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「任意継続被保険者」とは、退職などにより勤務先の健康保険の資格を失った人が、本人の希望により、引き続き従前の健康保険に加入できる制度です。
任意継続被保険者となるためには、一定の被保険者期間があること、資格喪失後20日以内に申し出ることなどの要件を満たす必要があります。
目 次
任意継続被保険者の資格取得要件
任意継続被保険者とは、適用事業所に使用されなくなったこと、または健康保険法上の適用除外に該当したことにより、一般の被保険者資格を喪失した者のうち、保険者に申し出ることにより、引き続き同じ保険者の被保険者となった者をいいます。
ただし、船員保険の被保険者または後期高齢者医療の被保険者等である者は、任意継続被保険者となることはできません。(健康保険法3条4項)
任意継続被保険者となるためには、次の要件を満たす必要があります。
| 資格取得要件 | |
|---|---|
| 1 | 適用事業所を退職したこと、または適用除外に該当したことにより、一般の被保険者資格を喪失したこと |
| 2 | 資格喪失日の前日まで、継続して2か月以上、一般の被保険者であったこと |
| 3 | 船員保険の被保険者または後期高齢者医療の被保険者等でないこと |
| 4 | 資格喪失日から20日以内に保険者へ申し出ること |
| 5 | 初めて納付すべき保険料を納付期日までに納付すること |
なお、2か月以上の被保険者期間を判断する際には、日雇特例被保険者、任意継続被保険者および共済組合の組合員である被保険者としての期間は含まれません。
退職後、すぐに再就職しない場合には、主に次の選択肢があります。
国民健康保険料は、原則として前年の所得を基礎として算定されます。
そのため、退職直後は前年の所得が高く、国民健康保険料も高額になることがあります。
このような場合には、退職後しばらく任意継続被保険者となり、所得が下がった後に国民健康保険へ移行することで、保険料負担の急激な変動を抑えられることがあります。
もっとも、任意継続の保険料と国民健康保険料のどちらが低くなるかは、標準報酬月額、前年所得、世帯構成、居住する市区町村などによって異なります。事前にそれぞれの保険料を確認することが重要です。
任意適用事業所の被保険者の場合
任意適用事業所で働く被保険者が、退職などにより資格を喪失した場合には、要件を満たせば任意継続被保険者となることができます。
一方、任意適用事業所そのものが任意適用の取消しを受け、いわゆる「任意包括脱退」によって被保険者資格を喪失した場合には、任意継続被保険者となることはできません。(健康保険法3条1項・4項)
「任意適用事業所の事業主」は、認可を受けて、事業所を適用事業所でなくすることができます。ただし、この場合には当該事業所に使用される者の4分の3以上の「同意」が必要です。
任意包括脱退は、事業所全体として健康保険から脱退する手続であるため、これによって資格を喪失した者が、個人として任意継続することは認められていません。
本人が任意包括脱退に同意していなかった場合も同様です。
任意継続被保険者となるための申出は、被保険者資格を喪失した日から20日以内に、従前の保険者へ行わなければなりません。(健康保険法37条1項)
申出先は、退職前に加入していた健康保険によって異なります。
保険者は、申出が20日を経過した後に行われた場合であっても、正当な理由があると認めるときは、申出を受理することができます。
正当な理由としては、天災、交通機関や通信機関の長期的な障害などにより、法定期間内に申出をすることができなかった場合が考えられます。(昭和24年8月11日保文発1400号)
一方、単に制度や申出期限を知らなかったという事情だけでは、正当な理由には当たらないとされています。
保険事故が発生する可能性が高いことを知った後に保険へ加入しようとすることを「逆選択」といいます。
任意継続の申出期間が長期間認められると、病気やけがをした後に初めて申出をする者が増えるおそれがあります。
このような逆選択を防止するため、申出期間は資格喪失日から20日以内という短い期間に制限されています。
最高裁判所は、任意継続被保険者の申請期間を制限した趣旨について、逆選択を防止することにあるとしたうえで、単に法律を知らなかったという事情だけでは、期間経過後の申出を認める「正当な事由」には該当しないと判断しています。
昭和36年2月24日最高裁判所第二小法廷判決 健康保険任意継続被保険者資格取得の承認に対する審査棄却決定取消請求事件
任意継続被保険者と特例退職被保険者の比較
| 任意継続被保険者 | 特例退職被保険者 | |
| 申出期限 | 一般の被保険者資格を喪失した日から20日以内 | 年金証書等が到達した日の翌日から3か月以内 |
| 資格取得日 | 一般の被保険者資格を喪失した日 | 申出が受理された日 |
| 加入期間 | 原則として最長2年間 | 原則として後期高齢者医療制度に加入するまで |
| 被扶養者 | あり | あり |
| 任意脱退 | 可能 | 可能 |
任意継続被保険者の資格喪失
任意継続被保険者は、次のいずれかに該当した場合に資格を喪失します。(健康保険法38条)
| 資格喪失事由 | 資格喪失日 | |
| 1 | 任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき | 2年を経過した日の翌日 |
| 2 | 死亡したとき | 死亡した日の翌日 |
| 3 | 保険料を納付期日までに納付しなかったとき | 納付期日の翌日 |
| 4 | 健康保険の強制被保険者となったとき | その日 |
| 5 | 船員保険の被保険者となったとき | その日 |
| 6 | 後期高齢者医療の被保険者等となったとき | その日 |
| 7 | 任意継続をやめる旨を申し出たとき | 申出受理月の翌月1日 |
任意継続被保険者となった日から2年を経過すると、その翌日に資格を喪失します。
任意継続制度は、退職後の一時的な保障を目的とする制度です。
加入期間を長期間とすると、逆選択が生じ、保険財政に影響を与えるおそれがあるため、加入期間は最長2年間とされています。
なお、加入期間は、制度創設後、6か月、1年、2年と段階的に延長されてきました。
任意継続被保険者が死亡した場合は、死亡した日の翌日に資格を喪失します。
任意継続被保険者が、保険料を納付期日までに納付しなかった場合は、原則として納付期日の翌日に資格を喪失します。
通常、毎月の保険料の納付期日は、その月の10日です。
そのため、納付期日が10日である場合、納付しなければ原則として11日に資格を喪失します。
ただし、納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めた場合は、この限りではありません。
初めて納付すべき保険料を納付期日までに納付しなかった場合は、資格を喪失するのではなく、原則として、初めから任意継続被保険者とならなかったものとみなされます。
また、保険料の滞納により任意継続被保険者資格を喪失した後、再び任意継続の申出をすることはできません。
任意継続被保険者としての期間は、資格取得要件である「継続して2か月以上の一般の被保険者期間」には含まれないためです。
再就職などにより健康保険の強制被保険者となった場合は、その日に任意継続被保険者資格を喪失します。
翌日ではありません。
また、任意継続被保険者が勤務している事業所について、新たに任意適用の認可が行われ、健康保険の被保険者となった場合も、適用日当日に任意継続被保険者資格を喪失します。
船員として再就職し、船員保険の被保険者となった場合は、その日に任意継続被保険者資格を喪失します。
75歳に到達するなどして、後期高齢者医療の被保険者等となった場合は、その日に任意継続被保険者資格を喪失します。
翌日ではありません。
任意継続被保険者は、本人の希望により資格を喪失することができます。
任意継続をやめる旨の申出が保険者に受理された場合は、その申出が受理された月の末日まで任意継続被保険者となり、翌月1日に資格を喪失します。
例えば、2月15日に申出が受理された場合は、2月28日または29日まで任意継続被保険者となり、3月1日に資格を喪失します。
したがって、2月分の保険料は納付する必要があります。(令和3年11月10日事務連絡・問21)
任意脱退の申出は、被保険者等記号・番号または個人番号、氏名および生年月日を記載した申出書を保険者に提出することにより行います。(健康保険法施行規則42条の2)
従来、任意継続被保険者は、再就職、保険料の滞納、加入から2年の経過など、法律で定められた事由がなければ、本人の希望だけで資格を喪失することはできませんでした。
令和4年1月からは、本人が保険者に申し出ることにより、任意継続被保険者資格を喪失できるようになりました。
例えば、1月中に申出が受理された場合は、1月31日まで任意継続被保険者となり、2月1日に資格を喪失します。
任意脱退の申出をした場合でも、資格喪失日までは保険料を納付しなければなりません。
例えば、4月8日に任意脱退の申出が受理された場合、通常であれば5月1日に資格を喪失します。
しかし、4月分の保険料を4月10日までに納付しなかった場合は、任意脱退による資格喪失日を待たず、保険料滞納により4月11日に資格を喪失します。(令和3年11月10日事務連絡・問22)
保険料を前納している場合でも、任意脱退の申出をすることができます。
前納期間の途中で資格を喪失した場合は、前納した保険料のうち、資格喪失後の未経過期間に相当する金額が還付されます。
本人の申出により任意脱退した場合も同様です。(健康保険法施行令51条、令和3年11月10日事務連絡・問23)
特例退職被保険者
特例退職被保険者制度とは、一定の要件を満たす退職者が、退職前に加入していた特定健康保険組合へ引き続き加入できる制度です。
特定健康保険組合の組合員である被保険者であった者のうち、所定の要件を満たし、その健康保険組合の規約で対象とされている者は、健康保険組合に申し出ることにより、特例退職被保険者となることができます。
ただし、任意継続被保険者である間は、特例退職被保険者となることはできません。(健康保険法附則3条1項)
特例退職被保険者制度は、すべての健康保険組合で実施されているわけではありません。
加入できるかどうかや保険料、申出期限などは、退職前に加入していた健康保険組合へ確認する必要があります。
特例退職被保険者の資格喪失
特例退職被保険者は、次のいずれかに該当した場合に資格を喪失します。(健康保険法附則3条6項、38条)
| 資格喪失事由 | 資格喪失日 | |
| 1 | 特例退職被保険者の要件に該当しなくなったとき | その翌日 |
| 2 | 保険料を納付期日までに納付しなかったとき | 納付期日の翌日 |
| 3 | 後期高齢者医療の被保険者等となったとき | その日 |
| 4 | 特例退職被保険者をやめる旨を申し出たとき | 申出受理月の翌月1日 |
特例退職被保険者は、任意継続被保険者と異なり、加入期間が2年間に限定されていません。
原則として、後期高齢者医療制度の対象となる75歳まで加入することができます。
また、国民健康保険とは異なり、一定の要件を満たす家族を被扶養者とすることもできます。
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