労災保険法
費用徴収

労災保険法における「費用徴収」とは、本来政府が負担する保険給付費用の全部または一部を、原因を作った事業主や不正受給者から徴収する制度です。

 

まとめ(暗記表)

場面 徴収率
故意の未加入 100%
重大な過失の未加入 40%
保険料滞納 滞納率(上限40%)
故意・重大な過失による業務災害 30%
対象期間 3年
不正受給の徴収権の時効 2年

 

覚え方

「100・40・40・30・3・2」

  • 100%:故意の未加入
  • 40%:重大な過失の未加入
  • 40%:保険料滞納(上限)
  • 30%:故意・重大な過失による業務災害
  • 3年:費用徴収の対象期間
  • 2年:不正受給の徴収権の時効

 

 

目 次

  1. 事業主からの費用徴収
    1. 費用徴収が行われる場合①#故意の未加入(100%)
    2. 費用徴収が行われる場合②#重大な過失(40%)
    3. 費用徴収が行われる場合③#保険料滞納(上限40%)
    4. 費用徴収が行われる場合④#故意・重大な過失による業務災害(30%)
  2. 通勤災害との関係
  3. 対象となる保険給付
  4. 不正受給者からの費用徴収

  

事業主からの費用徴収(法31条)

趣旨

労災保険給付は労働者保護のため、事業主に問題があってもまず労働者へ給付されます。

しかし、

悪質な事業主には、その給付費用の全部又は一部を負担させる制度

が「費用徴収」です。


費用徴収が行われる4つの場合

この4つが最重要です。

故意の未加入(100%)

 

要件

保険関係成立届を故意に提出していない。

代表例

  • 行政指導を受けた
  • 加入勧奨を受けた

にもかかわらず

10日以内に届出しない

故意と認定される。


徴収額

100%

つまり

100万円給付

100万円徴収

重大な過失(40%)

行政指導などは受けていないが

成立日から

1年以上

届出していない。

重大な過失

40%徴収

保険料滞納(上限40%)

事業主が一般保険料を納付しない期間(督促状に指定する期限後の期間に限る)中に事故が生じた場合は、保険給付の額に滞納率(上限40%)を乗じて得た額が、支給の都度徴収されます。(平成5年6月22日発労徴42号、基発404号)

 

ポイント

  • 督促前の滞納期間中に発生した事故費用徴収されない
  • 督促状に指定された納期限後に発生した事故費用徴収される

 

一般保険料を滞納

督促

督促期限経過

その後に事故

費用徴収

故意・重大な過失による業務災害(30%)

安全措置を怠った結果

事故発生

30%徴収

例えば

  • 防護柵を設置しない
  • 労基署の改善命令を無視

などです。

通勤災害との関係

場合 通勤災害
未加入 ○徴収される
保険料滞納 ○徴収される
故意・重大な過失による事故 ×徴収されない

つまり

④だけ通勤災害は対象外

対象となる保険給付

 

覚え方

療養以外の主要給付

対象

  • 休業(補償)等給付
  • 傷病(補償)等年金
  • 障害(補償)等給付
  • 遺族(補償)等給付
  • 葬祭料等

対象外

  • 療養(補償)等給付
  • 介護(補償)等給付
  • 二次健康診断等給付
  • 特別支給金

なぜ療養給付は対象外?

理由

療養そのものを止めると

被災労働者の生命・身体に重大な影響があるため。


対象期間

費用徴収できるのは

療養開始日の翌日(即死なら事故翌日)から

3年以内

に支給事由が生じたもの。

年金も

  • 支給事由が3年以内
  • 支給分も3年以内

に限られます。

不正受給者からの費用徴収

こちらは全く別制度です。

対象

偽りその他不正の手段

によって保険給付を受けた者

政府は

不正受給部分

を徴収できる。


ポイント

徴収するのは

給付全額ではない。

あくまで

不正に受給した部分

だけ。


事業主の連帯責任

事業主が

虚偽の報告

又は

虚偽の証明

をした結果

給付された場合

受給者と

連帯して納付

する。


時効

不正受給の徴収権

2年

 

 

不正受給に係る事業主・保険医療機関等への措置

① 不正受給に係る事業主等に対する措置

法令 内容
労災保険法 事業主が虚偽の報告又は証明をしたためその保険給付が行われたものがあるときは、政府は、その事業主に対し、保険給付を受けた者に連帯して徴収金を納付すべきことを命ずることができる。
雇用保険法 事業主等が偽りの届出、報告又は証明をしたためその失業等給付が支給されたものであるときは、政府は、その事業主等に対し、その失業等給付の支給を受けた者に連帯して失業等給付の返還又は納付金を納付することを命ずることができる。
健康保険法

事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医療機関等で診療に従事する保険医若しくは主治の医師が、保険者に対する報告を正当な理由なく拒み、その他保険給付の拒絶をしたものであるときは、保険者は、当該事業主等に対し、保険給付を受けた者に連帯して徴収金を納付すべきことを命ずることができる。

  • 事業主が虚偽の報告又は証明をしたときは、「事業主と保険給付を受けた者とが連帯して納付することになります
国民年金法
厚生年金保険法

② 不正受給に係る保険医療機関等に対する措置

法令 内容
健康保険法 保険者は、保険医療機関等が偽りその他不正の行為によって療養の給付に関する費用の支払等を受けたときは、その額につき返還させるほか、その返還させる額に100分の40を乗じて得た額を支払わせることができる。
労災保険法
雇用保険法
国民年金法
厚生年金保険法

不正受給に係る連帯納付命令

  •  労災保険法→事業主に対する連帯納付命令
  •  雇用保険法→事業主、職業紹介事業者等、募集情報等提供事業を行う者又は指定教育訓練実施者に対する連帯納付命令
  •  徴収法→労働保険事務組合に対する連帯納付命令
  •  健康保険法→事業主、保険医又は主治の医師に対する連帯納付命令
  •  国民健康保険法→保険医又は主治の医師に対する連帯納付命令

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