健康保険法
保険外併用療養費

混合診療の例外として、どこまで保険が効くか

 

① まず大原則(混合診療)

通常は:

保険外診療が混ざると 全部自己負担(=混合診療禁止)


 

② 例外:保険外併用療養費

次の3つは例外:

  • 評価療養=保険適用を評価中の医療
  • 患者申出療養=患者希望の高度医療
  • 選定療養=患者の選択によるサービス

この場合だけ 「保険部分だけは保険が使える」

 

これらの療養は、将来的な保険適用を目指して評価中のものや、患者が希望して受ける特別な医療を指します。

特に

  • 差額ベッド
  • 紹介状なしの大病院受診
  • 180日超入院
  • 長期収載品(先発医薬品)の選択

が頻出論点です。  

 

目 次

  1. 支給要件
  2. 保険外併用療養費の支給額

支給要件

 

この制度では、

  • 保険適用部分 → 健康保険が給付
  • 保険適用外部分 → 患者が全額負担

となります。


支給要件

被保険者が保険医療機関等において、

  1. 評価療養
  2. 患者申出療養
  3. 選定療養

のいずれかを受けた場合、その保険診療部分について保険外併用療養費が支給されます(健保法86条1項)。


① 評価療養

将来的に保険適用とするかどうかを評価するために行われる療養です。

 

趣旨

新しい医療技術や未承認医薬品などについて、

  • 有効性
  • 安全性
  • 医療上の必要性

を評価するために認められています。

 

代表例

  • 先進医療
  • 治験
  • 一部の未承認薬使用

 

ポイント

まだ正式な保険給付の対象ではないが、将来保険適用する可能性があるため、評価目的で認められている制度です。


② 患者申出療養

患者自身の希望に基づき実施される高度医療です。

 

趣旨

患者から

「海外では実施されているが日本では保険適用されていない治療を受けたい」

などの申出があった場合に利用されます。

 

  • 海外で実施されている先進治療
  • 未承認薬の使用

 

特徴

評価療養との違いは、

評価療養 患者申出療養
国が定める 患者の申出から始まる

点です。


 

③ 選定療養

患者の希望や利便性によって受ける療養です。

 

趣旨

治療そのものに必要不可欠ではないが、

「患者の選択によるサービス」

として認められるものです。


主な選定療養

 

① 差額ベッド代

個室など特別療養環境室を利用した場合

  • 4人部屋ではなく個室を利用

 

② 予約診療

予約による診察を受けた場合


 

③ 時間外診療

病院の表示診療時間外に診察を受けた場合


 

④ 紹介状なしの大病院受診

対象病院

  • 特定機能病院
  • 地域医療支援病院
  • 紹介受診重点医療機関

など

 

負担額

区分 金額
医科初診 7,000円以上
歯科初診 5,000円以上

⑤ 逆紹介後の再診

大病院から地域の医療機関へ紹介されたにもかかわらず、大病院で再診する場合

 

負担額

区分 金額
医科再診 3,000円以上
歯科再診 1,900円以上

⑥ 180日超の長期入院

長期入院の適正化を目的とした追加負担

※厚労省が定める特定の患者は除外


⑦ 高価な歯科材料

前歯の金冠など


⑧ 金属床義歯

保険のレジン床義歯より高性能な総義歯


⑨ 医療用アプリの継続利用

保険適用期間終了後も患者希望で使用する場合


⑩ 持続血糖測定器

保険適用要件外の利用


⑪ 精子凍結・融解

医学的必要性がなく患者都合の場合


⑫ 長期収載品(先発医薬品)の選択

ジェネリック医薬品があるにもかかわらず患者が先発品を希望する場合


大病院受診時の定額負担の趣旨

 

国は、

  1. まず診療所(かかりつけ医)を受診
  2. 必要なら紹介状をもらう
  3. 大病院で専門診療
  4. 症状が安定したら逆紹介

という医療機関の機能分担を推進しています。

そのため、

紹介状なしで大病院を受診

→ 初診時選定療養

 

逆紹介後も大病院を受診

→ 再診時選定療養

となります。


長期収載品(先発医薬品)の選定療養

狙われやすい論点です。

 

先発薬:400円

後発薬:200円

差額

400-200=200円

選定療養負担

200円 × 1/4

50円

これが全額自己負担となります。

さらに通常の保険負担として

(400-50)×30%

105円

を負担します。

したがって患者負担は

50円+105円

=155円

となります。


選定療養に関する実務上のルール

医療機関は、

  • 内容
  • 費用

について事前に説明し、

文書による患者の同意を得なければなりません。


予約診療

予約料徴収には一定の条件があります。

  • 30分程度以上待たせた場合は予約料徴収不可
  • 診察時間は10分程度以上確保
  • 医師1人1日あたり予約患者数は概ね40人以下

時間外診療

社会通念上は時間外でなくても、

病院が掲げる診療時間外であれば徴収可能

です。

保険外併用療養費の支給額

 

 

 

基本構造(最重要)

保険外併用療養費はこう考えます:

  • 保険部分 → 一部保険給付あり
  • 保険外部分 → 全額自己負担

支給額の式(コア)

保険部分について:

保険外併用療養費

= 保険診療部分の費用 − 一部負担金相当額保険外併用療養費

要するに いつもの「7割給付」と同じ構造


自己負担の内訳

患者が払うのは:

  • 一部負担金(例:3割)
  • 保険外部分(特別料金)
  • 食事・生活療養の自己負担

具体例の理解(超重要)

条件:

  • 保険部分:10万円
  • 保険外部分:5万円
  • 自己負担割合:3割

計算:

  • 一部負担金:10万 × 30% = 3万円
  • 保険外:5万円(全額自己負担)

合計自己負担:8万円

保険外併用療養費:10万 − 3万 = 7万円


食事療養がある場合

 

ポイントは、

食事療養費そのものと、
食事療養標準負担額(患者負担)は別物

ということです。

食事療養標準負担額とは、

入院中の食事代について、患者が自己負担することとされている一定額

のことです。

 

健康保険では、入院中の食事代をすべて保険で負担するのではなく、患者にも一定額を負担してもらう仕組みになっています。


まず「A」=「保険部分に係る保険外併用療養費」とは?

Aは、

食事療養・生活療養を除いた通常の診療部分について支給される保険外併用療養費です。

例えば

  • 診察
  • 検査
  • 手術
  • 投薬

などの保険診療部分です。


例で考える

例えば、保険外併用療養を受け、

  • 通常診療 100,000円
  • 食事代 9,000円
  • 食事療養標準負担額 1,500円

だったとします。

食事代 9,000円は、

全部患者が払うわけではありません。

内訳は

食事代 9,000円

  • 患者負担(標準負担額)1,500円
  • 健保負担(食事療養費)7,500円

となります。


保険外併用療養費の計算

通常診療部分の保険外併用療養費をAとすると、

保険外併用療養費 = A + 食事療養費(7,500円)

となります。

式で書くと

A + 食事療養費用 − 食事療養標準負担額

になります。

つまり

9,000円−1,500円=7,500円

これが保険から支払われます。


なぜ標準負担額を引くの?

患者は

食事代の一部は必ず自己負担

することになっています。

つまり

食事代全部を保険で払う制度ではありません。

そこで

食事代

−患者が負担すべき額

だけを保険で負担します。

だから

食事療養費用 − 食事療養標準負担額

になるのです。


高額療養費との違い

高額療養費では、

食事療養標準負担額は算定対象外

です。

つまり、

患者が支払った1,500円は

高額療養費では戻りません。


整理すると

① 保険外併用療養費

食事代9,000円のうち

  • 患者 1,500円
  • 健保 7,500円

という計算をしているだけです。


② 高額療養費

患者が負担した

1,500円

は、

高額療養費の自己負担額には含めません。

 


試験での覚え方

  • 食事療養費(保険が負担する部分)→ 保険外併用療養費の計算に関係する。
  • 食事療養標準負担額(患者が負担する部分)→ 高額療養費の算定対象には含まれない

 

この2つを区別すると、保険外併用療養費と高額療養費の問題で迷わなくなります。

 

 

ここがポイントです。

 

生活療養の場合も同じ構造

 


まとめ

この論点は3層構造で覚えます:

 

① 保険部分

一部負担金を除いて給付

 

② 保険外部分

全額自己負担

 

③ 食事・生活療養

標準負担額だけ自己負担


一言でいうと

保険外併用療養費は「保険部分だけ救済する制度」

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