健康保険法
高額療養費 高額介護合算療養費

高額療養費制度は、医療費が高額になったときに患者の自己負担を一定額までに抑える制度です(健保法115条)

被保険者またはその被扶養者が同一の月にそれぞれ一つの病院等に支払った自己負担額が負担限度額を超えるような場合、この負担限度額をこえる部分については、「高額療養費」が支給されます。

頻出数字だけ整理すると、

項目 数字
世帯合算対象 21,000円以上
多数回該当 過去12か月で3回→4回目から
特定疾病 原則10,000円
人工透析高所得者 20,000円
中所得者基準 80,100円+(医療費-267,000円)×1%

特に「21,000円」「267,000円」「80,100円」「3回→4回目」「10,000円・20,000円」

をセットで覚えることが重要です。

 

目 次

  1. 高額療養費とは?
  2. 計算の流れ
  3. 高額療養費算定基準額
  4. 70歳未満のみの世帯の場合の高額療養費(世帯合算)
  5. 70歳以上の高額療養費
  6. 70歳未満のみの世帯の場合の高額療養費(多数回該当)
  7. 保険者が変わった場合の支給回数
  8. 高額長期疾病(特定疾病)の特例
  9. 現物給付による支給
  10. 高額介護合算療養費

高額療養費とは?

健康保険では通常、

  • 70歳未満 → 医療費の3割負担
  • 保険者(健康保険)が7割負担

ですが、大きな病気や手術をすると自己負担も高額になります。 そこで、

「1か月の自己負担額が一定額を超えたら、その超えた分を返します」

という制度が高額療養費です。

計算の流れ

例えば、

  • 医療費100万円
  • 自己負担割合30%

なら病院窓口では

100万円 × 30%

=30万円

を支払います。

しかし30万円全部を負担させるのは重いので、

所得に応じた「自己負担限度額」が設定されています。

高額療養費算定基準額

 

高額療養費の計算の流れ

次の流れを理解すると解きやすくなります。

① 医療費総額を確認

② 所得区分を確認

③ 高額療養費算定基準額(自己負担限度額)を計算

④ 実際の自己負担額との差額を求める

⑤ 差額が高額療養費


高額療養費算定基準額(自己負担限度額)

70歳未満の場合

標準報酬月額 自己負担限度額
83万円以上 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
53万円以上83万円未満 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
28万円以上53万円未満 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
28万円未満 57,600円
低所得者 35,400円

語呂 有名です。

破産(83)

降参(53)

ニヤッ(28)

    ↓

双子の次郎(252,600)

一郎なしで(167,400)

ハワイ行く(80,100)


なぜ267,000円なのか

よく問われる論点です。

標準報酬月額28万~53万円未満の場合

限度額は

80,100円+(医療費-267,000円)×1%

 

267,000円の30%

80,100円

となるため、

医療費267,000円までは通常の3割負担(80,100円

267,000円超部分は

1%負担

という仕組みです。


計算例①

標準報酬月額41万円

医療費100万円 の場合

自己負担限度額

80,100円+(1,000,000-267,000)×1%

=80,100円+7,330円

=87,430円


通常負担

1,000,000×30%

=300,000円


高額療養費

300,000-87,430

=212,570円


つまり 患者最終負担

87,430円

になります。


計算例②(83万円以上)

標準報酬月額83万円以上

医療費100万円 の場合

限度額

252,600+(1,000,000-842,000)×1%

=254,180円


通常負担

300,000円


高額療養費

300,000-254,180

=45,820円


保険外併用療養費との関係

頻出です。

高額療養費の対象になるのは

保険診療部分 のみです。


例えば

  • 評価療養特別料金10万円
  • 選定療養特別料金20万円
  • 保険診療70万円 の場合

高額療養費計算に使うのは

保険診療70万円のみ です。

特別料金部分は対象外です。

70歳未満(世帯合算)

 

制度趣旨

同じ世帯で複数人が医療を受けた場合、

一定額以上の自己負担を合算できます。


合算要件

各人について

一つの病院ごとに21,000円以上

の自己負担額であること

  • 同一病院等における歯科と歯科以外の診療は区分します
  • 同一病院等における外来療養と入院療養は区分します

重要

21,000円未満は合算できません。


例えば

内容 金額
A病院入院 65,000円
B病院通院 25,000円
C病院通院 20,000円

合算対象

  • 65,000円
  • 25,000円

のみ

20,000円は対象外です。


世帯合算できる人

  • 被保険者
  • 被扶養者

のみ


夫婦共働きで

双方とも被保険者

世帯合算できない

 

 

 

 

┌─────────────────────────┐

│       70歳未満・高額療養費                  │

└──────────┬──────────────┘

                     ▼

          21,000円以上の自己負担

                    │

        ┌──────┴──────┐

        ▼                      ▼

      単身                  家族あり

        │                      │

        │                同じ健康保険?

        │                   /      \

        │               YES          NO

        │                 │            │

        ▼                 ▼            ▼

     合算可能          合算可能     合算不可

         │                │

          └────┬───┘

                  ▼

          自己負担額を合計

                  │

                  ▼

           自己負担限度額

              と比較する

70歳以上の高額療養費

 

1 基本的な考え方

70歳以上の人についても、医療機関等で支払った自己負担額が一定の限度額を超えた場合には、その超えた部分について高額療養費が支給されます。

ただし、70歳未満の場合と大きく違うところがあります。

70歳以上の場合には、所得区分によって、

① 外来について個人単位で計算する

② その後、入院を含めて世帯単位で計算する

という仕組みがあります。

「外来個人」→「外来+入院の世帯」

という順番をまず覚えることが重要です。


2 70歳未満との大きな違い

70歳未満の世帯合算では、

1つの医療機関等について自己負担額21,000円以上

という基準がありました。

これに対して、70歳以上の場合には、この21,000円以上という合算対象基準額はありません

したがって、例えば、

甲病院 30,000円
乙病院 9,000円

という外来の自己負担があった場合、

70歳未満なら9,000円は原則として21,000円基準に引っかかりますが、

70歳以上なら、

30,000円+9,000円=39,000円

として計算できます。

ここは非常に狙われやすいところです。

70歳未満 → 21,000円基準あり

70歳以上 → 21,000円基準なし


3 所得区分

70歳以上の高額療養費では、所得によって大きく、

現役並み所得者

一般所得者

低所得者

に分かれます。

さらに低所得者はⅠ・Ⅱ、現役並み所得者も所得に応じた区分があります。


4 一般所得者の限度額

70歳以上の一般所得者は次のとおりです。

 

2026年8月~2027年7月

区分 2026年7月まで 2026年8月以降
外来(個人ごと) 18,000円 22,000円
外来の年間上限 144,000円 216,000円
外来+入院(世帯ごと) 57,600円 61,500円
多数回該当 44,400円 44,400円
新設された年間上限(世帯) 530,000円

5 計算の順番

一般所得者に外来と入院の両方がある場合は、次の順番で考えます。

STEP 1

外来の自己負担額を合算する

STEP 2

外来について「個人単位」の限度額を適用する

STEP 3

限度額適用後の外来自己負担額と入院自己負担額を合算する

STEP 4

「世帯単位」の限度額を適用する

STEP 5

STEP 2とSTEP 4で算出した高額療養費を合計する

この2段階計算が70歳以上の問題のポイントです。


覚え方

この論点は、次の3つをセットで覚えると整理しやすいです。

 

70歳以上は「21,000円なし」

70歳未満の世帯合算で出てくる

21,000円基準

を持ち込まないこと。

 

「外来→世帯」の2段階

一般所得者などでは、

外来を個人単位で処理

残った外来+入院を世帯単位で処理

と考えます。

 

同じ外来を二重に払い戻さない

使うのは、

高額療養費を控除した後の22,000

ここが計算問題で一番間違えやすいポイントです。

70歳未満のみの世帯の場合の高額療養費(多数回該当)

 

過去12か月以内に

高額療養費の支給を受けた月が3回以上 ある場合

4回目から自己負担限度額が下がります。


所得区分 多数回該当
83万円以上 140,100円
53~83万円 93,000円
28~53万円 44,400円
28万円未満 44,400円
低所得者 24,600円

語呂

必死(14)に

草(93)を食べても

あとは死ぬ(44)だけ

保険者が変わった場合の支給回数

 

高額療養費の多数回該当における支給回数は、原則として、同一の保険者から高額療養費の支給を受けた回数を基準に判定します。

 

全国健康保険協会の支部が変わった場合

全国健康保険協会が保険者である場合、転職や転居などによって所属する都道府県支部が変わっても、保険者は引き続き全国健康保険協会です。

そのため、協会けんぽの被保険者として高額療養費の支給を受けた回数は、支部が変わった後も通算されます。

 

保険者そのものが変わった場合

次のように、健康保険を管掌する保険者そのものが変わった場合には、それまでの支給回数は通算されません。

  • 健康保険組合から全国健康保険協会へ変わった場合
  • 全国健康保険協会から健康保険組合へ変わった場合
  • 一つの健康保険組合から別の健康保険組合へ変わった場合

この場合、新しい保険者への加入後は、高額療養費の支給回数を改めて数えることになります。

変更の内容 支給回数の通算
協会けんぽの支部間の変更 通算される
協会けんぽから健康保険組合への変更 通算されない
健康保険組合から協会けんぽへの変更 通算されない
健康保険組合間の変更 通算されない

根拠通達:昭和59年9月29日保険発第74号・庁保険発第18号

高額長期疾病(特定疾病)の特例

長期間にわたり高額医療が継続する病気については特別な限度額があります。


対象疾病

① 人工透析を要する慢性腎不全

② 血友病

③ 血液製剤によるHIV感染症


自己負担限度額

原則

月10,000円


例外

人工透析患者で

  • 70歳未満
  • 標準報酬月額53万円以上

の場合

月20,000円


重要

人工透析のみ所得によって20,000円になる場合があります。

血友病やHIVは常に10,000円です。

現物給付による支給(限度額適用認定)

 

本来の高額療養費は

いったん全額支払う

後から払い戻し

という償還払いです。


しかし現在は

 

限度額適用認定証 または

 

マイナ保険証

を利用すると、

窓口で最初から自己負担限度額までしか支払わなくてよい仕組みがあります。 これを

現物給付

といいます。

高額介護合算療養費

 

高額介護合算療養費は、医療保険と介護保険の両方で高額な自己負担が生じた世帯の負担を軽減するための制度です。

通常、高額療養費制度は医療保険の自己負担のみを対象とし、高額介護サービス費制度は介護保険の自己負担のみを対象としています。しかし、同じ世帯で医療費と介護費の両方が高額になると、それぞれの制度だけでは負担が大きくなることがあります。

そのため、高額介護合算療養費制度では、医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、年間の自己負担限度額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。(健康保険法第115条の2)


支給対象

高額介護合算療養費は、同一世帯に属する医療保険加入者について算定されます。(平成21年4月30日保保発0430002号)

具体的には、

  • 健康保険の自己負担額
  • 介護保険の自己負担額

を合算し、年間の自己負担限度額を超えた場合に支給されます。


算定期間

算定期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。

高額療養費のような「月単位」の制度ではなく、年単位で自己負担額を合算して判定します。


世帯単位で判定

高額介護合算療養費は、個人単位ではなく世帯単位で判定されます。

例えば、同じ世帯で

  • 夫が高額な医療費を負担し、
  • 妻が高額な介護サービス費を負担した

場合でも、それぞれを別々に判定するのではなく、世帯全体の自己負担額を合算して支給額を算定します。


支給の流れ

  1. 健康保険の自己負担額を集計
  2. 介護保険の自己負担額を集計
  3. 世帯ごとに合算
  4. 年間の自己負担限度額を超えた額を支給

具体例

夫婦が同一世帯で、1年間(8月1日~翌年7月31日)の自己負担額が次のとおりであったとします。

内容 自己負担額
夫の医療費 40万円
妻の医療費 15万円
介護サービス費 25万円
合計 80万円

この80万円が、その世帯の所得区分に応じた年間の自己負担限度額を超えている場合は、その超えた額が高額介護合算療養費として支給されます。


高額療養費との違い

項目 高額療養費 高額介護合算療養費
対象 医療保険のみ 医療保険+介護保険
算定期間 1か月 1年間(8月1日~翌年7月31日)
算定単位 世帯単位(同一月) 世帯単位(年間)
趣旨 月ごとの医療費負担を軽減 年間の医療費・介護費の総負担を軽減

ポイント

  • 医療保険と介護保険の自己負担額を合算する制度
  • 世帯単位で算定する
  • 毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間を対象とする
  • 年間の自己負担限度額を超えた場合に、その超えた額が支給される

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