安衛法
安全衛生教育

労働災害を防止するためには、「安全衛生教育」が必要です。どういった立場の人がどの時点で教育を受けなければならないのかを整理することが大切です。

安全衛生教育では、教育の種類によって「誰に」「いつ」実施するのかが異なります。

教育の種類 主な対象者 実施するタイミング
雇入れ時教育 原則としてすべての労働者 労働者を雇い入れたとき
作業内容変更時教育 作業内容が変更された労働者 作業内容を変更したとき
特別教育 法令で定める危険・有害業務に従事する労働者 対象業務に就かせるとき
職長教育 対象業種で労働者を直接指導・監督する者 新たに職長等の職務に就くとき
能力向上のための教育 危険・有害業務に現に従事している者 必要に応じて継続的に実施

特に、「雇入れ時だけ教育すればよい」「経験者なら教育は不要」「職長という肩書がなければ職長教育は不要」などと一律に判断しないことが重要です。

実際の業務内容、労働者が有する知識・技能、現場で担っている役割を確認したうえで、必要な安全衛生教育を適切なタイミングで実施することが、労働災害の防止につながります。

 

目 次

  1. 安全衛生教育
  2. 安全衛生教育の時間
  3. 雇入れ時・作業内容変更時の教育
    1. 教育項目
    2. 教育の省略
  4. 特別教育
    1. 対象業務
    2. 記録の保存
  5. 職長教育
    1. 対象業種
    2. 教育事項及び教育時間
    3. 教育の省略
  6. 教育の努力義務

安全衛生教育

労働災害を防止するためには、労働者が担当する業務の危険性や正しい作業方法を理解していることが重要です。そのため、労働安全衛生法では、事業者に対して一定の「安全衛生教育」を実施することを義務付けています。

安全衛生教育には、大きく分けて次の3種類があります。

  1. 雇入れ時・作業内容変更時の教育
  2. 特別教育
  3. 職長教育

それぞれ対象者や実施するタイミングが異なるため、誰に、いつ、どのような教育を行う必要があるのかを整理しておくことが大切です。


 

安全衛生教育の時間

 

安全衛生教育は、労働者が業務に従事する際の労働災害を防止するため、事業者の責任で実施するものです。

そのため、安全衛生教育に要する時間は労働時間として取り扱われます。教育を法定労働時間外に実施した場合には、時間外労働に応じた割増賃金を支払わなければなりません。(昭和47年9月18日基発602号、昭和63年9月16日基発601号の1)

この取扱いは、次のいずれの教育についても同様です。

  • 雇入れ時・作業内容変更時の教育
  • 特別教育
  • 職長教育

また、特別教育や職長教育を社外の講習機関などで受講させる場合、労働安全衛生法に基づいて必要となる講習会費や講習旅費等についても、原則として事業者が負担すべきものとされています。(昭和47年9月18日基発602号)

 参照 → 労働時間(賃金支払と費用負担

雇入れ時・作業内容変更時の教育

 

事業者は、労働者を雇い入れたとき、または労働者の作業内容を変更したときには、その労働者に対し、遅滞なく、従事する業務に必要な安全・衛生教育を行わなければなりません。(労働安全衛生法59条1項・2項)

この教育は、事業の種類や業務内容を問わず必要です。

また、対象となるのは正社員などの常時使用する労働者だけではありません。臨時に使用する労働者を含め、原則としてすべての労働者が対象となります。

特に注意したいのは、雇入れ時だけではなく、配置転換などによって作業内容が変更された場合にも教育が必要になるという点です。

教育項目

雇入れ時・作業内容変更時の教育では、次の事項について教育を行います。(労働安全衛生規則35条1項)

  1. 機械、原材料等の危険性・有害性とその取扱方法
  2. 安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能と取扱方法
  3. 作業手順
  4. 作業開始時の点検
  5. 業務によって発生するおそれのある疾病の原因と予防
  6. 整理・整頓・清潔の保持
  7. 事故時等における応急措置・退避
  8. その他、業務上必要となる安全・衛生に関する事項

なお、これらについて、法令上、一律の教育時間が定められているわけではありません。実際の業務内容や危険性などに応じて、必要な教育を行うことになります。

教育の省略

 

教育事項の全部または一部について、労働者がすでに十分な知識・技能を有していると認められる場合には、その事項について教育を省略することができます。(労働安全衛生規則35条2項)

例えば、職業訓練などによって必要な知識や技能をすでに習得している場合が考えられます。

同様の考え方は、一定の場合には特別教育や職長教育にも認められています。(昭和47年9月18日基発601号の1)

特別教育

 

事業者は、労働者を一定の危険または有害な業務に就かせる場合、その業務に関する安全・衛生のための特別教育を行わなければなりません。(労働安全衛生法59条3項)

特別教育は、一定期間ごとに繰り返し実施することを基本とする教育ではなく、対象となる危険・有害業務に労働者を就かせる際に必要となる教育です。

対象業務

特別教育が必要となる業務は労働安全衛生規則36条に定められており、主なものとして次のような業務があります。

  1. 研削といしの取替え、または取替え時の試運転
  2. 動力プレスの金型・安全装置等の取付け、取外しまたは調整
  3. アーク溶接機を使用する金属の溶接・溶断等
  4. 対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備
  5. 最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転
  6. 最大荷重1トン未満のショベルローダー・フォークローダーの運転
  7. 最大積載量1トン未満の不整地運搬車の運転
  8. 荷の積卸し作業を伴うテールゲートリフターの操作
  9. 制限荷重5トン未満の揚貨装置の運転
  10. 作業床の高さ10メートル未満の高所作業車の運転
  11. 小型ボイラーの取扱い
  12. つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転
  13. つり上げ荷重1トン未満の移動式クレーンの運転
  14. つり上げ荷重5トン未満のデリックの運転
  15. 建設用リフトの運転・ゴンドラの操作
  16. つり上げ荷重1トン未満のクレーン、移動式クレーンまたはデリックの玉掛け
  17. 酸素欠乏危険場所における作業
  18. エックス線装置・ガンマ線照射装置を使用する透過写真撮影
  19. 廃棄物焼却施設における設備の保守点検等
  20. 高さ2メートル以上で作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型墜落制止用器具を使用して行う一定の作業

なお、特別教育の対象よりもさらに危険性・有害性が高い一定の業務については、就業制限が設けられており、免許を受けた者や技能講習を修了した者などでなければ従事できません。

例えば、フォークリフトの場合、

  • 最大荷重1トン未満 → 特別教育
  • 最大荷重1トン以上 → 原則として技能講習の修了等が必要

という違いがあります。


 

 

記録の保存特別教育の記録

 

事業者が特別教育を実施した場合には、受講者や教育科目等の記録を作成し、3年間保存しなければなりません。(労働安全衛生規則38条)

安全衛生教育のうち、法令上、このような記録の保存義務が明確に設けられているのが特別教育です。

事業者は、「特別教育」を行ったときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。(則38条)

職長教育

 

一定の業種では、新たに職長その他の作業中の労働者を直接指導・監督する者となった人に対して、事業者が職長教育を行わなければなりません。(労働安全衛生法60条)

ここでいう「職長」は、役職名そのものではなく、現場で労働者を直接指揮・監督する立場にあるかどうかによって判断されます

そのため、「職長」「作業長」「現場監督」など名称が異なっていても、実際に労働者を直接指導・監督する立場であれば対象となり得ます。

一方、作業主任者は、職長教育の対象から除かれています。

また、職長教育が必要となるのは、対象者が新たに職長等の職務に就くこととなったときです。単に職長としての職務内容が変更されたというだけで、改めて職長教育が必要になるものではありません。

 

職長と安全衛生責任者の違い

職長と混同されやすいものに「安全衛生責任者」があります。

両者の役割を大きく分けると、

  • 職長:現場で労働者を直接指導・監督する「対内的な役割」
  • 安全衛生責任者統括安全衛生責任者との連絡・調整などを行う「対外的な役割」

という違いがあります。

実務上は、同じ人が職長と安全衛生責任者を兼務しているケースもあります。

対象業種 職長教育の対象業種

職長教育が義務付けられている主な業種は、次のとおりです。(労働安全衛生法施行令19条)

  1. 建設業
  2. 製造業(一部の業種を除く)
  3. 電気業
  4. ガス業
  5. 自動車整備業
  6. 機械修理業

製造業については、次の業種などが対象から除外されています。

  • たばこ製造業
  • 繊維工業(紡績業・染色整理業を除く)
  • 衣服その他の繊維製品製造業
  • 紙加工品製造業(セロファン製造業を除く)

 

教育事項及び教育時間

 

職長教育では、作業そのものの知識だけでなく、現場の指揮監督者として労働災害を防止するために必要な知識・技能を身につけることが求められます。

具体的な教育事項と教育時間は、労働安全衛生規則40条に定められています。

教育事項 教育時間
作業方法の決定・労働者の配置に関すること 2時間
労働者に対する指導・監督の方法に関すること 2.5時間
危険性・有害性等の調査と、その結果に基づく措置に関すること 4時間
異常時等における措置に関すること 1.5時間
その他、現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること 2時間

合計すると、原則として12時間の教育となります。

 

職長教育を省略できる場合

教育事項の全部または一部について、対象者がすでに十分な知識・技能を有していると認められる場合には、その事項について教育を省略することができます。(労働安全衛生規則40条3項)

したがって、すでに受けている教育や保有している知識・技能を確認したうえで、必要な範囲の教育を実施することになります。

教育の省略 職長教育を省略できる場合

 

教育事項の全部または一部について、対象者がすでに十分な知識・技能を有していると認められる場合には、その事項について教育を省略することができます。(労働安全衛生規則40条3項)

したがって、すでに受けている教育や保有している知識・技能を確認したうえで、必要な範囲の教育を実施することになります。

教育の努力義務 危険・有害業務に従事する人への継続的な教育

安全衛生教育は、雇入れ時や特定業務への配置時だけで終わるものではありません。

事業者は、事業場における安全衛生水準の向上を図るため、危険または有害な業務に現に従事している者に対し、その業務に関する安全・衛生教育を行うよう努めなければなりません。(労働安全衛生法60条の2第1項)

これは義務として行う雇入れ時教育、特別教育、職長教育とは異なり、努力義務として定められているものです。

事業者は、その事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行うように努めなければならない。(法60条の2第1項)

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