雇用安定事業

「雇用安定事業」とは、労働者の失業の予防、雇用機会の増大、その他雇用の安定を図ることを目的として、雇用保険制度の中で行われている事業の総称です。厚生労働省が所管し、事業主への各種助成金の支給などを通じて実施されています。

目 次

  1. 雇用安定事業
  2. 雇用安定事業の内容
  3. 雇用関係助成金の不支給
  4. 雇用調整助成金
    1. 「休業または教育訓練」の要件
    2. 「出向」の要件
  5. 特定求職者雇用開発助成金
雇用保険二事業、費用の負担、不服申立て、雑則、罰則 
  1. 事業などの利用
  2. 雇用安定事業 本ページ

雇用安定事業

政府は、被保険者等に関し、失業の予防雇用状態の是正雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業を行うことができる。(法62条1項)

 

雇用安定事業 被保険者被保険者であった者及び被保険者になろうとする者(「被保険者等」)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他職業の安定を図るため
能力開発事業 被保険者等に関し職業生活の全期間を通じて、これらの者の能力を開発し、及び向上させるために行われる。

雇用安定事業の内容

雇用安定事業の事業内容は、次の通りである。(法62条1項)

1 事業活動縮小時の雇用安定事業
(第1号)

景気の変動産業構造の変その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対する必要な助成及び援助

 

主な助成金

  •  雇用調整助成金(則102条の2、則102条の3) 
2 再就職促進のための支援事業
(第2号)
離職を余儀なくされる労働者に対して、労働施策総合推進法に規定する休暇を与える事業主その他当該労働者の再就職を促進するために必要な措置を講ずる事業主に対する必要な助成及び援助

 

主な助成金

  •  早期再就職支援等助成金(則102条の4、則102条の5)
3 高年齢者の雇用確保のための雇用安定事業
(第3号)
定年の引上げ、高年齢者等雇用安定法に規定する継続雇用制度の導入高年齢者就業確保措置の実施等により高年齢者の雇用を延長し、または高年齢者等に対し再就職の援助を行い、若しくは高年齢者等を雇い入れる事業主その他高年齢者等の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対する必要な助成及び援助

 

主な助成金

  •  65歳超雇用推進助成金(則103条、則104条)
  •  特定求職者雇用開発助成金(則109条、則110条)
  •  トライアル雇用助成金(則109条、則110条の3)
4 同意地域高年齢者就業機会確保計画に係る雇用安定事業(第4号) 高年齢者等雇用安定法に規定する同意地域高年齢者就業機会確保計画に係る事業のうち雇用の安定に係るものの実施
5 地域における雇用安定事業(第5号) 雇用機会を増大させる必要がある地域への事業所の移転により新たに労働者を雇い入れる事業主、季節的に失業する者が多数居住する地域においてこれらの者を年間を通じて雇用する事業主その他雇用に関する状況を改善する必要がある地域における労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対する必要な助成及び援助

主な助成金
  •  地域雇用開発助成金(則111条、則112条)
  •  通年雇用助成金(則111条、則113条)
6 その他の雇用安定事業
(第6号)
障害者その他就職が特に困難な者の雇入れの促進雇用に関する状況が全国的に悪化した場合における労働者の雇入れの促進その他被保険者等の雇用の安定を図るために必要な事業であって、厚生労働省令で定めるものの実施

主な助成金
  •  特定求職者雇用開発助成金(則109条、則110条)
  •  トライアル雇用助成金(則109条、則110条の3)
  •  両立支援等助成金(則115条1号、則116条)
  •  人材確保等支援助成金(則115条2号・3号、則118条)
  •  キャリアアップ助成金(則115条13号、則118条の2)
  •  産業雇用安定助成金(則102条の3の3)

社会保険労務士が事業主の助成金の申請を代わって行う場合次の事項に同意する必要があります
(法77条の2第1項、則140条の3第2項、則140条の4、令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)雇用関係助成金支給要領

  •  支給のための審査に必要な事項の確認に協力すること事務所などへの立ち入りを含みます
  •  不正受給に関与していた場合は
    • 申請事業主が負担すべき一切の債務について申請事業主と連帯請求があった場合ちに請求金を弁済すべき義務を負うこと
    • 氏名事務所または法人名などが公表されること
    • 不支給とした日または支給を取り消した日から5年間雇用関係助成金に係る社会保険労務士が行う提出代行事務代理に基づく申請または代理人が行う申請ができないこと
  • 雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、早期再就職支援等助成金、65歳超雇用推進助成金、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金、通年雇用助成金、両立支援等助成金、人材確保等支援助成コース助成金及びキャリアアップ助成金を「雇用関係助成金」といいます。(則120条かっこ書)

雇用関係助成金の不支給

 

労働保険料の納付の状況 労働保険料の納付の状況が著しく不適切である事業主または事業主団体 則120条の2
過去5年以内」の不正受給歴 過去5年以内に偽りその他不正の行為により給付金の支給を受け若しくは受けようとした事業主または事業主団体に偽りその他不正の行為により給付金の支給を受け若しくは受けようとした事業主または事業主団体
不正関与役員の在籍 過去5年以内に偽りその他不正の行為により給付金の支給をまたは受けようとした事業主または事業主団体若しくはその連合団体の役員等(偽りその他不正の行為に関与した者に限る)が、事業主または事業主団体の役員等である場合の、当該事業主または事業主団体(=役員等に他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる事業主または事業主団体)
代理人・訓練期間の不正関与 過去5年以内に代理人等または訓練機関が偽りの届出報告証明などを行い事業主または事業主団体若しくはその連合団体が当該給付金の支給を受けまたは受けようとしたことがあり、当該代理人等または訓練機関が雇用関係助成金に関与している場合の、事業主または事業主団体
支給対象 雇用関係助成金は、地方公共団体行政執行法人及び特定地方公共団体に対しては支給されない 則120条    
  • 基本的に助成金を不支給とする場合の基準は、「個々の助成金ごとに定められています。例えば、雇用する被保険者を特定受給資格者となる理由により離職させた一定の事業主には、特定求職者雇用開発助成金は支給されません。(則110条2項)

雇用調整助成金

一般事業主」に係る雇用調整助成金は、次のいずれにも該当する事業主に対して、支給するものとする。(則102条の3第1項、雇用関係助成金支給要領

1 景気の変動産業構造の変化その他の経済上の理由により事業所において急激に事業活動の縮小を余儀なくされたものであること 則102条の3第1項1号イ

ここでいう「事業活動の縮小」とは、次の通り(いずれにも該当)である。
雇用関係助成金支給要領

  1.   生産量(額)、販売量(額)または売上高等事業活動を示す生産指標の最近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少している事業所の事業主(生産量要件
  2.  雇用保険被保険者数及び当該事業所で受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す雇用指標の最近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%を超えかつ4名以上大企業の場合は5%を超えかつ6名以上増加していない事業所の事業主(雇用量要件
2
  1. 対象被保険者について所定の「休業または教育訓練」を行い、当該休業等に係る手当または賃金を支払った事業主であること、または、
  2. 出向対象被保険者について所定の「出向」をさせ、あらかじめ出向先事業主と締結した出向に関する契約に基づき、出向をした者の賃金についてその一部全部を除くを負担した出向元事業主であること。
則102条の3第1項2号

雇用調整助成金は、1年間の対象期間内に実施した雇用調整(休業・教育訓練・出向)が支給対象となる。雇用関係助成金支給要領

  • 雇用調整助成金の受給を希望する場合、「計画届」を作成し、事前に都道府県労働局(またはハローワーク)に届け出ることが必要です。この届出の際に事業主が指定した雇用調整の初日から起算して1年間(出向の場合は、出向開始日から1年間)を「対象期間」といいます。
3 休業等または出向の実施について、あらかじめ、「都道府県労働局長に届け出た事業主であること 則102条の3第1項3号  
4 所定の書類休業などや出向の実施の状況及び賃金などの支払の状況を明らかにする書類などを整備している事業主であること 則102条の3第1項4号  

「休業または教育訓練」の要件

ここでいう「休業または教育訓練」とは、次の通りである。(則102条の3第1項2号イ、雇用関係助成金支給要領

1 休業等の実施期間が対象期間1年間内に行われるものであること。
2

所定労働時間内に行われるものであること。

3 休業にあっては、所定労働日の全一日にわたるものまたは短時間休業対象労働者について1時間以上行われるものであること。
4 教育訓練にあっては、受講者の所定労働日の全一日にわたるものまたは短時間訓練受講者について2時間以上行われるものであること。
5 休業に係る手当の支払が労働基準法26条の規定に違反していないものであり、平均賃金の6割以上であること。
6 休業等の期間休業等の対象となる労働者の範囲手当または賃金の支払の基準その他休業等の実施に関する事項について、あらかじめ労使協定がなされ、当該協定の定めるところによって行われるものであること。
7 判定基礎期間における対象被保険者に係る休業等の実施日の延日数が、当該判定基礎期間における対象被保険者に係る所定労働延日数20分の1大企業にあっては、15分の1を乗じて得た日数以上となるものであること。
  • 休業とは労働者が事業所において所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず当該所定労働日の全一日にわたり労働することができない状態または当該所定労働日の所定労働時間内において1時間以上労働することができない状態短時間休業をいいますしたがってストライキ中や有給休暇中のように労働の意思そのものがない場合や疾病などによる休暇中のように労働能力を喪失している場合などの休職休業は雇用調整助成金の支給対象となりません。(雇用関係助成金支給要領
  • 本助成金の支給対象となる教育訓練は職業に関する知識技能または技術を習得させまたは向上させることを目的とする教育訓練講習等であって所定労働日の所定労働時間内に実施されるものをいいます
    また、「職業に関するとは現在就いている職業に直接関係するものに限らず現在就いている職業に関連する周辺の技能知識に関するものも含まれる他事業活動の縮小などに伴い配置転換をする場合などに必要な訓練も含まれます
    なお通常の事業活動として遂行されることが適当なもの趣味教養を身につけることを目的とするもの再就職や自営のためのものなどは雇用調整助成金の支給対象となりません。 雇用関係助成金支給要領

「出向」の要件

ここでいう「出向」とは、次の通りである。(則102条の3第1項2号ロ、雇用関係助成金支給要領

出向対象被保険者について次のいずれにも該当する出向をさせ、あらかじめ出向先事業主と締結した出向に関する契約に基づき、出向をした者の賃金についてその一部全部を除くを負担した出向元事業主であること。
1 当該出向をした日が対象期間内1年間にあること。
2

出向先事業主が行う事業に当該出向をした者が最初に従事する出向先事業所における当該従事する期間3か月以上の期間であり、出向をした日から起算して1年を経過する日までの間に終了し、当該出向の終了後出向元事業主の当該出向に係る出向元事業所に復帰するものであること。

3 出向期間における通常賃金の額が、おおむねその者の出向前における通常賃金の額に相当する額であること。
4 出向の時期出向の対象となる労働者の範囲その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ出向元事業主と当該出向元事業主の当該出向に係る事業所の労働組合などとの間に労使協定がなされ、当該協定の定めるところによって行われるものであること。
5 出向をした者の同意を得たものであること。
  • 出向は労働者が事業所の従業員たる地位を保有しつつ他の事業主の事業所において勤務することいわゆる在籍出向または将来出向元事業所に復帰することその他の人事上のつながりを持ちながら一旦出向元事業所を退職して、出向先事業所において勤務することいわゆる移籍出向をいいます
    ただし資本的経済的組織的関連性などからみて独立性が認められない事業主間の出向は配置転換と変わらないことから雇用調整助成金の支給対象となりません。 (雇用関係助成金支給要領)
  • 出向労働者を交換しあうこととなるものは出向とは認められませんすなわち出向元事業所において雇入れ助成の対象となる労働者や他の事業主から本助成金などの支給対象となる出向労働者を受け入れていないこと出向先事業所において出向者の受入れに際し自己の労働者について本助成金などの支給対象となる出向を行っていないことが要件となります。(雇用関係助成金支給要領、雇用調整助成金ガイドブック(令和7年8月1日現在))
  • 出向元事業所または出向先事業所のどちらか一方で賃金を100%負担する場合は雇用調整助成金の支給対象となりません。(雇用調整助成金ガイドブック(令和7年8月1日現在))
  • 出向に係る雇用調整助成金は事業主がその被保険者を出向させた場合雇用調整助成金または通年雇用助成金が支給される場合に限るにおいて当該出向の終了後に当該被保険者を再度出向させるときは当該再度の出向に関しては支給されません
    ただし当該再度の出向をさせた日の前日当該出向の終了の日の翌日から起算して6か月を経過した日以後の日である場合には支給されます。(則102条の3第5項)

  • 出向先事業主出向労働者の出向開始日の前の日から起算して6か月前の日から1年を経過した日までの間において当該出向者の受入れに際しその雇用する被保険者を事業主都合により離職させた事業主以外であることも要件とされています。(雇用関係助成金支給要領)

  • 教育訓練を行い賃金を支払った場合も支給対象となります

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金には、「特定就職困難者コース助成金」、「生活保護受給者等雇用開発コース助成金」、「中高年層安定雇用支援コース助成金」、「発達障害者難治性疾患患者雇用開発コース助成金」、「(当分の間成長分野等人材確保育成コース助成金」がある。
(則110条1項、則附則15条の5第1項、令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版))

助成金 対象事業主 2 3
特定就職困難者コース助成金 高年齢者60歳以上)や障害者などの就職が特に困難な者を、公共職業安定所または民間の職業紹介事業等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主

(主な対象労働者)
  1.  60歳以上の者
  2.  身体障害者(65歳未満の求職者に限る)
  3.  知的障害者(65歳未満の求職者に限る)
  4.  精神障害者(65歳未満の求職者に限る)
  5.  母子家庭の母など(65歳未満の求職者に限る)
  6.  父子家庭の父(65歳未満の求職者に限る)
   
生活保護受給者等雇用開発コース助成金 地方公共団体または公共職業安定所にて就労支援を受けている生活保護受給者等を、公共職業安定所または民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主    
中高年層安定雇用支援コース助成金 いわゆる就職氷河期世代を含む中高年層のうち正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を正規雇用労働者(短時間労働者を除く)として雇い入れた事業主

(主な対象労働者)
  1.  35歳以上60歳未満の者
  2.  雇入れの日の前日から起算して過去5年間に通常の労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下である者
  3.  雇入れの日の前日から起算して過去1年間に通常の労働者として雇用されたことがない
   
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース助成金 発達障害者または難病患者公共職業安定所または民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主

(対象労働者)
  1.  発達障害者(65歳未満の求職者に限る)
  2.  難治性疾患を有するもの(身体障害者、知的障害者または精神障害者である者を除く)
   
成長分野等人材確保・育成コース助成金
  1.  就職困難者成長分野デジタルグリーンの業務に従事する労働者として雇い入れる事業主
  2.  就労経験のない職業に就くことを希望する就職困難者を雇い入れ人材育成を行ったうえで賃金引き上げを行う事業主
   

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