総括安全衛生管理者

総括安全衛生管理者(法10条)は、一定規模以上の事業場において、安全衛生管理体制の中心となる者です。

安全管理者や衛生管理者などを指揮するとともに、事業場全体の安全・衛生に関する業務を統括管理します。

事業場の安全衛生管理の「責任者」

という位置づけです。

なお、選任義務は企業全体の労働者数ではなく、「事業場」ごとの業種・労働者数によって判断します。


総括安全衛生管理者を選任する事業場

総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場は、業種によって100人・300人・1,000人以上の3区分に分かれます。(法10条1項、令2条)

業種 常時使用する労働者数
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 100人以上
製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 300人以上
その他の業種 1,000人以上

覚え方

100人 → 危険性が比較的高い業種
300人 → 製造業など+一部の商業・サービス業
1,000人 → その他の業種

例えば、一般的な小売業は原則として「その他の業種」に該当するため1,000人以上ですが、百貨店や総合スーパーなどの各種商品小売業は300人以上で選任が必要です。

 

まとめ

項目 総括安全衛生管理者
選任単位 事業場ごと
選任規模 業種により100人・300人・1,000人以上
選任期限 選任事由発生から14日以内
労基署への報告 必要
選任する者 事業の実施を統括管理する者
資格・免許 不要
主な役割 安全管理者・衛生管理者等を指揮し、安全衛生業務を統括管理
巡視義務 なし
代理者 本人が職務を行えない場合は必要
選任義務違反 50万円以下の罰金

総括安全衛生管理者=「安全衛生の専門資格者」ではなく、事業場全体を統括する立場から安全衛生管理を統括する者

と理解すると分かりやすくなります。

令2条
 労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

  1.  林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業…100人
  2.  製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業…300人
  3.  その他の業種…1,000人

選任期限・選任報告

総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した場合には、

14日以内に選任

しなければなりません。

また、選任したときは、遅滞なく「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。(則2条)

選任すべき事由の発生
↓
14日以内に選任
↓
遅滞なく労働基準監督署へ報告

資格

 

総括安全衛生管理者は、

「事業の実施を統括管理する者」

をもって充てなければなりません(法10条2項)。

ここでいう

「事業の実施を統括管理する者」 とは、

工場長

事業所長

支店長 など、

名称ではなく

実質的に事業場を統括する権限と責任を有する者

をいいます(昭47.9.18基発602号)。


特別な資格は不要

ここがポイントです。

総括安全衛生管理者には、

  • 安全管理者の資格
  • 衛生管理者免許
  • 実務経験
  • 国家資格

などは必要ありません。

つまり、

「資格」で選ぶのではなく、「事業場を統括する地位」にある者を選ぶ

という点が特徴です。

安全管理者や衛生管理者とは、ここが大きく異なります。

業務

業務は大きく分けて2つです。

① 安全管理者等の指揮

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 救護技術管理者
  • 法25条の2第2項の技術的事項を管理する者

を指揮します。

つまり、安全管理者・衛生管理者がそれぞれ安全・衛生の専門的な業務を担当し、総括安全衛生管理者がそれらを事業場全体として統括するという関係になります。


② 安全衛生業務の統括管理

総括安全衛生管理者は、次の業務を統括管理します。

 

法律で定められた業務

  1. 労働者の危険・健康障害を防止するための措置
  2. 安全・衛生のための教育
  3. 健康診断その他の健康保持増進措置
  4. 労働災害の原因調査・再発防止対策

さらに、厚生労働省令により、

  1. 安全衛生に関する方針の表明
  2. リスクアセスメントと、その結果に基づく措置
  3. 安全衛生計画の作成・実施・評価・改善

についても統括管理します。(法10条1項、則3条の2)


③ 巡視義務はない

 

総括安全衛生管理者には、巡視義務はありません。

ここは、安全管理者との違いとして重要です。

総括安全衛生管理者
→ 安全衛生業務を統括管理

安全管理者
→ 作業場等を巡視


④ 専属・専任

 

総括安全衛生管理者について、法律上、安全管理者などに設けられているような特別な資格要件や専属・専任の要件は定められていません。

 

そもそも、

事業の実施を統括管理する者

を選任する制度であるため、通常は工場長・事業所長・支店長などが、その本来の職務とあわせて総括安全衛生管理者を務めます。


代理者

総括安全衛生管理者が、

  • 旅行
  • 疾病
  • 事故
  • その他やむを得ない事由

によって職務を行うことができない場合には、事業者は代理者を選任しなければなりません。(則3条)

本人が不在なら、そのままでよいわけではなく、代理者が必要

という点に注意が必要です。

都道府県労働局長による勧告行政措置

都道府県労働局長は、

労働災害防止のため必要があると認めるときは、

事業者に対して

総括安全衛生管理者の業務執行について勧告

することができます(法10条3項)。

例えば、

他の同業種・同規模の事業場と比べて労働災害の発生率が高く、その原因が総括安全衛生管理者の不適切な業務執行にあると考えられる場合などが想定されています。

ポイントは、

勧告の相手方は総括安全衛生管理者本人ではなく、「事業者」であることです

 

罰則

総括安全衛生管理者を選任しなければならないにもかかわらず、選任しなかった場合には、

50万円以下の罰金

の対象となります。(法120条1号)

 

 

安全衛生管理者等の選任義務違反

管理者等 主な罰則
総括安全衛生管理者 50万円以下の罰金
安全管理者 50万円以下の罰金
衛生管理者 50万円以下の罰金
産業医 50万円以下の罰金
作業主任者 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
安全衛生推進者・衛生推進者 選任義務違反について罰則なし

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