労働基準法

雑則・罰則

項目 ポイント
法令等の周知 法令・命令は要旨、就業規則・労使協定・決議は全文
賃金台帳 各事業場ごとに作成し、賃金支払の都度記入
賃金台帳の記載事項 氏名から労働時間、賃金、控除額まで8項目
記録の保存 法定5年、ただし当分の間3年
賃金の時効 法定5年、ただし当分の間3年
退職手当の時効 5年
災害補償その他の時効 2年

「保存期間」と「時効」は別の制度ですが、労働基準法ではいずれも法定5年・経過措置3年という部分があるため、混同しないよう整理することが重要です。

目次

  1. 法令などの周知義務
  2. 賃金台帳の調製
  3. 賃金台帳の記載事項
  4. 記録の保存
  5. 保存すべき期間の起算日
  6. 時効

法令などの周知義務

 

 

使用者は、次の事項について、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、書面を交付するなど、厚生労働省令で定める方法により労働者に周知させなければなりません。(法106条1項、則52条の2)

 

周知しなければならないもの

 

  周知対象 周知する範囲
労働基準法及びこれに基づく命令 要旨
就業規則 全文
労働基準法に基づく労使協定 全文
企画業務型裁量労働制・高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の決議 全文

 

① 労働基準法及びこれに基づく命令

 

「労働基準法に基づく命令」には、例えば、

労働基準法施行規則、年少者労働基準規則、女性労働基準規則、事業附属寄宿舎規程

などがあります。

これらについては、全文ではなく「要旨」の周知で足ります

一方、②~④の就業規則、労使協定、労使委員会の決議については、その全文を周知する必要があります


③ 労働基準法に基づく労使協定

 

育児・介護休業法や高年齢者雇用安定法などにも労使協定の規定がありますが、法106条による周知義務の対象となるのは、労働基準法に基づく労使協定です。

したがって、

すべての法律に基づく労使協定が、法106条の周知対象となるわけではありません。

また、労使協定や労使委員会の決議は、その制度の対象となる労働者だけに周知すればよいわけではなく、全労働者に周知する必要があります。(平成12年1月1日基発1号)


周知の方法

 

法106条の周知は、単に「どこかに保存してある」というだけでは足りず、則52条の2に定める方法によって行う必要があります。

周知方法 内容
掲示・備付け 常時、各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける
書面交付 労働者に書面を交付する
電子データ 電子的に記録し、各作業場で労働者が常時内容を確認できるようにする

労基法106条と労契法7条の「周知」の違い

 

就業規則の「周知」は、労働基準法106条労働契約法7条で意味合いが異なります。

比較 労基法106条 労契法7条
目的 行政上の周知義務 就業規則を労働契約の内容とするための要件
方法 省令で定める方法による 特定の方法に限定されない
判断 周知方法を重視 労働者が内容を知り得る状態にあるかを実質的に判断

つまり、

労基法106条は「どのように周知したか」、労契法7条は「労働者が就業規則の内容を知ることができる状態にあったか」が重要です。

賃金台帳の調製

 

使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項、賃金額その他厚生労働省令で定める事項を、賃金支払の都度、遅滞なく記入しなければなりません。(法108条)

 

日雇労働者にも賃金台帳は必要

日日雇い入れられる者については、原則として労働者名簿の調製義務はありません

しかし、賃金台帳については調製義務があります

日雇労働者

労働者名簿 → 原則不要
賃金台帳  → 必要

賃金台帳の記載事項

賃金台帳には、労働者ごとに次の事項を記載しなければなりません。(則54条1項)

  記載事項
氏名
性別
賃金計算期間
労働日数
労働時間数
時間外労働時間数・休日労働時間数・深夜労働時間数
基本給、手当その他賃金の種類ごとの額
法24条1項に基づき賃金の一部を控除した場合の控除額

記載事項の例外

 

日雇労働者

日日雇い入れられる者のうち、1か月を超えて引き続き使用される者を除く者については、「賃金計算期間」の記載は不要です。(則54条4項)


法41条該当者・高度プロフェッショナル制度対象者

法41条該当者及び高度プロフェッショナル制度により労働させる労働者については、則54条5項により、

労働時間数及び時間外・休日・深夜労働時間数

について、賃金台帳への記載を要しないこととされています。

ただし、管理監督者など法41条該当者についても、深夜労働に対する割増賃金の規定は適用されます

そのため、法41条該当者については、深夜労働時間数を賃金台帳に記入するよう指導する旨の通達があります。(昭和23年2月3日基発161号)

管理監督者だから深夜労働の管理まで不要、というわけではありません。


就業規則に法定と異なる所定労働時間・休日がある場合

賃金台帳に記載する時間外労働時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数について、就業規則において法定とは異なる所定労働時間または休日を定めている場合には、就業規則に基づいて算定した労働時間数をもって代えることができます。(則54条2項)

記録の保存

 

使用者は、

労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類

5年間保存しなければなりません。(法109条)

ただし、経過措置により、

当分の間は「3年間」

とされています。(附則143条1項)

 

現在の保存期間

原則 5年
経過措置
当分の間 3年


法定3帳簿・法定4帳簿

一般に、

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿

法定3帳簿と呼びます。

さらに、

年次有給休暇管理簿

を加えて、法定4帳簿と呼ぶことがあります。

なお、「法定3帳簿」「法定4帳簿」は法律上の正式名称ではなく、実務上一般的に使用されている呼称です。


主な労働・社会保険関係書類の保存期間

法律 主な保存期間
労働基準法 5年(当分の間3年)
労働安全衛生法 3年を基本に、記録により5年・7年・30年・40年など
労働者災害補償保険法 3年
雇用保険法 2年(被保険者関係4年)
労働保険徴収法 3年
健康保険法 2年
厚生年金保険法 2年
社会保険労務士法 2年

保存期間は、法律や書類の種類によって異なるため、個々の書類ごとに確認することが重要です

保存すべき期間の起算日

 

労働基準法上の記録について、保存期間は単に「書類を作った日」から計算するわけではありません。

それぞれ次の日から保存期間を計算します。(則56条)

書類 保存期間の起算日
労働者名簿 労働者の死亡・退職・解雇の日
賃金台帳 最後に記入した日。ただし、その記録に係る賃金支払期日が後に到来するときはその支払期日
雇入れまたは退職に関する書類 労働者の退職または死亡の日
災害補償に関する書類 災害補償を終わった日
賃金その他労働関係に関する重要な書類 その完結の日。ただし、その記録に係る賃金支払期日が後に到来するときはその支払期日

 

ポイント

保存期間は「作成日」ではなく、それぞれ法律で定められた起算日から計算します。

特に賃金関係書類については、賃金の支払期日が後に到来する場合、その支払期日が起算日となる点に注意が必要です。

時効

 

労働基準法上の請求権については、それぞれ消滅時効が定められています。

現在は経過措置により、次のとおりです。(法115条、附則143条3項)

請求権 消滅時効
賃金(退職手当を除く) 3年
退職手当 5年
災害補償その他の請求権 2年

 

賃金の時効

法律上は、賃金請求権の消滅時効は5年とされていますが、経過措置により、

当分の間は3年

とされています。

したがって、現在は、

賃金 → 3年
退職手当 → 5年
災害補償その他 → 2年

と整理すると分かりやすくなります。


解雇予告手当

解雇予告手当については、通常の賃金債権のように、解雇後に一定期間請求しなければ消滅するという形ではないため、原則として時効の問題は生じません


退職時の証明

労働者が退職した場合には、使用者に対して退職時の証明を請求することができます。

この退職時の証明を請求する権利については、

退職時から2年

とされています。(平成11年3月31日基発169号)

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