解雇予告の例外・適用除外

まず原則を確認すると、

使用者が労働者を解雇する場合は、

①30日前に予告する

または

②30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う

必要があります(労基法20条)。

しかし、一定の場合にはこの義務が免除されます。

 

解雇予告が不要となる場合

例外は大きく2つです。

① 天災事変その他やむを得ない事由

② 労働者の責に帰すべき事由

です。

 

まとめ

次の3点です。

 

① 解雇予告不要の2類型

  • 天災事変その他やむを得ない事由
  • 労働者の責に帰すべき事由

② どちらも労基署長認定が必要

ここが最重要


 

③ 法21条の数字

 

  • 日雇 → 1か月
  • 有期 → 2か月
  • 季節 → 4か月
  • 試用 → 14日

 

目次

  1. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  2. 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合
  3. 解雇予告の規定が適用し除外となる労働者について
  4. 試用期間
    1. 試用期間中の者
    2. 14日を超える試用期間
  5. 解雇のルール

天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(法20条1項ただし書)

 

 

趣旨

会社そのものが存続できなくなった場合に、

30日間雇用を継続させたり予告手当を払わせたりするのは酷だからです。


典型例

 

火災

工場が火災で全焼

操業不能

解雇予告不要


地震

地震で工場倒壊

事業継続不可能

解雇予告不要


条件

単なる経営悪化では足りません。


該当しない例

❌税金滞納

差押え

廃業


❌取引先減少

資金繰り悪化

倒産


❌単なる事業廃止


これらは

使用者側の経営上の問題

だからです。


なぜ認められないのか

解雇予告制度は

労働者の生活保障のための制度です。

単なる経営不振まで免除すると、

簡単に予告義務を逃れられてしまいます。


労基署長の認定が必要

重要です。


火災だからといって

会社が勝手に

「予告なし解雇します」

とはできません。


必ず

所轄労働基準監督署長の認定

 

が必要です。

労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

 

こちらも予告不要になります。


ただし、

かなり重大な非違行為でなければなりません。


代表例

 

① 窃盗・横領

会社のお金を盗む

商品を横領する


② 傷害

職場で暴力行為


③ 賭博・風紀紊乱

職場秩序を著しく乱す


④ 経歴詐称

採用の重要条件となる経歴を偽る


医師免許を持つと偽る

重大な経歴詐称


⑤ 著しい勤務不良

無断欠勤の繰り返し

何度注意しても改善しない


軽微な違反はダメ

例えば

  • 遅刻1回
  • ミス1回
  • 軽い規律違反

程度では

予告なし解雇は認められません。


ここでも認定が必要

使用者が

「こいつは悪いから即解雇」

と決めるだけでは足りません。


やはり

労基署長の認定

 

が必要です。

解雇予告の規定が適用除外となる労働者について

 

労働者 解雇予告不要
日雇労働者 1か月以内
2か月契約者 2か月以内
季節労働者 4か月以内
試用期間者 14日以内

覚え方

「1・2・4・14」

で覚えます。

区分 数字
日雇 1か月
有期 2か月
季節 4か月
試用 14日

 

 

これは「労働者の種類」による例外です。


① 日日雇い入れられる者

原則

解雇予告不要


しかし

1か月を超えて継続使用

保護が必要

解雇予告適用


② 2か月以内の有期契約

2か月契約


契約期間内

解雇予告不要


しかし

2か月超えて使用

解雇予告必要


③ 季節的業務

みかん収穫

スキー場

海水浴場

など


4か月以内なら

解雇予告不要


4か月超えて使用

解雇予告必要


④ 試用期間中の者

これが最頻出です。


試用開始

14日以内

解雇予告不要


15日目以降

解雇予告必要

試用期間とは

 

試用期間とは、労働者の適性・能力・勤務態度等を見極めるために設けられた期間であり、法的には「解約権留保付雇用契約」と解されるのが原則です。

法律上は明確な定義条文があるわけではありませんが、判例では次のように理解されています。

 


 

■ 判例の考え方(重要ポイント)

 

判例は、試用期間の法的性質について次のように判断しています。

 

① 試用期間かどうかは実態で判断される

 

形式ではなく、

  • 試用期間中の労働者が
    → 本採用者と同じ職場・同じ職務に従事しているか
  • 使用者の取扱いに差があるか
  • 試用期間満了時に改めて契約締結(本採用手続)があるか

といった事情を総合考慮します。

そのうえで、 特段の事情がない限り、試用期間は「解約権留保付雇用契約」と解するのが相当 とされています。

 


 

② 解約権留保付雇用契約とは何か

 

これは、 一応は雇用契約が成立しているが、企業側に解約権(本採用拒否権)を留保している契約 を意味します。

 


 

③ 本採用拒否(解約)の基準

 

判例はさらに重要な基準を示しています。

  • 解約権の行使は 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限り許される
  • ただし通常の解雇と比べると より広い範囲で解約の自由は認められる

一方で、 試用期間満了=自動終了ではない ため、

  • 本採用を拒否する場合 = 留保解約権の適法な行使が必要

とされています。

 


 

■ 労基法との関係(14日ルール)

 

  • 試用開始から14日以内
    → 解雇予告不要
  • 14日経過後
    → 解雇予告制度が適用

したがって、 試用期間が長期(3か月・6か月)でも、14日を超えれば通常の解雇ルールが適用される 点は重要です。

 


 

■ まとめ

 

試用期間とは、

  • 実態としては 解約権留保付雇用契約
  • 労働者は既に雇用されている
  • 企業には本採用拒否の余地があるが
    • 客観的合理性+社会通念上相当性が必要
  • 通常解雇よりは広く認められるが無制限ではない
  • 14日経過後は解雇予告制度が適用される

試用期間中の者労働基準法21条4号

試用期間中の者については、

解雇予告制度が適用されない

とされています。

しかし、

これは無制限ではありません。

 

14日ルール

条文は

「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」

には適用除外がなくなる

としています。

つまり、

使用期間 解雇予告
14日以内 不要
15日目以降 必要

となります。


具体例

 

例①

入社

4月1日

解雇

4月10日

(10日目)

解雇予告不要


例②

入社

4月1日

解雇

4月15日

(15日目)

30日前予告または解雇予告手当が必要

14日を超える試用期間

会社は

  • 3か月
  • 6か月
  • 1年

など自由に試用期間を定められます。


しかし、

試用期間が6か月だからといって

6か月間ずっと解雇予告不要

ではありません。


例えば

試用期間6か月

入社20日目

解雇

解雇予告必要

です。


なぜ14日なのか

試用期間の最初の段階では、

会社は

  • 勤務態度
  • 能力
  • 適性

を確認する必要があります。

そこで、

入社直後の短期間だけは

迅速に雇用関係を終了できるようにしています。


しかし、

14日を超えて働かせたなら、

ある程度その労働者を受け入れたと考えられるため、

通常の労働者と同様に保護する必要があります。


解雇予告と解雇の有効性は別問題

ここも重要です。


例えば

試用期間10日目

解雇予告なし

法21条によりOK


だからといって

解雇自体が有効とは限りません。


試用期間中の解雇でも、

  • 客観的合理的理由
  • 社会通念上の相当性

は必要です。


つまり

解雇予告

不要

解雇の有効性

 

は別問題です。

解雇のルール

 

① 解雇制限(労基法19条)

次の期間中は原則解雇できません。


A 業務上災害による療養中

業務災害

療養中

解雇禁止


さらに

療養終了後

30日間

も解雇禁止


つまり

療養中+30日

は解雇制限期間です。


B 産前産後休業中

産前休業

産後休業

解雇禁止


さらに

休業終了後

30日間

も解雇禁止


つまり

産前産後休業中+30日

も解雇制限期間です。


解雇制限の例外①

打切補償

です。


業務上災害で療養中でも

労基法81条の

打切補償

を支払った場合

解雇可能


解雇制限の例外②

療養開始後3年経過

傷病補償年金受給

です。


業務災害

療養開始

3年経過

傷病補償年金受給

解雇可能


解雇制限の例外③

天災事変その他やむを得ない事由

です。


例えば

地震

工場倒壊

事業継続不可能

労基署長認定

解雇可能


ここで重要なのは

認定

です。


単に会社が

「もう無理」

と言うだけではダメです。


解雇制限期間終了後

業務災害療養終了

30日経過

または

産後休業終了

30日経過

すると

解雇制限は解除されます。


ただし

すぐ自由に解雇できるわけではありません。


次は

解雇予告

の問題になります。


② 解雇予告(労基法20条)

原則

解雇するなら

30日前予告

または

解雇予告手当

が必要です。


解雇予告の適用除外

ここで法21条が登場します。


日雇

1か月以内


有期

2か月以内


季節

4か月以内


試用

14日以内


です。


さらに解雇予告不要になる場合

解雇予告適用除外者でなくても

労基法20条ただし書により

即時解雇できます。


パターン①

天災事変その他やむを得ない事由

労基署長認定


工場全焼

事業継続不能

認定

即時解雇可能


パターン②

労働者の責に帰すべき事由

労基署長認定


  • 横領
  • 窃盗
  • 重大な経歴詐称

など


認定を受ければ

即時解雇可能

です。


最も重要な整理

解雇には

2つのハードルがあります。


第1段階

解雇できるか

(解雇制限)


第2段階

予告が必要か

(解雇予告)


例えば

業務災害療養中

解雇制限

そもそも解雇できない


一方

普通の社員

解雇制限なし

解雇できる可能性あり

予告は必要


という流れになります。


まとめ

解雇制限

場面 解雇
業務災害療養中+30日 原則不可
産前産後休業中+30日 原則不可

解雇制限の例外

  • 打切補償
  • 療養3年+傷病補償年金
  • 事業継続不可能+認定

解雇予告

原則

  • 30日前予告
    または
  • 解雇予告手当

即時解雇可能

  • 事業継続不可能+認定
  • 労働者の責+認定

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