健康保険法
療養費・家族療養費

療養費とは

健康保険では、原則として保険医療機関等で「療養の給付(現物給付)」を受けます。

しかし、一定の場合には、療養の給付に代えて、被保険者がいったん医療費等を支払い、その後に保険者から払い戻しを受ける「療養費」が支給されます。(健康保険法87条)  

 

目 次

  1. 療養費の支給要件
  2. 海外療養費
  3. 療養費の支給額
  4. 家族療養費
  5. 被保険者が死亡した場合
  6. 家族療養費の支給額

 

保険者は、次のいずれかに該当するときは、療養の給付等に代えて療養費を支給することができます。(健康保険法87条1項)

  • 療養の給付等を行うことが困難であると認めるとき
  • 保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療・薬剤の支給・施術等を受けた場合で、保険者がやむを得ないと認めるとき

療養費の支給対象となる主な例

 

応急措置として購入した市販薬

保険医療機関がなく、療養の給付を受けることが困難な場合には、応急措置として購入した市販薬について療養費が支給されることがあります。(昭和13年8月20日社庶1629号)


被保険者資格取得届の提出漏れ

事業主が資格取得届を提出していなかったため、被保険者であることを証明できず、療養の給付を受けられなかった場合には、療養費の対象となります。(昭和3年4月30日保理発1089号)


柔道整復師の施術

骨折、脱臼、打撲、捻挫について柔道整復師の施術を受けた場合は、療養費として支給されます。

骨折・脱臼については、応急処置を除き、医師の同意が必要です。

医師の同意は、

  • 患者が医師から受けてもよく、
  • 柔道整復師が直接医師から受けても構いません。

書面だけでなく口頭による同意も認められます。また、施術録や支給申請書の摘要欄で医師の同意が確認できる場合は、同意書の添付は不要です。(平成9年4月17日保険発57号)

 

入院中の後療

保険医療機関に入院している患者について、医師の依頼で柔道整復師が後療(機能回復・リハビリ等)を行った場合は、

  • 保険医療機関へ往療した場合
  • 患者が施術所へ通院した場合

のいずれも療養費の対象にはなりません。(平成9年4月17日保険発57号)

後療:患部の機能回復やリハビリを目的とした施術
往療:施術者が患者のいる場所へ赴いて施術すること


あん摩・マッサージ・はり・きゅう

あん摩・マッサージ・はり・きゅうについては、緊急その他やむを得ない場合を除き、医師の同意書など医師の同意が確認できる書類が必要です。(昭和25年1月19日保発4号、昭和42年9月18日保発32号)


治療用装具

療養上必要なコルセットや関節用装具などを購入した場合は、療養費の対象となります。(昭和24年4月13日保険発167号)


義手・義足

義手・義足は、治療の過程で必要な場合には療養費の対象となります。

一方、症状固定後に装着する義肢や、その修理費用は療養費の対象になりません。(昭和26年5月6日保文発1443号)


補聴器・眼鏡

補聴器や眼鏡は、原則として療養費の対象となりません。

ただし、小児弱視用眼鏡など一定の治療用装具は対象となる場合があります。(昭和25年11月7日保険発225号、平成18年3月15日保発0315001号)


輸血

輸血に使用する血液については取扱いが異なります。

  • 生血(院内採血):療養費
  • 保存血(病院保管血液):療養の給付(現物給付)

(昭和14年5月13日社医発336号)

海外療養費

 

海外で病気やけがの治療を受けた場合でも、一定の要件を満たせば「海外療養費」が支給されます。(昭和56年2月25日保険発10号・庁保険発2号)

 

邦貨換算

海外療養費は、

  • 支給決定日
  • 外国為替売レート(TTS)

により円換算されます。

療養日や申請日のレートではありません。


支給申請

海外療養費は、原則として事業主等を経由して申請します。

また、支給金は事業主等が代理受領し、国外へ直接送金されることはありません。

外国語の証明書には、日本語訳を添付し、翻訳者の氏名及び住所を記載する必要があります。


海外での臓器移植

国内での待機状況等からみて、海外で移植を受けなければ生命維持が困難であり、日本臓器移植ネットワークへの登録等一定の要件を満たす場合には、「やむを得ない」として海外療養費の対象となります。(平成29年12月22日保保発1222第2号)


海外療養費のポイント

項目 内容
申請 原則として事業主等経由
換算レート 支給決定日の売レート
支給方法 事業主等が代理受領
外国語書類 日本語訳が必要

療養費の支給額

 

療養費は、療養に要した費用から自己負担相当額を控除した額を基準として保険者が決定します。(健康保険法87条2項)

家族療養費

 

被扶養者が保険医療機関等で療養を受けた場合には、その費用について被保険者に対して家族療養費が支給されます。(健康保険法110条)

健康保険の保険給付の受給権者は被保険者であり、療養を受けた被扶養者ではありません。

任意継続被保険者及び特例退職被保険者の被扶養者についても同様です。


家族療養費として支給される給付

家族療養費には、次の給付が含まれます。食事療養生活療養評価療養患者申出療養及び選定療養

  • 家族療養費
  • 家族入院時食事療養費
  • 家族入院時生活療養費
  • 家族保険外併用療養費
  • 家族療養費(療養費払い)
  • 家族訪問看護療養費
  • 高額療養費
  • 高額介護合算療養費

 

被保険者が死亡した場合

 

被保険者が死亡した場合には、被扶養者に関する保険給付は死亡日の翌日以降受けることができません。(昭和27年10月3日保文発5383号)

そのため、被扶養者が療養中であっても、翌日以降は家族療養費は支給されません。

家族療養費の給付割合

 

被扶養者 給付割合 自己負担
小学校入学前(6歳到達後最初の3月31日まで) 80% 20%
小学校入学後~69歳 70% 30%
70歳以上(一般) 80% 20%
70歳以上(一定以上所得者) 70% 30%

一定以上所得者の判定は、被保険者が70歳に達した日の属する月の翌月以後から適用されます。

したがって、被保険者が70歳到達月以前であれば、高所得者であっても給付割合は80%となります。

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