健康保険法
傷病手当金の併給調整

傷病手当金は、休業中の生活を保障するための給付であるため、同じ目的の給付や報酬との間では二重給付を避けるための調整が行われる。

調整の対象となる主なものは、

  • 出産手当金
  • 報酬
  • 障害厚生年金

である。

 

ポイント

  • 出産手当金が優先され、差額のみ傷病手当金が支給される。
  • 報酬を受けられる期間は、原則として傷病手当金・出産手当金は支給されない。
  • 報酬が少ない場合は差額支給となる。
  • 支給の優先順位は「報酬 → 出産手当金 → 傷病手当金」である。
  • 就業規則に基づく見舞金は「報酬」に含まれる。
  • 事業主が報酬を支払わない場合は、保険者が立替払いし、後で事業主から徴収する。
  • 障害厚生年金との調整は同一傷病に限られる。
  • 障害厚生年金は年額のため、360で除して日額換算して比較する。
  • 障害年金の原因と異なる傷病による傷病手当金は支給調整されない。

 

目 次

  1. 出産手当金との併給調整
  2. 報酬との調整
  3. 障害厚生年金との調整

出産手当金との併給調整

 

出産手当金が支給される場合(一定の場合を除く)は、その期間について傷病手当金は支給されない

これは、傷病手当金と出産手当金が、ともに休業中の生活保障を目的とする給付であるためである。

ただし、

出産手当金の日額が傷病手当金の日額より少ない場合

には、その差額の傷病手当金が支給される。


調整が行われるパターン

支給調整には、次の2つのケースがある。

  • 出産手当金を受給している間に、傷病手当金の支給事由が発生した場合
  • 傷病手当金を受給している間に、出産手当金の支給事由が発生した場合

いずれの場合も、原則として出産手当金が優先される


傷病手当金が先に支給されていた場合

本来は出産手当金を支給すべき期間について、先に傷病手当金が支給されていたときは、その傷病手当金は出産手当金の内払とみなされる。

つまり、改めて傷病手当金を返還するのではなく、出産手当金を前払いしたものとして処理される。

報酬との調整

 

疾病や負傷により労務不能となった場合でも、報酬の全部または一部を受けることができる期間については、原則として傷病手当金は支給されない。

これは、生活保障が報酬によって既に行われているためである。

ただし、

受けることができる報酬の額が傷病手当金より少ない場合

には、その差額が支給される。

なお、この考え方は出産手当金についても同様である。


報酬に含まれるもの

就業規則などに基づき支給される見舞金であっても、

実質的に休業中の生活保障を目的として支給されるものであれば、「報酬」に含まれる。

したがって、

名称が「見舞金」であっても、報酬との調整の対象となる。


事業主が報酬を支払わない場合

就業規則などにより、休業中も報酬を支給することになっているにもかかわらず、

事業主の事情で報酬が支払われない場合には、

保険者が傷病手当金を立替払いする。

この場合、

保険者は支給した額を事業主から徴収する。

これは、

「報酬も支払われず、傷病手当金も受けられない」

という事態を防ぐための救済規定である。


優先順位

報酬・出産手当金・傷病手当金が重なる場合は、

次の順で優先される。

報酬 → 出産手当金 → 傷病手当金

  • 報酬 4,000円
  • 出産手当金 5,000円
  • 傷病手当金 7,000円

支給額は、

  • 報酬    4,000円
  • 出産手当金 1,000円(5,000円-4,000円)
  • 傷病手当金 2,000円(7,000円-5,000円)

合計 7,000円

となる。

 

障害厚生年金との調整

 

傷病手当金の支給を受ける者が、

同一の疾病または負傷

によって障害厚生年金を受けることができる場合には、

傷病手当金は支給されない。

ただし、

障害厚生年金(日額換算)が傷病手当金より少ない場合は、

その差額が支給される。


日額換算

障害厚生年金は年額で支給されるため、

調整を行う際は、

年額 ÷ 360

として日額に換算する。

また、

障害基礎年金も同一の支給事由に基づいて支給される場合には、

障害厚生年金+障害基礎年金

の合計額を360で除して比較する。


同一傷病に限って調整

障害厚生年金との調整は、

同一の疾病または負傷

に限って行われる。

したがって、

別の病気やけがによる傷病手当金については、

障害厚生年金との調整は行われない。


傷病手当金と障害厚生年金の関係

傷病手当金の支給期間は、

通算1年6か月

である。

一方、

障害厚生年金は、

原則として初診日から1年6か月経過した障害認定日以後に支給される。

そのため、

通常は、

傷病手当金 → 障害厚生年金

という流れになり、

生活保障が途切れないよう制度設計されている。


重複する場合

ただし、

休業中も報酬を受けていたため、

傷病手当金が実際には支給されなかった期間がある場合には、

傷病手当金の支給期間の起算は、

現実に傷病手当金の支給が開始された日

となる。

その結果、

傷病手当金と障害厚生年金の支給期間が重複することがあり、

この場合には支給調整が行われる。

 

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