障害(補償)年金
併合及び併合繰上げ

  • 「併合」とは同一の事故によって種類が違う障害が2つ以上残ってしまった場合、重い方の障害がその複数障害の等級とされることです。
    • 第14級の身体障碍がある場合に限られる
  • 「併合繰り上げ」とは同一の事故によって種類が違う13級以上の障害が2つ以上残ってしまった場合、重い方の障害等級さらに繰り上げた障害等級をその複数障害の等級とすることです。
    • 第14級は最下位の軽微な障害であり、それ単独では労働能力に与える影響が小さいため併合繰上げの対象外となります
    • すでに身体障害があった者に新たな身体障害が生じた場合には加重が行われます

 

目 次

  1. 併合
    1. 併合繰上げ
  2. #加重の場合の給付額
  3. #加重の前後とも年金の場合
  4. #加重の前後とも一時金の場合
  5. #加重前が一時金であり、加重後が年金の場合
  6. #変更

併合

同一の事故による身体障害が2以上ある場合には、原則として、重い方の身体障害の該当する障害等級による(併合)。
ただし、
この併合が適用されるのは、第14級の身体障害がある場合に限られる。(則14条2項、則18条の8第1項)

  • 例えば第10級第14級では重い方の第10級となります
  • ひじ関節の機能に障害を残し第12級)、かつ4本の歯を補修した第14級場合には併合して重い方の障害に該当する等級により、「第12級となります。(昭和50年9月30日基発565号)

併合繰上げ

同一の事故による第13級以上の身体障害を2以上残した場合は、次の通りの取扱いとなる(併合繰上げ)。(則14条3項)

1 13級以上に該当する身体障害が2以上あるとき 重い方の障害等級を1級繰り上げる
2 8級以上に該当する身体障害が2以上あるとき 重い方の障害等級を2繰り上げる
3 5級以上に該当する身体障害が2以上あるとき 重い方の障害等級を3繰り上げる
  • 例えば第13級第12級では、「第11級重い第12級を1級繰上げ)」となります
  • 第8級第7級では、「第5級重い第7級を2級繰上げ)」となります
  • 第5級第4級では、「第1級重い第4級を3級繰上げ)」となります
  • せき柱に運動障害を残し第8級)、かつ一方の足が4センチメートル短縮した第10級場合には併合して重い方の等級を1級繰上げ、「第7級とします
    (昭和50年9月30日基発565号)
  • 2つ以上ですから3つあっても同様です例えば13級第11級第8級では、「第7級最も重い第8級を1級繰上げ)」となります
  • 障害等級の最高は第1級ですので繰り上げた結果が第1級を超える場合であっても第1級で頭打ちになります
判例(昭和55年3月27日最高裁判所 玉名労基署長事件
 原審の確定した事実関係のもとにおいて、Xの身体障害について労災保険法施行規則別表第1所定の障害等級を認定するにつき、Xの右膝関節部における機能障害とこれより派生した神経症状とを包括して一個の身体障害と評価し、その等級は前者の障害等級によるべく同規則14条3項の規定により等級を繰り上げるべきものではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。

身体の部位の機能障害これより派生した神経症状が医学的にみて一個の病像と把握される場合には、併合繰上げとはならない

  • 体の動きが悪くなる障害と、それにともなう神経の症状(痛み、しびれ、麻痺など)が、一体となって切り離せないときは、「同じ病気」として評価されます。

加重の場合の給付額

加重」とは、

  1. 既存の身体障害
  2. 同一の部位について
  3. 業務災害または通勤災害によって
  4. 新たに障害が加わった結果
  5. 現存する障害既存の障害より重くなることをいう。

加重の前後とも年金の場合

給付額は、次の通りである。(則14条5項、則18条の8第1項)

 

加重の前後とも年金の場合
加重後障害補償年金) - (加重前障害補償年金

加重の前後とも年金の場合

  1. 既にあった身体障害の該当する等級に応ずる障害補償年金131日分
  2. 加重による障害補償年金245日分131日分114日分

2つの障害補償年金が支給されることとなります

 

加重の場合の障害(補償)年金の額は、原則として、

  1. 加重された身体障害に該当する等級の障害(補償)年金の額(日数)から
  2. 既に存していた身体障害の該当する障害等級の障害(補償)年金の額(日数)を

控除して得た額(日数)とされます。(昭和50年9月30日基発565号)

加重の前後とも一時金の場合

給付額は、次の通りである。(則14条5項)

 

加重の前後とも一時金の場合
加重後障害補償時金) - (加重前障害補償一時金

加重の前後とも一時金の例、

  1. 加重後の503日分から
  2. 加重前の既に支給を受けている302日分を減じた

201日分が支給されます

加重前が一時金であり、加重後が年金の場合

 

給付額は、次の通りである。(則14条5項かっこ書、則18条の8第1項)

 

加重前が一時金であり、加重後が年金の場合
 (加重後障害補償年金) - (加重前障害補償一時金)×1/25

障害補償年金の平均的な受給期間は25年とされています。一時金はこの年数分の金額を一度に受給していると考えられるため、25で除することで一時金を年金額に調整しています。(昭和41年1月31日基発73号)

 

加重前が一時金であり加重後が年金の例

  1. 加重後の245日分から
  2. 加重前の既に支給を受けている302日分を25で除した12日分を減じた

233日分が支給されます

 

すでに同一上肢の手関節に障害があった第8級一時金者が新たに同一上肢の手関節を失った場合には現存する障害は第5級年金となりますがこの場合の額は当該障害の存する期間1年について給付基礎日額の163.88日分となります。(昭和50年9月30日基発565号)

 

① 事案の前提関係

  • もともと
    同一上肢の手関節に第8級の障害があり、
    これは 障害補償給付(一時金)としてすでに支給済み。

  • その後、新たに
    同じ上肢の手関節を失うという障害が発生。

  • この結果、障害の程度は
    第5級(障害補償年金)に該当する。


② 問題となる点(なぜ調整が必要か)

第5級は本来「年金」ですが、

  • すでに第8級として
    一時金(503日分)を受け取っている

  • 同じ部位・同じ上肢について
    二重に満額給付すると過剰給付になる

そのため、
「新たに支給する年金額から、既に支給済みの一時金分を調整して差し引く」
というルールが設けられています。


③ 基本となる給付日数

まず、法令上の基準を確認します。

新たに成立した障害(第5級・年金)

  • 給付基礎日額 × 184日分(年額)

 

 

既存障害(第8級・一時金)

  • 給付基礎日額 × 503日分(すでに支給済み)


④ なぜ「25分の1」を差し引くのか

ここが一番わかりにくいポイントです。

  • 障害補償年金
    平均余命を25年とみなして設計されている

  • そのため、
    一時金で支給された503日分を25年で割り、1年分に換算します

計算式は次のとおりです。

503日 ÷ 25年 = 20.12日分(1年あたり)

これが「既存障害分として、毎年差し引くべき日数」になります。


⑤ 実際の年金額の計算

本来の第5級年金額

  • 184日分/年

既存障害分として差し引く額

  • 503日 ÷ 25 = 20.12日分/年

差引後の支給日数

  • 184 − 20.12 = 163.88日分/年

したがって、

当該障害の存する期間1年につき、給付基礎日額の163.88日分

が支給される、という結論になります。


⑥ まとめ(制度の趣旨)

この取扱いの趣旨は次のとおりです。

  • 同一部位・同一上肢の障害について
    給付の重複を防ぐ

  • ただし、新たな障害により
    等級が重くなったこと自体は正当に評価する

  • そのため
    「新しい等級の年金額 − 既に支給済み一時金の年金換算分」
    という調整方式を採用している

 

加重」における既存の障害は、通勤によるもの私傷病によるものなどその原因は問われず、障害等級表に照らして、障害(補償)給付の対象となる程度の身体障害が既にあったものであればよい

変更

障害補償年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があったため、新たに別表第1または別表第2中の他の障害等級に該当するに至った場合には、政府は、新たに該当するに至った障害等級に応ずる障害補償年金または障害補償一時金を支給するものとし、その後は、従前の障害補償年金は支給しない。(法15条の2、法22条の3第3項)

変更後障害の程度が、障害等級第1級から第7級年金)の範囲内であるときは、変更後新たな障害等級に応ずる障害補償年金が支給される。
(昭和41年1月31日基発73号)

変更後の障害の程度が、障害等級第8級から第14級一時金)の範囲内であるときは、障害補償年金の受給権は消滅し、障害補償一時金が支給される。(昭和41年1月31日基発73号)

  • 障害の程度自然的に変更した場合の規定です新たな傷病により障害が加わったわけではなく単に障害の程度がよくなったり悪くなったりしたときの取扱いですこのことを明確に表現するために自然的経過といった文言が含まれることが多い
  • 障害の程度の変更により障害補償給付変更が行われるのは労働者が障害補償年金を受けている場合に限られます一時金は1回限りの支給であり法15条の2の変更の規定の適用がありません
     古い規定では、障害補償費は、すべて一時金で支給されることとされていました。そのため、いったんその障害について補償が行われたときは、その後その障害の程度に変更があっても、補償の額の改定の余地はありませんでした。その後の改正により、年金による給付が開始されることとなり、この規定が設けられました。
  • 障害補償一時金を受けた場合にはその支給後において障害の程度が増悪して障害等級第1級から第7級に該当したとしてもまた障害の程度が軽減して従来の障害等級以下の等級に該当したとしても障害補償給付の等級が変更することはありません

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