健康保険法
被扶養者の範囲

健康保険の被扶養者となるためには、原則として、次の要件を満たす必要があります。

  • 健康保険法上の親族の範囲に含まれること
  • 主として被保険者の収入によって生計を維持していること
  • 原則として、日本国内に住所を有すること
  • 後期高齢者医療制度の被保険者など、被扶養者から除外される者に該当しないこと

生計維持関係の認定では、原則として、認定対象者の年間収入が130万円未満であることが必要です。

ただし、認定対象者が60歳以上である場合、または一定の障害がある場合は、年間収入の基準は180万円未満となります。

また、被扶養者となるために同居が必要かどうかは、被保険者との続柄によって異なります。

 

健康保険法 対象者 生計維持 同一世帯
3条7項1号 直系尊属・配偶者・子・孫・兄弟姉妹 必要 不要
3条7項2号 上記以外の3親等内の親族(配偶者の父母、配偶者の兄弟姉妹など) 必要 必要
3条7項3号 事実婚の配偶者の父母・子 必要 必要
3条7項4号 死亡した事実婚の配偶者の父母・子 必要 必要
対象外 4親等以上の親族

 

目 次

  1. 被扶養者の範囲(総論)
  2. 被扶養者から除かれる者

 

被扶養者の範囲(総論)

 

健康保険の被扶養者となるためには、主に次の要件を満たす必要があります。

要件 内容
親族の範囲 健康保険法上の親族に該当すること
生計維持 主として被保険者の収入により生活していること
同一世帯 親族の種類によっては、被保険者との同居・家計の共同が必要
国内居住 原則として日本国内に住所を有すること
除外事由 後期高齢者医療の被保険者などに該当しないこと

被扶養者となる親族は、同居を必要としない者と、同居を必要とする者に分かれます。(健康保険法3条7項)


被扶養者となる親族の一覧

対象者 生計維持 同一世帯 備考
直系尊属 必要 不要 父母、祖父母、曾祖父母、養父母
配偶者 必要 不要 事実婚の配偶者を含む
必要 不要 実子・養子
必要 不要  
兄弟姉妹 必要 不要 被保険者本人の兄弟姉妹
上記以外の3親等内の親族 必要 必要 配偶者の父母、甥・姪など
事実婚の配偶者の父母・子 必要 必要 法律婚の配偶者の父母等とは別区分
事実婚の配偶者の死亡後の父母・子 必要 必要 引き続き同一世帯であることが必要

同居を必要としない者

次の者は、主として被保険者により生計を維持されていれば、被保険者と別居していても被扶養者となることができます。

  • 直系尊属
  • 配偶者
  • 兄弟姉妹

配偶者には、婚姻の届出をしていないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。

 

ポイント

被保険者本人の父母は「直系尊属」に当たるため、同居は必要ありません。

一方、配偶者の父母は、被保険者本人の直系尊属ではなく、1親等の姻族に当たるため、原則として同居が必要です。


同居を必要とする者

次の者が被扶養者となるためには、生計維持関係に加えて、被保険者と同一世帯に属していることが必要です。

  • 直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族
  • 事実婚の配偶者の父母及び子
  • 事実婚の配偶者が死亡した後の、その父母及び子

「同一世帯に属する」とは、単に住民票上の世帯が同じというだけではなく、原則として、被保険者と住居及び家計を共同にしていることをいいます。


国内居住要件

被扶養者となるためには、原則として、日本国内に住所を有していることが必要です。

ただし、海外に居住していても、留学その他の事情により、日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者は、例外的に被扶養者となることがあります。(健康保険法3条7項)


生計維持関係とは

「主として被保険者により生計を維持する」とは、認定対象者の生活の基礎が、被保険者の収入や援助に置かれていることをいいます。

被保険者以外から収入を得ていても、直ちに被扶養者となれないわけではありません。

被保険者が生活費の主要な部分を負担しているかどうかを、収入額、仕送り額、同居・別居の状況などから総合的に判断します。(昭和15年6月26日社発7号、昭和18年4月5日保発905号)

 ⇨ 労災保険法の「生計維持」についてはコチラ


生計維持関係の収入基準

 

同居している場合

認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合は、原則として、次の両方を満たす必要があります。(平成5年3月5日保発15号・庁保発4号)

要件 基準
年間収入

130万円未満

  • 認定対象者が60歳以上である場合、または一定の障害がある場合は、年間収入の基準は180万円未満
被保険者との比較 被保険者の年間収入の2分の1未満

収入が被保険者の2分の1以上の場合

認定対象者の収入が被保険者の年間収入の2分の1以上であっても、直ちに被扶養者となれないわけではありません。

次の要件を満たす場合には、世帯の収入状況や生活費の負担状況を総合的に判断し、被扶養者として認定されることがあります。

  • 認定対象者の年間収入が130万円未満であること
  • 認定対象者の年間収入が被保険者の年間収入を上回っていないこと
  • 被保険者が世帯の生計維持の中心的役割を果たしていること

別居している場合

認定対象者が被保険者と別居している場合は、原則として、次の両方を満たす必要があります。

要件 基準
年間収入

130万円未満

  • 認定対象者が60歳以上である場合、または一定の障害がある場合は、年間収入の基準は180万円未満
仕送りとの比較 年間収入が被保険者からの年間仕送り額未満

つまり、別居している場合には、単に年収が130万円未満であるだけでは足りません。

被保険者からの仕送り額が、認定対象者自身の収入を上回っていることが原則として必要です。


年間収入の考え方

被扶養者認定における年間収入は、前年の確定収入だけで判断するものではありません。

次の事情を踏まえて、認定時点から今後1年間に見込まれる収入を判断します。

  • 過去の収入
  • 現在の給与
  • 雇用契約の内容
  • 今後の勤務日数
  • 年金収入
  • 失業給付
  • その他継続的な収入

年齢による制限

被扶養者となるための年齢制限は、原則として設けられていません。(昭和24年8月9日保文発1444号)

ただし、16歳以上60歳未満の者は一般に就労可能な年齢であるため、被扶養者認定の際に、就労状況や収入状況について詳しい確認が行われることがあります。

提出を求められることがある書類は、次のとおりです(昭和27年6月23日保文発3533号)。

  • 在学証明書
  • 非課税証明書
  • 退職証明書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 給与明細
  • 雇用契約書

直系尊属

被保険者の直系尊属で、主として被保険者により生計を維持されている者は、同居していなくても被扶養者となることができます。(健康保険法3条7項1号)

直系尊属の例 同居要件
父母 不要
祖父母 不要
曾祖父母 不要
養父母 不要

養父母も、健康保険法上の父母に含まれます。(昭和32年9月2日保発123号)


兄弟姉妹

被保険者本人の兄弟姉妹は、主として被保険者により生計を維持されていれば、同居していなくても被扶養者となることができます。(健康保険法3条7項1号)

これに対し、配偶者の兄弟姉妹は、被保険者からみて2親等の姻族に当たります。

そのため、被扶養者となるには、次の両方が必要です。

  • 主として被保険者により生計を維持されていること
  • 被保険者と同一世帯に属していること
対象者 生計維持 同居
被保険者本人の兄弟姉妹 必要 不要
配偶者の兄弟姉妹 必要 必要

3親等内の親族

次のような3親等内の親族は、被保険者と同一世帯に属し、主として被保険者により生計を維持されていれば、被扶養者となることができます。(健康保険法3条7項2号)

親族 親等 同居要件
配偶者の父母 1親等の姻族 必要
配偶者の養父母 1親等の姻族 必要
子の配偶者 1親等の姻族 必要
配偶者の兄弟姉妹 2親等の姻族 必要
配偶者の祖父母 2親等の姻族 必要
曾孫 3親等の血族 必要
甥・姪 3親等の血族 必要
叔父・叔母 3親等の血族 必要
叔父・叔母の配偶者 3親等の姻族 必要
配偶者の甥・姪 3親等の姻族 必要

血族と姻族

「血族」とは、血縁関係にある親族をいいます。

「姻族」とは、次の者をいいます。

  • 配偶者の血族
  • 自己の血族の配偶者

親族 区分
父母 血族
兄弟姉妹 血族
配偶者の父母 姻族
子の配偶者 姻族
叔父の配偶者 姻族

被扶養者になれない親族の例

健康保険の被扶養者となれる親族は、原則として3親等内までです。

そのため、次の者は4親等に当たり、被扶養者となることはできません。

対象者 親等 被扶養者認定
いとこ 4親等の血族 不可
甥・姪の子 4親等の血族 不可

 ⇨ 労災保険法の「生計維持」についてはコチラ

 

ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者(75歳以上(および一定の障害があると認定された65〜74歳の方))その他健康保険法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない

 

健康保険法の被扶養者から除かれる者

 

親族関係や生計維持要件を満たしていても、次の者は被扶養者となりません。

 

後期高齢者医療制度の被保険者

次の者は、原則として後期高齢者医療制度の被保険者となるため、健康保険の被扶養者にはなりません。


医療滞在を目的とする外国人

外国人で、特定活動のうち、次の活動を行う者は被扶養者から除かれます。(健康保険法施行規則37条の3)

  • 日本で治療を受けることを目的として滞在する者
  • その者の日常生活上の世話をする者

特定活動「医療滞在の在留資格で滞在する外国人が該当します。


観光・保養を目的として滞在する外国人

外国人で、特定活動として日本に1年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似する活動を行う者も、被扶養者となりません。

いわゆる富裕層向けの長期滞在制度、観光保養を目的とするロングステイビザによって日本に滞在する者が該当します。


夫婦が共同で扶養している場合

夫婦双方が健康保険の被保険者であり、子などを共同で扶養している場合には、原則として、今後1年間の年間収入が多い方の被扶養者とします。(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)

被扶養者となる者の人数によって、子を夫婦それぞれに分けるのではなく、原則として収入の多い方にまとめて認定します。


夫婦の収入差が1割以内の場合

夫婦双方の年間収入の差額が、年間収入の多い方の収入の1割以内である場合には、被扶養者の地位を安定させるため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とすることができます。


一方が共済組合員である場合

夫婦の一方または双方が共済組合の組合員であり、扶養手当等の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えありません。

ただし、扶養手当が支給されていないことだけを理由として、被扶養者認定を拒否することはできません。


保険者間で認定が分かれた場合

一方の保険者が被扶養者として認定しない場合には、不認定の理由などを記載した通知を発行することが望ましいとされています。

不認定通知には、次の事項を記載します。

  • 不認定とした理由
  • 年間収入の見込額
  • 被保険者の標準報酬月額
  • 届出日
  • 決定日

被保険者は、この通知を他方の保険者へ提出します。

他方の保険者が不認定の判断に疑義を持つ場合は、原則として、届出を受理した日から5日以内に保険者間で協議します。

協議が整わない場合には、原則として、届出月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とします。

標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とします。


一時的に別居している場合

被保険者と同居することが被扶養者の要件となる親族であっても、一時的な別居にすぎない場合には、同一世帯に属するものとして取り扱われることがあります。

 

入院している場合

病院等への入院は一時的な別居と考えられるため、原則として、同一世帯要件を満たすものとして取り扱われます。(平成11年3月19日保険発24号・庁保険発4号)

 

施設に入所している場合

従来、被保険者と住居を共にしていた者が、次のような施設へ入所した場合も、一時的な別居として取り扱われることがあります。

  • 障害者支援施設
  • 介護老人保健施設
  • その他これらに類する施設

この場合、その他の被扶養者要件を満たしていれば、引き続き被扶養者として認定されます。

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