労災保険法
特別加入の対象者

労災保険は本来「労働者」を保護する制度です。

そのため、

  • 中小事業主
  • 一人親方
  • 家族従事者
  • 海外派遣者

などは、本来は労災保険の対象ではありません。

しかし、実際には労働者と同じような危険な業務に従事している者も多いため、

一定の要件の下で例外的に労災保険へ加入できる制度が「特別加入制度」です。

 

 

最重要比較表

項目 第1種(中小事業主) 第2種(一人親方) 第3種(海外派遣者)
労働保険事務組合 必要 不要(特別加入団体に加入) 不要
包括加入 必要 不要 不要
保険関係成立 必要 不要(団体を任意適用事業とみなす) 国内事業で必要
個人申請 不可 不可 不可(事業主等が申請)

 

暗記ポイント

  • 第1種:「保険関係成立」「事務組合委託」「包括加入」の3要件が必須。
  • 第2種特別加入団体を通じて加入し、個人では加入できない。
  • 第3種事務組合への委託不要・包括加入不要で、派遣者を個別に選んで加入させることができる。
  • 特別加入は「人」ではなく「事業」に紐づく(特に第1種)。どの事業で災害が発生したかが給付の可否を左右する点は、判例・実務上の重要論点です。
 
 

目 次

  1. 特別加入の対象者
  2. 中小事業主等(第1種特別加入者)
    1. 中小事業の定義
    2. 特別加入の要件
  3. 一人親方等(第2種特別加入者)
    1. 一人親方等が特別加入する際の要件
  4. 海外派遣者とは
    1. 海外派遣者が特別加入する際の要件

特別加入者に対しても複数事業労働者に係る改正の対象になります
したがって

  • 労働者であってかつ他の事業場において特別加入をしている者及び
  • 複数の事業場において特別加入をしている者

についても保護の対象となります。(令和2年8月21日基発0821第1号)

中小事業主等(第1種特別加入者)

対象

  • 中小事業主
  • 家族従事者
  • 労働者ではない役員など

中小事業の定義

 

中小事業主の範囲

業種 常時使用労働者数
原則 300人以下
卸売業・サービス業 100人以下
金融・保険・不動産・小売業 50人以下

※資本金は関係ありません。

第1種特別加入の要件(超重要)

中小事業主等が特別加入する際の要件は次の通りである。3つすべて必要です。(法34条1項、平成30年2月8日基発0208第1号)

1 その事業について保険関係が成立していること つまり労働者がいて、労災保険が成立していること
2 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していること = 事務組合に加入して欲しい 中小事業主だけの特徴です。
3 中小事業主及びその者が行う事業に従事している者を包括して特別加入するものであること

事業主だけ加入することはできません。

事業従事者もまとめて加入します。

覚え方

 

保険関係+事務組合+包括加入

この3点セット。


「保険関係が成立」とは?

 

■ ① まず結論(超シンプル)

特別加入は「労働者がいる事業」が前提。
その事業にしか適用されない。


■ ② 特別加入の本質

 

■ 制度の正体

本来は労災の対象外の人(事業主など)を“労働者とみなして”保護する制度


■ ただし

何もないところにいきなり適用はできない


■ 必須の前提

労働者がいる → 保険関係が成立している


■ 流れ

労働者がいる
→ 保険関係成立
→ その枠に事業主を乗せる(特別加入)


■ ③ だから必要な要件

 

✔ ① 保険関係の成立

→ 労働者がいる事業

 

✔ ② 労働保険事務組合への委託

→ 手続の一元管理

 

✔ ③ 包括加入

→ 事業主だけではなく従事者も含める


■ ④ 包括加入の例外(実務)

 

■ 原則

事業主も含めて全員加入


■ 例外

就業していない事業主は除外OK


■ 具体例

  • 病気療養中
  • 高齢で実務していない
  • 経営だけしている

労災リスクがないため


■ ⑤ ここから判例の核心(超重要)

 

■ 最高裁の考え方

① 特別加入は「既存の保険関係」が前提


② 保険関係は「事業ごと」に成立


③ 事業は「場所的独立性」で分ける


 

■ ⑥ どういう意味か(重要)

建設業で考えると


■ ① 建設現場

労働者がいる
保険関係あり
特別加入OK


■ ② 本店(営業・管理)

労働者いない
保険関係なし
特別加入NG


■ ⑦ 判例の結論(核心)

労働者がいない事業には保険関係が成立しない
→ 特別加入もできない
→ 労災給付も出ない


■ ⑧ 実務で起きた問題

▼ ケース

  • 事業主:特別加入している
  • 事故:本店業務(下見など)中

▼ 結果

❌ 労災給付出ない


■ 理由

本店業務は「保険関係のない事業」


■ ⑨ 超重要な理解

特別加入は「人」ではなく「事業」に紐づく


■ よくある誤解

❌ 事業主が加入していれば全部カバー
違う


■ 正しくは

その人がどの事業でケガしたかで決まる


■ まとめ

① 労働者がいないと特別加入不可


② 保険関係は事業単位


③ 事業は場所で分ける


④ 本店に労働者いなければ対象外


■ 一言でまとめ

「特別加入は“労働者がいる事業にだけ乗っかる制度”」

 

「保険関係が成立(=労働者が存在し、その労働者を使用する事業があること)」していなければ、そもそも特別加入のしようがありませんし、また、

  • 「労働保険事務組合への委託」
  • 中小事業主等の「包括加入」は、

いずれも絶対的な要件とされています。

一人親方等(第2種特別加入者)

対象

  • 一人親方
  • 家族従事者
  • 特定作業従事者

近年追加されたもの

  • ITフリーランス
  • 芸能関係
  • アニメ制作
  • 自転車配達員
  • 柔道整復師
  • 歯科技工士
  • あん摩マッサージ指圧師
  • はり師・きゅう師
  • 創業支援等措置による高年齢者

第2種の要件

① 特別加入団体の構成員になる

② 団体が申請し政府が承認する

つまり

個人では加入できません。


フリーランスのポイント

対象になるのは

企業から業務委託を受けるフリーランス

です。

一方、

消費者だけを相手に仕事をしている人は原則対象外です。


自転車配達員

覚えるポイント

○ 配送中は業務災害

○ 店舗へ向かう移動も業務になることがある

× 通勤災害は対象外


ITフリーランス

令和6年改正

通勤災害も対象

ここは自転車配達員との違いとして重要。

一人親方等 内容 具体例
一人親方その他の自営業の者 次の種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする  
1

自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業または原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物運送事業(令和3年8月3日基発0803第1号

個人タクシー業者自転車配達など
2

土木建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体またはその準備の事業

大工左官とび職人など
3 漁船による水産動植物の採捕の事業 漁船による自営業者
5

医薬品の配置販売の事業

富山の薬売りなど
6

再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業

廃品回収業など
7

船員法1条に規定する船員が行う事業 

船員が行う事業
8

柔道整復師法に規定する柔道整復師が行う事業 

柔道整復師
9
高年齢者雇用安定法に規定する創業支援等措置に基づき委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業または社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるもの
創業支援等措置に基づく高年齢者
10

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律に基づくあん摩マッサージ指圧師はり師またはきゅう師が行う事業 

指圧師、はり師、きゅう師
11

歯科技工士法に規定する歯科技工士が行う事業

歯科技工士
12 ① 特定受託事業者(=フリーランス)が業務委託事業者(=企業など)から業務委託を受けて行う特定受託事業
②特定受託事業者が業務委託事業者以外の者(=消費者)から委託を受けて行う特定受託事業と同種の事業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるもの
特定フリーランス事業を行う者
一人親方が行う事業に従事する者 労働者以外の事業従事者を意味し、家族従事者など  
特定作業従事者 特定作業に従事する次の者(労働者である者を除く)  
1

特定農作業  

特定農作業従事者
2

指定農業機械作業

指定農業機械作業従事者
3

国または地方公共団体が実施する職場適応訓練作業など

国などが実施する訓練従事者
4

家内労働者及びその補助者の特定作業 

 
5

労働組合などの常勤役員の特定作業 

労働組合などの一人専従役員
6

介護作業及び家事支援作業 

介護作業従事者及び家事支援従事者
7

放送番組、映画、寄席、劇場などにおける音楽、演芸その他の芸能の提供の作業またはその演出若しくは企画の作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるもの

芸能関係作業従事者
8

アニメーションの制作の作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるもの

アニメーション制作作業従事者
9 ITフリーランス  

海外派遣者とは 第3種特別加入(海外派遣者)

対象

 

  • 日本企業から海外へ派遣される労働者
  • 海外現地法人代表者(一定規模以下)
  • JICA等の海外協力事業従事者

 

赴任途上における災害は、次の要件をすべて満たす場合に業務災害と認められます。(特別加入制度のしおり<海外派遣者用>)

  1.  海外派遣を命じられた労働者が、その転勤に伴う移転のため転勤前の住居などから赴任先事業場に赴く途中で発生した災害であること
  2.  赴任先事業主の命令に基づき行われる赴任であって、社会通念上、合理的な経路および方法による赴任であること
  3.  赴任のために直接必要でない行為あるいは恣意的行為に起因して発生した災害でないこと
  4.  赴任に対して赴任先事業主より旅費が支給される場合であること

海外派遣者が特別加入する際の要件

 

① 国内事業の保険関係成立

② 国内事業が有期事業ではない

③ 事業主等が申請し承認を受ける


第1種との違い

海外派遣者には

労働保険事務組合への委託は不要

です。

また、

包括加入も不要であり、対象者を選んで加入させることができます。


海外派遣者の重要ポイント

○ 派遣後でも加入可能

○ 赴任途中・帰任途中の災害も業務災害

 

○ 現地の労災保険との二重給付調整は行わない

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