保険関係の成立及び消滅

労働保険の適用事業となったときは、まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出します。そして、その年度分の労働保険料(保険関係が成立した日からその年度の末日までに労働者に支払う賃金の総額の見込額に保険料率を乗じて得た額となります。)を概算保険料として申告・納付していただくこととなります。

目 次

  1. 保険関係成立届の提出
    1. 事業の開始
  2. 保険関係成立届の提出先
  3. 労災保険関係成立票
  4. 擬制任意適用事業
  5. 保険関係の消滅

保険関係成立届の提出

保険関係が成立した強制適用事業の事業主は、その成立した日の翌日から起算して10日以内に、「保険関係成立届」に、その成立した日、事業主の氏名など、事業の種類その他所定の事項を記載し、所轄労働基準監督署長または所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。(法4条の2第1項、則4条1項)

 

保険関係成立届に係る届出事項
1 保険関係が成立した日
2 事業主の氏名または名称及び住所または所在地
3 事業の種類、名称、概要
4 事業の行われる場所
5

事業に係る労働者数

6 有期事業にあっては、事業の予定される期間
7 建設の事業にあっては、当該事業に係る請負金額(消費税等相当額を除く)並びに発注者の氏名または名称及び住所または所在地
8 立木の伐採の事業にあっては、素材の見込生産量
9 事業主が法人番号を有する場合には、当該事業主の法人番号
  • 有期事業にあっては、「事業の予定される期間」も届け出なければなりません。

事業の開始・廃止

 

  労働基準法 雇用保険法 徴収法 健康保険法 厚生年金保険法
遅滞なく 適用事業報告        
5日以内      
  • 新規適用届
  • 適用事業所全喪届
  • 新規適用届
  • 適用事業所全喪届
10日以内  
  • 適用事業所設置届
  • 適用事業所廃止届
  • 保険関係成立届
  • 下請負人を事業主とする認可申請書
 
  • 新規適用船舶所有者届
  • 不適用船舶所有者届
20日以内     概算保険料申告書(有期事業)    
50日以内    
  • 概算保険料申告書(継続事業)

*年度更新の場合は6/1から起算して40日以内

  • 確定保険料申告書(継続事業)
  • 確定保険料申告書(有期事業)
  • 一括有期事業報告書

*年度更新の場合は6/1から起算して40日以内

   

① 全体のコツ(まずここ)

覚え方の軸

  • 労基・雇用 → ゆるい(遅滞なく)
  • 社会保険 → 5日
  • 雇用保険・徴収法 → 10日中心
  • 徴収法の保険料 → 20日・50日

② 法律ごとの整理


① 労働基準法

遅滞なく

  • 適用事業報告

一番ゆるい
(罰則はあるが期限は曖昧)


② 雇用保険法

 

✔ 原則

10日以内

  • 適用事業所設置届
  • 適用事業所廃止届

ポイント
雇用保険=10日と覚える


③ 徴収法(労働保険)

 

✔ ① 保険関係成立

10日以内

  • 保険関係成立届

✔ ② 有期事業

20日以内

  • 概算保険料申告書

✔ ③ 継続事業

50日以内

  • 概算保険料申告書
  • 確定保険料申告書
  • 一括有期事業報告書

※年度更新は特例
6/1から40日以内


まとめ
徴収法=10・20・50の3段階


④ 健康保険法

5日以内

  • 新規適用届
  • 適用事業所全喪届

⑤ 厚生年金保険法

5日以内

  • 新規適用届
  • 適用事業所全喪届

ポイント
健保+厚年=セットで5日


 

③ 横断まとめ(超重要)

区分 期限
労基 遅滞なく
健保・厚年 5日
雇用保険 10日
徴収法(成立) 10日
徴収法(有期) 20日
徴収法(継続) 50日

④ よくある誤り

  • ❌ 健康保険は10日以内
    → 5日以内
  • ❌ 雇用保険は5日以内
    → 10日以内
  • ❌ 労基は5日以内
    → 遅滞なく
  • ❌ 徴収法は全部10日
    → 10・20・50に分かれる

⑤ 一発暗記フレーズ

「労基ゆるい・社保5日・雇用10日・徴収10→20→50」


⑥ 実務的な理解(補足)

  • 社会保険(健保・厚年)は資格管理が重要
    だから短い(5日)
  • 雇用保険・徴収法は手続が複雑
    少し余裕あり(10日以上)

保険関係成立届の提出先

「保険関係成立届」の提出先は次の通りである。(則1条1項2号・3号、整備省令18条)

保険関係成立届 提出先
適用事業 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託 保険関係
二元適用事業 ー 労災保険 所轄労働基準監督署長
一元適用事業
(一般的にはこちら)
していない(一般的にはこちら) 労働保険
している 労働保険 所轄公共職業安定所長
しない 雇用保険のみ(「国」の行う事業)
二元適用事業 ー 雇用保険
  • 通常は、一元適用事業ですから、労働保険事務組合への委託の有無が判断基準です。
    二元適用事業の場合は、労災保険に係るのは「労働基準監督署」へ、雇用保険に係るものは「公共職業安定所」へ提出します。
  • 「労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している事業」についても、保険関係成立届は提出する必要があります
    (この場合、労働保険事務処理を労働保険事務組合に委託しているわけですから、行政窓口へ保険関係成立届を提出するのは労働保険事務組合となります)

労災保険関係成立票

「労災保険」に係る保険関係が成立している事業のうち「建設の事業」に係る事業主は、「労災保険関係成立票」を見易い場所に掲げなければならない。(則77条)

  • 「立木の伐採」の事業については、「労災保険関係成立票」の提示義務はありません。
  • 「労災保険関係成立票」を掲げる必要があるのは、「労災保険」に係る労働保険関係が成立している事業+「建設の事業」です。

まず前提として、

事業には

区分 内容
強制適用事業 自動的に労災保険・雇用保険が適用される
暫定任意適用事業 申請して認可を受けないと適用されない

があります。


典型例

農林水産業では

常時5人未満の労働者を使用する事業は、

雇用保険について

暫定任意適用事業

になる場合があります。


強制適用から暫定任意適用になった場合

通常なら、

強制適用が外れたので

保険関係が消滅しそうです。

しかし、

いったん加入している労働者保護の観点から、

法律は

任意加入の認可があったものとみなす

としています。

これを

擬制任意適用

といいます。


例

従業員10人

↓

強制適用事業

↓

従業員4人に減少

↓

暫定任意適用事業になる

↓

翌日に自動的に任意加入認可があったものとみなす

↓

保険関係継続


つまり、

改めて認可申請をしなくても

保険関係が途切れません。


いつ擬制されるのか

ポイントは

暫定任意適用事業に該当した翌日

です。

 

❌ 該当した日

⭕ 該当した翌日


逆の場合

つまり

暫定任意適用事業

↓

事業拡大

↓

強制適用事業

になった場合です。


この場合は

擬制はありません。

単純に

強制適用事業に該当した日に

保険関係が成立します。


整理すると

変化 効果
強制 → 暫定任意 翌日に擬制任意適用
暫定任意 → 強制 該当日に保険関係成立

次は保険関係が終わる場合です。

条文は非常にシンプルです。

事業が廃止または終了したときは、その翌日に保険関係が消滅する(徴収法5条)


なぜ翌日なのか

保険関係は

事業が存在している間は続いています。

そのため、

事業が終了した当日までは保険関係が存在し、

翌日に消滅すると整理されています。


例

会社廃業

3月31日

↓

保険関係消滅

4月1日


これが

「確定保険料申告50日以内」

につながります。


法人解散との違い

ここが実務で重要です。


法人の解散

=会社がなくなる

ではありません。


法人は

解散

↓

清算

↓

清算結了

という流れを取ります。


したがって

法人が解散しても

すぐには保険関係は消滅しません。


保険関係消滅は原則として

清算結了日の翌日

です。


イメージ

解散

6月1日

↓

清算中

↓

清算結了

8月31日

↓

保険関係消滅

9月1日


休業は廃止ではない

これも頻出です。


事業休止

(営業停止・休業)

↓

事業そのものは存在

↓

保険関係継続


例えば

飲食店が

半年間休業

↓

保険関係は消滅しない


完全に事業が終了して初めて消滅します。


廃止届は必要か

意外な論点です。


事業開始

↓

届出必要


事業廃止

↓

労働保険徴収法上は

廃止届不要


つまり

保険関係消滅届

という制度はありません。


ただし、

保険料の精算は必要です。


消滅後に必要なこと

保険関係が消滅すると、

確定保険料の精算を行います。


期限

保険関係消滅日から50日以内


例

事業廃止

3月31日

↓

保険関係消滅

4月1日

↓

50日以内

5月20日まで

に

  • 確定保険料申告
  • 保険料納付

を行います。


保険料滞納しても保険関係は消滅しない


事業主

「保険料払わない」

↓

保険関係消滅?

↓

❌ 消滅しない


保険料の未納は

  • 督促
  • 滞納処分

の対象になりますが、

 

保険関係自体は継続します。

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