労働基準法
労働契約の締結

 

労働基準法違反の契約

 

労働基準法の規範的効力

労働基準法は、労働基準法の基準に達しない労働条件を定めた労働契約について、その部分を無効とするとともに、無効となった部分を労働基準法の基準で補充することを定めています。(法13条)

この効力を規範的効力といい、次の2つの効力から成ります。

効力 内容
強行的効力 労働基準法に違反する労働条件を無効とする。
直律的効力 無効となった部分を労働基準法の基準で補充する。

 

労働契約で

「8時間勤務・休憩30分」

と定めた場合

効果 内容
強行的効力 休憩30分の部分は無効
直律的効力 休憩45分に置き換えられる

労働契約の期間(法14条)

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(一定の場合は5年)を超える期間について締結することができません。(法14条1項)


契約期間の上限

労働契約 契約期間の上限
期間の定めのない労働契約 上限なし
一般の有期労働契約 3年
高度の専門的知識等を有する労働者 5年
満60歳以上の労働者 5年
一定の事業の完了に必要な期間を定める契約 上限なし

※更新を繰り返すことは可能ですが、1回の契約期間の上限は3年(又は5年)です。

契約期間と任意退職

契約の種類 任意退職
期間の定めのない労働契約 ○(民法627条)
一般の有期労働契約 ○(法137条の特例あり)
一定の事業の完了に必要な期間を定める契約 ×
高度専門職との5年契約 ×
60歳以上との5年契約 ×

なお、いずれの場合でもやむを得ない事由があるときは、民法628条により直ちに契約を解除することができます。

 

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第627条

① 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

② 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

③ 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3か月前にしなければならない。

 

ポイント

  • 労働者は、期間の定めのない雇用契約であれば、いつでも退職の申入れができ、申入れから2週間で退職できます(第1項)。
  • 第2項・第3項は、使用者からの解約申入れについて、報酬期間との関係で時期を定めた規定です(2020年4月施行の民法改正で「使用者から」と明記されました)。

 

一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの

 

「一定の事業の完了に必要な期間を定める契約」には契約期間の上限はありません。(法14条1項)

例えば、

  • 建設工事
  • ダム建設
  • トンネル工事

など、事業の終期が客観的に明らかであり、その事業が終了すれば契約も終了するものが該当します。
例えば、5年間で完成する土木工事について、その完成まで5年間雇用する契約は認められます。

高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約

高度の専門的知識等を有する労働者との労働契約は、5年以内の契約を締結することができます。(法14条1項1号)

これは、専門的知識・技術・経験を有し、自ら労働条件について十分交渉できる立場にある労働者について、長期契約を認めるものです。

ただし、 高度の専門的知識を必要としない業務に従事する場合は、契約期間の上限は3年となります。(平成15年10月22日基発1022001号)


高度の専門的知識等

高度の専門的知識等とは、次のような者が有する専門的な知識・技術・経験をいいます。(平成28年厚労告376号)

  • 博士
  • 医師
  • 歯科医師
  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 技術士
  • 1級建築士
  • 薬剤師
  • 不動産鑑定士
  • 獣医師
  • ITストラテジスト試験等の合格者
  • 特許発明者等
  • 一定の実務経験を有する技術者等(年収1,075万円以上)

「1,075万円」基準

次の者については、

年間賃金が1,075万円以上

であることが必要です。

  • 農林水産業技術者
  • 機械・電気技術者
  • 建築・土木技術者
  • システムエンジニア
  • デザイナー
  • システムコンサルタント等

なお、この1,075万円という基準は、

  • 高度専門職との5年契約
  • 高度プロフェッショナル制度
    • 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与顧の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額(1,075万円)以上であること
  • 無期転換ルールの特例
    • 5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く専門的知識等を有する有期雇用労働者(注) については、無期転換申込権が発生しない。
      ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10年とする。

      (注)事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に当該事業主から支払われると見込まれるた有期労働契約の契約期間に当該事業主から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が厚生労働省令で定める額(1,075万円)以上であって、当該専門的知識等を必要とする業務に就くものに限る

でも用いられています。

満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約

 

満60歳以上の労働者との間には、5年以内の契約期間の労働契約を締結することができる。(法14条1項2号)

 

参照  高年齢者の安定した雇用の確保の促進

定年を定める場合の年齢

事業主定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない
ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務(
坑内作業の業務)に従事している労働者については、この限りでない。(高年齢者雇用安定法8条、則4条の2)

  • 罰則の適用はありません

上限期間を超える期間を定めた労働契約

法14条の上限を超える期間を定めて契約した場合でも、労働契約全体が無効になるわけではありません。

規範的効力(法13条)により、

  • 一般の有期契約は3年
  • 高度専門職・60歳以上は5年

の契約を締結したものとして扱われます。(平成15年10月22日基発1022001号)

有期労働契約の任意退職(法137条)

1年を超える期間の定めのある労働契約を締結した労働者は、

契約開始から1年を経過した日以後は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。(法137条)

ただし、次の者は対象外です。

  • 一定の事業の完了に必要な期間を定める契約
  • 高度の専門的知識等を有する労働者
  • 満60歳以上の労働者

やむを得ない事由による解除(民法628条)

契約期間中であっても、やむを得ない事由がある場合には、労使いずれも直ちに契約を解除することができます。

なお、その事由が当事者の一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害賠償責任を負います。

 

民法628条

 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

(有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(令和5年厚労告114号))
 

第1条(有期労働契約の変更等に際して更新上限を定める場合等の理由の説明)
 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約という。)の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間(労働契約法第18条第1項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め
(=最初の契約締結より後に更新上限を新たに設けるケース)、又はこれを引き下げよう(=最初の契約締結のときに設けていた更新上限を短縮するケース)とするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない
 ⇨ 参照 5条 
無期転換後の労働条件に関する説明

第2条(雇止めの予告)
 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

 

第3条(雇止めの理由の明示)

  1.  前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
  2.  有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

第4条(契約期間についての配慮)

 使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

 

第5条(無期転換後の労働条件に関する説明)

 使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して労働基準法施行規則第5条第5項に規定する事項を明示する場合においては、当該事項(同条第1項各号に掲げるものを除く。)に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならない。

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