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ソリューション行政書士法人
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外為法上の対内直接投資(対日直接投資)に係る
事前届出及び事後報告の義務について
▶日本の企業に投資をしたいと考えている、日本に居住していない個人の方
▶日本で会社を設立したいと考えている、日本に居住していない個人の方
▶日本に支社・子会社を設立(買収による場合を含む)したいと考えている、外国法人の方など
1 はじめに
経済のグローバル化のすすむ現代社会では、複数の国に跨る貿易や投資といった国際的な取引が盛んに行われています。国を跨ぐとはいえ自由な経済社会が原則である以上はこれらの取引も原則として自由に行うことができるべきと言えますが、他方で、国際的な取引には国際社会の平和や安全に対して悪影響を及ぼしかねないリスクもあります。
これを受けて、外為法(外国為替及び外国貿易法)では、特定貨物の輸出入に経産省の許可又は承認を要するとするなど、国際的な取引について必要最小限の管理と調整を行うことによって、取引の正常な発展や国際社会の平和・安全の維持等を実現しようとする規定が置かれています。
本ページでは、この外為法の規定のうち、「外国投資家」が行う「対内直接投資(対日直接投資)等」について「事前届出または事後報告」を義務付けている部分について解説します。
2 規制を受ける取引の主体:「外国投資家」とは
外為法は、次のいずれかに該当する者を、「外国投資家」としています(26条1項)。
• 非居住者である個人
• 外国法令に基づいて設立された法人や外国に主たる事務所を有する法人等(外国法人等)
• 非居住者である個人又は外国法人等により直接又は間接に保有される議決権が50%以上の会社
• 非居住者である個人が役員の過半数を占める本邦の法人
• 投資事業有限責任組合(任意組合、外国の相当の組合を含む。)で、
外国法人等が出資の50%以上又は業務執行組合員の過半数を占めるもの
3 規制を受ける取引の内容:「対内直接投資(対日直接投資)等」とは
▶主に、日本国内の会社の支配管理(株式の保有割合の変動)に関連する手続きを行う場合!
• 国内の上場企業の株式の取得で、出資比率が1%以上となるもの。
• 国内の非上場会社の株式または持分の取得
• 国内の上場企業の議決権の取得で、議決権比率が1%以上となるもの。
• 実質的な事業目的の変更(定款変更)、外国投資家の密接関係者の役員への就任、事業譲渡等の提案
に係る同意の議決権行使
• 支店の設置
• 国内法人に対する1年を超える金銭の貸付け(一定の条件に当てはまる場合)。
• 外国投資家が株式を取得した後で、他の外国投資家から、議決権の共同行使の同意を取得する場合
(10%以上となるもの)等
4 規制の内容:「事前届出または事後報告」義務とは
(1) 概要
上記2・3の要件を満たす取引については、取引前の届出または取引後45日以内の報告のいずれかが義務付けられている。事前届出を要するか否かは細かい基準により定められており、事前届出を要する取引の場合には事前届出の後30日間の審査期間(実際には2週間程度で審査が終わる場合もある)が明けるまで当該取引行為を行うことが禁じられてしまうため、その該当性の判断は非常に重要となっている。
(2) 事前届出を要する取引(外為法27条)
外国人投資家による対内直接投資等のうち、事前届出が必要となるのは、
次のア、イ、ウのいずれかに該当する場合です。
(すなわち、掲載国でないイラク国籍の方が対内直接投資等を行う場合は常に事前届出が必要となり、
掲載国であるアメリカ国籍の方が対内直接投資等を行う場合は、投資先の事業内容に応じて事前届出
の要否が変わることになります。)
ア 外国投資家の国籍または所在国が日本および掲載国(※)以外である取引
※掲載国:https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/data/02tn-kuni.pdf
イ 投資先が営む事業(事業目的の記載を確認)に「指定業種」に属する事業が含まれるものであって、
「事前届出免除制度」を利用できない取引
(ア) 指定業種
▶近年、安全保障等の重要性の高まりから、指定業種を定める告示が頻繁に更新されています。
最新の告示の内容は財務省HP「対内直接投資審査制度について」内の別表第1・別表第2を
参照してください(以下は2024年10月時点の告示内容)。
→業種告示(別表第1)
・武器に関する貨物(①)の製造
・航空機に関する貨物(②)の製造業
・宇宙開発に関する貨物(③)の製造業
・原子力に関する貨物(④)の製造業
・①~④の貨物の機械修理業
・①~④の貨物に関するソフトウェア業
・核原料物質に係る金属鉱業
・軍事転用可能な汎用貨物(輸出貿易管理令におけるリスト規制貨物:工作機械、炭素繊維、パワー半導体、
化学製剤や細菌製剤の原料となる化学物質・ウイルス・細菌・毒素、伝送通信装置など)の製造業
・軍事転用可能な技術(外国為替令におけるリスト規制技術:工作機械、化学製剤・細菌製剤の原料、伝送通信装置などの
設計・製造の技術など)を保有する、製造業、ソフトウェア業、自然科学研究所、機械設計業、商品・非破壊検査業、
その他の技術サービス業
・医薬品・医療機器に関連する業種感染症に対する医薬品(医薬品中間物を含む。※生物学的製剤も含まれる。)
・レアアース等の重要鉱物資源の安定供給に関連する業種(金属鉱業等)
→業種告示(別表第2)
・電気業、ガス業、熱供給業
・水道業
・通信事業、放送事業
・鉄道業、旅客運送業
・生物学的製剤製造業
・農林水産業
・石油業
・皮革・皮革製品製造業
・航空運輸業、海運業
集積回路製造業、半導体メモリメディア製造業、光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ製造業、
電子回路実装基板製造業、有線通信機械器具製造業、携帯電話機・PHS電話機製造業、無線通信機械器具製造業、
電子計算機製造業、パーソナルコンピュータ製造業、外部記憶装置製造業、情報処理サービス業、ソフトウェア業等
(イ) 事前届出免除制度
▶ 本項目下部の画像(事前届出免除制度の概要①②)も併せてご参照ください。
▶「審査を実施する必要性が高い外国投資家」以外の外国投資家(外国金融機関を除く) が行う取引のうち、
①投資先が上場企業の場合:
【「コア業種」に属する事業を行う企業について出資比率及び議決権比率が密接関係者と
合わせて10%以上となる取引】を除いた取引について、全て事前届出を免除する
②投資先が非上場企業の場合:【「コア業種」に属する事業を行う企業についての取引】 を除いた取引について、全て事前届出を免除する
ただし、本制度を利用する外国人投資家は、免除基準(後述)を遵守しなければならない。
・「コア業種」=指定業種の中でも特に審査の必要性が高く、事前届出免除制度の対象にならない
:近年、安全保障等の重要性の高まりからコア業種を定める告示が頻繁に更新されています。
最新の告示の内容は財務省HP「対内直接投資審査制度について」内の
「コア業種を定める告示」を参照してください。
・「審査を実施する必要性が高い外国投資家」=事前届出免除制度を利用できない者
→(1) 法の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、もしくは執行を受けることがなくなった日
または法もしくは法に基づく命令の規定による処分に違反した日から 5 年を経過しないもの
(2) 法 27 条の 2 4 項または法 28 条の 2 4 項の規定による命令を受けたもの
(3) 外国の政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国の中央銀行または外国の政党その他の政治団体
(以下「外国政府等」)
(4) 法人その他の団体で、次のいずれかに該当するもの
① 同一の国または地域に属する外国政府等が直接に保有するその議決権の数と他の法人その他の団体を通じて間接に
保有する議決権の数とを合計した議決権の数の総議決権に占める割合が 100 分の 50 以上に相当するもの
② 外国政府等が会社法 108 条1項 8 号に掲げる事項についての定めがある種類の株式またはこれに相当するものを
所有しているもの
③ 同一の国もしくは地域に属する外国政府等または①に掲げるものが所有する株式の数または出資の金額の
当該法人その他の団体の発行済株式の総数または出資の金額の総額に占める割合が 100 分の 50 以上であるもの
④ 当該法人その他の団体の役員または役員で代表する権限を有するもののうち、
同一の国または地域に属する外国政府等が任命し、または指名しているものと当該外国政府等の役員または使用人
その他の従業者であるものの合計が当該法人その他の団体の役員または役員で代表する権限を有するものの
いずれかの総数の 3 分の 1 以上であるもの
⑤ 外国政府等が当該法人その他の団体が行う対内直接投資等もしくは特定取得または当該対内直接投資等もしくは
当該特定取得に係る議決権の行使について指図を行うことができる権限を有しているもの
(5) (3)および(4)に掲げる法人その他の団体の役員
・事前届出免除制度を利用するために遵守しなければならない免除基準
▶事業活動等に一切かかわらず、金銭の拠出のみを行うこと、というイメージ
- 外国投資家自らまたはその関係者が発行会社等の取締役または監査役に就任しないこと
- 指定業種に属する事業の譲渡・廃止の議案を
発行会社の株主総会に自らまたは他の株主を通じて提案しないこと
- 指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと
- (コア業種に属する事業を行う上場企業への取引で免除制度を用いる場合のみ)
- コア業種に属する事業に関し、取締役会または重要な意思決定権限を有する委員会に 自ら出席し、または自らが指定する者を出席させないこと。
- コア業種に属する事業に関し、取締役会もしくは重要な意思決定権限を有する委員会
またはそれらの構成員に対し、自らまたは自らが指定する者を通じて、 期限を付して
回答・行動を求めて書面で提案を行わないこと。
・事前届出免除制度の利用が認められないにもかかわらず免除制度を利用した場合は
無届の扱いとなり、故意に無届で対内直接投資を行ったものと判断された場合には罰則が科される
場合あり
ウ 「イラン関係者」により行われる、以下の「取引a~c」に該当する取引
(ア) イラン関係者
イラン政府、イラン国籍を有する自然人、イランの法令に基づいて設立された法人その他の団体(当該法人その他の団体
の外国にある支店、出張所その他の事務所を含む。)もしくはイラン以外の地域に主たる事務所を有する法人その他の
団体のイラン内の支店、出張所その他の事務所またはこれらのものに実質的に支配されている外国投資家であるもの
(イ) 取引a~c
a 安保理の事前承認により許可することが可能となるイランによる投資業種(安保理の事前承認により許可することが
可能となるイランによる投資業種を定める告示で定められた別表(参考資料4に掲載)に掲げる業種)を営む会社の
株式又は持分の取得
b 安保理の事前承認により許可することが可能となるイランによる投資業種を営む上場会社等の株式への一任運用
c 非居住者である個人が非居住者となる以前から引き続き所有する上場会社等以外の会社
(安保理の事前承認により許可することが可能となるイランによる投資業種に属する事業を営む会社に限る。)
の株式又は持分のイラン関係者に対する譲渡
(3) 事後報告で足りる取引
→ 原則として、「外国人投資家」が行う「対内直接投資」については、
上記(2)事前届出を要する取引に該当しない取引は全て事後報告が必要となる(外為法55条の5)。
ただし、対内直接投資等に関する政令3条1項、対内直接投資等に関する命令3条2項に規定されている
要件を満たす取引については、例外的に事後報告までもが不要となる。
例:株式や持分等の相続又は遺贈による取得
事後報告業種の非上場会社の株式取得で議決権比率が密接関係者とあわせて10%未満である場合
5 具体的な手続きの流れ①:事前届出を要する場合
・事前届出は、日銀のオンラインシステムを利用して行うことができます。
上記2~4の要件に照らして取引が事前届出を要するものと判断した場合には、
日銀HPから当該取引の種類に該当する様式のExcelをダウンロードし、入力したうえで、
日銀のオンラインシステムにアップロードをします。
ただし、日銀のオンラインシステムを利用するには事前の個人登録が必要になり、手続きが煩雑です。
ソリューション行政書士法人はオンラインシステムに登録しているため、事前届出を要するかの判断や
Excelの入力に加えて、事前届出のアップロードまでを一括してお任せいただくことができます。
ぜひご相談ください。
▶日銀HP 事前届出様式
・事前届出をしてから審査が終了するまでのおよそ30日間は、 当該取引を行うことができません。
例えば、外国人投資家が発起人となって会社の設立を行う場合(2~4の要件を満たしているとする)には、
事前届出の審査が終了するまでに定款の認証までは行うことができますが、
設立登記をするには発起人による払い込みを要することから、その払い込みができない以上、
審査が終了するまで設立登記をすることができないことになります。
スケジュールの調整が必要になるため、事前届出を要するか否かの判断については早めに行政書士に
ご相談いただくことをおすすめします。
・審査が終了するまではおよそ30日間とされていますが、2~3週間で終わることもあります。
審査が終了して日銀HPに公示された翌日から当該取引が可能になるため、定期的に確認すると良いで
しょう。
▶日銀HP 審査結果(Excelをダウンロードしてご確認ください)
6 具体的な手続きの流れ②:事後報告で足りる場合
・事後報告で足りる場合、取引を行ってから45日以内に報告を行う必要があります。
・事後届出は、日銀のオンラインシステムを利用して行うことができます。
上記2~4の要件に照らして取引が事後報告で足りるものと判断した場合には、
日銀HPから外為法55条の5に係る報告書の様式のExcelをダウンロードし、入力した上で、
日銀のオンラインシステムにアップロードをします。
ただし、日銀のオンラインシステムを利用するには事前の個人登録が必要になり、手続きが煩雑です。
ソリューション行政書士法人はオンラインシステムに登録しているため、事前届出を要するかの判断や
Excelの入力に加えて、事後届出のアップロードまでを一括してお任せいただくことができます。
ぜひご相談ください。
▶日銀HP 事後報告様式(外為法55条の5にかかるもの)