前借金相殺の禁止

法16条(賠償予定の禁止)との比較

項目 法16条 法17条
禁止内容 違約金・損害賠償額の予定 前借金と賃金の相殺
趣旨 退職の自由の確保 身分的拘束の防止
実損害の請求
前借金そのもの ○(貸付自体は禁止されない)
相殺 ×

まとめ

  • 前借金そのものは禁止されていない。
  • 禁止されるのは「労働することを条件とする前貸金」と「賃金」との相殺である。
  • 労働者が同意していても、使用者から相殺することはできない。
  • 生活資金の貸付や社会保険料の立替えなど、労働を条件としないことが明らかな貸付は、原則として法17条の対象外である。
  • 労働者の自由意思による相殺は認められるが、実質的に使用者の強制であれば法17条違反となる。

 

覚え方

法16条と法17条はセットで

  • 法16条=「予定」を禁止(違約金・損害賠償額の予定)
  • 法17条=「相殺」を禁止(前借金と賃金の相殺)

と対比して覚えると整理しやすくなります。

 

目次

  1. 前借金相殺の禁止
  2. 趣旨
  3. 生活資金の立替え
  4. 社会保険料の立替え
  5. 労働者からの相殺の意思表示
  6. 奨学金の返済

前借金相殺の禁止

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権賃金相殺してはならない法17条

前借金(まえがりきん)とは、

  • 労働契約締結時またはその後に
  • 労働することを条件として
  • 使用者から借り入れ
  • 将来の賃金で返済することを約した金銭

をいいます。

つまり、

「働き続けること」が条件になっている貸付です。

 

禁止されるもの

禁止されるのは、

前借金の債権と賃金を相殺すること

です。

 

ポイント

労働者が

「相殺してください」

と同意しても、

使用者から相殺することは認められません。


前借金自体は禁止ではない

ここがひっかけです。

法17条は

お金を貸すこと

を禁止しているのではありません。

禁止しているのは、

賃金との相殺

です。

趣旨

法17条の目的は、

金銭の貸し借りによって労働者の身分的拘束が生じることを防止すること

です。

昔のように、

「借金を返すまで辞められない」

という状態を防ぐための規定です。

生活資金の立替え労働条件が付いていない貸付

例えば、

生活費の貸付

災害見舞金

一時的な生活資金

など、

人的信用に基づく貸付

で、

労働することが条件になっていないことが明らかな場合は、

法17条の対象ではありません。


生活資金の立替え

例えば、

生活必需品購入のための貸付を

賃金から分割返済する場合でも、

  • 貸付原因
  • 金額
  • 金利
  • 返済方法

などからみて、

労働を条件としていないことが明白

であれば、

 

法17条違反にはなりません。

社会保険料の立替え

休職中などに

会社が社会保険料を立て替え、

復職後に

給与から返済する制度も、

通常は

法17条違反にはなりません。

ただし、

著しい高金利など、

実質的に労働を強制するような内容であれば

 

違反となる可能性があります。

労働者からの相殺の意思表示

法17条が禁止しているのは、

使用者による相殺

です。

したがって、

労働者が

自分の自由意思で

相殺することまでは禁止していません。

ただし、

形式だけ労働者の申出に見えても、

実際には

会社が強制したものであれば、

 

法17条違反になります。

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