学校に対して入学金、授業料などを支払ったあとで、学校に通うことができなくなることがあります。そのような時に、入学金、授業料などの返還を学校に対して求めることができるのでしょうか?
判例は①入学金②授業料など について異なる判断をしています。
①入学金について
最高裁判所は、
大学は、納付金を返還しない旨の特約の有無にかかわらず、在学契約を解除した学生に対して、返還する義務を負わない。(最判平18・11・27民集六〇・九・三四三七)
と判断しています。
入学金については、残念ながら、返還を求めることは難しいでしょう。
②授業料などについて
最高裁判所は、
(1)入学年度が始まる四月一日より前の時期における在学契約の解除については、原則として、授業料等の不返還特約はすべて無効となり、大学は授業料等の返還義務を負う。
(2)しかし、それより以後の時点における解除では、原則として、大学は返還義務を負わない。(最判平18・11・27)
と判断しています。
つまり、3月31日までに学校に対して、学校に通わないとの意思を表示し、授業料の返還を求めれば、授業料などは原則として全額返還されえます。
それでは、それ以降は一切返してもらえないのでしょうか?
この点については、大学受験予備校の事案について
(3)一定期間経過後に在学契約が解除された場合には校納金を全額返還しないとする当該不返還条項のうち、解除後の期間に対応する授業料に関する部分は無効である。(大分地判平26・4・14判時二二三四・七九)
との裁判例も出ています。
ただし、不返還特約が消費者契約法9条1号により無効となるだけで、返還請求できるのは、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」に限られます。
また、「平均的損害およびこれを超える部分についての立証責任は、基本的には無効を主張する学生において負うべきである」(最判平18・11・27)
とされているため、返還の難易度は高いでしょう。