通勤災害の認定

通勤災害の認定は、住居と就業場所の間を「合理的な経路・方法」で往復中に事故・負傷した場合に適用されます。重要な要件は「業務との関連性」であり、逸脱や中断がないこと、かつ通勤手段が一般的であることです。会社への届出ルート外でも、合理的な迂回であれば認められる可能性があります。

通勤災害」とは、労働者通勤による負傷疾病障害または死亡をいう。(法7条1項3号) 

 

目次

  1. 「通勤による」とは
  2. 「通勤」とは
  3. 「就業に関し」とは
  4. 住居と就業の場所との間の往復とは
  5. 「合理的な経路及び方法」とは
  6. 「逸脱・中断」の取扱い(例外)
  7. 「日常生活上必要な行為」とは
  8. 通勤による疾病

「通勤による」とは

通勤による」とは、通勤相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいう。(昭和48年11月22日基発644号)

  •  「通勤によると認められる場合には、次のものがある。
「通勤による」と認められる場合
  •  通勤の途上におけるひったくりにあった場合(昭和49年3月4日基収69号)
  •  帰宅途中で暴漢に襲われた災害にあった場合(被災労働者の恣意的行為、当事者間の怨恨関係など特別の事情がない場合)(昭和49年6月19日基収1276号)
  •  徒歩通勤中に野犬に咬まれて負傷した場合(昭和53年5月30日基収1172号)
  •  通勤の途中において、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合
    (平成28年12月28日基発1228第1号)
  •  通勤の途中において、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合(昭和48年11月22日基発644号)
  •  通勤の途中において、自動車にひかれた場合
  •  通勤の途中において、電車が急停車したため転倒して受傷した場合
  •  通勤の途中において、駅の階段から転落した場合
  •  自動車通勤をする労働者が、前の自動車の発進を促すためクラクションを鳴らしたことにより生じた災害(昭和52年12月23日基収1032号)
  •  積雪の道路上で進行の妨げとなっている運行不能の自動車救助中の負傷
    (昭和49年9月26日基収2881号)

 

  •  「通勤によると認められない場合には、次のものがある。
「通勤による」と認められない場合
  •  通勤の途中における自殺の場合(昭和48年11月22日基発644号)
  •  通勤の途中で怨恨をもってけんかをしかけて負傷した場合(昭和48年11月22日基発644号)

「通勤」とは

  • 通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するもの除くものとする。
    (法7条2項)
通勤の範囲
  1.  住居と就業の場所との間の往復
  2.  厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
  3.  第1号に掲げる往復先行し、または後続する住居間の移動
    (厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

住居と就業の場所との間の往復最も典型的な通勤となります

ダブルワークの場合

  1. 厚生労働省令で定める就業の場所第1の就業場所)」から
  2. 他の就業の場所第2の就業場所)」への移動も通勤となります

 

単身赴任の場合

  1. 住居と就業の場所との間の往復に先行しまたは
  2. 後続する住居間の移動厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る通勤となります

「就業に関し」とは

就業に関しとは、移動行為が業務に就くためまたは業務を終えたことにより行われるものであることをいう。(昭和48年11月22日基発644号)

  • 通勤と認められるには移動行為が業務と密接な関連をもって行われることが必要とされます

通勤とは、被災労働者の行為を外形的かつ客観的にとらえて判断するものであり、たとえ長男宅に立ち寄るつもりで就業の場所を出たものであっても、いまだに通常の合理的な通勤経路上にある限りにおいては、当該被災労働者の行為は通勤と認めるのが妥当である。(昭和50年1月17日基収2653号)(平成29年)

  •  「就業に関しと認められる場合には、次のものがある。
「就業に関し」と認められる場合
  •  寝すごしによる遅刻、あるいはラッシュを避けるための早出など、時刻的に若干の前後がある場合(昭和48年11月22日基発644号)
  •  労働者が、就業開始前に労働組合の集会に参加する目的で、通常の出勤時刻より約1時間30分早く住居を出た場合(昭和52年9月1日基収793号)
  •  日々雇用される労働者が、継続して同一の事業就業しているような場合(平成28年12月28日基発1228第1号)
  •  日々雇用される労働者が、公共職業安定所などでその日の紹介を受けた後に、紹介先へ向う場合で、その事業で就業することが見込まれる場合(昭和48年11月22日基発644号)
  •  業務の終了後、事業場施設内で、囲碁麻雀サークル活動労働組合の会合に出席をした後に帰宅するような場合(社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除く)(平成28年12月28日基発1228第1号)
  •  自動車通勤の労働者が駐車した車のライトの消し忘れに気付き、引き返した途中で自動車にはねられた場合(昭和49年6月19日基収1739号)
  •  昼休みに自宅まで時間的に十分余裕をもって往復できる労働者が、午前中の業務を終了して一度帰宅し、午後の業務に就くために再度出勤する場合(昭和48年11月22日基発644号)
  •  所定の就業時間終了前に早退をするような場合
  •  法7条2項3号の通勤における帰省先住居から赴任先住居への移動の場合であるが、実態などを踏まえ、業務に就く当日または前日に行われた場合(平成18年3月31日基発0331042号)
  •  法7条2項3号の通勤における帰省先住居から赴任先住居への移動の場合であるが、前々日以前に行われた場合は、交通機関の状況などの合理的理由があるとき(平成18年3月31日基発0331042号)
  •  法7条2項3号の住居間移動における赴任先住居から帰省先住居への移動の場合であるが、実態などを踏まえて、業務に従事した当日またはその翌日に行われた場合(平成18年3月31日基発0331042号)
  •  法7条2項3号の住居間移動における赴任先住居から帰省先住居への移動の場合であるが、翌々日以後に行われた場合は、交通機関の状況などの合理的理由があるとき(平成18年3月31日基発0331042号)

 

  • 就業に関しと認められない場合には、次のものがある。
「就業に関し」と認められない場合
  •  休日に会社の運動施設を利用しに行く場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
  •  会社主催ではあるが参加するか否かが労働者の任意とされているような行事に参加するような場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
     
  •  事業主の命によって労働者が拘束されないような同僚との懇親会同僚の送別会への参加(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
     
  •  一般の組合員が労働組合大会に出席するような場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
     
  •  運動部の練習に参加するなどの目的で、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず朝から住居を出るなど、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻おおむね2時間を超える場合)に会社に行く場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
  •  第2の就業場所にその所定の就業開始時刻と著しくかけ離れた時刻に出勤する場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
  •  日々雇用される労働者が、公共職業安定所などでその日の紹介を受けるため住居から公共職業安定所などまで行く行為(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
  •  業務終了後、労使協議会などの出席のために事業場施設内に滞留した時間(約6時間
    (昭和50年11月4日基収2043号)

住居と就業の場所との間の往復とは

住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋などの場所で、本人の就業のための拠点となるところを指す。(昭和48年11月22日基発644号)

  •  「住居と認められる場合は、次の通りである。
「住居」と認められる場合
  •  夫の看護のため姑と交替で1日おきに寝泊まりしている病院から出勤する途中の災害について、当該病院(昭和52年12月23日基収981号)
  •  単身赴任者や家庭生活の維持という観点から家族の住む家屋を本人の生活の本拠地とみなし得る合理的な理由のある独身者にとっての家族の住む家屋当該家屋と就業の場所との間を往復する行為に反復継続性が認められるとき)。ここでいう「反復継続性」とは、おおむね毎月1回以上」の往復行為または移動がある場合をいう。(昭和48年11月22日基発644号、平成18年3月31日基労管発0331001号、基労補発0331003号)
  •  通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパートなどを借りていて早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊りそこから通勤するような場合における当該家族の住居とアパート(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)
  •  長時間の残業や、早出出勤及び新規赴任、転勤のためなどの勤務上の事情や、交通ストライキなど交通事情、台風などの自然現象などの不可抗力的な事情により、一時的に通常の住居以外の場所に宿泊するような場合(昭和48年11月22日基発644号)

 

  • 住居と認められない場合は、次の通りである。
「住居」と認められない場合
  •  友人宅で麻雀をし、翌朝そこから直接出勤する場合(昭和48年11月22日基発644号、平成3年2月1日基発75号、平成18年3月31日基発0331042号、平成20年4月1日基発0401042号)

 

 住居と経路との境界は、アパートではその外戸一戸建住宅では(つまり、一般人が自由に通行できる場所か否かで判断される)となる。(昭和49年4月9日基収314号、昭和49年7月15日基収2110号)

  • アパートの外戸が住居と通勤経路との境界であるのでアパートの外階段通勤の経路と認められます
    一戸建て住居の玄関先での石段における事故の場合住居内において発生した災害であるため住居就業の場所との間の災害には該当しません
    一戸建ての門よりなかは敷地内とされるため家屋の中に入っていなくても通勤災害とは認められません

「合理的な経路及び方法」とは

合理的な経路及び方法」とは、当該移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段などをいうものである。(平成28年12月28日基発1228第1号)

 

合理的な経路及び方法と認められる場合とは、次の通りとする。(平成28年12月28日基発1228第1号)

「合理的な経路及び方法」と認められる場合
  •  乗車定期券に表示され、あるいは、会社に届け出ているような、鉄道、バスなどの通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路など
  •  タクシーなどを利用し、通常利用することが考えられる経路が2、3あるような場合には、その経路
  •  経路の道路工事、デモ行進など当日の交通事情により迂回してとる経路
  •  マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路など通勤のためにやむを得ずとることとなる経路
  •  子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所親せきなどにあずけるためにとる経路
  •  マイカー通勤の労働者が、自分の勤務する事業所の前を過ぎ(比較的短い)450メートルほど離れた同一方向にある(=通勤経路の延長線上にある)妻の勤務先で妻を下車させ、自分の勤務する事業所の方へ戻る途中の災害
  •  飲酒運転の場合、単なる免許証不携帯免許証更新忘れによる無免許運転の場合などは、必ずしも、合理性を欠くものとして取り扱われることはないが、この場合において、諸般の事情を勘案し、給付の支給制限が行われることがある。

 

合理的な経路及び方法と認められない場合とは、次の通りとする。(平成28年12月28日基発1228第1号)

「合理的な経路及び方法」と認められない場合
  •  特段の合理的な理由もなく著しく遠まわりとなるような経路
  •  鉄道線路鉄橋トンネルなどを歩行して通る場合
  •  免許を一度も取得したことのないような者が自動車を運転する場合
  •  自動車自転車などを泥酔して運転するような場合

「逸脱・中断」の取扱い(例外)

法7条
3 労働者が、通勤とされる移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断及びその後の移動は、通勤としない
ただし、当該
逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断を除き、通常の経路に復した後通勤と認められる

  • 中断または逸脱の間は通勤とはされませんが、「その後の移動については通勤とされます
  • 逸脱中断の間はたとえ日常生活上必要な行為をやむを得ない理由により行うための最小限のものであっても通勤とは認められません

 

「日常生活上必要な行為」とは

 

日常生活上必要な行為」とは、日常生活の必要のあることをいい、次のことがこれに該当する。(平成28年12月28日基発1228第1号)

「日常生活上必要な行為」として認められる場合(則8条) 「日常生活上必要な行為」として認められない場合
日用品の購入その他これに準ずる行為 帰途で惣菜などを購入する場合独身者が食堂に食事に立ち寄る場合クリーニング店に立ち寄る場合理美容院に立ち寄る場合など 喫茶店に立ち寄る行為(昭和49年11月15日基収1867号)
職業訓練、学校教育法1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 職業能力開発総合大学校における職業訓練及び専修学校における教育がこれに該当します大学において行われる教育などであって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為も日常生活上必要な行為と認められています
(平成28年12月28日基発1228第1号)

茶道華道などの課程または自動車教習所(注)若しくはいわゆる予備校の課程はこれに該当しません(昭和48年11月22日基発644号)

(注)会社が奨励金として費用の一部を負担しているような場合であっても

選挙権の行使その他これに準ずる行為 投票所の投票中における災害は通勤災害とは認められません

病院または診療所において診察または治療を受けることその他これに準ずる行為

病院または診療所において通常の医療を受ける行為に限らず人工透析など比較的長時間を要する医療を受けることも、「日常生活上必要な行為として認められています。また、施術所において、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などの施術を受ける行為も認められています。(昭和48年11月22日基発644号)  
要介護状態(負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう)にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母介護継続的にまたは反復して行われるものに限る

要介護状態にある配偶者父母祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護継続的にまたは反復して行われるものに限る)」とは例えば定期的帰宅途中に一定時間父の介護を行うために父と同居している兄宅に立ち寄る場合などが該当します

 「継続的にまたは反復して行われるものに限るとは例えば毎日あるいは1週間に数回など労働者が日常的に介護を行う場合をいい、初めて介護を行った場合は、客観的にみてその後も継続的にまたは反復して介護を行うことが予定されていればこれに該当します。
(平成20年4月1日基発0401042号)

 
美容のため理髪店や美容院に立ち寄る行為職場で清潔に勤務するという保健衛生などの見地かまた通勤の途中で行われている実態から日常生活上必要な行為と認められています
(昭和58年8月2日基発420号)
写真展の展示会場に立ち寄る行為(昭和49年11月27日基収3051号)

 

おおむね毎月1回以上の往復行為 単身赴任者の帰省先が「住居」と認められる
毎日あるいは1週間に数回など労働者が日常的に介護を行う場合 要介護状態にある配偶者父母祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護が日常生活上必要な行為と認められる

通勤による疾病

療養給付は、労働者が通勤により負傷し、または疾病労災保険法施行規則)で定めるものに限る)にかかった場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。
(法22条1項)

  • 通勤災害に対する給付は労災独自の給付であるため労働基準法施行規則ではなく労災保険法施行規則に規定が設けられています

 

厚生労働省令で定める疾病」は、通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することの明らかな疾病とする。(則18条の4)

厚生労働省令で定める疾病(通勤による疾病
  1.  通勤による負傷に起因する疾病
  2.  その他通勤に起因することの明らかな疾病

 

通勤による疾病」とは、通勤による負傷または通勤に関連ある諸種の状態突発的または異常なできごとなどが原因となって発病したことが医学的に明らかに認められるものをいうが、「通勤に通常伴う危険が具体化したものと認められるものでなければならない。(昭和50年6月9日基収4039号)

 

業務上の疾病 と 通勤による疾病の比較

項目 業務上の疾病 通勤による疾病
根拠条文 労働基準法施行規則 別表第1の2 労災保険法施行規則 第18条の4
例示列挙 あり なし
内容 ・災害性疾病
・職業性疾病
・その他
・通勤による負傷に起因する疾病
・通勤に起因することが明らかな疾病

重要ポイント

 

① 業務上の疾病

  • 別表で具体例が列挙されている

  • 判断の出発点は「別表に該当するか」

  • 職業性疾病(じん肺、化学物質ばく露など)が中心

条文・別表ベースで判断する世界


② 通勤による疾病

  • 例示列挙がない

  • 「通勤による負傷が原因か」「通勤との因果関係が明らかか」が判断基準

  • 実質的な 因果関係判断 が重視される

事実関係・因果関係ベースで判断する世界


ひとことで整理すると

  • 業務上疾病
     →「別表にあるか」を見る

  • 通勤疾病
     →「通勤との因果関係が明らかか」を見る

通勤に起因することの明らかな疾病には転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合などがあります(昭和48年11月22日基発644号)

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