労働基準法
解雇制限

解雇権濫用法理

① 解雇権濫用法理の条文(労働契約法)

まず中核となる条文です。

■ 労働契約法16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。

■ ポイント

  • 「合理性」+「相当性」の両方が必要
  • どちらか欠けると 解雇は無効

 

② 「違反した場合」の効果(最重要)

労働契約法16条に違反した場合:

■ 効果:解雇は無効

→ 最初から解雇していない扱いになります

つまり、

  • 労働契約は継続
  • 労働者は在籍している扱い

■ 実務上の重大な帰結

 

① 賃金の支払い義務(バックペイ)

民法536条2項が根拠になります。

 

■ 民法536条2項

債務者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときは、
債権者は、反対給付を受ける権利を失わない。

■ 解釈

  • 会社の違法解雇 → 会社の責任
    → 働いていなくても賃金支払義務あり

数ヶ月〜数年分の給与支払いになることもあります


② 地位確認請求(裁判)

労働者は:

  • 「労働契約上の地位確認請求」
    を行うことができます

判決で「まだ従業員」と認定される


③ 不法行為責任(損害賠償)

場合によっては

■ 民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

慰謝料が認められることもある


 

 

「罰則」がない理由

 

ここが重要な理解ポイントです。

■ 労働契約法には罰則規定がない

労働契約法16条には 罰金・懲役などの規定は存在しません


■ なぜか?

理由はシンプルです:

「私人間の契約ルール」だから

  • 行政取締法規ではない
  • 刑事罰ではなく民事規制

 

 例外的に罰則が関係するケース

解雇そのものではなく、周辺行為で罰則が出る場合があります。


① 労基法違反(解雇予告)

労働基準法20条(解雇予告)

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、
少なくとも30日前に予告をしなければならない。


■ 罰則(労基法120条)

6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金

予告なし解雇などで適用される

※ただし「解雇権濫用」とは別問題


② 不当解雇+嫌がらせ等

  • パワハラ
  • 名誉毀損

→ 刑事責任に発展する可能性あり


まとめ(実務的に重要な理解)

■ 解雇権濫用法理違反の本質
「罰せられる」のではなく「無効になる」


 

 

■ 法的効果まとめ

項目 内容
罰則 原則なし
効果 解雇無効
賃金 全額支払い義務
その他 慰謝料の可能性

 

実務上のインパクト

企業側にとっては:

  • 数百万円〜数千万円のリスク
  • 訴訟リスク
  • 社内統制問題

刑事罰がない代わりに、経済的制裁が極めて重い制度

 

 

  • 民法では、期間の定めのない雇用契約の「解約の自由」を認めています。しかし、解雇についてはその影響の大きさから最高裁の判例により「解雇権濫用法理」が確立されてきました。この法理は後に労働基準法に明文化されましたが、労働契約法の成立に伴い、労働基準法の規定は削除され、規定は労働契約法に移行されました。
    • 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)
    • ただし、「使用者は労働者を解雇しようとする場合においては少なくとも30日前にその予告をしなければならない労働基準法20条1項)」

契約期間中の解雇

使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。(法17条1項)

  • 法17条1項は強制規定なため、「やむを得ない事由があるときに該当しない場合は解雇することはできません

契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても当該事由に該当することをもって法17条1項のやむを得ない事由があると認められるものではなく実際に行われた解雇についてやむを得ない事由があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断されます。(平成24年8月10日基発0810第2号)

やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合以外の場合よりも狭いと解される。(平成24年8月10日基発0810第2号)

法17条1項は、「解雇することができない」旨を規定したものであることから、使用者が有期労働契約の契約期間中に労働者を解雇しようとする場合の根拠規定になるものではなく、使用者が当該解雇をしようとする場合には、従来どおり、民法628条が根拠規定となるものであり、「やむを得ない事由」があるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負うものである。(平成24年8月10日基発0810第2号)

民法628条

 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

定年解雇制

定年に達したことを理由として解雇するいわゆる「定年解雇制」を定めた場合の定年に達したことを理由とする解雇は、法20条の解雇予告の規制を受ける。(昭和43年12月25日最高裁判所大法廷秋北バス事件)

  • 60歳に達したときは定年により退職するただし重役会議の議を経てそのまま継続して使用する場合がある。」と規定されている場合などが定年解雇制に該当します

 

判例(昭和43年12月25日最高裁判所大法廷秋北バス事件)

 およそ定年制は、一般に、老年労働者にあっては当該業種又は職種に要求される労働の適格性が逓減するにかかわらず、給与が却って逓増するところから、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行なわれるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはできず、本件就業規則についても、新たに設けられた55歳という定年は、わが国産業界の実情に照らし、かつ、Y社の一般職種の労働者の定年が50歳と定められているのとの比較権衡からいっても、低きに失するものとはいえない。

しかも、本件就業規則条項は、同規則55条の規定に徴すれば、

  1. 定年に達したことによって自動的に退職するいわゆる定年退職制を定めたものではなく
  2. 定年に達したことを理由として解雇するいわゆる定年解雇制を定めたものと解すべきであり、同条項に基づく解雇は、労働基準法20条所定の解雇の制限に服すべき(解雇予告の規制を受ける)ものである。

定年退職制

 

就業規則に定める定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用関係が消滅する慣行となっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合(定年退職制)は、解雇の問題を生ぜず、したがってまた法19条の問題も生じない。(昭和26年8月9日基収3388号)

業務上の傷病による解雇制限

使用者は、原則として、労働者業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、労働者を解雇してはならない。(法19条1項

 

  業務上の傷病による療養期間 + 30日間  
  ⇦ 解雇制限期間 ⇨  
治癒↑  

その後30日間の制限は回復直後の労働者が安心して職場に復帰できるようにするための猶予期間として設けられています
試用期間中定年後の継続雇用中であっても解雇制限の規定は適用されます

(昭和24年4月12日基収1134号)
業務上負傷した労働者
が、完治してはいないが休業しないで復職した場合は、復職後30日を経過後雇制限を受けない

産前産後の女性に対する解雇制限

使用者は、原則として、産前産後の女性法65条(産前産後休業)の規定によって休業する期間及びその後30日間は、労働者を解雇してはならない。(法19条1項

(昭和25年6月16日基収1526号)
6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引続き就労している場合、解雇制限期間にはなりませんが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう行政指導が行われます。

産後の休業は出産当日の翌日から8週間が法定の休業期間であるから、これを超えて休業している期間は、たとえ出産に起因する休業であっても法19条にいう「休業する期間には該当しない

出産前後の規定について

 

  産前休業
産前6週
(多胎14週)
産後休業
産前8週
+ 30日間  
  ⇦ 解雇制限期間 ⇨  
出産↑  

休業中の解雇に対する取扱い

出産前後の規定について

 

労働基準法 使用者は、原則として、産前産後の女性法65条(産前産後休業)の規定によって休業する期間及びその後30日間は、労働者を解雇してはならない法19条1項
育児介護休業法 事業主は、労働者が育児休業申出及び出生時育児休業申出をし、または育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(法10条)
事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(法16条)

労働契約期間の満了と解雇制限の関係

(昭和63年3月14日基発150号)

一定の期間または一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間満了とともに終了する。したがって、業務上負傷しまたは疾病にかかり療養のため休業する期間中の者の労働契約もその期間満了とともに労働契約は終了するものであって、法19条1項の解雇制限の規定の適用はない

 

有期労働契約の途中で解雇制限にかかったとしても契約期間が満了した段階で労働契約を終了させることに問題はありません。「契約期間を更新したり延長したりしなければならないわけではありません

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