従事する業務に必要な内容を教育することとされています。
| 項目 | 教育する内容 |
|---|---|
| 1 | 機械、原材料などの危険性・有害性と、その取扱い方法 |
| 2 | 安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能と、その取扱い方法 |
| 3 | 作業手順 |
| 4 | 作業開始時の点検 |
| 5 | 業務に関連して発生するおそれがある疾病の原因と予防 |
| 6 | 整理・整頓・清潔の保持 |
| 7 | 事故時などの応急措置と退避 |
| 8 | その他、その業務に必要な安全・衛生上の事項 |
教育事項は法令で定められていますが、全業種に共通する一律の最低教育時間は定められていません。 作業内容、危険性・有害性、労働者の知識や経験などを踏まえて、必要な内容を理解できるように実施します。
以前は、一部の業種について上表の1~4の教育を省略できる規定がありましたが、2024年4月1日から、この業種による省略規定は廃止されています。
現在は、業種だけを理由にこれらの教育項目を省略することはできません。ただし、十分な知識・技能を有する労働者について、該当する事項の教育を省略できる制度は残っています。
特別教育
事業者は、厚生労働省令で定める危険・有害な業務に労働者を就かせるときは、その業務に関する特別教育を行わなければなりません。〔法第59条第3項〕
特別教育は、業務に就かせるために必要な教育であり、免許や技能講習とは異なる制度です。事業者が自ら実施することも、外部の教育機関に委託することもできますが、実施する責任は事業者にあります。
特別教育の対象となる主な業務は、次のとおりです。対象となる機械の構造・規模、作業内容、適用除外などは、それぞれの規定で確認する必要があります。〔則第36条ほか〕
| 区分 | 主な対象業務 |
|---|---|
| 研削といし | 取替え、または取替え時の試運転 |
| 動力プレス等 | 金型、安全装置等の取付け・取外し・調整 |
| アーク溶接 | アーク溶接機を用いる金属の溶接・溶断等 |
| 電気自動車等 | 対地電圧50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備 |
| フォークリフト | 最大荷重1トン未満のものの運転 |
| ショベルローダー・フォークローダー | 最大荷重1トン未満のものの運転 |
| 不整地運搬車 | 最大積載量1トン未満のものの運転 |
| テールゲートリフター | 貨物自動車への荷の積込み・荷卸しを伴う操作 |
| 車両系建設機械 | 機体重量3トン未満の所定の機械の運転 |
| 揚貨装置 | 制限荷重5トン未満のものの運転 |
| 高所作業車 | 作業床の高さ10メートル未満のものの運転 |
| クレーン・デリック | つり上げ荷重5トン未満のものの運転など |
| 移動式クレーン | つり上げ荷重1トン未満のものの運転 |
| 小型ボイラー | 所定の小型ボイラーの取扱い |
| 建設用リフト・ゴンドラ | 建設用リフトの運転、ゴンドラの操作 |
| 玉掛け | つり上げ荷重1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛け |
| 酸素欠乏危険場所 | 酸素欠乏危険場所での作業 |
| 放射線装置 | エックス線装置・ガンマ線照射装置の取扱い〔一定の装置を除く〕 |
| 廃棄物焼却施設 | 所定の焼却炉・集じん機等の設備の保守点検等 |
| フルハーネス型墜落制止用器具 | 高さ2メートル以上で、作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型を用いて行う作業〔ロープ高所作業を除く〕 |
フォークリフトなどの運転業務については、就業制限と同様に、道路上を走行させる運転が除かれているものがあります。また、フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育は、単にフルハーネスを装着するすべての作業を対象とするものではなく、上表の作業条件に該当するかを確認します。
自動車整備に関する特別教育は、2024年10月1日から、従来の低圧に限定した規定が見直され、対地電圧50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備が対象となっています。
例えば、フォークリフトでは、最大荷重1トン未満の運転は特別教育の対象ですが、最大荷重1トン以上の運転には、フォークリフト運転技能講習の修了等が必要です。
特別教育を受けているからといって、就業制限業務まで行えるわけではありません。単に「危険性が高そうかどうか」で判断するのではなく、法令上の業務区分と機械の能力等に応じて、必要な資格・教育を確認します。
職長教育
政令で定める業種の事業者は、新たに職長その他の作業中の労働者を直接指導・監督する職務に就く者に対し、職長教育を行わなければなりません。〔法第60条〕
対象となるかどうかは、役職名だけでは決まりません。「職長」「班長」「作業長」「現場監督」など、名称にかかわらず、実際に労働者を直接指導・監督する職務かどうかで判断します。
法第60条では、作業主任者は職長教育の対象から除かれています。ただし、作業主任者の資格を持っていることと、作業主任者として選任されていることは別です。 資格を保有しているだけで、職長教育が一律に不要になるわけではありません。
また、危険・有害な作業を行う職場だからといって、すべての職長に作業主任者の資格取得が求められるわけではありません。事業者は、対象作業について法令に従って作業主任者を選任し、職長がその役割を兼ねる場合には、必要な資格を備えさせることになります。〔法第14条・第60条〕
職長教育が義務付けられるのは、建設業、製造業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業です。ただし、製造業のうち、次の業種は除かれます。〔令第19条〕
| 対象から除かれる製造業 | 注意点 |
|---|---|
| たばこ製造業 | ― |
| 繊維工業 | 紡績業・染色整理業は除外されず、職長教育の対象です。 |
| 衣服その他の繊維製品製造業 | ― |
| 紙加工品製造業 | セロファン製造業は除外されず、職長教育の対象です。 |
なお、2023年4月1日から対象業種が拡大され、従来対象外であった食料品製造業の一部や、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業も対象となっています。
職長教育では、次の事項について、それぞれ所定の時間以上の教育を行います。合計の教育時間は12時間以上です。〔則第40条第2項〕
| 教育事項 | 教育時間 |
|---|---|
| 作業方法の決定・労働者の配置 | 2時間以上 |
| 労働者に対する指導・監督の方法 | 2時間30分以上 |
| 危険性・有害性等の調査と、その結果に基づく措置〔リスクアセスメント等〕 | 4時間以上 |
| 異常時等における措置 | 1時間30分以上 |
| その他、現場監督者として行う労働災害防止活動 | 2時間以上 |
| 合計 | 12時間以上 |
職長は、現場で労働者を直接指導・監督する立場です。一方、安全衛生責任者は、法令で定める現場において、統括安全衛生責任者との連絡などを担当します。
両者を兼ねる場合でも、作業員への指導・監督と、元方事業者等との連絡・調整という異なる役割を担っていることを理解しておく必要があります。〔法第16条・第60条〕
なお、法第60条の職長教育は、新たに職長等の職務に就くときの教育です。ただし、その後に作業内容が変わった場合には、法第59条第2項に基づく作業内容変更時の教育が必要になることがあります。職長教育を受けたことによって、その後の教育がすべて不要になるわけではありません。
教育の省略・記録・労働時間・費用負担
雇入れ時・作業内容変更時の教育、特別教育、職長教育には、教育事項について十分な知識・技能を有すると認められる者には、その事項の教育を省略できる規定があります。〔則第35条第2項・第37条・第40条第3項〕
省略できるのは、十分な知識・技能を有することが確認できる事項です。「経験年数が長い」「別の資格を持っている」といった理由だけで、教育全体を一律に省略するのではなく、教育内容との対応を確認する必要があります。
事業者は、特別教育を行ったときは、受講者、科目等の記録を作成し、3年間保存しなければなりません。〔則第38条〕
この「3年間」は記録の法定保存期間であって、特別教育の有効期間ではありません。特別教育は、一般に、3年ごとの更新や再受講を義務付ける制度ではありません。
一方、雇入れ時・作業内容変更時の教育や職長教育については、則第35条・第40条に、特別教育と同じ一律の記録保存期間は定められていません。ただし、実施状況を確認できるよう、教育日、受講者、教育内容、時間、講師等を記録し、継続的に管理することが適切です。
雇入れ時・作業内容変更時の教育、特別教育、職長教育は、事業者の責任で実施する教育です。その実施に要する時間は、労働時間として取り扱い、賃金を支払う必要があります。
また、教育によって法定時間外労働となる場合には、割増賃金の支払いが必要です。「研修だから無給」「休日に受講するから労働時間ではない」という取扱いはできません。
法令に基づく特別教育や職長教育を外部機関で実施する場合には、講習会費、講習旅費等も、事業者が負担すべきものとされています。
ここでいう費用負担は、事業者が法令上の義務として実施する教育についての取扱いです。労働者が個人的に希望して取得する資格などとは、区別して考える必要があります。
継続的な教育と今後の法改正
事業者は、事業場の安全衛生水準を向上させるため、危険・有害な業務に現に従事している者に対し、その業務に関する安全衛生教育を行うよう努めなければなりません。〔法第60条の2第1項〕
採用時や資格取得時の教育だけで終わらせず、作業方法、設備、法令、災害事例などの変化に応じて、知識や技能を更新することが重要です。
2027年4月1日からは、個人事業者や一定の事業者の代表者・役員など、法令上の「作業従事役員等」が、労働者と同じ場所で特別教育の対象業務に従事する場合に、特別教育を受ける義務が設けられます。
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