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ソリューション行政書士法人
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労働基準法には、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定められた時間を労働したものとみなす制度があります。
代表的なものとして、
があります。
名前は似ていますが、対象となる業務や導入手続は大きく異なります。
ポイント①
事業場外労働のみなし労働時間制は、
- 事業場外で働いていること
- 労働時間を算定し難いこと
の2つが基本的な要件です。
ポイント②
事業場外みなし制度の導入そのものについて、労使協定は必須ではありません。
「その業務を遂行するために通常必要とされる時間」を労使協定で定める場合に、労使協定が問題となります。
ポイント③
専門業務型裁量労働制は、研究開発、システム設計、デザイナー、弁護士など、法令で限定された20業務に限って利用できます。
労使協定+本人同意+労基署への届出
が必要です。
ポイント④
企画業務型裁量労働制は、
事業の運営に関する企画・立案・調査・分析
を行う労働者を対象とする制度です。
単に「企画部に所属している」というだけでは対象になりません。
ポイント⑤
企画業務型では、通常の労使協定ではなく、
労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数による決議 が必要です。
さらに、本人の同意も必要です。
ポイント⑥
裁量労働制では、実際に8時間を超えて働いたからといって、その超えた実労働時間について時間外割増賃金が発生するわけではありません。時間外割増の有無は「みなし労働時間」によって判断します。一方、深夜労働・法定休日労働については、実際に労働した時間に応じて割増賃金が必要です。
また、裁量労働制(専門業務型・企画業務型の双方)であっても、深夜労働(22時~翌5時)および法定休日労働については、みなし労働時間ではなく、実際に労働した時間に応じて割増賃金を支払う必要があります。
たとえば、企画業務型裁量労働制で「1日8時間」とみなしている人が、
平日に9:00~23:00まで実際に働いた場合
→ 労働時間は原則として「8時間」とみなされます。したがって、「14時間働いたから6時間分の時間外割増」という計算にはなりません。
しかし、22:00~23:00の1時間については、実際に深夜労働をしているので、1時間分の深夜割増25%が必要です。
時間帯 扱い 9:00~22:00 みなし8時間として処理 22:00~23:00 実際の深夜労働1時間 実労働8時間超による時間外割増 なし 22:00~23:00の深夜割増 25%以上あり
| 項目 | 事業場外労働のみなし | 専門業務型裁量労働制 | 企画業務型裁量労働制 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 法38条の2 | 法38条の3 | 法38条の4 |
| 主な対象 | 労働時間を算定し難い事業場外労働 | 法令で定める20の専門業務 | 事業運営に関する企画・立案・調査・分析 |
| 対象業務の限定 | 特定業務の列挙なし | 20業務に限定 | 法定要件を満たす企画等の業務 |
| 労使協定 | 原則不要 | 必要 | 労使協定ではなく労使委員会の決議 |
| 決議要件 | ― | ― | 委員の5分の4以上 |
| 本人同意 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 同意撤回手続 | ― | 必要 | 必要 |
| 労基署への届出 | 一定の場合に必要 | 必要 | 必要 |
| 定期報告 | なし | なし | あり |
| 効果 | 所定時間又は通常必要時間を労働したものとみなす | 協定時間を労働したものとみなす | 決議時間を労働したものとみなす |
覚え方としては、
事業場外みなし 「時間を把握できない」
専門業務型裁量労働制 「法律で決められた20の専門業務」
企画業務型裁量労働制 「経営・事業運営に関する企画等+労使委員会」
と整理すると分かりやすいです。
特に、
専門業務型=労使協定
企画業務型=労使委員会の5分の4以上の決議
という違いは重要です。
営業職や外回りなど、会社の外で働くため使用者が実際の労働時間を把握できない場合があります。
そのような場合に、
実際の労働時間ではなく、「一定時間働いたもの」とみなす制度 が事業場外労働のみなし労働時間制です。
昭和63年通達でも、
使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務に対応するための制度
と説明されています。
次の2つを満たす必要があります。
例えば、
などです。ただし、単に会社の外で働いているだけでは足りません。
ここが最も重要です。
使用者の具体的な指揮監督が及ばず、
実際に何時間働いたのかを算定することが困難であること
が必要です。
例えば、
営業担当者が自分で訪問先や訪問順序を決め、休憩時間や直行直帰についても相当程度自由に決めている場合などが考えられます。
反対に、使用者から詳細なスケジュールを指示され、業務の開始・終了や移動状況まで具体的に管理されている場合には、適用が難しくなります。
なお、GPSや業務日報などによって一定の情報を把握できるという事情だけで直ちに制度が適用できなくなるわけではありません。
業務の性質・内容、遂行方法、使用者の指示や報告の実態などを総合的に判断します。
所定労働時間働いたもの
とみなします。
例えば、
所定労働時間が8時間なら、
実際に6時間でも10時間でも、
8時間働いたもの
と扱います。
その業務を遂行するためには、通常、所定労働時間を超えて働く必要がある場合には、
その業務の遂行に通常必要とされる時間
を労働したものとみなします。
例えば、
その営業活動を行うために通常10時間必要であれば、
10時間労働
とみなされます。
導入するだけなら労使協定は不要です。
しかし、 通常必要時間について、
会社と労働者で
「10時間とする」
などと決める場合には
労使協定を締結できます。
この場合、 その協定時間が
「通常必要時間」
になります。
労使協定で定めた「通常必要とされる時間」が、
1日8時間などの法定労働時間を超える場合
には、労働基準監督署長への届出が必要です。
「事業場外労働のみなし労働時間制」を導入するにあたって、「労使協定」の締結が必ず必要なわけではありません。
協同組合グローブ事件(最判令和6年4月16日)
事案
外国人技能実習の監理団体であるY組合の職員Xは、実習実施者への訪問指導、技能実習生の送迎・生活支援・通訳などの業務を主に事業場外で行っていました。
Xは、訪問先の予約や日々のスケジュールを自ら管理し、直行直帰や休憩時間の調整も自由に行うことができました。一方、Y組合から日常的・具体的な指示や報告はなく、タイムカードによる労働時間管理もされていませんでしたが、毎月業務日報を提出していました。
Xは、Y組合が採用していた事業場外みなし労働時間制は適用要件を満たさず無効であるとして、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金の支払いを求めて提訴しました。
高等裁判所は、業務日報について、
などから、業務日報の正確性は担保されており、Y組合は労働時間を具体的に把握することが可能であったと判断しました。
そのため、本件は労基法38条の2第1項の「労働時間を算定し難いとき」には当たらず、事業場外みなし労働時間制は適用されないとして、Xの主張を認めました。
これに対し最高裁は、業務日報の存在や、その内容を基に一部残業手当を支払っていたという事情だけで、使用者が労働時間を具体的に把握できたとはいえないとしました。
そして、「労働時間を算定し難いとき」に該当するかは、業務の性質・内容、遂行方法、使用者の指示・報告の実態などを総合的に判断すべきであるとして、高裁判決を破棄し、審理を差し戻しました。
ポイント
事業場外みなし労働時間制の適用可否は、業務日報の有無だけで判断するのではなく、使用者が労働時間を具体的に把握できたかを実態に即して総合判断することが重要です。
テレワークの場合
テレワークでは、事業場外みなし制度は使えます。
ただし、 次の2要件を満たす必要があります。
①常時通信可能ではない
②随時具体的指示を受けない
の両方が必要です。
①だけでは足りません。
常時通信可能な状態ではないこと
つまり、 会社が
「いつでも即応しろ」
という状態ではないことです。
例えば、
○ 自分で通信を切れる
○ パソコンから自由に離れられる
○ 携帯電話を持っていても応答するタイミングは自分で決められる
これらは要件を満たします。
一方、 会社から
「Teamsは常時オンライン」
「電話は即応」
などを命じられている場合は、
要件を満たしません。
随時具体的な指示を受けていないこと
例えば、
会社が 「今日はこれをやってください」
程度ならOKです。
しかし、
逐一指示される場合は、
労働時間を把握できるため、
みなし制度は適用できません。
専門業務型裁量労働制の対象業務
どのような仕事でも利用できるわけではありません。
対象となるのは、法令で定められた20業務です。
代表的なものとして、
などがあります。
※2024年4月から、銀行・証券会社における一定のM&Aアドバイザー業務が追加され、現在は20業務となっています。
専門業務型裁量労働制は、
対象となる専門業務に従事する労働者
について認められる制度です。
対象業務とは全く異なる非対象業務を予定して行わせる場合には、
その非対象業務が短時間であったとしても、原則として専門業務型裁量労働制を適用することはできません。
労使協定で
「1日9時間」
と定めれば、
実際に 7時間でも12時間でも
9時間働いたもの
とみなされます。
労使協定で、主に次の事項を定めます。
などです。
2024年4月1日から、
専門業務型裁量労働制についても、
労働者本人の同意
が必要になりました。
また、
同意しなかったことを理由として不利益な取扱いをすることは禁止
されています。
さらに、 一度同意した後についても、
同意を撤回するための手続
を定めなければなりません。
労使協定を締結するだけでは足りません。
専門業務型裁量労働制に関する協定届
を、所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
| 項目 | 事業場外みなし | 専門業務型裁量労働制 |
|---|---|---|
| 対象 | 労働時間が把握できない外勤 | 専門性の高い業務 |
| 労使協定 | 原則不要 | 必須 |
| 本人同意 | 不要 | 必須 |
| 効果 | 所定時間又は通常必要時間とみなす | 協定時間働いたものとみなす |
| 対象業務 | 制限なし |
企業の経営企画などの仕事では、
会社から細かく、
「9時からこの資料を作る」
「10時からこの調査をする」
と指示するよりも、
労働者自身が、
を判断した方が適切な場合があります。
このような、
事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務
について、 労使委員会であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度が、
企画業務型裁量労働制です。
企画業務型裁量労働制を利用するためには、次の4つをすべて満たす必要があります。
単なる日常業務ではなく、
企業等の事業運営に影響を及ぼす事項
について行う業務である必要があります。
例えば、
などに関する企画等が典型です。
本社や本店に勤務していること自体が要件ではありません。
反対に、本社の「企画部」に所属しているというだけで自動的に対象になるわけでもありません。
単に、
「調査だけをする」
「資料だけを作る」
ということでは足りません。
企画・立案・調査・分析という相互に関連した作業を組み合わせて行う業務
であることが必要です。
部署名ではなく、
その労働者が実際にどのような仕事をしているのか
によって判断されます。
会社が、
「この社員には自由にやらせよう」
と決めればよいわけではありません。
その業務の性質上、客観的に見て、遂行方法を大幅に本人の裁量に委ねる必要があること
が求められます。
業務の進め方や時間配分について、
使用者が具体的に指示することはできません。
特に重要なのが、
始業・終業時刻の決定も「時間配分」に含まれる
という点です。
そのため、
「必ず9時に業務を開始すること」
「18時までは勤務すること」
などと使用者が具体的に指示する業務は、原則として企画業務型裁量労働制の対象にはなりません。
ただし、
などの基本的事項について指示することまで禁止されるわけではありません。
対象業務を行っていれば、誰でも対象にできるわけではありません。
対象となるのは、
その業務を適切に遂行するために必要な知識・経験等を有する労働者 です。
労使委員会では、
などを使って、対象労働者の範囲を具体的に定めます。
厚生労働省の指針では、
大学を卒業したばかりで職務経験がまったくない労働者については対象とすることはできず、
少なくとも3年~5年程度の職務経験を経た後に、必要な知識・経験を有するかを判断する
という考え方が示されています。
※「3年以上」などが一律の法定要件になっているわけではありません。
専門業務型との大きな違いです。
企画業務型裁量労働制では、
通常の労使協定ではなく、
労使委員会
を設置しなければなりません。
労使委員会とは、
賃金・労働時間その他の労働条件について調査審議し、事業主に意見を述べるための委員会です。
委員の半数については、
過半数労働組合又は過半数代表者によって指名された者
である必要があります。
企画業務型裁量労働制を導入するためには、
労使委員会で必要事項について、
委員の5分の4以上の多数による決議
を行う必要があります。
単なる過半数では足りません。
主な決議事項は次のとおりです。
などです。
企画業務型裁量労働制を実際に労働者へ適用するためには、
労働者本人の個別の同意
が必要です。
就業規則に、
「企画職には裁量労働制を適用する」
と書いてあるだけでは足りません。
また、
同意しなかったことを理由として、解雇・減給・降格などの不利益な取扱いをすることは禁止
されています。
一度同意したら、ずっと撤回できないという制度ではありません。
2024年4月1日からは、
同意を撤回するための手続
を労使委員会の決議で定めなければなりません。
例えば、
などを具体的に定めます。
同意を撤回したことを理由とする不利益な取扱いも認められません。
労使委員会で、
1日のみなし労働時間を9時間
と決議した場合、
実際の労働時間が、
7時間であっても、12時間であっても、
原則として、
9時間働いたもの
とみなします。
ここは非常に重要です。
例えば、
みなし労働時間を
1日9時間
と定めた場合、
法定労働時間8時間を超える
1時間については時間外労働
となります。
そのため、36協定の締結・届出とともに、
1時間分の時間外割増賃金
が必要です。
また、 実際に午後10時から午前5時まで働いた場合には、
深夜割増賃金
が必要です。
法定休日に実際に労働した場合も、
休日割増賃金
が必要です。
つまり、
裁量労働制とは「労働時間そのものを管理しなくてよい制度」でも、「残業代を支払わなくてよい制度」でもありません。
「みなし労働時間」を利用するからといって、
実際の勤務状況を把握しなくてよいわけではありません。
健康・福祉確保措置を行うため、
使用者には、
対象労働者の労働時間の状況を把握すること
が求められます。
例えば、
などにより勤務状況を把握します。
企画業務型裁量労働制では、
労使委員会を作って最初に決議すれば終わり、ではありません。
6か月以内ごとに1回
労使委員会を開催し、
などを確認し、制度が適切に運用されているかをチェックする必要があります。
労使委員会で決議した後、
企画業務型裁量労働制に関する決議届
を所轄労働基準監督署長へ届け出なければなりません。
届出をしなければ、
みなし労働時間の効果は発生しません。
企画業務型裁量労働制には、
専門業務型にはない重要な手続として、
労働基準監督署への定期報告
があります。
報告事項は、
裁量労働制と似た制度として、高度プロフェッショナル制度(法41条の2)があります。
ただし、両者は法律上の仕組みが大きく異なります。
| 項目 | 裁量労働制 | 高度プロフェッショナル制度 |
|---|---|---|
| 基本的な仕組み | 一定時間働いたものとみなす | 労働時間規制等を適用除外 |
| 対象 | 専門業務型20業務/企画業務型の対象業務 | 法令で定める5業務+職務明確 |
| 年収要件 | なし | 1,075万円以上 |
| 本人同意 | 必要 | 書面による同意が必要 |
| 労使手続 | 労使協定または労使委員会決議 | 労使委員会の5分の4以上の決議 |
| 深夜割増 | 必要 | 適用されない |
| 健康確保 | 健康・福祉確保措置等 | 年間104日以上の休日確保+健康管理時間に応じた措置等 |
裁量労働制
→ 実労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間を「働いたものとみなす」制度
高度プロフェッショナル制度
→ 一定の高度専門職について、労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金の規定を「適用しない」制度
したがって、裁量労働制では深夜労働や法定休日労働の割増賃金は必要ですが、高度プロフェッショナル制度では、これらの規定自体が適用されません。
その代わり、高度プロフェッショナル制度では、年間104日以上の休日確保や健康管理時間の把握、健康・福祉確保措置など、厳格な健康確保措置が設けられています。
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