労働基準法の「労働者

覚えるべきポイント

  • 法9条のキーワードは「事業に使用される者」「賃金を支払われる者」
  • 判断は契約名ではなく「使用従属性(実態)」で行う。
  • 代表取締役は原則として労働者ではないが、使用人兼務取締役は兼務部分について労働者となり得る。
  • 形式上請負でも、実態として指揮命令下で働いていれば労働者となる。
  • インターンシップは見学だけなら労働者ではないが、生産活動に従事し使用従属関係があれば労働者となる。
  • 労働組合法だけは失業者を労働者に含む

 

目次

  1. 労働者の定義
    1. 法人の代表など
    2. 法人の取締役など
    3. 請負と労働関係
    4. インターンシップにおける実習生
    5. 芸能タレント
  2. 「職業」「業務」「事業」の比較
  3. 労働者性の判断基準
  4. 「労働者」の定義の比較
  5. 具体例

労働者の定義

労働者」とは、職業の種類を問わず事業に使用され者で、賃金を支払われるをいう。(法9条

ポイントは2つです。

  • 事業に使用されること(使用従属関係)
  • 賃金を支払われること

つまり、

使用従属関係+賃金

があるかどうかで判断します。


労働組合法との違い

ここは頻出です。

法律 労働者の定義 失業者
労働基準法 使用され、賃金を支払われる者 ×
労働契約法 使用され、賃金を支払われる者 ×
労働組合法 賃金等によって生活する者

つまり、

労働組合法だけは労働者賃金給料その他これに準ずる収入によって生活する者としていて、「失業者を含んでいます

 

法人の代表など

会社の代表取締役などは、

会社に「使用される者」ではありません。

したがって、

 

労働基準法上の労働者ではありません。

なお、取締役会社との関係において、雇用契約ではなく、会社法330条に基づき民法643条の委任契約を締結します。この契約では、取締役が会社の意思決定や業務執行を委託され、その対価として報酬が支払われることが一般的です。

使用人兼務取締役

 

ただし、

工場長

部長

支店長

などとして

会社の指揮命令下で働き、

賃金を受けている部分については、

その限りで

労働者

 

になります。

請負と労働関係

 

民法では

 

雇用

労働そのものに対して報酬が支払われる契約


請負

仕事の完成に対して報酬が支払われる契約


しかし、

契約書の名称は重要ではありません。

重要なのは

実態

です。

形式上請負でも、

会社から

  • 時間管理
  • 指揮命令
  • 勤務場所指定

などを受けていれば 労働者になります。

インターンシップにおける実習生

 

見学・体験

労働者ではない


生産活動に従事

会社の利益になる仕事

会社の指揮命令

労働者

 

になります。

芸能タレント

 

昭和63年通達です。

次のような事情がある場合は

労働者ではありません。

  • 芸術性・個性が重要
  • 代替できない
  • 時間給ではない
  • 時間拘束が弱い
  • 雇用契約ではない

つまり

独立した事業者

という考え方です。

「職業」「業務」「事業」の比較

労働基準法(本則・施行規則)において、「職業」という表現を使用しているのは、法9条法12条7項法56条2項の3箇所です。

 

  該当箇所 趣旨
「職業」の種類 労働基準法で「労働者」とは、職業の種類を問わず事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(法9条 肉体労働、精神労働など、その行われる労働の性質を言う
「業務」の種類 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(法22条1項) 「経理」「総務」「営業」など
「事業」の種類

この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

  1. 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
  2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの (法41条)
法別表第1の「製造業」「建設業」など

労働者性の判断基準

昭和60年労働基準法研究会報告

これが最重要です。

判断基準は

 

使用者の指揮監督下にあるか

例えば

  • 仕事を断れるか
  • 指示を受けるか
  • 勤務時間を決められるか
  • 勤務場所を指定されるか
  • 他人に代わってもらえるか

報酬が労務の対価か

例えば

  • 時間給
  • 日給
  • 月給

欠勤控除

残業手当

などがあると

労働者性が強くなります。


 

具体例

次のように整理すると分かりやすいです。

 

× 労働者に該当しない

大学生A(個人)が

友人Bに

「引っ越しを手伝って」

と頼み、

謝礼を払った。

→ Aは事業を営んでおらず、「事業に使用する者」ではないため、Bは労働基準法上の労働者ではありません。


○ 労働者に該当する

引っ越し会社Cが

Bを雇って

引っ越し作業をさせ、

賃金を払う。

→ Cは事業者であり、Bは事業に使用され賃金を受けるため、労働基準法上の労働者に該当します。

「労働者の定義の比較

 

法律 労働者の定義 失業者
労働基準法9条 職業の種類を問わず事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。 含まない
労働契約法2条1項 使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。 含まない
労働組合法3条

職業の種類を問わず、賃金給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。

含む

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