遺族(補償)一時金
受給資格者および受給権者

遺族(補償)一時金は、労災保険の遺族(補償)年金を受給できる遺族がいない場合に、一定範囲の遺族にまとめて支給されるものです

 

目 次

  1. 遺族(補償)一時金 受給資格者および受給権者
  2. 遺族(補償)年金の受給権者が失権した場合

基本ルール

遺族(補償)年金は、本来長期間支給される年金です。

しかし、

  • 受給権者が死亡した
  • 再婚した
  • 年齢要件を満たさなくなった

などにより受給権が失権すると、まだ十分な給付を受けていない場合があります。

そこで、

支給済みの年金等が給付基礎日額の1,000日分に満たなければ、その差額を一時金で補う

という制度が設けられています。

これを一般に失権差額一時金といいます。


支給要件

次の3つを満たすことが必要です。

① 遺族(補償)年金の受給権者が失権したこと

② 他に遺族(補償)年金の受給権者がいないこと
(=転給されないこと)

③ 既に支給された

  • 遺族(補償)年金
  • 遺族(補償)年金前払一時金

の合計が

給付基礎日額の1,000日分未満

であること


例① 妻が死亡した場合

 

労働者死亡

妻が遺族補償年金受給

153日分受給

妻死亡

妹20歳(生計維持○・年齢要件×)

祖母75歳(年齢○・生計維持×)

誰にも転給されない

差額一時金支給


なぜ妹はダメ?

兄弟姉妹は

18歳到達年度末まで

又は

55歳以上

などの要件があります。

20歳では要件を満たしません。


なぜ祖母はダメ?

祖父母は

生計維持関係

が必要です。

祖母は

生計維持×

なので受給権なし。


結果

誰にも転給されない

失権差額一時金


支給額

1000日 − 153日

=847日分


誰に支給?

ここが重要です。

受給権者が死亡した場合は、

遺族(補償)一時金の受給資格者

(法16条の6第1項第2号の順位による者)

に支給されます。

この設例では、

祖母が遺族(補償)一時金の受給権者となります。


例② 妻が再婚した場合

労働者死亡

妻受給

153日分受給

妻が再婚

妻の受給権失権

他に受給権者なし


この場合、

差額847日分

が支給されます。


誰に支給?

ここが死亡の場合との違いです。

今回は

妻は死亡していません。

単に

受給権を失権

しただけです。

したがって、

失権した本人(妻)

に支給されます。


なぜ支給先が違うの?

この違いが非常によく問われます。

 

① 死亡して失権

本人はいない

遺族(補償)一時金の受給資格者へ


② 再婚などで失権

本人は生存

本人へ

遺族補償等一時金と障害補償等年金差額一時金

 

この2つは非常によく比較されますが、支給される場面が全く異なります。

項目 遺族(補償)一時金(失権差額一時金) 障害(補償)年金差額一時金
何が失権する? 遺族(補償)年金 障害(補償)年金
支給されるきっかけ 遺族(補償)年金受給権者が死亡・再婚などで失権し、他に受給権者がいない 障害(補償)年金受給権者が死亡
1,000日分ルール
支給先 ①再婚等による失権→失権した本人
②死亡による失権→遺族(補償)一時金の受給資格者
遺族(配偶者・子など)
転給制度 あり(他の受給権者がいれば転給) なし

① 遺族(補償)一時金(失権差額一時金)

 

労働者死亡  →  妻が遺族補償年金受給   →   再婚・死亡   →  他に受給権者なし   →  1000日分まで差額を一時金

 
ポイントは、

「遺族年金が途中で終わったので、残りを補う制度」

です。


② 障害(補償)年金差額一時金

 

労働災害  →   障害補償年金受給  →   本人死亡  →  年金総額が1000日分未満   →   遺族へ差額一時金

 
こちらは

「障害年金受給者本人が亡くなったので、1000日分に満たない部分を遺族へ支給する制度」

です。


一番大きな違い

 

遺族(補償)一時金(失権差額一時金)

年金受給権が失権したことが原因

しかも

転給されないこと

が条件になります。


障害(補償)年金差額一時金

障害年金受給者が死亡したこと

だけが原因です。

転給という考え方はありません。


覚え方

 

遺族年金

「失権+転給なし」

差額一時金


障害年金

「本人死亡」

差額一時金


最も狙われる比較

比較項目 遺族(補償)一時金 障害(補償)年金差額一時金
1000日分ルール
転給制度 ある ない
再婚で支給される ×
本人死亡で支給される 年金受給権者が死亡した場合もあり 必ず本人死亡

一言で覚えるなら

  • 遺族年金は「失権したら差額
  • 障害年金は「死亡したら差額

この違いを押さえておけば、ほぼ迷いません。

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